試立りーふ学園外伝♪謝罪&希望作品 投稿者:苦患の人(ROM男)
「試立りーふ学園外伝♪謝罪&希望作品」

						1998年5月26日	苦患の人

 ――久々野彰さんの『Lメモ超外伝SP20「死に目に付き合う義理はねぇ!」』の後日談――


△月α日 土曜日

 
 会議室で放課後に数人の生徒が集まって相談していた。
 「最近、風紀の乱れが気になるわね...」
 風紀委員長の広瀬が困ったような、ちょっぴり寂しそうな笑いを浮かべる。
 「まあSS使いの連中がリーフキャラに押さえられる事はそうないからな。」
 同意するように、月島が答える。
 「原因は、わかっているんですけどね...」
 そう広瀬が言うと、我が意を得たとばかりに月島が、
 「だからこそ、彼が必要なんだよ。悔しいがね。」
 苦笑しつつ、近くにいるRuneを呼ぶ。
 「Runeくん。最近の彼の様子、どうなっているかね。」
 「――まだ、寝ているだろうさ。あそこをやられると、血がそう簡単には止まらねえらしい
 から。」
 Runeが言うと、
 「全く、困ったものよね。」
 広瀬がそう締めくくる。
 広瀬には、この学園にはびこるあの連中を押さえ込むことはできなかった。


△月υ日 日曜日


 「彰、あなた、まだ治らないの? もうあれから随分経つでしょうに。」
 「悪かったですね...」
 彼女の家のグループが経営している病院の個室で、綾香が満面の笑みを浮かべながらベッド
で寝ているその主をからかう。
 「偽善な真似をしたがるからだ。」
 と、相変わらずの黒ずくめで看護婦に嫌な顔をされたハイドラントも一緒だった。
 二人は昔馴染みの友人の見舞いに来ていた。
 綾香が椅子に座り、その後ろをハイドラントが腕組みしながら見守っている光景はちょっと
異様だった。
 「あ、綾香ちゃんにハイドラント君。こんにちわ。」
 例の騒動で謹慎処分になっていた美咲が教材を片手に、入ってくる。
 「あ、こんにちわ。」
 「………なんです、それは?」
 ハイドラントが彼女の手に持った本を見る。
 「あ………これは………」
 見ると、『りーふ出版「脚本家への道」 高橋龍也、青紫共著』と書かれていた。
 「今頃、勉強ってーの?」
 「いいだろ、別に。」
 綾香のからかいに、その入院主の久々野が言うと、
 「図書館から借りてきてって頼まれたの。」
 と、美咲は本で顔の下半分を隠すように微笑む。
 「ふぅん。それで二人でお勉強ってーの。」
 「怪しいな。」
 「怪しくない!」
 二人して久々野をからかう。
 「全く・・・で、学校の方は相変わらずか?」
 これ以上、触れられたくなかったのか、話題をかえるべく久々野が綾香に尋ねる。
 「セリオに聞いているんでしょ?」
 「それはまあ、そうだけど...」
 「………」
 久々野の視線に、綾香は髪を手で弄りながらチラリと横を向く。
 視線の先では美咲が籠に入っていたメロンを果物ナイフで4つに切り、皿を取りだしていた。
 「で?」
 後ろでハイドラントに美咲がメロンの皿を渡しているのを見つつ、久々野が催促する。
 「俺に何を頼みに来たんだ?」
 「?」
 ハイドラントが苦笑しつつ見る横で、綾香に皿を渡していた美咲がひとり、不思議そうに久
々野を見た。
 「あら………ばれてた?」
 「おまえ、昔っから頼み事があると、人の部屋でわざとらしく枝毛捜し始めるんだよな。梓
 は口笛吹くし...」
 美咲からギザギザスプーンを受け取りつつ久々野がそう言うと、ハイドラントも同意するよ
うに深く頷いた。
 「あははは...」
 ごまかすように笑う綾香に追い打ちをかけるように、
 「何でこうまわりくどい事するかなー」
 などと久々野はメロンを食べつつ、文句を言う。
 「まあいろいろとあるのよ。」
 こちらも、スプーンで遊びながら反論する綾香。
 「何がいろいろなんだか。」
 ハイドラントがそう言い、久々野もそれに笑って応じると、それまで黙っていた美咲が、
 「久々野君、綾香さん達の事、大切にしているんだね。」
 と、優しい声色で言った。
 「え………あ………いや。」
 ぷぷっ・・・と、笑う綾香と、ハイドラントを睨みつつ、
 「それで、頼み事はなんだよ。」
 ちょっぴり照れたような怒った顔をして久々野は綾香を問いつめる。
 「あ。」
 残りのメロンの肉をスプーンで綺麗に削りつつ、綾香は
 「そうそう実はね...」
 と、簡単そうに言った。

