リレー企画・コンバットビーカー第3話『鋼鉄の男』  投稿者:makkei
 ある日の風見家。(密かにラブラブ寸劇を希望(笑))
「美加香、たしかポテチがあったでしょう?」
「あ、はいはい(くすっ)」
「……何がおかしいんですか?」
「だってひなたさん……見る気満々ですから」
「…こういうのは、一度見始めると続きが気になるんですよ」
「はいはい♪」

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【勇者ゲーマー コンバットビーカー第三話『鋼鉄の男』】


 蒼い。
 何処までも澄み切った空に、吼えるようなジェット音が矢継ぎ早に響きわたっていた。
「……ああ、俺です」
 男がひとり電話ボックスの中で、飛び去っていく飛行機を眺めながら話している。
「はい……たった今、空港に到着しました」
 男のサングラスに写る機体が、段々と小さくなり、いつしか見えなくなっていく。
 テレホンカードの度数が、小さな電子音とともに一つ消えた。
「……はい…はい……わかりました…」

 がちゃり、と受話器を置き、電話ボックスの扉を開く。
「……ふーーーっ」
 男は、狭苦しい電話ボックスから出ると、深く息を吐き出した。
 再び男は、その遙か上空を見やる。
 先程とは別の飛行機が、今度は着陸しようとしていた。
「……風が…吹きそうだぜ……」
 男が、ふと言葉を漏らす。
 それは、ジェット音に遮られた、他には聞こえない程の小さな呟きだったが。
「戦場に吹き荒れる……熱い、風がな……」
 そして男は歩き出した。
 ごうごうと咆哮する飛行機のジェットを背後に。




「それにしても……奴らの狙いは一対何なんでしょうか?」
「奴らって……ああ、あの黒いの?」
 beakerと坂下好恵は、公園のベンチに座って話し込んでいた。
「ええ……」
「……どうしたの、beaker?」
 深刻そうな顔を見せるbeakerを見ながら、坂下がbeakerへと言葉をかける。
「いえ…少し、考え事を……」
「考え事?」
「はい……いくつか分からないことがあったので……」
 雲だけが緩慢に流れる蒼い空を見上げながら、beakerが言う。
「ひとつは……この『クリムゾン』……」
「その銃が、どうかしたの?」
「このクリムゾンが、とんでもない力を秘めていることは、好恵さんも見たでしょう」
「まあ、ね…」
 確かに坂下もクリムゾンの驚異的な力を見ていた。
 そして、それを使いこなすbeakerの姿も。
「どうして、『こいつ』は僕のところに来たのか……」
 beakerは右手に持ったクリムゾンをじっと見つめる。
「……そして、あの『ハイドラント』と名乗った男、一体、何者なのか……」
「…もう、しっかりしなさいよ!!」
 陰鬱な表情を浮かべたbeakerに、坂下はおもわず叫ぶように口を開いていた。
「好恵…さん?」
 突然の声に、驚くbeaker。
「あいつらが何者であろうとも、何を考えていようとも、それを止められるのはbeakerと、
その銃だけなんでしょう? だったらしっかりしなさいよ!!」
 そう言って、ばんっ、と力強くbeakerの背中を叩いた。
「痛っ!!」
「あっ……ごめん」
 思わす力の入りすぎてしまった右手を見ながら、坂下がbeakerへと謝る。
 だが、
「…いえいえ、好恵さん、ありがとうございます」
 beakerは、すっきりしたように笑っていた。
「確かに、好恵さんの言うとおりです。僕が頑張らないと……」
「……うん」
 そしてまた、beakerが何気なく空を見上げる。
 beakerの仕草にならい、坂下も同様に空へと顔を向けた。
 蒼い空。
 白い雲。
 そして、恐竜。
「「…………え!?」」
 思わず顔を見合わせる二人。
 すぐさま空へと視線をもどす。
 恐竜だ。
 翼竜といったか、たしか。
 二人はそろって息を呑む。
 そして、同時に叫んでいた。
「「きょ、恐竜!?」」


