テニスエントリーLメモ「瑠璃色の季節」 投稿者:きたみちもどる
それは、ある日のこと。
三年の教室での出来事。
そのとある一角で、人が集まっている。
とはいってもそれほどの人数ではなく、ごく小数ではあったが・・・・・。
それは、柏木梓・来栖川芹香・菅生誠治・橋本の計四人で形成されていた。
その四人で何やら話し合っている。
どうやら、この間告知された「男女混合テニス(ダブルス)大会」について
参加がどうのこうのと話し合ってるみたいだが・・・・・。
耳をそばだてて聞いてみると
「三年の最後の思い出に」
とか
「隆山温泉でみんなでどんちゃん騒ぎ」
とか話し合ってるみたいだ。(後者は言ったかどうか定かではないが
そう聞こえたみたいだ)
そういう話を(耳を側立てつつ(笑))何とはなしに聞いていた、きたみちもどる。
彼は、ふっと溜息を吐くと
「俺には関係ない」
とぼそっと呟いて教室を後にする。





何の目的も無しに廊下をぶらつくもどる。
その顔は、何やら真剣なものになっていた。
(あんな事言ったけど、実はすっごく気になってるんだろう?)
からかうような声が、もどるの『心』の中からする。
(うん、本当は・・・・・ってちゃうわっ!!気になんかなってないもん!!)
その『声』にすぐさま反論するもどる。
(・・・全く意固地だねぇ〜。
  俺とお前は別人格とはいえ同じ『器』や『心』を共有してるんだぜ?
  だから、俺はお前の考えてることは分かるし、その逆もしかりさ・・・・・)
呆れを含んだ様子の『声』。
(だからといって、そんな事言われたくない!!)
(へいへい、分かりましたよ・・・・・。
  お前が、平凡な生活に慣れてなく、憧れてるのはよく分かってるさ。
  全て、俺の所為だからな・・・・・。
  そのことについては、すまねぇとは思ってるよ)
そのトーンがやや下がり気味になる。
(そんな昔のこと・・・・・。
  そう言えば、昔のことと言えば・・・・・
  お前なんで、『前世』の事を全く覚えていない?
  それに何故、『力』がないんだ?)
(・・・・・・・さぁ?
  ま、そんな事は兎も角、出るのかでないのかはっきりしたらどうなんだ? 
  まぁ、言わなくても俺には分かるがな?)
ニヤニヤした笑いまで見えてくるようだった。





その日の夜。
「ねぇ、父上」
「なんだい、靜?」
夕食後、にぱぁとした笑みを浮かべながらもどるの愛娘である靜が
皿洗いをしていた彼の足にしがみつく。
「うんとね、しずか、おんせんにいきたいの」
「温泉!?」
いきなりの言葉にもどるの手が止まる。
「おんせんて、すっごくおおきなおふろがあるんでしょ?
  しずか、いままでいっかいもいったことないから、はいってみたいのぉ」
相変わらずの、にぱぁとした笑みを浮かべつつ靜。
その笑みは、何でも許してしまえる愛らしい笑みでもある。
だから
「うん、今度一緒に行こうね?」
「ほんと?」
「うん、ほんとほんと」
「わぁ〜い、やったやったぁ〜♪」
大はしゃぎで喜ぶ靜。
こんなはしゃぎようは、靜にしては珍しい。
温泉に行けることが、そんなにうれしいんだろうか?
しかし・・・・・。
「ねぇ、靜?」
「なぁに、ちちうえ?」
やっぱりにぱぁとした笑みを浮かべつつ靜。
そんな靜に
「一体、どうして急に温泉に行きたくなったんだい?」
ともどるは話し掛けた。
「うん、きょう、がっこうでティーナちゃんと笛音ちゃんとてぃー君とはなしてたの」
と、なんの疑いもない笑みを浮かべて靜。
(初等部でも噂になってるのか・・・・・、テニス大会・・・・・)
と思わずにいられないもどるであった。





