戦隊Lメモ 『学生戦隊ガクセイン』 第一話「誕生、ネオ・ガクセイン!」 投稿者:OLH
注意:このSSはL学園とはたぶん関係ありません(笑)
戦隊Lメモ 『学生戦隊ガクセイン』 第一話「誕生、ネオ・ガクセイン!」

「ほーたーるのぉ、ひーかーありぃ……」
 体育館から流れ出る『蛍の光』の調べ。卒業式もいよいよ、そのフィナーレ
を迎えようとしている。涙を流しながら歌う者、晴れやかな顔つきでどうどう
と歌う者、面倒くさそうな表情の者。卒業生達の様々な姿を見ながら、風見ひ
なたはある種の感慨に浸っていた。
 風見ひなた、17歳。この4月で高校3年となる。彼の通うL学園では生徒
会長を勤め、教師や生徒からの信頼も厚い。
 やがて4月になれば最上級生として、また生徒会長としての責任が彼の肩に
かかってくる。生徒会長としての役割はそれまでもこなしてきたわけだが、こ
れまでは前生徒会長OLHのバックアップがあった。それがこれからは、この
巨大な学園を代表するものとして、すべての重圧が彼にかかる事になる。しか
し風見はそれすらも楽しむ余裕が出てきていた。この半年の経験が彼を成長さ
せていたのである。

 やがて式も無事終り、風見はOLHのところへ改めて祝いの言葉をかけに向
かった。
「よう、ひなた」
「先輩、ご卒業おめでとうございます」
「そうだな、ま、何とか無事に卒業できたわけだし、確かにめでたいわな」
「先輩、その斜に構えた態度はそろそろ止めた方が良いですよ。先輩もこれか
らは社会人としてやっていかなければならないんですから」
 肩をすくめて皮肉そうに言うOLHを、風見はたしなめる。
「まったく、相変わらず固いやつだな。もっとも、だからこそ俺は生徒会を任
せて安心して卒業できるんだけどな。俺の前の生徒会長はそりゃ心配しながら
卒業してったもんだぜ」
「そんな。先輩だって立派に会長をつとめあげたじゃないですか」
「ありがとよ。お世辞でも嬉しいぜ」
「僕がお世辞を言うわけはないでしょう」
「そうだな、うん。ここはありがたく礼を言っとくよ」
「そうそう。素直が一番ですよ」
「まったく……」
 風見の言葉にOLHは苦笑したが、すぐにいつものにやけた態度に戻ると言
葉を続ける。
「ま、生徒会の方はよろしくな。お前なら本当に何の心配もないけどな。おっ
と、心配ごとは一つあったっけ。副会長……美加香君の尻にしかれないように
しろよ」
「そんな、ひどいです」
 風見と一緒にOLHに祝いの言葉をかけに来ていた少し小柄な人物が、ぷっ
と頬を膨らませてOLHに抗議する。赤十字美加香、風見と同じくこの4月で
3年生になる少女である。それまでも彼女は生徒会副会長として、公私様々な
面まで含めて風見のサポートをしてきている。
「それじゃまるで、私がひなたさんの奥さんみたいじゃないですか」
「なんだ? 違うのか?」
『違いますっ!』
 期せずして二人の声が重なる。そしてその事に少し気まずそうな、その実嬉
しそうな様子の二人を、OLHはにやにやしながら見やった。
「そうそう、忘れてた。ひなた、これをやるよ」
 それまでの少しふざけた態度から一転、まじめな表情になると、OLHは自
分の手首から少し大きめな腕時計をはずし風見にそれを渡そうとした。
「そんな、こんな高そうなもの。それに普通は逆で卒業する先輩に僕から……」
「あ、ひなたさんもですか」
「え?」
 遠慮する風見に、横で見ていた美加香が同じ様な腕時計を見せながら説明す
る。
「私も式の前に前副会長さんからいただいたんですよ」
「いやな、種明かしすると、これは代々の生徒会役員に受け継がれてきた物な
んだわ。で、俺も前会長から受け取って、今おまえに託してる、と。ついでに
言えば、来年お前が次の会長に渡すってわけさ」
「なんだ、そういうことだったんですか。わかりました。それでは1年間、僕
がしっかり預からせていただきます」
「おう、頼むぜ。これで引き継ぎは完全に完了ってことだな」
「はい。先輩は安心して巣立ってください」
「おうよ。ま、これからも時々遊びに来るとは思うけどな」
「えー? お舅さん付きの生徒会なんて、私はいやですよぉ」
「えいっ、文句言うな!」
 そう言いながらOLHは美加香を軽く叩く真似をし、美加香も少し身をすく
めて見せる。そして3人はお互いを見て笑い声をあげた。
「はははっ。んじゃ俺はそろそろ帰るからよ。元気でな」
「はい。先輩もお元気で」
「遊びに来るときはお土産をお願いしますね」
「おう。ま、期待しとけ」
 そしてOLHは校門を後にした。残された二人は、卒業証書の入った筒を振
り上げ、いつまでも手を振るOLHの姿が見えなくなるまで彼を見送った。
 気の早い桜の花びらが降るその光景を、風見は生涯忘れないだろうと思った。

