Lメモ『ある日の葛田・日常編』「愛のこりーだ ――THE PINK SIDE――」 投稿者:葛田玖逗夜











          Lメモ『ある日の葛田・日常編』

       「愛のこりーだ ――PINK SIDE――」










 時は昼休み。
 中庭の片隅で、二人の男が対峙していた。

「…とゆーわけでっ!!…今日こそは、僕の愛を受け入れてもらうよ!!…」
「あのなー、お前も薔薇の趣味は卒業しろよ。
 そろそろ忘れかけられてると思うぞ、この設定」
「…いいんだいっ、いいんだいっ!…
 …僕はごーいんぐへみんぐうぇいなんだいっ!!…」
「海にでも行くのか?」

 かたや薄汚れた学ランに身を包むLeaf学園の怪奇薔薇男・葛田玖逗夜。
 もう一方はその葛田になんだか想われちゃってるらしい犠牲者(?)・雪智波。
 すでに誰も知らないかもしれないが、二人はその師匠とする者――ハイドラ
ントとRune――たちの対立を受け、宿命のライバルって感じなのだった。

「…フッ…今までの僕と同じと思ってもらっては困る!!…
 …今日は新魔術を携え、いつもより当社比19.8%ほどアップだ!!…」
「その0.8%ってゆー端数が気にならんでもないな。あと、何がアップなんだ?」
「…そして、程よく死にかけたところを…」
「……ところを?」
「…最近、目覚め始めた新しい趣味…屍●するのだぁっ!!…(爆死)」
「イヤな人間さ加減に拍車がかかってきてるな……」
「…クックックッ…」

 げっそりとした顔で呆れ果てる智波を脇目に、葛田は構成を編み始める。

「――な、なに!?」

 智波は葛田の展開した魔術の構成に、目を見開いた。

 学園に行使する者も多い音声魔術は、展開された“構成”を術者の声で起動
する。
 したがって同じ能力者であれば、事前にその構成を見極めることでその効果
への対策も立てることが可能なのだった。
 故に、音声魔術士同士の闘いは圧倒的な力で敵をねじ伏せるか、あるいは相
手の隙を突く知略戦となる。
 だが、それは術の構造を読み取れてこそのものだ。
 そして、今葛田が放とうとしていたものは、智波の知ることがないものだっ
た――いや、その大部分には見覚えがある。
 時折目にすることもある、空間を圧縮し、そこに存在する物質諸共爆砕させ
るという一撃必殺の技である。
 だが、その構成に複雑に絡み合うようにして追加された見知らぬ紋様が、術
の効果にいかなる変化をもたらすものなのか。
 智波は背筋に冷たい汗が伝うのを感じ、最大級の防御魔術を望んだ。
 はたして、葛田はいったい何をやろうとしているのか。
 彼の驚愕を見抜いたか、葛田はにやりと目を細め、ついに魔術を開放させる。










「…犬よ!!…」

 わんっ

 明らかに犬の鳴き声と思われる音と共に、空間爆砕の魔術が智波に襲い掛かった!
 智波は、すかさず防御魔術の構成を解き放つ――





 ――までもなく、避けた。










「……あー、いちおう訊いてやるけど……どこが新しいんだ、この魔術?」
「…うん!…さすがはちなみん、いー質問だねっ!!…
 …これからの時代、やっぱり魔術にもオリジナリティーがなくってはいかんと思ったのだ!!…
 …いつまでも導師の猿真似ばかりでは進歩がないからねっ!!…」
「ほう」
「…この魔術の改良点とはっ!!…」
「ああ、改良点とは?」
「…何より、親しみやすい単語を使うことにより鳥頭の僕でも忘れにくいっ!!…」
「……ところで効果自体は変わってない気がするんだが」
「…なにいぃっ!?…ちなみんっ、君の耳は節穴か!!…」
「いや、穴でいーんじゃないか、耳の場合」
「…なんと、その単語に合わせた動物の鳴き声付きなんだぞっ!!…
 …これで、親しみやすさが倍・増っ!…
 …女の子たちの好感度パラメータもあっぷ間違いなし!!…」
「……気にしてたんだ」
「…いやー、ここが一番苦労したところでねー…
 …音声魔術で動物の鳴き声を出した人間なんて、音声魔術士の歴史始まって以来だろーな…
 …はっはっはっ…」
「まぁ、必要性がないからな」
「…とゆーわけで、次だっ!!…」

「…猫よっっ!!…」

 にゃー

 やっぱり、猫の鳴き声と共に雷撃がほとばしる!
 ――ちょうど、静電気くらいの威力のが。

 ひらり

「…くっ…さすがは我がライバルにして最愛の人…
 …こうまで、僕の新魔術が容易く退けられるとは!!…」
「どーでもいーが、余分なところに魔力を割いている分、威力落ちてるぞ?」

「…だが、次で決める!!…」

「人の話は聞けって」

「…鼠よぉぉぉっっ!!…」

 ちゅ〜

 そして、光熱波が……。

「やかましいわ」

 ずげしっ!!





