テニス大会エントリーL「あの頃のように」 投稿者:くま(九条和馬)
「テニス、か……」
 少年は掲示板に貼られたテニス大会のポスターを見ながら呟いた。
 彼にとって、『テニス』は特別な意味を持っている。

 その人は憧れだった。
 『天才』と称されたテニスプレーヤー。
 思い人の兄。
 いつか、彼のようになりたいと思っていた。
 でも……今はもう、届かない。



 テニス大会エントリーL「あの頃のように」



 放課後のテニスコート。
 テニス大会に向けて練習する生徒たちで溢れかえるそこに、少年はいた。
 九条和馬である。
「あれ、珍しいね」
「あ、はるかさん。……久しぶりにテニスでもやろうかと思って」
 和馬は、後ろから声を掛けた河島はるかに言った。
「ん。本当に久しぶりだね」
「最後にやったのは、もう何年も前ですね」
「じゃ、ちょっとラリーしてみる?」
「ええ」
 和馬はそう言ってラケット入れからラケットを取り出した。
 彼がマイラケットを持っているのを不思議に思う人もいるかも知れない。
 これは、彼が中学生の頃にはるかの兄から譲り受けたものである。
 そして、彼からテニスの指導を一通り受けていた。
 本人たちは遊びのつもりであったが。
「じゃ、いくよ」
「どうぞ」

 ばしっ、ぽーん、ぽーん。

 ぽーん、ぽーん。

 ぽーん、ぽーん。

 ぽーん、ぽーん。

 …………。

 ラリーは数十分続いて終わった。
 本来ならもっと長く続けられるはずだが、和馬は長時間の運動が苦手なので休憩を入れ
ることにしたのである。
 すると、
「えー、もう止めちゃうのー?」
「もっと出来そうなのに……」
 そんな声が聞こえてきた。
 いつの間にか二人のプレイしていたコートの周りには、人垣が出来ていたのである。
 観客たちは大きく三つに分けることが出来る。
 まず第一に、二人に見入っている者たち。
 二人のフォームはかなり綺麗である。
 長くテニスをやっているはるかはもちろん、はるかの兄に教わった和馬も十分さまにな
っている。
 第二に、二人のプレイを研究する者たち。
 二人のショットはかなり正確である。
 後半は左右に打ち分けたりしたが、前半はボールがほとんど同じ軌跡を描いていた。大
会で優勝を狙っている者たちが、その動きを参考にしようと思うのも無理はない。
 そして、第三に……
「九条くん、ちょっといいかな?」
「はい?」
「俺たち、三年生で温泉旅行に行こうと思ってるんだけど、君も参加しないか?」
 そう、温泉旅行を企画している三年生である。
 振り向いた和馬の目の前には、菅生誠治がいた。
「ええ、いいですけど……どうして突然?」
「うん、旅行費用を浮かせるためにテニス大会に参加するんだ。それで、君たちの腕を見
込んで……ね」
「旅行は人数が多い方が楽しいしな」
 誠治の後ろにいた橋本も言う。
「テニス大会か……どうします?」
「ん。いいよ」
 和馬に尋ねられたはるかはあっさりと答えた。
 元々、二人とも参加してみたいと思っていたのだろう。
「じゃ、参加します」
「うん。それじゃあ、よろしくな」


 その日のうちに、九条和馬と河島はるかが大会にエントリーされた。


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 ども。
 そう言うわけで、テニス大会に九条和馬&河島はるかでエントリーします。
 なんかテニス強そうに書いてますが、練習と試合は別です。弱点も多いですし(笑)。
 作者自身は、テニスは授業でやった程度なのであまり詳しくないです。
 なので、描写が変かも(笑)。
 というか、文章書いたのも久しぶりなんですよね。
 ……読み返したら、なんか違和感が(汗)。

 本当は過去編を先に出したかったんですが、書き上がらなかったのでちょっと補足。
 和馬は小学生の時に冬弥と出会いました。その縁ではるかや彰と知り合ったと言うこと
にしています。
 詳しい話は(いつ書き上がるか分からない)過去編で書きたいと思います。

 で、Sageさん提案の温泉旅行にも協力します。
 ……って、もしかして三年生同士のチームじゃないとダメですか?
 でも、引率の先生はいた方が……ねえ?
(よく考えたら三年女子ってそんなに人数いないからいいのか)


 それでは、また。