ガンマルさんおーえんLメモ 『ガンマル、がんばる』  投稿者:葛田玖逗夜




「…意識変革ウィルス…?」
「…ああ、そういうものを作ることは可能か?」

 その男の決意を秘めた表情に、葛田玖逗夜はややたじろぎながらも、元々それほど
あるわけでもないプライドを傷つけられたような気がしていた。
 クラブハウス練三階、生物部部室での出来事である。

「…フッ…遺伝子工学においては、この天下無双の生物部に…
 『可能ですか?』とは、また…随分なご質問ですね…」

 にやり、と葛田は笑う。

「ということは?」
「…ええ、勿論、できますとも…つまり、人の意識内の常識というものは脳に蓄えら
れている…それを選択的に改造してやるよーな指令を与えたウィルスを…」
「細かい理屈の話をされても、オレにはわからん」
「…と、失礼しました…で、どんな風に意識を改変すればよろしいんですか…?」

 葛田の言葉を受け、男は一枚のメモを差し出した。
 それをざっとながめながら、葛田の頭の中にはたちまちひとつのプランが組みあが
っていった。

「…ふむ…なるほど…」
「では、頼んだぞ」
「…ええ…これなら、一晩もあれば…」
「ううっ…これで、オレも『背景』の別称から脱却することが…」

 上級生らしきその男は、やや涙目でそれだけ言い残すと部屋を出ていった。

「部長、ホントにやるんですかぁ?」

 と、傍らでなにやらデータをとりまとめをしていた副部長の神無月りーずが声をあ
げる。

「…ああ…折角、学園でマイナーな我が部をわざわざ訊ねてくれたんだ…
 …断るのは礼儀に反するじゃないか…」
「とか言って…ホントは面白そうだと思っているだけクセに」
「…クックックッ…マイナー同士がお皿叩いてちゃんちきおけさ…ぷぷっ…」
「(相変わらず、なに考えてるのかわからない人だな…)
 ところで、部長…?」
「…ん?…なんだね、りーずくん…」
「今の男の人、誰だったんですか?」
「…さぁ?…そーいえば、記憶にないな…」
「部長の鳥頭はあてになりませんけどねぇ…」
「…うむ…名前を聞いたような気もするんだが、思い出せない…」
「でも、たしかにあんまり、学園でもみかけたことがないような…」
「……ふむ……誰だっただろうなぁ……」
「……誰だったんでしょうねぇ……」





 男は悩んでいた。
 思えば、愛する者に手を差し伸べることもできずに、遠巻きに見守ることしかでき
なかった彼の消極的姿勢が招いた必然的結果であるともいえたのだが、彼は、今悩ん
でいた。
 ――己の影の薄さに。
 既に我慢の限界であった。
 そもそも、あわよくば想い人とのはっぴーらぶらぶ☆らいふを過ごせると考え、こ
の学園に入学してきたことに後悔していない。
 しかし!!
 彼女とロクに話も交わすこともできないばかりか、皆から『背景』呼ばわりされ、
(もっとも、それは視力2.0で、尚且つ観察眼に飛び抜けて優れた人に限られてい
たが)今の彼は、確実にアイデンティティの危機を向かえつつあった。
 いつまでも、こーした現在の立場に甘んじているわけにはいかない!!
 このままでは、自分は何の為に片目を犠牲にしたのかわからなくなってしまう。
 そうまでして得た『名前』を、そして自分の誇りを…何もせずにただ失うわけには
いかなかった。
 その必死の願いが、彼をあの怪しげな連中の元へとまで足を運ばせたのだ。
 他人の力を借りるという点について、些かの後ろめたさを覚えないでもなかったが、
とにかくそれほどまでに必死だった。

「だが、これで明日からは…オレも、晴れて彼女と対等の立場に立てるのだ!!」

 夕日を背にした男の瞳に炎が宿っていた。











 翌日。



「おはよーガンマル♪」
「先生、おはようございますガンマル」
「おはよ〜ガンマル〜」
「ねぇねぇ、昨日のテレビ見たガンマル?」
「うん、面白かったよねぇガンマル〜♪」
「ヤベっガンマル! 宿題、やるの忘れちまったガンマル!」
「ああ〜、今日の体育憂鬱だなガンマル〜」



 だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだーーーーーーーーーーっっ!!

「砕神ぃガンマルーーーーーッッ!!!!」

 ばきょっ!!

