春。生命の息吹が聞こえそうな程、新しい誕生の似合う季節。 そして・・・冬は潮が引くように去る。思い出と別れを残して・・・。 「あ・・・名残り雪ですね・・・」 ちらちらと降る雪。煉瓦の敷かれた中庭に降っては、すぐに消えてしまう。 見上げると、ロンドを踊る名残り雪が見える。 氷の精たちの最後の円舞曲が終わるまで・・・中庭にいる事にしましょう・・・。 =====L・学園の日常:「取材のあった日〜最強屋台決定戦〜前編〜」===== 朝。・・・仕事上の理由から学寮に入る事を遠慮しているので、テント生活なの だが・・・起きると、恐らく今シーズン最後であろう霜が降りていた。 「・・・う〜ん・・・っ」 大きく伸びをする。身体を伸ばす事で、朝の「気」を取り込むかの様に。 軽く仕入れを済ませてから、学校へと向かう。 誰もいない、早朝の街。でも、街は生きている。そう感じる。 その後、ジョギングがてら、新聞配達の手伝いをするのが最近の日課である。 誰の手伝いかは・・・さておき。 昼。昼食戦争の最中。ディアルトさんが中庭にラーメン屋を出している。そして XY−MENさんもタコ焼きを焼いている。どちらのお店も盛況の様だ。 校舎にもたれながら、呟く。 「・・・儲かってる・・・って、いいですねぇ・・・」 神凪さんが、「きしめんさん、タコ焼き下さい」「ディアルトさん、醤油ラーメ ンお願いします」と言って列に並んでいたり、保科さんがお弁当片手にタコ焼きを 買っていたり、Yinさんの所のアイラナステアさんがレッドテイルさんとラーメ ンを食べていたり、結城さんがラーメン丼片手に座り込んでいたり、望さんがタコ 焼きをぱくついていたり、シッポさんとデコイさんがタコ焼きを買いつつ何かアン ケートを取っていたり、楓さんがタコ焼きの皿を持って立っていたり、阿部先生が ラーメンをすすっていたり、その他の生徒の方たちが思い思いの方に並んでいたり ・・・。 「まぁ・・・仕方ないですね。屋台は外ですし・・・」 そう言ってラピ○タ昼食(要するに、トーストに目玉焼きを乗せた物)を食べる。 冷めているとこれがまた・・・不味い。(何で奴等は平気な顔で食えたんだ?) 陽射しが・・・温かい。瞳を細めて呟く。 「春近し・・・ですね・・・」 放課後。屋台を開店する。タコ焼きだけでなく、色々な物(ソース系から、甘味、 ジュースまで)を扱っているので、それなりにお客さんは多い。 机(パラソル付)と椅子を置く。折り畳みの効くこの机は、開店半年の記念にと 工作部の方から頂いた物だ。 「すいませ〜んっ」 「はい、いらっしゃいませ・・・?」 声を掛けてきたのは、情報特捜部の方々だった。 「えっと・・・何にしましょう?」 「それよりさぁ、一つ頼みがあるんだけど・・・」 特捜部を指揮しているらしい、長岡さんが言葉を続けた。 「今度、部の雑誌で、「学園最高の屋台」っていう特集をやる事になってね。それ で、この屋台もその対象に入るから・・・っていう連絡をしに・・・ね」 「・・・・・・?」 いきなりの話。確かに、屋台を開いている方はいますし・・・。 「で、採点方法なんだけど・・・」 こっちの困惑を他所に話を続ける。 「まず、7日後に「味」の勝負を付けて貰うわ。場所と時間、判定方法は後で指示 って所ね。で、「値段」と「雰囲気」は生徒の投票で決定。質問ある?」 ・・・と、ここまでいきなりまくし立てる。 「・・・・・・えっと・・・」 「ないんなら、行くわよ。必要事項は伝えたから。頑張ってね」 ・・・で、去っていった。 「・・・参りましたねぇ・・・。タコ焼きじゃXY−MENさんには絶対に勝てな いですし・・・ディアルトさんとは全くの畑違いだし・・・」 同時刻その1。 (参ったなぁ・・・「何でもあり」な櫂と・・・「ラーメン」のディアルトか・・ ・これってえらく不利じゃねーのか・・・俺はタコ焼きだけだぜ・・・) 同時刻その2。 (こっちは半分趣味でやってるのに・・・本職の人2名と対戦なんて・・・しかも 畑違い・・・) ・・・と、実はまぁ、全員参っていた。 こうして、史上空前の屋台料理対決の幕は・・・開かれた。 次の日・・・の朝。校門すぐの掲示板に「でで〜ん」と書かれたのは・・・ 「第一回・学園最強屋台選抜選手権!!! 学園にある3つの屋台の内、最強の屋台を決定しますっ!! 「雰囲気」・「値段」はみんなの投票で決定!!応募用紙は情報特捜部まで!! 「味」は・・・コンペによって決定!!場所は中庭特設キッチンリング!!日時 は6日後の放課後!!!!!奮って参加の程を!!! 主催:情報特捜部 後援:第二購買部」 「こんなに大規模なんですか・・・」 見た瞬間の感想は、こうだった。ぽりぽり頭をかく。 「よぉ、櫂」「猫町さん、おはよう」 振り返ると、いつも通りキャップを目深に被ったXY−MENさんと、改造ブレ ザーを着たディアルトさんが立っていた。 「あ、きしめんさん、ディアルトさん・・・おはようございます」 ぺこりと頭を下げる。 「なぁ、この件で相談なんだが・・・」と言いつつXY−MENさんは後ろの張り 紙を指差しつつ話す。 「・・・本気で勝負しないか?」 「・・・え?だってもともと・・・」 「XY−MENさんは猫町さんが遠慮して手を抜くんじゃないか・・・って言って るんですよ」 ディアルトさんが言葉を続ける。 「・・・やっぱり、分かってました・・・?」 「どうせ「占いの方もあるから」と言って手抜きするつもりだったんだろうけど、 そんなので勝っても嬉しくないしよ。それに、そんなんでライバル減らしたくない しな」 「私も、それは賛成です。・・・勝ちに行きますけどね、悪いですけど」 二人は笑いながら言う。 「・・・ふぅ。分かりました。今回は本気を出させて頂きましょう」 XY−MENさんが手を出す。ディアルトさんが手を重ねる。その上に私・・・。 そして、さらにその上にもう一度XY−MENさんの手。 「それじゃあ・・・いざ、尋常に・・・」 「「「勝負っっっっ!!!!」」」 こうして、何故かフラッシュの焚かれる中、私達はお互いの健闘を祈った。 なお、この写真は「屋台対決直前特集号(別冊増刊)」に載っていたらしい・・・ ========== はい、やっと始まりました屋台対決L。どなた様もしばしのお付き合いを・・・。 と、言う訳でこんにちは。「なんでもあり屋台」猫町 櫂 でございます。 今回の構想自体は、結構前からあったんですが・・・何分遅筆な上に駄文なので、 時間がかかって仕方が無いんです(言い訳)。 〜今回の出演者の方〜 まず主役張ってるXY−MENさん、ディアルトさん。すいません(平伏) そしてチョイ役の神凪遼刃さん、アイラナステアさん、レッドテイルさん、 結城光さん、八希望さん、シッポさん、デコイさん(出演順)・・・ごめんなさい。 「好きな物」欄に、「タコ焼き」又は「ラーメン」と書いてしまった不運を呪って 下さい(苦笑)。 もう少し続く予定なので、宜しければ次の屋台もおいしくいただいて下さい(苦笑)