Lメモファンタジアシュミレーション「鬼畜王ハイドラント第2話」 投稿者:陸奥崇




『ハイドラント様、ハイドラント様、緊急事態が発生しました、至急会議室にお来しください。』
スピーカーから弥生の声で何度目かの呼び出しがかかった。
通常のことであれば何度呼び出しがかかろうと素直に赴くハイドラントではないのだが
相手が弥生さんであれば話は別である。

「くそっ、人がクソゲーを楽しんでいるときに呼び出しなんてかけなくてもいいだろうに…」
部屋でクロゲーを楽しんでいたハイドラントはさも不服そうに立ちあがった。
そして会議室に向かうため部屋のドアに近づいた時ふとあることに気がついた。
『ん?この部屋の扉って赤かったんだな………』
今まで気づかなかったが確かにハイドラントの部屋の扉は”赤”かった。
『♪』
そしてあることを考えたハイドラントは、上機嫌で扉に近づいた。
「扉が”赤”かったら男としてこのセリフを言わないわけにはいかんよなぁ〜。」
誰に聞こえるでもなくそう呟き、おもむろに扉の前で立ち止まる。
そして
「どうせだから俺は、この赤い扉を選ぶぜ!!」
クソゲーハンターとしての血が騒いだのか、デ○様の名ゼリフを叫び
扉を開け放つ。

『むにゅん』
しかし普通なら『バンッ!』という効果音が聞こえて
『俺はこの赤い扉を開けたぜ!』
という充実感で包まれるはずのところで何故か聞こえてきたのは
柔らかいマシュマロを握ったような音だった。
『はて?近頃の扉は妙に柔らかくできているんだな』
と、妙に心地よい柔らかさに手を何度か動かす。
『むにゅむにゅ』
『おおぉ!、もの凄く気持ちいいぞ!』
とその柔らかさに感激したハイドラントがどんな材質を使っているのかと”赤い”扉を見た瞬間
彼の顔に死相が浮かび上がり、そして見てはいけないものを見た。

ハイドンラントが”赤い”扉だと思い触っていたのは実は弥生の”胸”だった。
全身に汗が浮き上がり、彼は死を予感した。
「………ハイドラントさん、さっきから動かしているこの手はなんですか?」
まるで天使の微笑みとでも言うのだろうか、その弥生の笑みは1000点満点の笑みだった。
もっとも天使は天使でも堕天使の方なのだが。
「い、いや、これはですね、あの、その、色々と複雑な事情がありまして。」
なんとかして誤魔化そうと必死なハイドラント。
しかし神は無情だった。
「つーかとりあえず死ね☆ミ」
『ぺきょ!』
何かが潰れたような音がしハイドラントの首が180度曲がっていた。
あぁ、哀れなりハイドラント。

『死亡 「最後が弥生さんなんて!」』
GAME OVER



ちゃーちゃっちゃ〜、ちゃーちゃっちゃ〜、ピコーン。

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    →コンテニュー

「おはようございます導師、今日も応援してるからね♪(ぽぽっ)」



『ハイドラント様、ハイドラント様、緊急事態が発生しました、至急会議室にお来しください。』
スピーカーから弥生の声で何度目かの呼び出しがかかった。
「いったいどうしたのだ?」
一度目の呼び出しを受けてから即座に会議室に赴いたハイドラントは会議室に集まっていた
武将達に問い掛けた。

「……謀反です。」
ダーク13使徒の参謀的人物である弥生がそう答えた。
「謀反だと!?」
「そうです、先日のハイドラントさんの演説を聞いた後に離反した者達が
 終結して行動をおこしました。」
「ふっ、まぁいい悪い芽は早いうちに摘んでおくにかぎるからな。
 それで敵の戦力はどれくらいだ?」
「敵の戦力は我々ダーク13使徒・情報特捜部・風紀委員会・工作部を除いた
 来栖川王国の全ての部隊です。」
「はぁ!?」
その場にいた、全ての人物が凍りつく。
「す、全ての部隊っていうと第1から第8までの部隊全部か!?」
「そうです。まぁ、私があちらにいても謀反起こすでしょうね」
「くそう!俺様を馬鹿にしおってぇぇぇ!」
怒りに燃え葛田をボカスカ殴るハイドラント。
しかし殴れている葛田が妙に幸せそうな顔をしていたのに彼は気づいていない。
『あぁ、これも導師の愛』
「ねぇねぇ電芹、敵の全部の部隊ってどれくらいなの?」
「第1から第8までの部隊全てということでしたら5000人ほどですね、たけるさん。」
「えぇ!?5000人も相手にするの?」
「はい、国に残ってる全ての戦力でも2000ほどしかありませんので苦しいですね。」
「どうしようどうしよう負けちゃったら捕まっちゃうよ兵士に慰み者にされちゃうよ
 私の初めても奪われちゃうよどうしよう電芹。」
「他の男に奪われるくらいでしたら私が(ぽぽっ)。」
「う〜ん、神凪さん困りましたねぇ〜。」
「確かに困りましたね〜、神海さん捕まっちゃう前に実験に付き合ってくれませんか?」
「い、いや遠慮しておきます。」
「ふむ、このままだとバランスが悪いですね、少し相手の戦力を減らす必要がありますね。」
などと混乱しまくっている会議室であった。
「それでどうしますかハイドラントさん?」
「………そうだな、全ての部隊に召集をかけてくれ。
 目標はヨーク平原すぐに進撃する。」
「ヨーク平原ですか!?まさか正面からぶつかる気ですか。」
「そんなわけなかろう。それと工作部に魔力ブースターを急ぎで準備するように言ってくれ。」
魔力ブースターとは魔道師の魔力を一時的に増幅させるものである。
この説明だけ聞くと非常に便利なものに聞こえるかもしれないが、実際は魔力チャージに時間が
かかりすぎるため使うものは少ない。
少なくとも戦場に赴く者達が使うことはなかった。
「でな、作戦の内容なこうだ、皆耳を貸せ。」
「つまり、こうやって、そうやって、あ〜やって、こうする。」
ハイドラントの作戦説明を聞いた全ての顔がひきつっていた。
「さ、流石導師!」
「流石は鬼畜王だな。」
「ねぇねぇ、電芹なんだか楽しそうだよ♪」
「たけるさん、私には無謀な作戦にしか思えませんが……。」
「この作戦は我々ダーク13使徒にかかっている、皆頑張ってくれ。
 それでは進軍する!」