 扉を打ち砕いて、一人の男が男が一年の教室に飛び込んできたガンマル。

「やい、葛田ガンマル! これはどーいうことだガンマルッ!?」
「…おや、昨日のガンマル…」
「『昨日の』じゃないガンマル!!
 オレには『ガンマル』ってゆーちゃんとした名前があるんだガンマルッ!!」
「…なるほど、なるほど…あなたのお名前でしたかガンマル…」
「って、んなことはどうでもよくてだなガンマルッ!
 事情を説明しやがれガンマルッ!!」
「…えーっとですねガンマル…つまり、お受けした依頼ですと『ガンマル』という名
 称を印象付ければ良いということでしたので…言葉による印象をつけるのが、まず
 手っ取り早いかと思いましてガンマル…」

(注:SageFactory内コンテンツ・投稿スペース          )
(  風見ひなた氏による『工作部名物妄想実験室Lメモ出張編!!』参照のこと)

「うがあああぁぁぁっっガンマルッッ!!」
「…なんか、違いましたかガンマル…?」
「でぇぃっ、その割にはなんでみんな普通通り平然と会話してるんだガンマルッッ!?」
「…ああ、それは…大騒ぎになって、生物部が怪しまれるよーなことになっても困る
 んで、無意識のうちに実行するよーな仕組みにしてみたんですガンマル…」

 ずげしっ!!

「って、それじゃあちっとも目的果たしとらんやんけガンマルッ!!」

 葛田は、机を頭突きで真っ二つにへし折ったあと、そのまま水飲みダチョウを思わ
せる前屈の姿勢のまま、床下に沈んだ。





「はい、みんな席についてガンマル〜。授業を始めるぞガンマル」
「起立ガンマル〜」
「礼ガンマル〜」
「着席ぃガンマル〜」
「はい、それじゃあテキストの56ページを開いてガンマル」





「今日こそ決着をつける時だガンマルッッ!!」
「――そのセリフ、聞き飽きましたガンマル」
「ロケットパァァァァァァチッッガンマルッッ!!」
「――サウザンドミサイルガンマル!!」





「どーも、なんか引っかかるんだよなぁガンマル〜?」
「浩之ちゃん、どうしたのガンマル?」
「いや、どうも今朝から、口調がなぁガンマル…」
「浩之、具合悪いのガンマル? なら僕と保健室へ…フッフッフッガンマル…」
「いやぁガンマル〜ッッ! ダーリンはわたしと保健室に行くのガンマル〜!」
「誰が保健室の話をしてるかっガンマルッッ!!」
「あかり様も大変ですねぇガンマル〜」
「ふふふ、もう慣れたよガンマル」





「あ、ひなたさん、一緒にお弁当食べましょうガンマル♪」
「断るガンマル。僕はまだ、死にたくありませんガンマル」
「うぅっ、ヒドイですガンマル〜」
「とゆーわけでだガンマル。目指すは第1購買部だガンマル!!
 行きますガンマル、鬼畜ストライクガンマルッッ!!!!」
「みぎゃあああガンマル〜〜〜〜〜ッッ!」





「待ってくれ、梓ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあガンマルッッ!!」
「梓先輩ぃっ、愛してますガンマルぅぅぅ〜〜〜〜〜!!」
「もう、あんたたち、勘弁してよガンマルぅぅ〜〜〜!!」





「マルチは僕と一緒に掃除するんだガンマル!」
「いいえ、私と掃除するんですガンマル!」
「あぅ〜、私の為にケンカしないで下さいガンマル〜」
「そうです、みんなで仲良くひげでもいかがですかガンマル?」
「「ひげは黙れガンマル」」
「あぅガンマルですぅ〜」





「あなたにならキャトルミューティレーションされても本望ですぴちぴちガンマル!」
「……あのガンマル」
「さぁ、麗しの君ガンマルよ!
 あなたの気高い魂の虜、この私めよりのプレゼント、お受けとり下さいガンマル!!」
「……いえ、肉の塊差し出されてもガンマル」
「…いるかと怪盗が相手じゃ、太刀打ちできないしガンマル(しくしく…)」
「……私、宇宙人じゃありませんガンマル!(フィーンフィーンフィーン…)」
「「「宇宙人ですガンマル」」」





「まだだガンマル! ここからが本当の闘いだぜガンマルッッ!!」
「――強がりもほどほどにして、いい加減に諦めたらどうですかガンマル」
「うるせえガンマル! 行くぜ、ゲッタードリルガンマルッッ!!」
「――オプティックブラストガンマル!!」





「…? 姫、そんなところで何していらっしゃるんですかガンマル?」
「……あ、とーるくんガンマル」
「ぐはぁぁぁっ、落ちるガンマルッッ!?」
「わぁ〜い、とーるさんが落とし穴に引っかかったですガンマルぅ〜」
「……あ、水野くん、そこにもガンマル…」
「うきゃぁガンマル〜!?」
「……落とし穴があるよガンマル(ニヤリ)」
「え〜ん、へびさんがニョロニョロするですガンマルぅ〜」
「……水野くん…電波、届いたガンマル?」





