テニス参加表明L「バレー部参加」 投稿者:makkei
「ねぇねぇ、いいチャンスだと思わない!?」
 と、いきなり沙織が切り出した。
 昼休み。心地よい風の吹いていく中庭には、沙織に呼び出しを受けたバレー部の面々が、
それぞれ昼食を持ち寄り、芝の上にその腰を下ろしている。
「チャンス……暗躍生徒会主催のテニス大会のことですね?」
 たけるの横でお茶をすすりながら、電芹が沙織に応えた。
「そうそう、それそれ」
 メロンパンをかじりながら相槌を打つ沙織。
「ここで名を売っておけば、きっと入部してくれる人が来ると思うんだ、うんうん」
 と、自分で言って自分で頷く。
 だが、すぐに切り返して、沙織は続けた。
「で、テニス大会に”バレー部”としてエントリーしようと思うんだけど……」
「どういうペアにするかだな、問題は」
 沙織の問いに、間をおかずに応えたのは秋山登その人であった。
 手には大きなにぎり飯を持っている。
「……沙織ちゃん、質問…していいかな?」
 そう言って手を挙げたのは、現在バレー部を休部中の城下和樹であった。
 100パーセントオレンジを手に、しっかりと沙織の横に陣取っている。
 城下は、秋山を指しながら沙織の方を向いて尋ねた。
「……どうして、”この人”がここにいるのかな?」
「それはな、俺が覆面忍者バレーコーチXの代行だからだ」
 尋ねられた沙織ではなく、秋山が直接、城下の問いかけに答えた。
「えっ、あっきーって、コーチの知り合いなんだ〜☆」
 秋山の顔を見上げながら、たけるが無邪気にその口を開いた。
「うむ。コーチの代行だから俺は偉いのだぞ」
 わざわざ胸を張って秋山は言う。
「わぁ、あっきー、すっごーいっ☆」
「はっはっ。そうだ、俺はすごいのだぞ」
「…………」
 そんな二人のやりとりを見ながら、周りは唖然とするよりなかった。


「で、ペアの組み合わせですが……」
 こほん、と咳払いをした上で、とーるが喋りはじめる。
「どういう風に組みましょうか?」
「はいっ、私、電芹と組むっ!!」
 とーるの言葉に間髪入れず、たけるが元気よく手を挙げる。
 だが、
「たけるちゃん、あのね、今度の大会は”男女”でペアを組むから、電芹ちゃんとは組め
 ないんだ」
 と、沙織が諭すようにたけるにそう言った。
「ええ〜っ、そうなの〜?」
 残念そうなたけるを見ながら、苦笑する電芹。
「じゃあ、あっきー、組もっ☆」
 そして今度は秋山の方に向き直るたけるだったが、
「すまんな、たける。俺には、心に決めた人がいてな……」
 どこかずれた秋山の答えに、たけるは「はぁ…」と肩を落とし、
「電芹もあっきーもだめなのか〜…」
 と、珍しく弱々しい呟き声を出した。
 しかし、それも束の間のことで。
「makkeiくん、一緒に組もっ」
 次の瞬間には、たけるのその明るい声は、黙々と自作の弁当を食べていたmakkeiへと向
けられていた。
 一方で、虚を突かれたのか、
「はっ、はい?」
 と間抜けな返事をしてしまうmakkei。
「makkeiくんも、ダメなのかな?」
「いっいっいえっ、そそそんなことはないです、こちらこそ、よ、よろしくお願いします」
 どうしても女性と喋るのは苦手なmakkeiが、あたふたと慌てふためいてたけるに応える。
 その様子を見て、
「おいおい、声が裏返ってるぞ」
 秋山が茶化すと、makkeiとたける以外、声を出して笑いはじめた。
 makkeiは、眼鏡をかけたその顔をかあっと上気させている。
 たけるは、何がおかしいのか分からずきょとんとしたままだ。



「それじゃあ、たけるちゃんとmakkeiくんは決まりね」
 沙織の言葉に、真っ赤な顔のままmakkeiがこくりと頷く。
「じゃあ、あたしは……」
 誰と組もうかな、そう続けようとしたときだった。
「沙織ちゃん、俺と一緒に組まない?」
「沙織さん、私と一緒に組みませんか?」
 城下ととーる、二人の声が重なった。
「…………」
「…………」
 お互いを見るとーると城下は、その沈黙すらも重なり合う。
 そしてその視線は、段々と鋭いものへと変化していく。
「……休部しておいて、”バレー部”として出場する気ですか、あなたは?」
 あくまで冷静に、だが棘を含ませてとーるが言うと、
「お前こそ、風紀委員の方が忙しいんじゃないのか?」
 と、城下も同じように冷たく返す。
 見ると、二人の状態はすでに”睨み合い”と化している。
 まさに一触即発の状態であった。

「うん、公平にジャンケンで決めよう!」
 とーると城下のやりとりを黙ってみていた沙織が、唐突に切り出した。
 その額に汗が浮かんでいるのを見るに、どうも見るに見かねた果ての苦肉の策らしい。
 しかし、
「ジャンケンですか……いいでしょう」
「沙織ちゃんの言うことだったら、俺は従うよ」
 埒が明かないことを分かっていたのか、とーるも城下も案外簡単に沙織の意見に従った。
 お互いに一歩下がり、二人は神妙な顔つきになる。
 そんな二人の様子に押されてか、周りにも緊迫した空気が流れはじめる。
「……いきますよ」
「ああ……」
「「ジャーンケーン……」」

 ・
 ・
 ・

「……と、いうわけで、”バレー部”として出場するのは『たけるちゃん&makkeiくん』
 ペアと、『あたし&城下くん』ペアに決定。これでいいかな?」
 周りを見渡しながら、沙織はペアの確認をする。
 他の部員はそれぞれ静かに頷き、沙織の言葉に同意した。
 ジャンケンに負けたとーるも、黙って頷く。
 その表情には口惜しさは感じられず、さすがに西洋騎士らしい潔さをうかがわせる。
「バレー部の名誉にかけて、このテニス大会で優勝しようね!!」
 沙織の言葉に、今度は力強く頷く一同。
 そんな部員の様子を見、沙織は、
「うん、じゃあ円陣組もっ」
 とにっこりと笑いながらそれを促した。

「バレー部の名誉のためっ、あーんど新入部員確保のため……」
 一拍置いて、円陣を組んだまま大きく息を吸い込む沙織と部員達。
 その表情からは、それぞれの、だが同じ気持ちが伝わってくる。
 頑張ろうという、その一途な気持ちが。
 沙織の呼吸が一瞬止まり、
 そして、
「バレー部、ファイトッ!!」
『オウッ!!』

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 というわけで、テニス大会参加表明Lです。
 ・たけるさん&僕
 ・しろりんさん&沙織
 の二組をエントリーさせていただこうと思います。

 しかし、誰にも了承を得ずにこんなん書いていいのか、僕よ(笑)