Lメモリーズ魔王大戦IF「希望、もしくは破滅のプログラム」 投稿者:隼 魔樹



「……何故、計画が狂ったのだ?」
「解らぬ、神より与えられた計画は完全であったはずだ。事実途中までは順調
に進んでいた」
 神の城を思わせる、荘厳にして華麗な建築物の中で十二人の人物が話しあっ
ていてた。
 人?
 それは正確ではない、なぜなら彼等の背には人にはあり得ない物があるのだ。
 背中から生える鳥の姿を模した美しい純白の翼。
 人は彼等をある名前で呼ぶ。
 天使……と。



 Lメモリーズ魔王大戦IF「希望、もしくは破滅のプログラム」



「今その事を詮索しても仕方あるまい、問題はこれからどう計画を修正するか
だ」
 金髪、長身の姿をした天使がそう切り出した。
「計画では人の身に宿ったメタトロンは、精霊の手を借りて体を強化し、魔王
との決戦の日まで眠り続けるはずであった。しかし、メタトロンは中途半端な
形で目覚めた」
「原因は魔王の早過ぎる覚醒が原因の様です。愚かな人間の行動で、魔王は不
完全ながらも目覚めました。不幸中の幸いなのは、まだ自由自在に力を振るえ
る状態ではない事でしょうか」
 蒼色の髪をした小柄な女性の天使が続ける。
「それだけなら単なるイレギュラーで済む、だがここで予想外の事態が起きた」
「ハイドラントと呼ばれる人間が魔王のマスターとなり、魔王を崇める集団を
作り出した」
「何故、人の身で魔王のマスターになる事ができたのだ?」
「彼の者は只の人間ではない、目覚めてはいないが『書を護る者』だ」
「『書を護る者』か、世界の運命に関与し、綴られし歴史を書に刻む事の許さ
れた存在、我等ですら直接介入する事はできぬ……厄介な」
 小柄な天使が話し終えたのに続いて、今度は赤と黒の髪をした天使が話だす。
その表情には緊張の色が濃い。予想外の難事に陥ったことへの焦りと困惑が感
じられる。
 その報告をきっかけに口々に話し始める天使達。だがその内容は建設的な物
ではない。彼等にとって神からの計画が狂うなど考えてもいなかったったのだ。
計画を立案し、遂行する能力はあっても想定外の事態には極めて弱い。
 それが彼等天界の長老……十二黄道宮天使の最大の弱点とも言えた。
「メタトロン支援のために遣わした天使はどうなっている?」
「一人は天軍を裏切り多くの犠牲者を出した上で捕縛、もう一人は堕天し、魔
王の庇護下についた」
「ウィルとユンナ……時が来れば御前天使にもなり得た物を……」
「……どうやら、我等は後手後手に回っているようですね」
 今まで一言も喋っていない藍色の髪をした女性の天使が言葉を発する。その
声を聞いた天使は皆一様に口を噤み、固唾を飲んで次の言葉を待っている。
 どうやらこの天使は他の天使達から一目置かれているらしい。
「……時間がありません。魔王の力は増大し、配下の者の力も増しています。メ
タトロン一人では抑えきれないでしょう……ならこちらも切り札を使うまで」
「……まさか!?」
 青色の髪の天使が何かに気づいたのか。驚愕の声を上げる。その声には驚き
以上にある感情が色濃く表れていた。
 純粋な、恐怖。
 他の天使もその言葉の意味に気づいたらしく、青色の天使と同じ表情を作る。
「そうです……極秘プロジェクト『サンダルフォン』あれを人界へ送ります」
「馬鹿な!! あれは……あれは!!」
 橙色の髪をした天使が声を荒げる。
「あれは使って良い物ではない!! あれは神を……我々の神でなく『世界』
を創造した女神に対する抹殺プログラム!!! 女神に対する反逆なのだぞ! 
それを使用するなど……!!」
「なら、このまま世界と共に我々も滅ぶのですか?」
 静かに問い掛ける藍色の髪の天使、その言葉に橙色の髪をした天使は言葉を失
う。
「我々もまた女神に創造された被創物の一つ、ある意味で人と変わりは無いので
す。生まれた者には皆等しく『生きたい』と思う心があります。来るべき滅びに
対して抗わないでどうします?」
 凍るような沈黙が場を支配する。
 天使達は恐れているのだ。最大の禁忌を起こす事を。
 人が唯一神と呼ぶ存在も、結局の所女神に創造され人界と天界の管理を任され
ているに過ぎない。かつて天界にそむき堕天したルシフェルですら、女神の領域
を侵す事はなかった。
 何故なら女神こそが全ての存在の母……大母なのだから。
 が、その事を知っている者は少ない。天界ですら御前天使と彼等黄道十二宮天
使の他に知っている者は殆どいないだろう。
 『サンダルフォン』はその事に気づいた一部の天使達が、暴走の挙句に女神を
滅ぼさんと作り上げた存在なのである。
 が、計画は達成寸前で露見。発動寸前で御前天使達の手により防がれたのだ。
 『サンダルフォン』に関わった天使は、天界の最終監獄にて幽閉される日々を
送る事になった。
 だが計画の中心である『サンダルフォン』だけは廃棄されることも無く、厳重
な監視の元にプログラムを凍結されたまま現在に至っている。
 もしかすると、天使達もこんな日が来るのを予感していたのかもしれない。
 母なる存在に歯向かい、自らの世界をかけて戦う事を。
「…………依憑はどうするのだ?」
 金髪の天使が重い口を開く。
「メタトロンが降り立った地、Leaf学園と言いましたか、あそこには潜在
的に強力な力をもった者がいるようです。その中から選びましょう」
「……解った」
 金髪の天使が藍色の髪の天使の言葉を代弁する形で口を開く。
「聞いてのとおりだ、我等は今から存在を賭けた戦いに突入する。プログラムの
再開を急げ!! もう時間は余り残されていないぞ!!!」



 LEAF学園において『魔王大戦』と呼ばれる動乱の数日前の話だった。

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 えー、最初に言っておきます。この作品と「人と共にある魂」は悠朔さんの
L、「魔王大戦」を元にして、僕が勝手に作り上げた枝話です(笑)
 ですから、この二話が魔王大戦本編に影響を与える事はありません……いや、
悠朔さんが採用すれば別ですが。
 これは僕が勝手に始めた「東西さんメタロトン化プロジェクト」に基づいて
書かれた、お遊びLです。本編にはなんの影響も与えませんので、馬鹿話を読
むぐらいのつもりで見てください(笑)
 それでは失礼します
(あ、この話は東西さん、及び悠朔さんの許可を得て掲載しています)

文責;隼 魔樹