                   ☆☆☆


 その頃、学校に呼び出されていた3人は追いつめられていた。
 「あああ...」
 「僕は別に...」
 「どうして私まで...」
 赤十字美加香、秋山登、dyeの3人だった。
 「ふっふっふ………雅史にラブレターを渡す少女A、元清掃夫、そして二重スパイの3人!!
 我々の決起集会にようこそ。」
 そう言う田中の背後には、沢山もの彼に従う草が殺気をまき散らしていて、壁際に追いつめ
られていた彼らを取り囲んでいた。
 「は……はなしがちがうじゃないですかっ!!」
 美加香が叫ぶ。人気のない休日の学校の廊下ではその声はよく響きわたったのだが、残念な
がら今日はDセリオ達もメンテナスの日で、彼ら以外、誰もいないようだった。
 「はなし?」
 馬鹿にしたように、田中が聞き返す。
 「そ、そうですよ! こないだ、わざわざ大学の千鶴さんに似た女性と廊下にいた琴音ちゃ
 んに似た女性の二人が来て言ってくれたんですから! もう一切、私を追い回さないって!」
 「ふん。久々野の馬鹿めが...」
 忌々しそうに呟く田中。
 「だが、もうあいつなど怖くはない。俺は力を手に入れたのだ!!」
 「力...?」
 dyeが訊ね返すと、
 「そう! 自ら権力の座を手放すような真似をした奴に我々を統治する能力などない!!」
 「自分から放棄した奴に縛られる我らではない!!」
 「我々を捨てたものを許すべからず……我々を裏切るものを認めるべからず...」
 田中の声に賛同するように、無名の草達が怨嗟の声をあげる。思わず、身を竦める美加香。
 「これ以上の問答無用!! くらえ、「壁縫い」!!」
 田中が右手を高々と挙げると同時に、3人の身体が動かなくなる。
 「!?」
 「な、何!!」
 「こ、これは!?」
 ピクリとも動かない体に、驚愕する3人。
 「やはり、さすがのSS使いもこの技には敵わないようだな。」
 嘲笑うような、落ち着いた声でそんな3人を見つめる田中。
 「き、貴様、何をした!?」
 秋山が叫ぶと、
 「何も?」
 と、田中が笑う。
 「ああ、私の体が!?」
 見る見るうちに平面世界の遠近法の法則に則られ、身体が縮んでいくdye。
 「うわぁ! 殴られたり半殺しにあうのはいいけど、こんなのは嫌だぁ!」
 秋山の身体も、背景の一部へと化していく。
 「なっ!? なっ!?」
 「くっくっく………お前らが今日からちょい役になるのだ!!」
 「ど、どうしてこんな真似を!!」
 最早喋ることもままならない二人に変わって、美加香が田中を詰る。
 「私に逆らうものは……みんなそーなる。」
 もし今いるのが田中に従う全てだとしたら草の半数以下の数だろう。
 もしかしたら他の皆もこうして封印されたのかも知れない。
 「昔の縁だ。お前には最後のチャンスをやろう。」
 そう田中が勿体つけたように美加香の顎を手で触る。
 嫌悪感から鳥肌がたちそうになるが、体どころか指一本動かせない。
 「だ……誰が...」
 だからそう言うだけで精一杯だった。
 「そうか……残念だな。」
 さして残念そうでもない顔をして田中がそう言うと、
 「忠誠には愛を!! 反逆には罰を!!」
 などと背後の連中が叫ぶ。
 「闇に生まれ、闇に死す...」
 「草の掟を汚した裏切り者...」
 その恨みがましい声が響くなか、美加香は覚悟した。
 「赤十字美加香…元雅史のラブレターを渡す少女A! そのまま背景に溶け込んでしまうが
 いい!!」
 「ひなたさん...」
 美加香の瞳から涙が一滴、落ちた瞬間、その場の空気が動いた。