翌日、校舎内の廊下を真剣な表情で歩くもどる。
(靜を温泉に連れて行く約束したけど・・・・・、先立つものが・・・・・)
(なら、大会に出て優勝するしかねぇな)
からかうような心の声。
(うん、そうだけど・・・・・)
(パートナーか・・・・・)
そう、パートナーがいないので、出場しようにもできないのである。
(緒方理奈はどうだ?)
もう一人の『僕』がそういう。
(だけど、最近アフロ同盟の顧問になったから、あんまり関わりたくない)
(何故だ?)
(だって、無理矢理アフロ同盟に入隊さすに決まってるじゃないか・・・・・)
心の中でワカメ涙を流しつつもどる
(まぁ、それもそうだな・・・・・)
もう一人の『僕』も納得したようだ。





同じ頃、桂木美和子は悩んでいた。
今回のテニス大会、暗躍生徒会が一枚噛んでいる。
そして、その動きを察したジャッジもそれを食い止めようと動き始めた。
その二つの組織に所属している美和子は一体どっちにつけばいいのか悩んでいた。
こんな時、二重スパイは辛いと改めて思うのであった。
(第一、なんで私がこんなこと・・・・・。
  大会に出場しようにもパートナーもいないのに・・・・・)
そんなことを思わずにいられない美和子であった。





そんな二人が、ばったりと出会うのは偶然であろうか?
いや、神(作家)が作りし偶然とでもいうのであろう(笑)。
だから、廊下の角でばったり出会ったりしたのである。
「あっ・・・・・桂木・・・・さん?」
「きたみち先輩?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
沈黙があたりを支配する。
お互いの顔が少し赤いのは気の所為だろうか?
「ああ、桂木さん・・・・・」
「は・・・はい、なんです?先輩」
ちょっと吃る二人。
「最近なんだか、賑やかなイベントが多いですね」
「そうですよねぇ」
「今度は、テニス大会ですか・・・・・」
「そうみたいですね」
「子供に『温泉行きたい』とせがまれまして・・・・・」
「そうなんですか・・・・・」
「是非とも、出場して優勝したいのですが・・・・・」
「はい・・・・・」
「パートナーがいなくて困ってるのです・・・・・」
本当に困り顔のもどる。
「私も、いないんですよ・・・・・」
こっちも困り顔の美和子。
「・・・・・じゃあ、一緒に出ませんか?」
こう、きたみちが切り出すと
「別に構いませんよ」
と少し笑みを浮かべながら返事する美和子。
その返事を聞いて、ぱぁっと顔を綻ばせるもどる。
「ありがとうございますっ!!」
そういって、美和子の両手をがしっと掴む。
「きゃっ!!」
「あっ・・・・・」
二人の間にまた沈黙が流れる。
そして、二人の顔は熟れた林檎のように真っ赤であった。
「す・・・すいません・・・・・」
「いえ・・・・・」
慌てててを放すもどるを、少し名残惜しそうにみつめる。





「しかし、すいません。 
  こちらの家庭の事情に突き合わせてしまって・・・・・」
「いえ、別に構いませんよ」
申し訳なさそうに謝るもどるを、笑みを浮かべてそう返事する美和子。
「けど・・・・・」
美和子がそう切り出す。
「けど?」
もどるが尋ねる。
「いつか・・・・二人きりで・・・・・」
ごにょごにょ。
真っ赤にふにゃふにゃになりつつ美和子がそう言う。
もどるはそれを聞いて、やっぱり顔を赤くさせつつ鼻の頭のぽりぽりと掻きながら
「えと、えと、いつか・・・絶対・・・必ず・・・お約束します・・・」
といった。
それを聞いて美和子がますます顔を赤くする。
(ご・・ごめん、みんな・・・私は自分に正直に生きます)
そう、生徒会とジャッジの面々に(心の中で)謝る美和子であった。





こうして、きたみち・桂木ペアが出来上がったのであった。





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ふぅ、ようやく出来上がりました。
このマイナーなペアでテニスL参戦します。
よっしーさま、何とぞよろしくお願いしますです。
左子とか、月島兄のおもちゃとか散々ないわれようの彼女に
光をこれからも当てていきたいと思います(笑)
それでは、あでぃおーすっ!!