場所は変わりここは反乱軍本陣。
外では各部隊ごとに隊列や作戦の内容などが語られ、士気はかなり上がっていた。
「悠さん」
「?」
突然名前を呼ばれそちらを降りかえる悠朔。
「ん、ディルクセンか、どうした?」
悠の言うとおり彼の前には来栖川王国近衛兵団『風紀委員会副将軍』ディルクセンが立っていた。
「……いいのですか?王室付きの諜報部隊である『情報特捜部』のトップであるあなたが
 反乱軍の指揮をするなど」
「私のことは気にしなくてもいい。それを言ったら君だって良くはないだろう?」
「私が反乱軍に入っているのはハイドラントのこともありますが
 広瀬のことも気に入らないからです。私の方も心配はいりませんよ。」
今ディルクセンが言った広瀬といういのは来栖川王国近衛兵団『風紀委員会将軍』
広瀬ゆかりのことである。
ディルクセンは近衛兵団将軍という地位にいながら、あまりにも自覚がない広瀬と
いつも衝突していた。
悠の方は特にこれといった組織の対立があったわけではないのだが
彼の想い人であるプリンセス来栖川綾香がハイドラントが人質に取られたことで
居ても立ってもいられなくなったのだ。

普通に綾香が人質に取られたのならば悠もこんなに焦って兵を興すこともなかった。
しかしかつて来栖川王国に『若き天才魔道師ハイドラント』『若き天才剣士悠朔』ありと
共に大陸中に名前を響かせた強敵(とも)として
そして綾香を巡って闘いを繰り広げたライバルとして悠は黙っていることはできなかった。
幸いハイドラントの演説を聞いて快く思っていなかった者が多かったため
それらの者達を纏め上げ反抗勢力を築いたのだ。
「……それで用件はそれだけか?」
「もう一つだけ、敵が動きはじめました。」
「来たか!」
「はい、敵の数は約1000で指揮官はハイドラントです。
 ヨーク平原に向かって進軍しています。
「ヨーク平原にたった1000でか?」
ヨーク平原とは来栖川城から約5Kほど南に進んだ場所にある平原である。
特に森林があるわけでもなく罠をしかけるポイントなどもない。
絶対数で劣るハイド軍は奇襲もしくは罠などを張らないかぎり勝ち目はなく
そのどちらも無理なヨーク平原で戦を挑むのはどう考えてもおかしかった。
だからこそ悠は悩んでいた。
「……どう思う、ディルクセン?」
「何かしらの裏があるのは間違いないですね、それが何かまでは分かりませんが…」
「君ほどの者でも分からないか?」
悠にそんな言葉を言わせるほどディルクセンの軍師として能力は高かった。
大陸一と名高い流浪の天才軍師Runeには流石に言わないが、
HM帝国の元帥セリス、柏木国の近衛将軍柏木耕一、世界的流通的組織第2購買部の長beaker
そして来栖川王国の風紀委員副将軍ディルクセンとして世界に名を響かせていた。
「君でも読めないこととなると私がいくら策を練っても無駄だな。 
 素直に正面からぶつかるとしよう。」
「正面からは流石に危険ではないでしょうか?」
「正面からぶつかってみなければ相手の策も見えないだろ?」
「……まぁ、それもそうですね。」
「ではこちらもヨーク平原に向けて進軍する!」


……2時間後。

ヨーク平原でハイド軍と反乱軍がにらみ合っていた。
数の比では1:5、ハイド軍がなにかしらの奇策でも起こさない限り
ハイド軍に勝ち目はない。
「ふむ、特に目立ったものなども持ってきていないな。」
本陣から双眼鏡で敵の陣を見ながら悠が呟いた。
「隊列もオーソドックスな陣列ですね。」
こちらも双眼鏡を覗きながら呟くディルクセン。
「これなら正面からぶつかっても問題なさそうだな、
 左翼と右翼に伝令!敵を包囲するように前進! 正面に敵を誘いこめ!」

