L・学園の日常:「そして試合当日〜最強屋台決定戦〜中編」 投稿者:猫町 櫂
  春先の天気は崩れ易い。
  昨日まで晴れていたと思っていたら、いきなりの雷雨。「ころころ」と変わる。

  雨は屋台の天敵・・・。やっている人間もやりにくければ、お客さんもあまり
やって来ない。
  ・・・でも、たまにやって来るお客さんがいるのなら、お店は開けなくちゃな
らない。お客さんが喜んでくれる事・・・。これが、私の存在理由かも知れない
から・・・。

「すいませ〜ん、開いてますか?」
「はい、いらっしゃいませ。メニューをどうぞ」


====L・学園の日常:「そして試合当日〜最強屋台決定戦〜中編」====

  学園の中に緊張が走った。
  いつもの「戦闘的な」緊張ではないが、どこかぴりぴりした緊張。

  学園内の屋台の最高峰を決定する投票が行なわれているからだ。

  学生たるもの、ひいきの屋台の一つや二つ位あるもの。その選択眼が間違って
いないかどうかが、試されるのだ。
  妙な緊張感が学園を包んでも仕方あるまい。

「お前、どこに投票した?」「俺、ラーメン屋に全部」「俺はラーメンとタコ焼
きに一票づつだな」「俺は外の屋台に全部行ったけどな」「おいおい、そう来る
か?普通・・・?」・・・とか・・・

「ねぇねぇ、どの先輩に入れた?」「えっと〜、私はXY−MEN先輩かな」
「うっそ〜。櫂くんに入れない?普通」「私はディアルト先輩に全部、なんてね」
「あ〜、この浮気者〜っ」・・・とか・・・

  そこかしこでそういった話題が繰り返されていた。


「ディアルト先輩」
「葵ちゃん、どうしたんです?」
「今度のコンペ、頑張って下さいね」
  握り拳のいつもの格好でにっこりと言う葵ちゃん。
「・・・(じーん)・・・うん、頑張るね、葵ちゃん」

「XY−MENさん・・・」
「か・・・楓ちゃん・・・来てくれたの?」
「勝って下さい・・・信じているから・・・」
  真剣の応援してくれているのが、雰囲気からでも伝わる。
「大丈夫だぜ。俺は絶対に勝つっっっっっ!!!!!!!!!!!」

「猫町くん」
「・・・ひ・・雛山さん・・・どうしたんですか・・・?」
「私も良太も応援してるから、頑張ってね」
  普段の営業スマイルとはまた違う、満面の笑顔で告げる。
「・・・はい・・・。何か食べます?せっかく来て頂いたんですし・・・」
「いいの?やったぁっ!!」


   ただ・・・一日一日が加速度的に過ぎ去る中、この状況に「恐怖」しつつあ
る自分を感じていた事は、雛山さんには言えなかった。


  大会前日。雨。当然の如くお客さんはゼロ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
  冬に逆戻りしたかのような寒さ。吐く息も、白く濁る。憂鬱さが広がる。
  かたん。あ、珍しい。お客さんですね・・・。
「いらっしゃいませ・・・?」
「タコ焼きを貰おうか」
「・・・は、はい・・・?」
  いきなり声を掛けてきたのは、学校の物理の先生だった。
「柳川・・・先生・・・」
「どうした?  私がタコ焼きを買う姿がそんなに珍しいか?」

  じゅわ、じゅわじゅわ〜。
「良い手際だ・・・学園最強屋台にエントリーされるだけの事はある・・・」
「そうでしょうか・・・?」
  手を止める事の無いまま、呟く。
「私には、そんな資格はないんじゃないかと思っています。明日も辞退しようか
と思っていますし・・・」
「・・・ふん・・・」
  先生の瞳が、やや細まった・・・ような気がした。
「いいか・・・私のような「殺戮の戦い」を行なう者にとっては自分の本能が第
一だ。だが・・・熱っ」
  出来たてのタコ焼きを口に運びながら、言葉を続ける柳川先生。
「だが、お前達の様に「優しい戦い」を行なう者はそうじゃないのだろうな」
  そこまで言って、ほうじ茶をすする。
「今、辞退したら、残りの二人はどう思うか・・・それを考えてみろ」
  かたん。湯呑みを置き、椅子から立ち上がる。
「・・・なかなか美味だったぞ。明日の大会、楽しみにしている・・・」

「優しい戦い・・・か。俺も・・・そんな戦いが一度してみたい物だ・・・」
  柳川先生のそんな自嘲的な笑いは、雨にかき消され、誰の耳にも届かなかった。


  ぱん・・・ぱん、ぱん・・・。
  花火(イベントでよくある音と煙の奴)が打ち上げられる学園の中庭ステージ。
飾り付けられたキッチン設備が3つ、ステージ上に並んでいる。
  そして、食材の数々。
  黄ピーマンをかじって吹き出す長岡さん。
  みんなが予想するであろう、「あの」半ば無駄に重厚なBGMが流れている。
「いよいよ始まる最強屋台決定戦!!会場のテンションも盛り上がって来た所で、
選手の入場です・・・」
  会場にある全ての瞳がステージに注目する。
  そして、特設テレビの前にも、たくさんの生徒が集まっていた。

