Lメモ「夜のスィンガー」 投稿者:葛田玖逗夜
Lmemo“NIGHT SWINGER”
僕は、夜をさまよっている。

きらびやかなネオンライト。

「……そうやって……」

また今夜も荒ぶる獣たちの声が聞こえる。

人の心に棲むケダモノたちの声なき声が。

路地裏。

すえた臭い。

そして、鮮烈な血の匂い。

「……何を忘れようとしてるんだ……?」

僕は彼と会う。

罵声。

走る銀光。

死んだような眼。

「……何かが足りないこの世界……」

いや、死んでいるのはそれを映すぼくの瞳の方なのか。

「……足りないものは……」

数人分の血溜まりの中に佇んでいた男。

「……血の臭い……」

僕らの身体を走るもの。

……みんなそうやって、自分に足りないものを求めているんだ……

切り刻まれた肉。

僕にだけ聞こえる声。

夜の顔。





 いつものように、僕は街を歩いていた。
何をするでもなく、ふらふらと歩く。
声なき声に導かれるようにして。
不夜城の街の灯火の下をゆく。
星の見えない、薄明るい空を見上げながら。

……ここには何もない……

新しい出会いを期待して?

「……いや、違う……」

群れをなして行き過ぎる赤ら顔の男たち。



「……僕は何も求めちゃいないんだ……」



――嘘さ



気がつけば、紅く霞んだ冷たい光を放つ刃を握り締めた男が目の前に立っていた。
彼の背後で小刻みに震える肉塊たちにまでは気は回らなかった。
薄闇の中で、血の臭いだけが激しく香っている。
酔ってしまいそうなくらいに。

「……あなた……名前は……?」

目線が合う。

読みきれない僕の表情にたじろいたか、ポツリと男はその名を口にした。

「……外人か……?」

「いや、違う…っていうか、それはふれちゃいけない“お約束”だろう」

――偽りの魂に括られた夜の獣が、ここにもいた。

「……君に相応しい居場所があるんだ……」

男は殺気をはらんだ瞳で僕を静かに見つめ返している。

「……そこでなら、何か見つけられるかもしれないんだ……」

――嘘だよ。

そうやって僕は、“隙間”を埋めているんだ。

退屈な日常と

「……僕とおいでよ……」

まったくくだらない自分の生き方と

少しだけ男の顔が歪んで見えたような気がした。

吐き出し疲れた心。





その後のことは良く知らない。

一度、彼とすれ違った。

彼は笑っていた。

心の闇など、まるであそこに起き忘れてきてしまったかのようにあっけらかんと。

女の子と一緒だった。

僕も笑っていた。

今は光の時間なのだし。



「……学園へようこそ……」



僕などまるで眼中にない彼に、すれ違いざまそんな言葉が口をついて出た。

少しだけ先にたどりついていた者から、君に送る言葉。

そうやって、僕も呼ばれてきたのだから……

そうやって、いましばらくは楽しんでいるがいいさ……



                            了



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 えっと、このような短編にはあまりにおこがましいのですが、あ
と書きです。

 一応、名前こそは出ていませんが、人間関係設定フォローのつも
りもありこんなん書いてみました(汗笑)。登場人物は僕とその誰
かさんだけです。今を遡る事数ヶ月前、その方が試立Leaf学園
にいらっしゃる前にこんなことがあった、ってな感じを僕の視点で
書かせていただきました(説明しなきゃなならんようなもの書くな
なんて声も自分の中でしきり(汗笑))
 結構、自分ではノって書けました。
長さもあれですが、僕としては着想〜執筆までが「朝から晩まで」
という最短記録です(他のは全て未完と言う話もある(笑))
 タイトルの元ネタがわかった方、タイトルとなった曲のイメージ
とはあまりに裏腹な内容ですが、勘弁してね(笑)。
 さらに、あまりにわかりにくいようなので、その方には失礼です
が…(汗)

問題:さて、もう一人の登場人物とは一体誰でしょうか?
(ヒント:SS使いの方です(笑))

正解は次回の作品アップの時にでも…
 あまりにお粗末な初のアップ作品ではありますが、読んでいただ
いた方には、感謝申し上げます。
次回、より楽しんでいただける作品でお会いしたいものです。

でわ。