VSジン・ジャザムLメモ「正気かと聞くのは止めて下さい僕は正気です」  投稿者:くま(九条和馬)
 ドタバタドタバタドタバタ……。

 いつもと同じ昼休み。
 騒がしい足音が廊下の両側から聞こえ、とある教室の前で止まる。

「……お前ら、校内巡回班だな?」
「……エルクゥ同盟ですね?」





VSジン・ジャザムLメモ「正気かと聞くのは止めて下さい僕は正気です」





「この教室内でダーク十三使徒がテロ行為を行っているという情報が入った。お前らは帰
れ」
「そういうわけには行きませんよ。だって……」
 教室の前で睨み合うエルクゥ同盟リーダー、ジン・ジャザムと巡回班班長、きたみちも
どる。
 不意に、顔を伏せ気味にしていたもどるの目に真剣な光が宿る。



「僕たちだってたまには目立ってみたいじゃないですか!!」(ばばーん)



 もどるの目は真剣だった。
 いや、むしろ真剣すぎた。
「お前ら……」
 ジンは泣いていた。
 あまりに真剣な瞳の輝きが眩しかったから。
「よし、それではチャンスをやろう。俺と戦って勝つことが出来たならば、その時は心置
きなく取り締まるがいい!!」

.
.
.

((((((なんでだー!!))))))
 もどる以下、巡回班のメンバーは心の中で突っ込んだ。
 エルクゥ同盟のゆきや風見ひなたも突っ込んだ。
 ただ、秋山登にとってはどうでもよかったらしい。
「ほれ、代表者を出せ」
 ジンの言葉に、円陣を組んで相談を始める巡回班。
 ちなみに、副長であるきたみち靜は初等部で友達と遊んでいるので来ていない。
「猫町君……どうですか?」
「そんな、私なんて……八希さんは?」
「え? 僕が……ですか? 流石にジンさんが相手じゃ……。八塚くんの方が……」
「いや、俺よりもやっぱり、もどる先輩に……」
「そうか……。ここはやっぱり」
「「「やっぱり?」」」
「ジャンケンだろう」
 その言葉を聞いた瞬間、みんな一斉に嫌そうな顔をした。
 単純に四分の一の確率で自分に責任が回ってくるのは嫌なものである。
「出っさなっきゃ負っけよ〜、ジャンケン、ポン!!」
 もどるの号令で渋々と手を出す班員たち。
 そこへ……
「何やってるの?」
「あ、くま先輩」
 九条和馬がのんびりと歩いてきた。
 走ると倒れかねないので自粛しているらしい。
「実は今、ジン先輩と戦う代表者を……」
 八塚崇乃が事情を説明しようとしたとき。
「あ〜っ!!」
「どうしたんだい、八希君」
「出さなかったから九条さんの負けです!!」
「ああ、負けなんだ」
「納得するなっ!!」

 かくかくしかじか……と経緯を説明すると、和馬は
「いいよ」
 と言った。
 何か悪戯を思い付いた子供のような笑顔だったが、それに気付く者はいなかった。
「おーい、代表者は決まったかー?」
 ジンから声がかかる。
「はーい」
「それじゃあ始めるか!」
 その言葉とともに、二人は廊下で対峙した。

 その頃。
「ねえ、こんなことしてていいのかな?」
「別に構わないでしょう。急がなくても十三使徒は逃げませんし」
「……逃げると思うよ」
 ゆきと風見は、飽き始めていた。


「九条か。覚悟はいいな?」
「ええ、まあ」
「それじゃあ行くぜ!! ロケットパンチ・ダブル!!」
 ジンのロケットパンチが火を噴いた。
 当たる。
 見ていた誰もがそう思ったとき、和馬の体がユラリ、と揺れてさっきまで和馬がいた場
所を鋼の拳がすり抜けていった。
「今度はこっちから行きますよ」
 和馬はそういうと、左手を耳に当てて右手を前に突き出した。
「あの構えは!! みんな、耳をふさげっ!!」
 突然大声を上げたもどるに、何事かと顔を向けるギャラリーたち。
 とりあえず耳をふさいでみる。
 その後すぐに。

 キキキキキキキキキキキキキィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜。

 黒板を爪でひっかくような音が辺りに木霊した。
 じりじりと精神を蝕んでいく悪魔の音が、空間に染み渡っていく。
「やはりな……。これは九条君の必殺技(?)、『嫌な音』だ!!」
「知ってるんですか、もどる先輩っ!! ……っていうか、そのままじゃないですか!!」
「ああ、そのままなんだよ!! 音を操る能力を利用して、人間にとって嫌な音を出す。
ただそれだけなんだ!!」
「はっ!! 単純だから、むしろそれが恐ろしいということですか!!」
「そう、この攻撃を完全に防ぐことなど不可能に近い!!」
 なぜだか知らないが盛り上がっているもどると崇乃はおいといて、ジンはと言うと……。

「★¥◎§〒♪□♀∇●@◆∃♭▽♂〆∀$%○△#▼&■☆〜〜〜〜〜!?」

 床に転がってもだえ苦しんでいた。
 無理もない。
 ロケットパンチを放ったばかりの両腕には、肘から先がなかったのだから。
 二の腕でなんとか耳をふさごうとするものの、どうにもうまくいかない。
 ゴロゴロゴロゴロともだえ苦しむ様は、だだっ子を想起させて微笑ましかった。

 だが、ギャラリーがニヤニヤしている理由はそれだけではない。
 一方の和馬のポーズもまた、情けなかったのだ。
 それが信じられないという人はやってみよう。
 左手を左耳に当て、ふさぐ。
 次に、右手の手のひらを前にして突き出す。
 ……やってみただろうか。
 やった方には、もれなく情けない気分が沸き上がってきたことと思う。

 そして、しばらくして。
 ジンは、動かなくなった。
 どうやら失神したらしい。
「やった!! 九条君の勝ちだ!!」
 和馬に駆け寄る巡回班メンバー。
 だが、何か様子がおかしい。
 いつの間にか『嫌な音』も止まっている。
「九条……君……?」
 もどるが声をかける。
 すると。

 ツツーーー……。

 和馬の唇の端から一筋の血が流れ、

 ドサッ。

 和馬は倒れた。




 後日。

 和馬は引き分けでいいと言ったのだが、ジンは
「肉を斬らせて骨を断つ、その心意気に免じて勝ちをくれてやるよ」
 と言って、笑った。



 追記:その日、ダーク十三使徒は『嫌な音』を聞いて気分が悪くなって帰ったらしい。

 追記2:秋山登が新しい快楽を見つけたそうな。


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 ども。
 そういうわけで書いてみたんですが……認識に誤りがあるかも知れません。
 巡回班の構成員ってこれでいいんでしたっけ?(爆)
 間違ってたらすみません。
 チョイ役になってしまった方もすみません。

 『嫌な音』ですが、設定担当者も最近まで忘れていました(汗)。
 使ってる本人は片耳しかふさげないので自爆技なんですね。
 しかも、ポーズが格好悪い(笑)。
 ちなみに耳栓を使うのは邪道です(爆)。

 「戦闘の理由付けは要らない」そうですが、ないと落ち着かないんで書いてみました。
 なによりも、個人的な理由でやり合う組み合わせじゃないので、いきなり戦ってると気
持ち悪いです(笑)。

 書いてから気付いたんですが……。
 バトルですか、これ?
 まあ、俺はリアル系じゃないんで(爆)。
 非公式な巡回班Lって気もしないでもないです。

 それでは。