「…さて、どこから破壊しましょう…」
 翼竜の上には、一人の男がいた。
 葛田玖逗夜。
 ハイドラントの命により、そして汚名を返上すべく、葛田は純粋な破壊を行おうとして
いた。
 beaker、つまりは『敵』を誘き出すために。
「…あそこなど、いいかもしれませんね…」
 にやりと口元を歪め、ある一点をじっと見つめる。
 その視線の先には、海に面した工場地帯が広がっている。
「…いい炎が、あがりそうですしね…」


「beaker!!」
「ええ……多分、奴らでしょう…っていうか、恐竜でしたし」
 beakerは、翼竜の向かう先へと注意を傾けている。
 そんなbeakerに、好恵が尋ねた。
「……どうするの?」
「決まっているでしょう」
 かちゃり、とクリムゾンを取り出し、好恵へと見せる。
「僕しか止められないんですから、ね」
 そう言ってから、beakerは走り出そうとする。
「あ、beaker……」
 だが、好恵がそれを引き留めた。
「どうしたんです、好恵さん?」
「beaker……ううん…気を付けて……」
 好恵の言葉に、しばらく呆気にとられたbeakerだったが、
「心配してくれて、ありがとうございます」
 beakerは、好恵へと微笑みかけ、今度こそ走り出した。
 敵が待つだろう、工場地帯へと。
「beaker……」
 そんなbeakerの背中を、好恵はただ見守るだけであった。


 その頃。
「へえ……」
 beakerとは違う場所から、翼竜の姿を視線で追っている人物がいた。
「プライ○ルレイジ、か……」
 ぼそり呟くと、男は楽しそうな表情をその顔に浮かび上がらせる。
「結局、俺の行く先には、戦場が待ち受けるんだな……」
 そして、男は走り出した。
 これからはじまるだろう、戦いの場へと。
「覚悟、完了だぜ」



【ここでCM】


(……嫌な、予感がする…)
 風見ひなたは、一人冷や汗をかいていた。
「…どうしたんですか、ひなたさん?」
「……いや、なんかこの先、不愉快なものを見せられるんじゃないかと、不吉な予感が」
「気のせいですよ、きっと」
 気楽そうに言う美加香を見、考え込む素振りを見せる風見。
(そうだよな……気のせいだよな…)
 そして風見は、テレビの方へと向く。
(この先、パ○ピーが関わってきそうなのは、きっと気のせいなんだろうな……)


【そしてCM開け】


「…出てこい、コンバットビーカー…」
 翼竜の頭の上から工場地帯を見下ろしながら、葛田が呟いた。
 何時の間に増えたのか、恐竜は、先程の翼竜一匹だけでなく、三匹になっている。
 工場地帯は、恐竜たちに踏み荒らされ、壊滅へと向かっていた。
「…くっくっ、怖じ気づいたのか…」
 葛田が笑いながらそう言ったときだった。

「せっかくだから、俺はこの赤い扉を選ぶぜっっ!!」

 工場地帯一帯に、凛とした声が響きわたった。
「…来たか…」
 声のした方へと振り向く葛田。
 そこには…
「クソゲーハンター、コンバットビーカー見参!!」
 右腕をキャノンと化したコンバットビーカーの姿が、そこにあった。
「これ以上の暴挙、世界中の良識有るゲーマーが許しても、クソゲーを愛するコンバット
ビーカーが許さん!!」
「…いや、良識有るゲーマーの方が、許さないと思うけど…」
「やっぱりそうですかね?」
「…納得するんですか…」

「…とにかく、ここで終わりです…」
 さっと、葛田が手を真上へと挙げた。
 すると、それまで工場地帯を荒らし回っていた恐竜たちが、一斉に葛田の方へと向き直
った。
「何が…起こるんだ?」
 beakerは、怪訝な顔で葛田を見ている。
 てめえ今のうちに攻撃しろ、という方もいると思うが、「変身やらなんやらのときは、
手ぇ出しちゃあいけません」という一応のお約束を、コンバットビーカーは律儀に守って
いるのだ。
 偉いぞ、コンバットビーカー。
 で、閑話休題。
「…集まれ、『プ○イマルレ○ジ』たちよ…」
 葛田の言葉に反応するかのように、恐竜たちが葛田の元へと集まっていく。
「さっきと伏せ字の場所が違うのは、いいんですか?」
 だが、コンバットビーカーの問いかけも無視し、葛田は続ける。
「…今こそ、その力を我が前に…」
 そして、恐竜たちが葛田の元へと集結し……
「…その力を、一つに…」
 葛田の呪文の詠唱が終わったとき。
 三体の恐竜たちは、どろどろと融合し始めていた。


