テニスL特訓編「瑠璃色の青春」  投稿者:きたみちもどる



すぽぉ〜ん
すぽぉ〜ん
すぽぉ〜ん
すぱこぉ〜ん

そんな音が飛び交っているここは、今一番活気がある場所。
「あなた〜を待つの〜♪」と歌われたテニスコート。
その中で、今一組のカップルが激しいラリーが繰り広げられている。
男の名前は、きたみちもどる。
少し長い髪を後ろで縛っていて、見た目は少し色男の少年。
実は、性格破綻者だったりするのは公然の秘密でもある。
女の名前は、桂木美和子。
長い髪を三つ編みにまとめ、可愛らしい顔をした少女。
左子やら何やら散々言われているが、とにかくかわいい少女である。
さて今、テニスに慣れるためにお互いに打ち合っていたのだが
何時の間にか、真剣になって打ち合っていたのである。
「ふぅ〜、ここいらで少し休憩を入れましょうか?」
もどるが爽やかな笑顔とともに、美和子にそう声をかける。
「そうですね」
美和子も、にこやかな笑顔でもどるに応じる。
「それにしてもすごいね、桂木さん」
「なにがですか?先輩」
ちょっと不思議そうな美和子。
「うん、僕、結構本気で打ち込んでいたのに、ちゃんと打ち返してきてるんだもん」
「ええぇ〜、そんなことないですよ。かなり必死だったんですよ。
  おかげでものすごく、疲れちゃいましたけど・・・・・」
少し苦笑気味の美和子。
「実は僕も・・・・・」
それにつられて、苦笑するもどる。



「・・・・・僕たちって、少しスタミナ不足ですかね」
休憩中、唐突にそうもらすもどる。
「そうかもしれませんね」
美和子もそう相づちをうつ。
「長い間、打ちあいするとこっちが不利になりますね」
「そうですよねぇ〜」
思案顔の二人。
「どうしましょうか?」
「どうしましょ?」
「「う〜〜〜〜ん」」
長考すること三十分。
「・・・・・・・・・・・・そうだ、先輩」
「ん?なんですか?」
「『必殺技』を持ちましょう」
にこやかな笑顔で美和子。
「『必殺技』?」





しかし、口で言ってもそう簡単には身につけられないのが必殺技。
必殺技を身につけるのには、相当の時間と努力と根性が費やされるのである。
それを短期間で身につけるのには、某バッタ男やその他諸々の改造人間並みに己を
傷めつけねばいけない。
もしそんなことをせずに身につけた必殺技は必殺技と呼ばれずに
「単なる名前のついたただの技」になってしまう。
無謀な目的が常識的な手段で達成されることはないのである。
くいしばる歯が火花を散らしたり、血の滲みを覚えたときに生み出されるのが『必殺技』なのである。





「さて、僕には当てがありますが・・・・・桂木さんの必殺技はどうしましょうか?」
「わ・・・私はいいですよ・・・・。そんなに上手くないですし、それに・・・・・」
「それに・・・・・?」
「こうして一緒に出られただけでも・・・・・」
ごにょごにょ
真っ赤な顔の二人の間に涼やかな風が吹き抜けた。






「兎も角、桂木さんにも必殺技を身につけてもらいましょう」
こほんと咳払いをもらしつつ、眼鏡をくいっと持ち上げるもどる。
「ええぇ〜と、一体何を・・・・・?」
少々不安げな美和子。
「少し高度なテクニックですが、貴女のひらめきと優秀な頭脳があれば可能です」
「そ・・それは?」
「『フェイント』です」





フェイント・・・・・それはスポーツ全般に通じる必殺技である。
                    これを使いこなすものは全スポーツさえ支配できるといわれている。
                    「偽の動作で相手を引き付けておいて、実は違う方向から攻める」
                    という兵法三十六計にも記されている戦術でもある。
                    相手の人のよさに付け込み騙しを食らわせる卑怯な技だが
                    スポーツ界では「良し」とされている。





「け・・・けど、どうやって?」
「簡単なことです、ボレーやレシーブするとき、見てる方向とは違うところへ打ち込むのです」
いともあっさり言いのけるもどる。
「しかし、そればかりやっていたら、ばれるのでは?」
どことなく不安げな美和子。
「フェイントばかりでは確かにそうでしょう。
  ですが、フェイントと真実を織り交ぜていけば、相手は必ず疑心暗鬼に陥るはずです」
自信満々な様子のもどる。
その自信がどこから来るのかわからなかったが、美和子はその自信にかけてみることにした。
こうして、この日一日は、美和子に「フェイント」を身につけさせるために費やされた。



