テニス大会協賛L 秘密特訓Y&O 2  投稿者:OLH
 しゅっ ぴしっ しゅばっ!!!
「うがあああああっ!!」
 しゅっ ぴしっ しゅばっ!!!
「なぜだあああああっ!!」
 しゅっ ぴしっ しゅばっ!!!
「でえええええっ!!」
 しゅっ ぴしっ しゅばっ!!!
「どわあああああっ!!」
「もう、うるさいわねっ!」
 がつん。
「うぎゃっ!!」
 そしてOLHは頭を抱えて座り込み、しばしの間痛みに打ち震えた。

=== テニス大会協賛L 秘密特訓Y&O 2 ===

「まったく、特訓してるってのに騒がしいんだから」
 ラケットで肩をぽんぽんと叩きながら、OLHを見下ろして勇希がそう言う。
「だからってラケットで殴るこたないだろっ! ラケットでっ!!」
 OLHは、がばっと立ち上がるとそのまま勇希につめよった。
「あら、だってこれぐらいしないと君、静かにならないじゃない」
 しかし、勇希はにっこり笑いつつ、さらりと受け流す。
「疑問の叫びぐらい許容しろっ!」
「何が疑問なのよ」
「だから『ツインビーム』があっさりできることがだよっ!」
「馬鹿ねぇ。そんなの決まってるじゃない」
「じゃ、説明してみろっ!」
 ぴっ、と人差し指を立てて勇希が言った。
「私とOLH君の息がぴったりあってるからよ」
「だからそれが疑問なんだってばっ! 何で俺とおまえで息があう!?」
「さあねぇ。たぶん付き合いが長いのと、OLH君が読みやすい性格してるか
らじゃないかしら?」
「単純で悪かったなっ!」
「あら、素直だって誉めてるのよ」
「う゛う゛う゛う゛う゛」
 所詮、口喧嘩で女に勝てる男はそうはいない。また頭を抱えて座り込んでし
まったOLHを、しかし勇希は気にせず話を続ける。
「ほらほら、こんなことでごねててもしょうがないでしょ。それよりそろそろ
次の必殺技の特訓にいくわよ?」
「……ちょっと待てえええっ!! この上まだ別の技、身につけるってか!?」
 再度詰め寄るOLHを、これまたにっこり笑って受け流しつつ勇希は答えた。
「もちろん。どんな強豪に当たるかわからない今回の大会で、まさか必殺技が
一つで十分なはず無いでしょ?」
「それはそうかもしれんけど……」
 大会の参加メンバーの事を思いだしたようで、OLHはあきらめた表情になっ
た。
「で? 今度のはどーゆー技なんだ?」
「まず、前衛がボレーに行くと見せかけて、わざとスルーするの。それを後衛
がリターン。基本的にはそれだけ」
「それじゃ必殺技でもなんでも無いじゃないかよ」
「そう。ただそれをギリギリのタイミングでやるのよ。後衛も前衛のほとんど
真後ろからで」
「?」
 よくわからない、といった表情のOLHに勇希がさらに詳しく説明する。
「つまりね、後衛がリターンを打つ瞬間を前衛は身体を使って隠すわけ。で、
後衛も前衛の身体めがけて、もしくはギリギリのところを狙ってボールを打ち
返す」
「ふむふむ」
「で、前衛はそのボールが通過する一瞬だけ身体をずらすの。そうすると敵側
からはボールが身体を通過して飛び出してきたように見えると」
「……無茶言うないっ!!」
「あら、そんなこと無いと思うけど」
「できるかっ、んな事っ!!」
「できるわよ。だって、ほらこれ」
 そういうと勇希はOLHにその本を見せた。
「……またそれかいっ!!」
 それは前回、勇希がOLHに見せた本だった。
「さて、じゃ納得してもらったところで、特訓特訓」
「だあああ、自己中心女あああああっ!!」
 そう叫びつつも素直に従ってしまうOLHだった。

 そしてコートに立ったところで、ふと疑問になったOLHが勇希に訊ねた。
「で、どっちが前衛やるんだ?」
「それはもちろん、OLH君……」
「……やっぱりかい」
「……が後衛で、私が前衛をやるわ」
 その言葉を聞いてOLHはまた慌てて勇希に詰め寄る。
「待てよっ! なんでおまえが前衛やるんだよっ!」
「あら。だって、なんだかんだ言って君の方がショット強いじゃない」
「どうせ目くらまし技なんだからショットの強さは関係無いだろ!」
「それに君の方がヒネ球打つの得意でしょ」
「だからって、危険な前衛の方を任せられるかよっ」
「あら、私のこと心配してくれるの?」
「誰がおまえの事なんざ心配するかよ」
「もう、ほんとかわいいんだから」
 そっぽを向いてそう言うOLHを勇希はぎゅっと抱きしめた。
「だああ、止めろってばっ!」
 慌てて勇希の手をすり抜けると、OLHは勇希にラケットを突きつける。
「そーゆー誤解を受けそうなことをするのは止めろっ!」
「ほんと、からかいがいがあるわね」
 にこにこしながら勇希はそう言った。
「とにかく、だ。前衛は俺がやるっ! いいな!?」
 ごまかすようにOLHは叫ぶが勇希は気にする様子も無い。
「んー……じゃ、こうしましょ。前衛はどっちもやることにして、どっちの場
合も特訓しておくと」
「だから、なんでそーなる?」
「だって、その方がいろいろパターン作れそうじゃない。この際、技のパター
ンは多いほうが有利でしょ」
「ぐうう……じゃ、試合でもこっちの技はぎりぎりまで出さない。出すときは
俺が前衛をメインで、勇希が前衛のパターンもぎりぎりまで出さない、で、ど
うだ?」
「そうね、その方がフェイクになって面白いかもね」
「よし、決定。じゃ、やるぞっ」


 そして、その後。
 そのテニスコートではあっさり「スルーショット」ができてしまい、またも
疑問の雄たけびを上げるOLHの声で満たされることになる。

=== 了 ===

とゆーわけで、2回戦突破記念です(笑)
ちなみにこれも某「テニスボーイ」とゆー古い漫画にあった技です(笑)
さすがに技の名前までは覚えてないけど(笑)
たしか、インドのペアの技だったような。

あ、さらに思いつき。「スルーショット」に見せかけてそのままボレーとか、
「スルー」させないで後衛がロブとかしても面白いかも。
うん、決めた。応用技でそれも身につけたことにしよう(笑)

んじゃ、まだ先は長そうですが頑張ってください>YOSSYさん