 ・
 ・
 ・
「…ふははははっ!…生物合体・超ペンギソ『葛田』……!!」
 そこには、三体いた恐竜、いやプラ○マ○レイジたちが、ただ一体の生物へと合体を遂
げたいた。
「なんだあ、この生物は?」
 驚愕するコンバットビーカー。
 だが、それも一瞬のことで、コンバットビーカーはさっとキャノンを構えた。
 クソゲーパワーがクリムゾンに流れ込むのを実感する。
「いくぞぉぉぉっ!!」
 そしてbeakerは、その引き金に指を掛け、空気が震えるほどに叫んだ。

「クリムゾンショットォォォォォォォ!!!!!!!!!」


 結果。
 外れた。


「くそっ、クリムゾンショットを避けるとはっ!」
「…いや、別に動いてませんが…」
「これだからクリムゾンは!!」
 自分の右手をばんばん叩きながら、悔しがるコンバットビーカー。
 さすがはクリムゾンの命中率だけのことはあった。
 葛田は、そんなコンバットビーカーを見ながら言った。
「…まあ、悔しがるのはいいですが…とりあえず、消えて下さい…」
 葛田がそう言った瞬間、超ペンギソの口が「がぱり」と開いた。
 はっと気付くコンバットビーカー。
 瞬天。
 コンバットビーカーのいた場所は、炎に包まれていた。

「今のはあぶなかったですね……」
 間一髪、超ペンギソの吐いた炎を避けたコンバットビーカーだったが、
「……くっ!?」
 苦悶の声とともに、思わず顔をしかめる。
 その足には、避けきれなかったのだろう、痛々しい火傷が残されていた。
「…おや、次は避けられないようですね…」
 コンバットビーカーの様子を見ながら、葛田が面白そうに呟いた。
「くっ……」
 コンバットビーカーが苦々しい表情を浮かべる。
 そして、またしても、超ペンギソの口が開いた。
「…死んで下さい。我々の目的のために…」


「へっ……情けねぇな、beaker!」


「…!?…」
 どこからか聞こえた声に、葛田はきょろきょろと辺りを見回した。
「今の声は……」
 コンバットビーカーも、葛田同様に声の主を捜す。
「あっ……」
 瞳に一人の男の姿が映しだし、コンバットビーカーが思わず声をあげた。
 圧倒的な破壊力と、
 信念を貫く強さとを兼ね備えた漢。
 しばらくの間、試立Leaf学園からその姿を消していた、最強の漢。
 コンバットビーカーは、その漢の名を思わず叫んでいた。
「ジンさん!!」
「よう」

「ジンさん、どうしてここに……」
「その話は後だ。今は……」
 そう言ってジンは、目の前の葛田をくいっとそのあごで示す。
「あいつの相手が先だろうが」

 葛田は、呆然と闖入者の姿を瞳に捉えているだけであった。
(…何故、この場にあの男が…)
 しかし、悠長に考えている場合ではない。
「…『葛田』!!…」
 すぐさま、葛田は焦りさえ感じさせる声で超ペソギソ『葛田』へと命を飛ばした。
 その声に応えるように、超ペンギソ『葛田』が、またしても大きな口を開き、真っ赤な
口腔をコンバットビーカーたちへと覗かせる。
「ジンさんっ!!」
 その様子を見たコンバットビーカーが、ジンの方へと向き直り、叫ぶように言った。
「ジンさんといえども、あいつには……早く逃げて下さい!!」
 だがジンは、「へっ」とせせら笑うように突っ立っているだけであった。
「ジンさん!!」
「beaker……何で俺がここにいるのか、分かんねえか?」
「え……?」
 ジンがふと漏らした声を聞き、コンバットビーカーの動きがぴたりと止まる。
「俺がここにいる理由はな……お前がここにいる理由と、同じなんだよ……」
「……まさか…!?」
「そうさ……その、まさかなんだよっ!!」
 次の瞬間、ジンは、ぱちんっと勢いよく指を弾き、あらん限りの大声で叫んでいた。