  BGMが変わる。「真ゲッター」の旧OPらしい。
  アニソン業界の御大の声と、重厚な音楽が嫌が応にも緊張感を刺激する。
「赤レンジ、”最高のラーメンを創る男”ディアルト〜っ!!」
  「ステージ下からせり上がって来る台に乗って」登場するディアルトさん。包
丁で見事なパフォーマンスをしている。
  「気」によって創り出された包丁が、陽光を反射して輝く。

「続いて青レンジ、”タコ焼き一筋頑固一徹”XY−MEN〜っ!!」
  入場テーマは、「炎の転校生」!!しかも島本版!!!!!
  一部男子生徒が拳を思わず握り締める。はっきり言って「熱い」。  
  ステー(同上)て登場するXY−MENさん。エプロンには、どっかの中華料
理人の様に謎のキルマークが刻まれている。
  そして、入場テーマに鼓舞された心を表わすかの様に、拳を虚空へ突き上げる。

「そして白レンジ、”最大のレパートリーを持つ男”猫町  櫂〜っ!!」
  シンセサイザーが凄まじいばかりの「風」の効果音を生み出す。
  「吹けよ風、呼べよ嵐」。A・t・ブッチャーの入場テーマである。
  そして私も、ステー(同上)て登場する。普段の服装の上に、校内巡回班用の
羽織を肩に引っかけ、腕組みをしながら上がってくる。
  いわゆる「がんばすたぁ立ち」。風に羽織がはためく。


「解説は、お料理研究会前部長の、柏木  梓先輩」
  一部の人間の熱狂的な叫び(解説不要約2名)を半ば苦笑つつ、一礼する梓先
輩。
「そして実況、私、長岡  志保でお送り致しますっ!!」


「料理時間は30分迄。試食者全員分のメニューを完成させる事が条件ね。判定
は試食者5人の点数の合計で決定するわ」
  転がり草が転がってそうな程緊張した中、ルールの説明がなされる。

「それでは・・・30分料理勝負・・・レディー・・・」
「「「「「「「GO!!!!!!!」」」」」」」


「さぁ、各自食材コーナーに走った!!  慎重な目付きで選別している模様だっ」
「食材の善し悪しは、料理に結構響くからねぇ」

  緊張感あふれるステージを、シッポさんやデコイさん等のTVクルーが走り回
っている。
「・・・こちら突撃レポーターの城下です。放送席どうぞ」
「はい、レポーターどうぞ」
「えっと、各選手に対戦前にインタビューを取ってありますんで、言いますね〜。
まず、ディアルトくんが・・・
  「今回は畑違いの人が相手ですけれど、勝つ気でいきますよ」
そして、XY−MENくんが・・・
  「食ってみれば分かるっ!!」
で、猫町くんが・・・
  「実力を出せるようにはしたいです」
・・・以上です。放送席どうぞ〜」

「各選手気合入ってるって感じですねぇ。どうですか、梓先輩?」
「気合も大事だけど料理は心だからね」
  呟く梓先輩。時間は、刻々と過ぎて行く。


「ディアルトは持ち込んだ麺生地を伸ばしに掛かっているっ!!すばらしい!!
まさに芸術的な腕前だっ!!」
「麺の生地を伸ばすタイミングといい、力配分といい、申し分ないねぇ」
「XY−MEN・猫町の両名は生地を作っている段階の様ですね」
「タコ焼きにしろお好みにしろ、早く動いても失敗するし、遅れても失敗する、
微妙な所だから、早くは動けないのよね」


  そして、事態は10分過ぎに動いた。
「お〜っと、XY−MEN・猫町の両名がタコ焼き板を加熱し始めたっ!!
これは、タコ焼き職人としての猫町の宣戦布告かっっっっっ!!!!!!」

  沈黙0.5秒。

「「「「「「何ぃぃぃぃぃぃっっっっっっ!!!!!!!!」」」」」」

「面白ぇ・・・真っ向勝負・・・って奴か?  その勝負、乗ったぞっ!!」
  XY−MENさんの闘争心に火が付く。
「猫町くん・・・そりゃ無茶って物やで・・・」
  保科さんが特別観覧席から呟く。
「勝負を棄てる気かっ?  それとも何か隠し球でもあるって言うのか?」
  YOSSYFLAMEさんが観客席で驚いている。
「正面から勝負するつもりかっ!!  櫂くんっ!!  それは無謀すぎるぞっ!!」
  セコンド席からきたみちさんが叫ぶ。


  くす。


  その言葉に、何故か、微笑んでしまった。
「・・・大丈夫ですよ・・・」


  アナウンスが聞こえる。
「残り・15分です」
  そして、各コーナー共・・・追い込みが始まった。


======

  はい、お待たせしま・・・って誰も期待していなかったら寂しいな。
  という気持ちで一杯の猫町です(ぺこり)。

  柳川先生ファンの方、(いたら)ごめんなさい。イメージ歪めちゃいましたか?
  格好良い柳川先生に挑戦・・・して、こけてます(苦笑)


  さぁ、次回、誰が勝利の栄冠を掴むのか、全く未定っ!!
  あなたの一票が決め手に・・・
  ・・・やめよう。それやったら負けそうだ、俺。

  ・・・と、いう訳で・・・
  次回いよいよ結果が明らかに・・・期待せずに待てっ!!!!!!