=== テニス大会エントリーLメモ 笛音 Version === 投稿者:OLH
 ……ぽちゃん……
 ……さびしいな……

 ……ぽちゃん……

 ……お兄ちゃん……

 ……ぽちゃん……

 …………

 ……ぽちゃん……

=== テニス大会エントリーLメモ 笛音 Version ===

 OLHお兄ちゃんが琴音お姉ちゃんとテニス大会に出る、そう私達に宣言し
た翌日。私は学校が終わっても家に帰らないで、ずっと川原に座っていました。
そして時折、傍の小石を拾っては川に投げ込んでいました。何もしたくなくて。
昨日は大丈夫だったのに、改めてお兄ちゃんが琴音お姉ちゃんにパートナーの
申し込みをしに行く、その事を考え始めてしまったら、頭から振り払えなくて。
 お兄ちゃんがまだ琴音お姉ちゃんを諦めてない事。私はそれをうすうすは感
じていたのですが、その事実をつきつけられ、それまでに無い悲しみに襲われ
ていたのです。
 もっとも幼い私は、その悲しみがどこに根ざしているのか、それを自分で正
確に理解することはできませんでした。それは、お兄ちゃんが自分を必要とし
ていないのではないかという悲しみ、自分が捨てられるのではないかという不
安、自分は琴音お姉ちゃんの代用品でしかないかという恐怖。お兄ちゃんが自
分の元から離れてしまうという考えがどれほどまで苦しいものであるのか。私
は一人、それをもてあましていたのです。
『だいじょうぶ。お兄ちゃんはわたしたちのために、たいかいにでるんだもん』
 そう心でつぶやいても、不安はどんどん増殖していきます。

 琴音お姉ちゃんは私にとって……越えねばならぬ存在、でした。お姉ちゃん
と私はある特別な関係で結ばれ、だからこそ最大のライバル、最後の目標でも
あったのです。しかし当時の私はあまりに幼く、だからもし、お兄ちゃんの事
でお姉ちゃんと争わなければならなくなった時……私には自信が有りませんで
した。だから……お兄ちゃんが琴音お姉ちゃんと一緒に大会に出る、その事が
私に重くのしかかっていたのです。

 ……ぽちゃん……

 ……さびしいな……

 ……ぽちゃん……

 ……お兄ちゃん……

 ……ぽちゃん……

 何をするのでもなく、いえ、何をするのも怖くて。私は小石を川に投げ込ん
ではお兄ちゃんのことを想い、つぶやく。ただそれのみを繰り返していました。


「あれ? 笛音ちゃん、なにしてるの?」
 どれぐらいの時が経ったのか。かなり日も暮れた頃、私はとある男の子に声
をかけられました。私がゆっくり振り返ると、そこには……てぃーくんがいた
のです。
「……あ……てぃーくん……」
 力無い私のつぶやきが心配になったのか、てぃーくんは小走りに私の元によ
ると、しゃがみこんでじっと私の顔を覗き込みました。
「もうそろそろ家に帰る時間だよ」
 そして優しい声で私にそう言ってくれたのです。
「……うん……でも……」
「どうしたんだよ。OLHにーちゃんと喧嘩でもしたの?」
「……ちがうけど……」
「よかったら話してみなよ」
 にっこりと笑って、てぃーくんはそう言ってくれました。私はその笑顔のお
かげで、ほんの少し心が軽くなり、だから理由を話す事にしたのです。

 お兄ちゃんが私達のためにテニス大会に出ようとしていること。
 でも、お兄ちゃんはそのパートナーに、私もティーナちゃんも選んでくれな
かったこと。
 一度は承諾してしまったけれど、やはりお兄ちゃんが琴音お姉ちゃんと大会
に出るのが何か悲しいこと。
 そんなことをポツリポツリと話しました。
 てぃーくんは黙ってそれを聞いていてくれました。
 そして一通りの事を話し終わって。

「ふーん。テニス大会にね」
「……わたしも……お兄ちゃんといっしょにでたかったな……」
 私は小さな声で、そうつぶやきました。
 それから少しの間を置いて、突然てぃーくんは立ちあがると、私の手を引い
て無理やり立ちあがらせました。
「だったらさ、僕と一緒に出ようよ」
「……え?」
 私は一瞬、何を言われたのかわかりませんでした。
「テニス大会。それでOLHにーちゃんに、笛音ちゃんだってちゃんとOLH
にーちゃんの役に立つんだって所を見せようよ」

 私はその言葉で目の前が開けるような気がしました。
 振り返ればそれまでも、私が積極的に行動すればお兄ちゃんが必ず応えてく
れた事、たとえそれが失敗ごとであっても優しく慰め、そして誉めてくれた事。
そんなことを思い出していました。

 何事も積極的に行動すれば必ずうまく行く。
 怖がって何もしなければ、何事も進展はしない。
 しっかりと自信を持って、自らの望みに向かう。
 例え相手が琴音お姉ちゃんであっても。

 そんな事を漠然と考え、私は一気に元気が出てきました。
 そして力いっぱいてぃーくんに返事をしたのです。
「……うんっ!!」
 その返事にてぃーくんは安心したように微笑みました。
「よおし、どうせだったらOLHにーちゃんも倒して、優勝しようね」
「うんっ!!」
 そして私達はそんな約束を交わしたのです。

=== 了 ===

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(どたんばたん)
(もがもがもがああああああ)

えと、ふえねです(ぺこん)
お兄ちゃんが、またぼうそうしそうなので、わたしがかわりです。
こんかいのおはなしは、みらいのわたしのかいそうというかたちだそうです。
…………。
えっと、じつはこのあと、わかれぎわに、てぃーくんのほっぺにちゅっとして
はしりさっていくシーンだったんだけど、なんとなくだそくになるんでSSと
しては、けずったんだそうです。
…………。
でもね、ほんとはしっとなんだよ(笑)

あと、このできごとのすうねんごで、わたしが『あの時、川原でうずくまって
たのがティーナちゃんだったら……やっぱりテニス大会に誘った?』ってきく
シーンもおもいついてたけど、やっぱり、いれられるばしょがなくてやめたん
だってほっとしてたよ(笑)

それで、わたしもてぃーくんとテニスたいかいにエントリーなので、みんな、
おうえんしてね♪