ある日の午後。 剣道場に入った俺……八塚崇乃は見てしまった。 ”それ”を。 『剣道部殺人事件』《ババーン!!》(←SE) 誰もいない道場。 その真ん中に……、 人が倒れている。 うつぶせに。 「やだなあ、くま先輩。また調子悪いんですか?」 とりあえず顔をこちらに向けようと、肩に手をかける。 ……冷たい。 「冗談はよして下さいよ。練習始めますよ?」 言いながら心音を確かめる。 ……聞こえない。 「あの、アレでしょ? 警察呼んだら起きるオチでしょ?」 最後の望みをかけて、脈をはかる。 ……わからない。 「起きろやコラ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」 逆ギレした。 一面に広がる血の海で。 「――コンニチハ」 時間が止まった。 どう見ても、俺が殺したようにしか見えない。 ゆっくりと後ろを振り向く。 「――ドウカシマシタカ?」 「……いや。こんにちは、Dガーネットさん」 どうやら気にしていないようなので挨拶を返すことにした。 精一杯の笑顔で。 ああ、これからどうしようか。 さすがに先輩をこのままにして練習をするわけにも行かない。 邪魔だし。 あ。 天井からヒモが垂れ下がっている。 『魔法のヒモ』という奴である。 いっぺんやってみたかったんだよね、これ。 「ふむふむ。タライとか一斗缶とかあるんだ……お、鉄砲水?」 グイッ。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。 「なんだ?」 「――ナンデショウ?」 ごばしゃあああああああああああああああああああああっっっ!!!! 激流の中、派手に吹っ飛ぶ先輩の姿を見た気がした。 きりもみ状態でどこかへ飛ばされてゆく先輩の姿は、なぜか神秘的で、なぜかうらやま しかった……気がした。 ……気がしただけだよね? 気付くと俺は道場から200mばかり離れたところに流されていた。 思〜え〜ば 遠〜くへ 来た〜も〜んだ〜♪(古い) ……道場に戻ろう。 ……道場はきれいになっていて、Dガーネットさんもちゃんと戻ってきていた。 床が水浸しになって、先輩が行方不明になったが。 「おお〜い、川で誰か流されてるぞ〜!!」 「今どき土左衛門か!?」 遠くでそんな声が聞こえたような気もするが、空耳だろう。 いやもう絶対。 「――ドザエモン? 江戸時代ノ力士デスカ?」 「なんで知ってるの、そんなこと?」 ああ〜、えっと……。 海の男は死んだら海に還るものです。 先輩、よい旅を。 以上。 さ、練習練習。 「お、今日はDガーネットも来てるのか」 「来るの遅いぞ、よっしー」 「あれ……? 崇乃、くま先輩は?」 「あ、え〜と。また調子悪いんでない?」 「ふ〜ん」 嘘は言ってない。 ――次の日の朝―― 「八塚くんおはよう〜」 いつの間にか背後にくま先輩がいた。 「先輩、昨日あの後どうなったんですか?」 「ん? あの後ってどの後? 朝起きたら行きつけの病院にいたけど」 「行きつけ? かかりつけの間違いじゃ……」 「霊安室に運ばれるだけだから」 「な、なるほど」 俺はまた知らなくてもいいことを知ってしまったらしい。 **************************************** ども。 タイトルと中身合ってないですねえ。 前に書いた三つが自己紹介的であまり派手に死んでなかったんでこんな話になりました。 いや、本当は仮死状態なんですけどね。そういう病気なんで。 なんかこのまま進むと勘違いされそうなんで釘刺しときますが、不死身じゃないです。 ナイフで刺されたら下手すりゃ死にます。当然。 なんでまた八塚さんの一人称かって言うと、個人的に書きやすいから。 「九条和馬の一人称」だとギャグにならんのですよ。あんまり。 あ、やばい。八塚さん逆ギレしてますね。(言い訳考え中……失敗) ……忘れてました、怒れないの。でも、今の設定では明確に書いてないからちょっとく らい大丈夫ですよね。ね? む。Dガーネットの代わりにティリアが出てきたらどうだったかな、と書き終えてから 思ったり。 それでは、また。