 ちなみにこの新魔術、三日後には忘れてしまいました。










 ★ 数日後



 時は昼休み。
 今まさに二人の男が宿命の対決を迎えようとしていた。

「…またしても、新魔術開発っ!!…ゆくぞ、ちなみん!!…」

「またか」

 やれやれといった顔を隠そうともせず、智波はおざなりに言い放つ。

「…風よ!…」

 ひゅぅ〜

「…雲よっっ!!…」

 もくもくもく……

「…太陽よぉぉぉっっ!!…」

 ぴかー

 ひとしきり、魔術によって発生したそよ風と綿菓子くらいの雲、それに豆電
球サイズの太陽――のつもりなのだろう――を眺めた後、智波は重い口を開く。

「……だから、それがどうした」

「…心あらば教えてくれ!…なぁーぜ、この世の生まれたのかっ!?…」

「こっちが知りたいわ、ボケ」

 ごげしぃっ!!





 智波は、こんな馬鹿に付き合ってやる自分のお人好しさ加減にちょっぴり涙が出た。

「……うぅっ……本当にいい人なら、顔面に蹴りはいれないと思う……」










 ★ さらに数日後



 時は(以下省略)

「…そんなこんなで、今度こその新魔術っ!…ゆくぞっ!!…」

「あー、もうさっさと済ませてくれ、さっさと」

「…犬よ!…」

 わんっ!

「……なんだ、この前のと同じじゃないか?」

「…フッ…男子三日会わずば括目して見よ…だよ、ちなみん…?
 …ここからがこの魔術シリーズの真骨頂なのだ!!…」

「ふーん?」

「…猿よっ!!…」

 ききぃーっ

「…雉よぉぉっ!!…」

 けーん





「桃太郎か、お前は」

 どげしぃぃっ!!





 あとには、顔面にくっきり靴痕をつけ、倒れた葛田が残されるばかりだった。










                             おしまい





***********************************

 今朝、浮かんだ小ネタを勢いだけで上げてみました(笑)
 なんだか、山なしオチなし、ついでにタイトルにまで意味もなしな感じです
が、日常の一コマとゆー感じでお許しを。
 ってゆーか、こんなのがみれにあむな初投稿か、自分(笑)



★ で、前回のクイズの正解発表〜!!

 トリプルGさんの顔に生えた猫の模様は!!
 ――『三毛』でした。
 いや、根拠も何にもなくって、なんとなく書いている時に浮かんだイメージ
なんですけどね(笑)。



 さーて、なんだか、日常編に燃えまくっている近頃の自分です(笑)
 次は『瑠香りんとの出会い』でも書くかにゃー(今更かい)。
 ……って、おや?(爆)

 やー、ホントは解答用にもうちょい長めの日常編、書いてたんですけどねー(笑)
 なんだか、この小ネタに抜かれちゃいました(てへっ☆)



                         00/01/29





 ★ んでなんだか、カフェに来るまでに思いついた追加ネタ(笑)



 その1・初日後の出来事



 ぱちぱちぱちぱち……

「……ん……な、なんだ……?」

 智波の見事な前蹴りを顔面にあび、無意識の混沌をさ迷っていた葛田は小さ
な拍手に導かれ、現実へと帰ってきた。
 顔を上げる、と目に映ったのは小柄な緑髪の少女だった。
 ――たしかクラスメートで、名は……

「…なんだ、南極○号か…」



 ぴくっ

 その時、校庭の片隅を歩いていたセリスはただならぬ気配――とゆーか、マ
ルチ反応――を察知し、立ち止まった。
 それと共に邪悪な気配――ってゆーか、単なるマルチへの悪意――を感じ、
眉間に縦皺が三本ばかり、よらせつつ。



