テニス大会協賛L OLH家大反省会の夜 (3) 投稿者:OLH

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 そして、その夜。既にパーティ参加者達も帰宅し、皆、寝静まった頃。
 つい先程までの喧騒も、嘘のように静まった居間で。
 OLHはソファーで空き腹を抱えて、毛布に包まっていた。
 それというのも、どういう訳か、お仕置き期間中は勇希が泊まるという事
になってしまい、寝室は笛音、ティーナと勇希の3人が使っているためであ
る。
 もちろん、そうなる前には一悶着あったのだが、OLHの意見が通る事な
ど、このメンツではありうるはずもない。

 そんな状況に空腹も手伝って、なかなか寝つかれずにいたOLHだったが、
ようやく訪れてきた睡魔に身を任せようとしたところで。
 こんこんと遠慮がちなノックの音が響き、返事を待たずに、かちゃり、と
ドアが開かれた。

「……OLH君、起きてる?」
「……なんだよ、こんな夜中に?」
 入って来たのが勇希とわかると、OLHはぶっきらぼうに聞いた。
「ん。ちょっと夜這いに」
「……おおいっ!」
 ずざざざざっとOLHが部屋の隅に飛びのく気配に、勇希はころころと笑
いながらソファーに腰かける。
「やぁねぇ、冗談よ冗談。そんな事もわからないの? 私がOLH君のとこ
なんかに夜這いに来る訳、無いじゃない」
「……俺のとこなんか?」
 なんとなく憮然とした表情でOLH。
「あら、して欲しい?」
「んな訳、あるかっ!」
「んもう、照れちゃって」
「照れるかっ!」
 小さく怒鳴りながら、それでもようやく安心(?)したのか、OLHもソ
ファーに戻り、腰を下ろした。

「……んで……何の用だよ?」
 不機嫌になりながら、少なくとも表面上は警戒を解かずにOLHは勇希に
問いかける。
「差し入れ。お腹減ってるでしょ?」
「……差し入れ?」
「余り物で作ったんだけど。ほら」
 言いながら勇希は、一緒に持ってきていたらしい盆を差し出した。
 その上には湯気を立てる大きめの丼と、お椀と小皿。
 いったい何が有るのかと覗いてみれば……
 鶏のから揚げを玉ねぎと煮込んで卵でとじたものをのせた、から揚げ丼。
 箸休めに、たくあん3切れ。
 味噌汁も流石にインスタントなのだろうが、きちんと刻んだネギを浮かべ
てあるのが、芸の細かいところだろう。

「……何を考えている?」
 未だ不信そうな眼を向けているOLH。
 だが、勇希もいつもの柔らかな笑みを浮かべたままで。
「OLH君も笛音ちゃん達の気持ち、わかってるんでしょ?」
 ことんと盆をテーブルに置いた。
「……当然だ」
 ぶすっとした表情で一拍置いてからOLHは返事をし、そのまま言葉を続
ける。
「この『罰』が、俺が約束を守れなかったのを変に気にして落ちこまないよ
うに、っていう、あいつらの心遣いだって事ぐらい、十分承知してる」
「うん、よしよし。ちゃんとわかってるわね。だからこれは私からのご褒美」
「…………」
「食べ盛りの男の子がご飯抜き5日間なんて耐えられる訳ないでしょ?」
「……食べ盛り、ってなぁ……」
 まるっきりの子供扱いに、OLHは苦虫を噛みつぶしたような顔になる。
 だが、そのOLHの態度を気にした様子も無く。
「あ、器は自分でちゃんと片づけてね」
 自分の仕事は終わったとばかりに、勇希はさっと立ち上がると部屋を出て
行った。

「……さんく」

 遠ざかる控えめな足音が聞こえなくなってから。
 それでも注意深く、短く、聞こえないように。
 OLHは呟いた。

   〜 〜 〜

 腹も満たされ、ようやく落ち着いた気分で眠れそうになり、頭から毛布を
かぶろうとしたところで。
 注意深く薄く開けられたドアから、控えめな声がOLHを呼んだ。
「……お兄ちゃん、寝ちゃった?」
「……ん、いや。起きてる」
 その返事に、ほっとしたようにティーナが入って来た。

「もう、夜中だぞ。どうしたんだ?」
 先程の勇希に対する態度とはまったく逆に、微笑みながらOLHは言う。
「んとね、笛音ちゃん達には内緒だよ?」
 そう言ってティーナの差し出す大きめの紙皿には、サンドイッチがどっさ
りと乗っていた。
「……ご飯抜きの刑はいいのか?」
「ん。だから、内緒。ね?」
 ティーナは少し悪戯っぽそうな笑みを浮かべる。
「……ん。わかった」
 OLHもにっこり笑って、ティーナの頭を撫でてやった。

 よほど腹を空かせていると考えたのだろう。
 ティーナの持ってきたサンドイッチは、たっぷり2人前ぐらいあった。

 ティーナが横で嬉しそうに見ているせいもあったのだろうが。
 もちろん、OLHはそれを、かけらも残さずに胃に収めたのだった。

   〜 〜 〜

 さすがに腹具合が窮屈だったが、それでも満ち足りた睡眠を取れそうだと
OLHが考えた瞬間。またもや、そっとドアが開かれる気配がした。

 当然、笛音が持ってきた大きなおにぎり4つを、OLHは残さず平らげた。


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 結局。
 それから「ご飯抜きの刑」の終了日まで。
 OLHは同じ様な夜を繰り返したのだった。


=== 了 ===

……えー……パーティの場面、最初はほんのつけ足しでした。
……なのに、なんであんなに暴走するんだろ?(笑)
さらに、テニスとはかなり無関係になっちゃいましたし。
おかげで、自分としては最長記録となる話になってしまいましたし。

んで、さすがにパーティ部とそれ以外の部分は別の話にしようかとも思った
んですけど、なんとなく分割しにくくて……つーか、勇希が主役級の話を続
けて2つにするのは無性に悔しかったので止めました。
……つか、なんで、勇希が善人なんでしょーか?(笑)
私は非常に疑問です(笑)

いちお、関係する辺りの話は読み返したりした(はず(笑))なのですが、
これだけの量になると私の能力ではおっつかなくなるので、前提とか状況が
間違っている可能性もかなり有ります。
さらに既に出ている話と矛盾してたりするかもしれません。
で、もしそーゆー事がありましたら、ごめんなさいということで……
各登場人物への謝罪は、書いてたらきりがないと思うので省略(笑)

んで、最後にYOSSYさんへ。
まだまだ終了までは時間かかりそうですけど、ぜひ頑張ってください。



=== 問題 ===

上の文からOLHが不幸なのか幸福なのか、理由を添えて書け。



=== 舞台裏 ===

 廊下の角で、こそこそとOLHに食事を運ぶ笛音とティーナを見ながら、
勇希はくすくすと笑う。

「ほーんと、OLH君も大変よねぇ」

 しかし、その内容とは裏腹に、勇希にOLHを心配している様子は、ない。

「さってっとぉ……明日は何をご馳走してあげちゃおうかな」

 そうつぶやく勇希の表情は、心の底から楽しそうだった。



=== 問題2 ===

舞台裏まで含んだ本文からOLHが不幸なのか幸福なのか、理由を添えて書
け。