そして、次の日。
こんどはもどるが『必殺技』を身につける番であった。
「『龍巻閃レシーブ』や『龍槌閃スマッシュ』等だけでは、だめですかね?」
苦笑混じりで、もどる。
「そうですね、『返し技』だけではままなりませんから、サーブが必要だと思いますね」
さすがは生徒会役員。
冷静な判断力で、美和子。
「サーブですか・・・・・・・・・」
少し考え込むもどる。
(テニスは、相手が放ったサーブを相手コートめがけて打ち返すとこから始まる。
  もし、そのサーブが打ち返せなかったら・・・・・? 
  また、打ち返せられないようなサーブを放たれたら・・・・・?
  ようするに、相手が打ち返せないようなすごいサーブを生み出せばいいのか!?)
短絡的な思考でそう思い至ったようだ。
(では、どのようなサーブがいいか?)
ここで武蔵は考えた・・・ではないが、自分の考えをまとめに入る。
(テニス漫画やアニメは少ないから参考にできないなぁ・・・・・。
  だと、同じ球技である野球からアイデアをいただくか・・・・・)
なんだか、とんでもないことを考えた様子。
けど、出てきたものは全部理論上無理なばっかな物ばかり。
(どう無理かは、八希望さんの『テニス大会特訓Lメモ「特訓プラスアルファ」』を参照のこと)
ここで、万策つきかけたもどるであったが、ある考えが頭に閃くと
それがもくもくと現実味を帯びはじめた。
それは、地獄の底にもたらされた一筋の光明=クモの糸のように救いをもたらしたようだった。
(そうか、『アレ』があったか・・・・・)
そして、ニヤリと笑いすぐに実行に移した。





そう、サーブさえ打ち返されなかったらそれでいいのである。
それはどういう風に?
そう、打ち返されないように気迫を込めて放てば良いのである。
テニスの球に全生命を込めればそれでよいのである。
どうやって?
天高くボールを掲げて、気迫を込める。
その気迫が自身の腕を通じて、ボールに注ぎ込まれる。
そして光輝いた時、漢の魂が充電完了したのである。
後はそのボールを相手コートに向けて打つべし打つべし打つべし!!
そうすれば、そのボールは魂の炎を吹き上げながら相手のコートに突き刺さる。
そう、このサーブは魔球や豪速球でもなく、気の球つまり「気球」である。
時々落ちる事がある。
漢は一端落ちるときもある。
だが、常に燃える瞳が遥か上を見つめていれば、必ずや良い結果を残すのである。
だからこそ、相手に強い信念がない限り破られることがないのである。





「すごいです、先輩」
美和子が歓心したようにはしゃぐ。
「・・・ただし、欠点が一つだけある・・・・・・」
少し、苦しそうにもどる。
「え?一体どうしたんですか?きたみち先輩」
何か異変を感じた美和子が、慌ててもどるに駆け寄る。 
「あまりにも膨大な『気力』を使うんでそう多投はできないってこと・・・・・。」
そういって、ばったりと倒れるもどる。
「先輩!大丈夫ですか?先輩!!」
心配そうに、もどるを起こそうとするが
「大丈夫、それよりも・・・・・・」
それを手で制止するもどる。
「ようやく、僕たちの必殺技ができあがったね」
くるしいながらもそう言ってにやりと笑うもどる。
「はい、でも・・・・先輩って大馬鹿者です」
目の端に溜めた涙をぬぐいながら、にこやかに美和子がそう言う。
「そうですか?」
「そうです」
ひとしきり見詰め合った後、どっちからともなく笑いあった。
こうして、二人の特訓が幕を閉じたのである。
だが、二人はまだ知らない。
お互いの間に生まれし新たなる力を。
お互いに愛し合うものだけが放てる究極のレシーブが身に宿っていることを
二人はまだ知る由もなかった。





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なんか、特訓の話になってないな、こりゃ(^^;
ともかく、それぞれの必殺技はこんなもんです。
あと、最後の思わせぶりな技。
これは、レシーブする際に、二人の気持ちが萌え上がった瞬間
力を合わせることにより放たれるという、某石破ラブラブなレシーブです(笑)。
この案は、デコイさんにいただきました。
デコイさんサンクス!
でわ、今回はこの辺で。