「また、迷子になっちゃったよガンマル〜」
「どこをどう間違えたら、こんな所に辿りつけるんだガンマル…」
「――周囲の地形から、ここはニューギニア高地・イリアン=ジャヤ大洞窟だと思わ
 れますガンマル」
「なんで、途中で止めなかったんだガンマル…」
「――ここに向かいたかったのかと思いましたガンマル」
「…今日中に帰りつけるかなガンマル…」
「――ソウ言エバ、夕飯ノ買い物スルノヲ忘レテイマシタガンマル」
「マイゴガンマル、マイゴガンマル」





「俺の愛を受け止めてくれ、梓ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあガンマルッッ!!」
「梓先輩ぃっ、待ってぇぇぇぇぇぇぇぇガンマルぅぅぅ〜〜〜〜〜!!」
「そんなものいらないし、待てないわよガンマルぅぅ〜〜〜〜〜〜!!」
「(かちっ)おお、音速の壁を超えたでおじゃるガンマル」





「セリオさーん、よろしかった僕とドライブに行きませんかガンマル?」
「うん、天気も良いしガンマル。九十九里浜にでも釣りに行きましょうか、三人でガンマル」
「あ〜、ぼくもセリオさんと一緒に行くガンマル〜!」
「今の季節だと何が釣れるんでしょうかガンマル」
「そうですねぇ、釣り糸と一緒にひげなんてたれてみるのもよろしいですよねガンマル」
「「ヒゲはいらんガンマル」」
「…ちょっとくらいならいいかもしれませんねガンマル」
「うん、似合いそうですよねガンマル」
「「止めて下さいガンマル」」
「うぅっ、セリオガンマル…すっかり立派になってガンマル…」





「フッ…なかなかいい攻撃だったぜガンマル」
「――ついに、あなたまで秋山さん化してしまいましたかガンマル」
「減らず口を叩けるのもここまでだぜガンマルッッ!! 食らえ、とどめのガンマルッッ!!」
「うおおおぉぉぉぉぉぉっっ、ジンんんんんんんんガンマルッッ!!」
「…照準変更、塵となれぇガンマルッッ!!
 ナイトメア・オブ・ソロモン・ガンマルッッ!!」
「――あのスピードで直角ターンとは見事ですが、ファイナルガーディアンガンマル!!」
「合体攻撃か、イカスぞガンマルッッ! 85点だガンマルーーーーーッ!!」





「かえでぇぇぇぇぇぇぇぇガンマルッッ!!」
「しずかぁぁぁぁぁぁぁぁガンマルッッ!!」
「木風ぇぇぇぇぇぇぇぇぇガンマルッッ!!」
「笛音ぇぇぇぇぇぇぇぇぇガンマルッッ!! ティーナぁぁぁぁぁぁぁぁガンマルッッ!!」
「…叫べばいいというもんでないと思うぞわんガンマル」
「そうだ、そうだひひんガンマル」





「故意も悪意もユウヤにお任せガンマル♪
 魔法少女エルクゥユウヤ、素敵に巨大に登場ですガンマルミ☆」(注:今回は巫女服)





「魔法老女セバスゥナガセ、ご奇態どおりに惨状でござ候ガンマル♪」(注:いろ違いおそろ)




「HAHAHAHAァ〜〜〜〜〜ッッ、美奈サン、ハッピぃ〜でスかガンマル〜?」










「うがおおおああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁガンマル〜〜〜〜〜ッッ!!」



 ぐしゃ。



「おい、綾香金貸してくれガンマル」
「って、あんたねぇガンマル」
「そーだぞガンマル。貴様には男のプライドというものはないのかガンマル?」
「ん、なんだガンマル?」
「どうした、ハイドラントガンマル?」
「今、何か踏んだよーな気がしたんだがガンマル…って、待ってくれ、綾香ガンマル!」
「もう、これからトレーニングなんだから、ついて来ないでよガンマル!」



「…く、くく…駄目押しかガンマル…」





 なお、このウィルスによる脅威も三日で去ったが、その効果がなくなってから反動
で、ガンマルの印象は以前より更に薄くなってしまったという…。
 めでたし、めでたし。



「ちっともめでたくねえぇガンマルーーーーーーーーーーッッ!!!!(血涙)」










                               了





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 …以上…オソマツでしたガンマル…(笑)
 …いや、チャットで流行ってたんですけど、ヤケに語呂がいーんですよ、これが…(笑)

 …あ、タイトルは「ガンマルさん背景化おーえんL」でした…(爆)
 …がんばれ、ガンマルさんガンマル…☆

 …あ、一応、ご本人に了解は取ってありますんで…(笑)
 …あと、風見ひなたさん、ネタパクリっぽくてすみません…m(__)m