VSジン・ジャザムL”闘いに燃える男たち!”  投稿者:夢幻来夢
「お前が夢幻来夢か……」
 ジン・ジャザムは目の前に立つ少年を一瞥した。
「そや。ジン・ジャザムやな」
 夢幻来夢が不敵な笑みを浮かべながら応える。
「挑戦状、確かに受け取ったぜ。けど本気か?」
「無論や。あんたを倒して学園最強の名、貰い受けるで」
 そう言いながら来夢が構えをとる。その身体にはあふれんばかりの闘気が満ちていた。
「おもしれぇ、やれるもんならやってみな!」
 来夢の言葉にジンが吠えた。


(はじまったか……)
 声の主は屋上から二人を見下ろしていた。見物人と言った雰囲気ではない。
 鋭い双眸はその闘いのすべてを見極めるように二人に注いでいた。


「いくで!」
 来夢が吠えると同時に勢いのある上段の蹴りを放つ。
「遅いぜ!」 
 その蹴りをいともたやすく受け止めたジンが不敵に笑う。
 だが……。

 鋭い衝撃とともにジンの顎に来夢の蹴りが突き刺さった。
 受け止めたはずの来夢の蹴りが戻らずに射抜くように伸びてきたのだった。
「くっ、やるじゃねぇか」
 一瞬だけ目眩を感じながらジンが笑みを浮かべる。それは闘いに赴く戦士が浮かべるそれだった。


(まずは先手を取ったか。だがこの程度で倒れる訳はないな)
 屋上の男が呟く。
 ここまでは簡単に予想ができていた、先手を来夢が取ると言う事までは。
(問題はこれからだ……)
 ジン・ジャザムと言う男は格闘家ではない。ゆえに純粋な格闘戦闘において来夢に先手を取られるのは仕
方がないだろう。しかし、ジンは来夢と異なり打たせず打つのではなく打たせて打つタイプの人間だ。絶対的
な耐久力を持つ彼だからこそできる芸当なのだろうがそれは間違いなく理にかなっている。
(そんな小技ではジンは倒せないぞ……)


「じゃあ今度はこっちの番だな! 行くぜ! ロケットパーーンチッ!!」
 ジンが吠えた。と、同時に彼の右腕がうなりを上げて来夢に襲い掛かる。だが、飛来するその一撃を来夢は
いともたやすく躱していた。
 格闘戦闘を繰り返し、さらにはハイドラントとの実践訓練をつんでいる来夢にとってロケットパンチ程度は躱
せない技ではない。近接戦闘のラッシュに比べ動きが大振りになる技を見切る事はたやすいのだ。
「そんな動きじゃオレは捕らえられへんで」
 そのまま懐に飛び込んだ来夢の蹴りがジンの脇腹を捕らえる。

 だが、その一撃もジンにとってはさして影響がないようだった。当然と言えば当然のことだがジンはサイボー
グである。その身体の大半は鋼鉄でできている。しかもただのサイボーグではない。鬼、すなわちエルクゥの
血を引くジンは生身であったとしても恐るべき耐久性を誇っている。蹴りの一撃や二撃受けたところでどうこう
なる身体ではない。

(効いとらんのか?)
 自分の蹴りが直撃したにもかかわらず微動だにしないジンを見て来夢の動きが一瞬止まった。
「その程度の攻撃が効くかよ!」
 そこへジンの蹴りが放たれる。空手の一撃のようなその一撃は来夢の身体を捕らえた。

 グラっと体勢が崩れそうになるのを来夢は必死でこらえた。辛うじて受け止めたとは言え腕に衝撃が残って
いる。
(なんつー蹴りや。けどこれやったら坂下には及ばんな……)
 腕の痺れが取れるのを待つかの用に来夢はジンとの距離を取った。

「やるやないか。学園最強の名は伊達やないちゅー事か」
「お前もなかなかやるじゃねぇか。楽しめそうだぜ!」
 二人の修羅がにやりと笑みを浮かべる。
「けど、勝つのは……」
「俺だ!」
「オレや!」
 二人の声が重なった。


「ヒュゥゥゥゥゥゥ───────」
 来夢の呼気が変わった。全身に蓄積された”闘気”を練り、右腕に収縮させる。


「オォォォォォォォォォ──!!!」
 大気を、大地を振動させジンが吠える。己の内に眠る鬼、すなわちエルクゥの力がその声に呼応するかのよ
うにジンの身体の中を駆け巡る。