「…あー、なんか用か、○ッチ○イフ…
 …ってゆーか、そもそもなんで拍手してるんだ…?」

 元々、生き物万歳主義の葛田は、常日頃からHMに良い感情を持ってはいな
い。
 いや、むしろ見つけ次第いぢめ倒す!! ってな量見の持ち主だった。

「あ、はい。
 今の葛田さんの芸が素晴らしかったのでつい、拝見させて頂いてたんですぅ〜」
「……芸……?」
「ええ! 犬さんとか猫さんとかねずみさんの鳴きまね、とってもお上手でしたぁ〜」
「………………」

 ――『僕の芸術的魔術の、どこが芸だっ!?
    はったおすぞ、このチビコロモックがぁぁっっ!!』

 と、喉まで出かかった言葉に魔術を乗せ掛け、葛田は半眼で堪えた。

 今は昼休みで、人目につきすぎる。
「……ってゆーか、どこで狂信者どもの目が光ってるかわからんしな……」
 トラブル自体は望むところだったが、先ほどの智波との一戦でやや魔力も消
費し過ぎている。
 それに、袋叩きにされる描写が続いて、これ以上長くも書く訳にもいかなか
った。
 ちょっとした小ネタに過ぎないのに。
『……ってゆーか、それは作者の都合だか……』

「あ、あの〜、葛田さん?」
「……ああ?……なんだ……」
「今度はにわとりさんをやって欲しいんですけど……」

 無邪気に話しかけてくるマルチに、葛田は邪悪な微笑みで応えた。

「……ほう……ご本人がご希望なら、仕方がないよね……」
「わぁ〜、やってくださるんですかぁ〜!?」
「……ああ、もちろん……じゃ、そこ動かないでね……(にっこり)」

『……このまま火炎爆裂呪文でも浴びせ掛けちゃる……』

「……じゃあ、いくよ……」

 葛田は手早く、最大級の破壊力をもった魔術の構成を展開する。

 ずざああぁぁっっ!!

 と、そこへ駆けつけるセリス!

 葛田は深く息を吸い込むと、マルチへ向け魔術を――

「待ちやがれ、クズタァァァァァッッ!!」

 セリスは葛田の暴挙を食い止めるべく、葛田目掛けて飛び蹴りを見舞う!!

「…鶏よっっ!!…」

 ――開放した。










 こけこっこー

「…えっ…?」

 ぽん!

「どぇりゃあああぁぁぁぁっっ!!!!」

 めきょぉぉっっ!!










「わぁ〜、火の玉まで〜。すごいですぅ〜」
「……あ、あれ?」
「あ、セ、セリスさん!? ああっ、葛田さんがっ!?
 ひ、ひどいです。どうして、こんなことするんですか〜?」
「え、いや、あの、だってね。
 こいつがマルチに向けて魔術を放とうとしてしてたから、ほら、えっと……」
「うぅぅ〜、セリスってそんな人だったんですね!」
「ああっ、待ってくれ、マルチ! これは誤解なんだってば!!」
 ――たしかに、その通りだったが。
 セリスは慌てて、涙目で駆け去ったマルチの後を追い、校舎の中へと消えていった。





 そして……。
 ただ一人残された葛田は、首を構造上あり得ない方向へ向けながら、再び深
い眠りについていた。
 この日の午後の授業において、彼の姿を見た者はいなかったという。





 どーやら、変なクセがついてしまっていたらしい。










 その2・さらに数日後の数日後



 休み時間の廊下で、宿命のライバルがばったり顔を合わせた。

「…ああっ、ちなみん!!…ここであったが百年目!!…」

「ってゆーか、俺の意思と無関係に仕方なくクラスメートだから、顔ぐらいは
嫌でも毎日合わせてるんだが」

「…フッフッフッ…今日こそは、僕の魔術の…」

「ああ、何でもいーから早くしてくれ。次の授業に遅れちまう」

「…でわ、早速…行くぞっ!!…」

「ああ」

「…父よ!…」

 しーん。

「…母よっっ!…」

 しぃーーーん。

「…妹よぉぉっっ!!…」

 最後まで何も起きなかった。

「……なぁ、それって魔術なんだろーな?」

「……かーぜーの唸りに血が叫びぃーちからの限りーぶち当たるー♪……」

「一人で歌ってろ……」

 すたすたすた。

「……てーきぃはーじごくのーでぇーすとーろーんーーー……
 ……って……ううっ……ひどいよ、ちなみん……
 ……ツッコミもなしだなんて……(しくしく……)」





 なんだかすでに、当初の目的を忘れ去ってしまっている葛田だった。










                     ああ、無情って感じ(爆)