普通の戦は1時間やそこらで終わることはない。
しかし今回の戦は1時間で既に戦局が動き始めていた。
「敵は誘いにのってきたな。
 全軍に伝令!敵の進行を防ぎつつ全軍後退する!。」

「さて、ここは俺がしんがりを務める。援護頼んだぞ。」
そう言い放ち少数の軍を引き連れて最前線に出るハイドラント。
『さて、作戦ポイントはここから200mほど下がった場所だな』
今来た道を見つめ作戦のポイントを確認するハイドラント。
その時反乱軍の兵士が追いつき、襲いかかってきた。
「魔王ハイドラント、覚悟!」
襲いかかってきた兵士の剣を右手に持った剣で受け止め踏み込んで肘で突き飛ばす。
そして
「プアヌークの邪剣よ!」
ハイドラントの魔法が向かってくる数名の兵士を吹き飛ばした。

「司令官殿!ハイドラントが前線に出現しました!」
「なんだと!?どこだ」
部下の報告を受け双眼鏡で確認する悠。
その先には確かに兵士を相手にするハイドラントの姿があった。

「………くっ、俺も出る!」
「あ、ちょっと悠さん!」
本陣から飛び出す司令官二人。
この軽はずみな行動が戦局を決定させた。

暫くの間向かってくる兵士を適当に相手しつつ後退するハイドラント。
そして作戦開始のための合図を魔法を解放しようとした瞬間

「真・魔皇剣!!」
「!?」

敵陣から飛びこんで爆音と共に一人の男が飛来する。
「ハイドラントォォォォォォ!」
上空から力任せに剣を振り下ろす悠。
普通に上空からの剣戟なら上に向かって剣をなぎ払えばいいのだが
呪文の詠唱中であったハイドラントはかろうじてかわすことしかできなかった。
「お前は悠か!?くそっ、こんな時に!」

着地と同時に2本の剣を用いて上から横からと縦横無尽に切りつけてくる悠。
ハイドラントはかろうじて持ち前の体術と剣でかわしているが
やはり魔道師のハイドラントとしては接近戦は分が悪かった。
序々に圧され、今までハイドラントが抑えていた敵の兵士達が押し寄せてくる。
『くそっ、このままでは作戦は失敗だ
 こいつに逃げたと思われるのは癪だが仕方ない!』

「お前達、こいつの相手は任せた!」
少し離れた位置に逃げたハイドラントは側近達に悠の相手を任せると
呪文詠唱に入った。
「くそっ、きさまらどけぇ!」
流石に将軍クラスではないといえダーク13使徒の長であるハイドラントを護衛する者達。
常に二人がかりで悠に攻撃をしかけ戦闘以外の行動を不能にする。
その隙に詠唱を終え作戦の合図となっている攻城戦略級呪文を解放する。
「お前達、散れ!」
事前に照らし合わせていた作戦の発動部下に知らせ各々の方向に部下を
散乱させる。

地上での合図を聞いたダーク13使徒の特殊部隊員は早速行動をはじめる。
事前に地下に潜伏し、魔法で陥没させるというのがこの作戦の目的だった。
だからこそ魔力ブースターなど戦闘に向かぬアイテムを用い
なおかつ僅か1000程度の兵士で戦に向かったのである。

「さ〜て皆さんいきますよ〜。」
葛田の号令で地下の潜んだ魔法部隊が一斉にあらかじめ崩していた部分に向かって
魔力を解き放つ。

『ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!』

凄まじい爆音が木霊し反乱軍の4割ほどの部隊が地下に埋もれる。

このモグラ作戦が功を制し戦局は一変する。
反乱軍の本陣は戦局より奥にあったため無事だったのだが
指揮官たる悠とディルクセンが土に埋もってしまったため指揮官不在の影響で
士気が下がり、部隊間での連携もとれなくなり編成が取れたハイド軍に成すすべもなく
圧されていった。

そして戦闘開始より6時間後。
僅か1000の兵で5000の兵を下しハイド軍の勝利となる。

「う〜ん、流石は俺様だな、無敵無敵、わははははっ!」
勝利に酔いしれる隣では
『まさか本当に成功するなんてねぇ〜、偶然って恐いね〜』
『まったく、これでまた頭にのっちゃうね』
などという会話が繰り広げられていた……。

-----次回予告-----

反乱軍を抑えついに来栖川王国あらてめダーク王国を手に入れたハイドラント。
次の目標は自由部活連合か?それともHM帝国?
とにかくまずは国の戦力アップだ!
さぁ頑張れ、僕らのハイドラント!


-------続----------
あぁ〜、終わった〜。
何故か疲れたました(笑)。
どうにも僕には前編ギャグというのは無理のようでうすねぇ〜。
絶対シリアス部分が出てしまいます。
いつかはオールギャグで書いてみたいものです。
それでは、次回作でお会いしましょう、それでは〜。