 「風の吐息(ウインド・ブレス)!!」
 一瞬後、田中を初めとした草反逆軍が吹き飛ばされる。

 「え…!?」
 目を閉じていた美加香が恐る恐る目を開けると、華奢な背中が自分を庇うように立っている
のにきづいた。

 「き……貴様は!!」
 辛うじて気を失わずに立ち上がろうとする田中だが、力が入らないらしく、膝立ちで睨み付
ける。
 「………」
 だが、彼女は両手を胸の前に組んだまま、静かに顔を上げて呟く。
 「まだ……終わらないのですね……まだ………」
 その表情は悲しみに満ちていて、それでいて毅然としたものを感じさせた。
 「あなたには失望したわ……」
 田中の背後から、一人の女性がゆっくりと歩いて近付いてきた。
 「小林さ…」
 慌てたように振り返る田中。
 が、彼女はその頭を鷲掴みにして、
 「あんた達にも、失望したけどね。」
 力を込める。
 「あああああああぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」
 見る見るうちに、田中の顔色が変わっていく。
 「やめっ………!!」
 慌てて止めようとしたが遅かった。


                   ☆☆☆



 「何だ………久々野かRuneが来ると思っていたのだが……お前が来たのか。」
 明らかにその言葉には落胆と言うより、挑発気味の嘲笑を浴びせかけていた。
 「ご期待に添えなくて悪かったわね。最近のあたしの機嫌は最悪なんだ。手加減するつもり
 ないからね……」
 大袈裟に指を鳴らす梓の前には、かつて敵対した事のある中年ヤクザがいた。


                   ☆☆☆


 「な………何てことを………」
 「解放してあげたんだから………感謝してくれてもいいんじゃないの。」
 壁に封印されていた3人を容体を確かめるように屈み込んでいた美咲に、彼女はあっけらか
んと言う。
 「生きながら永遠の苦しみを味わうよりも………ねぇ。」
 ガラスの剣を片手に持って、意味ありげの微笑みを美咲に向ける。
 「だからって………お前にその権利はないっ!!」
 「!?」
 いつの間にか背後にいたきたみちが刀で詩の教師に斬りつける。
 「な!?」
 「成敗っ!!」
 更に現れた佐藤昌斗がその喋る刀を突きつける。
 「くっ!?」
 何とかガラスの剣でその攻撃を防ぐ小林。
 「きたみち君に佐藤君……どうして?」
 気を失った美加香達を床に寝かしつけながら、美咲が呟く。
 「綾香さんに頼まれまして!!」
 きたみちが斬り結びながら、美咲の疑問に答える。
 「くうっ!!」
 「まだまだまだぁっ!!」
 小林は二対一ながら、互角かそれ以上の剣捌きで二人の攻撃を防ぐ余裕を見せる。
 「くそっ!!」
 「しぶといっ!!」
 「SS使いだから特別なんて………思い上がらないことね!」
 そして、二人の呼吸の乱れを突いて、きたみちの刀をかわし、佐藤の方へ背中を蹴る。
 「んっ!?」
 「ぐぅ!!」
 ぶつかった二人に、
 「死になさい!!」
 まとめて串刺しにしようとガラスの剣を突き刺そうとする。

 が、その時、
 「これ以上、好き勝手はさせないんだからっ!!」
 「よくも美加香お姉さんを虐めたなぁ!! ただじゃすませないんだから!」
 と、わるちとルーティが現れて、そのガラスの剣を砕く。

 「こ…これは……どういうこと!?」
 折れた剣を見つつ、この脈絡のない顔ぶれを見て、悪寒を覚える小林。


 「あなたはタブーを犯しました。してはいけないことをしました。」
 静かで、抑揚のない声がその小林の背中から聞こえる。
 「ですから...」
 「くっ!!」
 歯がみしつつ、振り向こうとした彼女よりも一瞬早く、

 「聖なる疾風(ホーリー・ストーム)!!」

 美咲の声が校内に響いた。 

                   ☆☆☆


 「全く……皆、無理をする...」
 葵に肩を貸して貰いつつも学園前までやって来た久々野は、誇らしげに吉川を肩に担いだ梓
を先頭に、気を失ったままの3人をそれぞれ背負っているきたみち、佐藤、わるちに小林の足
に紐をつけて引きずっているルーティ、そして美咲らとその他大勢の草達を、日曜日の学園に
照らしつける落陽の元、苦笑しながら出迎えていた。


                                                  <END>・・・かな?
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(呼び捨てにしてしまった皆様、本当に申し訳ありません。使ってしまって御免なさい。)
登場人物の多い小説は苦手です。迷惑をかけたお詫びです。悪気はなかったんです。すみませ
ん。それと、あのままやめてしまうのは悲しいので………続き、あなた様が書いてくれると嬉
しいです。