 それは偶然なのか、それとも必然だったのか。ジンと来夢、二人の一撃は同時に放たれた。





「黒破……雷神槍っっ!!」





「ブゥレストファイヤァァァァァアアアアア!!」






 来夢の右腕からほとばしる気の奔流が黒い雷撃と化してジンを貫こうとする。



 ジンの胸から灼熱のエネルギー波が来夢に向かって襲い掛かる。




 そして辺りは土煙にまかれた………。








(さて、どちらが勝ったのか……)
 屋上からその闘いを見下ろしていた男は視線を逸らさずに土煙を見つめていた。
 ”神威のSS”の奥義の一つでもある”黒破雷神槍”。
 ジンの内臓兵器の中でも高い火力を誇るブレストファイヤー。
 どちらも並みの技ではない。しかもタイミング的には同時、どちらもカウンターで攻撃を受けた事になるだろう。
(これで立っていた方の勝ちだな……)
 男の視線はあくまで冷たかった。


 そして土煙が去った。


 立っていたのはジン・ジャザム………、




 そして来夢だった。



「まだ、立ってるかよ……」
 ジンが呟いた。すでにエネルギーの大半は消耗し、大技を一度打てるかどうかである。

「へ、この程度で倒れ取ったら学園最強にはなれへんやろ……」
 応える来夢も既に満身創痍、気の巡らされていた髪も今の一撃に使ったためか地毛の黒に変わっている。

「で、どうする?」
「聞く事ないやろ」

 そして今度は二人とも相手に向かって飛び込んだ。

(格闘戦闘なら負けへん。俺の勝ちや!)
 来夢が心の中で叫ぶ。

(こいつで決めるぜ!)
 グッと両手を握り締めながらジンが笑う。



 そして勝負は次の瞬間ついた。
 地に伏していたのは夢幻来夢だった。


(何が……あったんや……)
 地面に叩き付けられた来夢は呆然と考えていた。
 自分の攻撃はジンを捕らえていたはずだった。だが現実は背中から地面に叩き付けられている。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
 ジンは目の前に倒れている来夢を見下ろしながら肩で息をしていた。もう自分に闘う力は残っていない。今
の一撃、”大雪山落とし”に残っていた力すべてをかけたのだ。これで立ち上がられたら恐らくは敗北する。

 来夢がゆっくりと身体を起こした。全身に激痛が走るがそのまま立ち上がる。
 だが、そこで終わりだった。力が入らないのか、そのままへたり込むように地面に倒れ込む。
「俺の負けや……」
 来夢が観念したように呟いた。




(投げ技か……。あんな技まで使えるとは思っていなかったな)
 屋上の男は来夢が崩れ落ちるのを見てきびすを返した。
 彼にとっては思わぬ収穫だった。本来は来夢がどこまで使えるようになったかを見るためにジンと闘わせて
みた。「学園最強の男と闘ってみろ」と焚き付けて。
 来夢の成長に関しては予想の範疇だった。あわよくばジンを超えれるかと思っていたがぎりぎりの敗北。こ
れについては問題なかった。彼が得た収穫とはすなわちジン・ジャザムと言う男が投げ技を使えると言う事。


「あ、ここにいたんだ、何やってたの?」
 屋上から降りてきた男に来栖川綾香が尋ねる。
「いや、たいしたことはしてない。それより何か用か?」
「うん、葛田くんが探してたわよ。導師〜って」
「そうか」
 男、ハイドラントは静かにうなずいた。

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後書き
 と言うわけで来夢VSジンさんです。ちょっと尻切れ蜻蛉かな? とか思う今日このごろですな(笑)
 しかし最初はもっと単純な闘う理由で書こうと思ったんですが昂河に先を越されてしまってこうなりました(笑)
戦闘シーンももっと格闘部分を中心に書こうと思ったのになぜか必殺技の応酬に……。
 まあスーパーロボットキャラの闘いはやっぱりこうでないととか思ってます(笑)
 しかし”大雪山落とし”って実は知らないんだよね、俺(笑) スパロボでゲッターが使ってるってこと以外は投げ
技で元が柔道技らしいってことだけです、知ってる知識。こんなで書いて良かったのかな?(笑)
 最後にジンさん、ハイドラントさん出演ありがとうございました。こんなんで良かったのかな〜とか思ってますが
まあ許してください(笑)