「来ぉぉぉいっ、ロケットノーーーーーーーートっっ!!!!」

 刹那。
 何故か黒くなった空を切るように、光の塊が尾を引いてジンの元へと向かって来ていた。
「あれは…ロケット?」
 光の中心にある物体を目にし、コンバットビーカーが力無く呟く。
 その呟きに答えるように、ジンが言い放った。
「そうだ、あのロケットこそ……俺の『相棒』だ!!」
 光は真っ直ぐにジンの元へと進んでいき、ジンと光の距離は、どんどんと縮まっていく。
「……beaker、さっきも言ったが、俺もお前と同じでな……」
 ジンの呟きに、コンバットビーカーが耳を傾ける。
「お前と同じで、俺も…」
 光の筋がぐんぐんと迫り、
 やがて光は、ジンの躯を包み込んだ。
「俺も、クソゲーハンターなんだよっ!!」


「絵画融合!パステルジャザァァァァァムッ!!」
 光の中からジンがその姿を表したとき、その躯には変化が起きていた。
 背中には、普段より大きなロケットブースターが装着され、
 そして何より、右の肩には巨大なキャノン砲が乗っていた。
「beaker、てめぇはそこで見てな」
 ジンは、いやパステルジャザムは、beakerへそう告げると、葛田の方へと向いた。
「すまねぇな、待たしちまってよ」

「…この世の最後の語らいは、終わりましたか?…」
 葛田は、自分に向けられたジンの視線を真っ正面から受けながら言った。
「…まずはパステルジャザム…あなたから、消えてしまいなさい…」
 葛田の言葉と同時に、またしても超ペンギソ『葛田』が、その口を開き、そして次の瞬
間には、先程と同じ炎を今度はパステルジャザムに向けて放っていた。

 だが。
「遅ぇな」
 炎が放たれた場所には、すでにパステルジャザムの姿はなかった。
 それどころか、
「…後ろ、ですか…」
 自分の背後から聞こえてきた声に、葛田は驚愕した。
(…速い…)
 急いで振り向こうとする葛田。
 だがしかし、それは不可能であったことに、葛田は後で気付くことになる。
 なぜなら…
 葛田が振り向いた瞬間、すでにパステルジャザムが、その肩口の砲身を向けていたから
である。


「いくぜっ!! イクイク・バスタァァァーーーーーーーっ!!」
「うわ、最悪のネーミング」

 そして『葛田』は、コンバットビーカーのツッコミとともに、爆煙にその姿を消した。


 ・
 ・
 ・

「さて、帰るか……なあ、beaker」
「ジンさん……」
「ん、どうした?」
「……一つだけ、答えて下さい……」
 beakerの見せる真剣な表情に、ジンは思わずその足を止めた。
「……何をだ?」
「…クソゲーハンターって、一体何なんです?」
「…………」
 ジンは、少し思案した後、何かを決意するかのように言った。
「それは……お前自身が導き出す答えだ」
 それだけ言い残し、ジンはその場に背を向けた。
 後に残されたbeakerは、静かに、ジンの背中を見送っていた……


<つづく!>
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【第四話予告】
来栖川エレクトロニクスを攻撃する岩石妖魔!自らの故郷を守るため、
HM達が立ち上がる!

長瀬源五郎「マルチ、セリオ・・・まさかあの強化パーツを使うつもりか!?」
とーる「岩石妖魔の弱点・・・見切った!」
セリオ「行きますよ、マルチさん!」

マルチファイヤー、セリオサンダー! 今こそ合体の時だ!
「超HM合体!クルスガワセイヴァー!!」


次回、コンバットビーカー第四話『機械の女神』! お楽しみに!

これが勝利の鍵だ!『プラズマモップ』