  〜 〜 〜

 やがて短い春休みも終わり、入学式がやってきた。その式場で風見は、新学
期初めの仕事として新入生に向けて体育館の壇上で祝辞を述べていた。
「……それでは、みなさんがこれからの3年間を充実したものとして過ごされ
る事をお祈りして、お祝いの言葉とさせていただきます」
 風見が拍手にあわせ一歩下がって礼をしようとしたとき、それは起こった。

 がちゃーん!!

 突然天窓がけたたましい音とともに破られ、黒の覆面に全身黒ずくめの男が
会場に飛び込んできたのだ。同時に体育館後ろのドアがバタンと開かれ、こち
らは青い覆面、一見背広のような、しかしシャープなフォルムをした濃紺色の
エナメル質の服を着込んだ男達が乱入してくる。そして男達が周りを取り囲む
間に、天窓から進入してきた怪人物はゆっくりと新入生達の正面に回りこむと、
いつの間に用意したのか手に持ったワイアレスマイクで語りはじめた。
「ふはははははは。新入生諸君! 喜び給え! これより君達は、金の卵とし
て我等シャッカーの戦闘員となって働いてもらう事となった!」
「そんな! みんな明るい青春を夢見てこの学園に入学してきたのに!」
 他の者達が愕然となっているなか、舞台正面右側、生徒会役員席にいた美加
香が立ち上がって叫ぶ。だが怪人物はそれにはまったく反応せず、辺りの男達
に司令を下す。
「いいか、抵抗しない者は丁寧に扱えよ。彼らはこれからお前達の下働きにな
るんだからな。よし、では後ろの方から連れていけ!」
「止めろっ! 新入生に手を出すなっ!」
 ようやく我にかえった風見はそう叫んで怪人物に飛びかかろうとしたが、し
かし、舞台袖から生徒会顧問の斎藤勇希教諭がそれを制止した。
「駄目よ風見君! こっちに来て!」
「しかしっ!」
「いいから早く!」
 勇希教諭の剣幕に押され、風見は舞台袖に飛び込む。一瞬遅れて壇上では煙
幕弾が炸裂した。
「みんな、早くこっちに来てっ!」
 勇希はそう言うと校舎に向かって走り出した。気がつくと生徒会役員5人が
そこに集められていた。そして既にかなり遠くに行ってしまった勇希を風見達
5人はわけもわからず追いかける。やがてたどり着いた先は生徒会室だった。
勇希は奥にあるロッカーの前に立つと、取っ手に何か押し付けながら一気に扉
を開いた。
「いい? 私についてきなさい」
 そして後ろを振り返りそう言うと勇希は中に飛び込んだ。驚いた事にその中
はシューターになっていて、地下深くに続いているようだった。
 その穴を覗きこみ、風見と美加香は顔を見合わせる。しかし風見はすぐに決
断を下した。
「……ここは躊躇してる場合じゃなさそうだし……行こう」
 風見の言葉に一同もうなずく。
「それじゃ……てやっ」
 まずは自分からと風見はその深い穴に身を躍らせる。予想よりも長い距離を
滑り降りると、風見は機械郡に四方を囲まれた異様な部屋に到達した。その雰
囲気に飲み込まれ茫然としていた風見だが、上の方から聞こえてきた悲鳴に、
はっとなった。
「きゃ〜、ひなたさん、どいてどいてどいてくださ〜〜〜い」
 しかし狼狽していた風見は避ける事ができず……

 ごい〜〜〜ん

 激しい音を立て、あわれ、美加香の下敷きとなってしまった。
「あたたたた……」
「ふえぇぇ、痛いです〜」
 漫画的な表現ならば頭のまわりにひよこが飛びまわっているところである。
それでも、なんとか立ちあがろうとする二人だったが、その暇も無く、今出て
きた穴から降ってきた、新たな悲鳴に襲われた。
「うわわわ、お前達どけってばっ!」
「ひゃああああ」
「助けてぇぇ」

 ごごごい〜〜〜〜〜ん

「………………」
「あなた達、そんな事でどうするの。しゃんとしなさいっ!」
 一番下になり、完全につぶされた状態の風見がなんとか首をひねって上を見
ると、斎藤勇希教諭が両手を腰にやり、半ばあきれたような表情で風見達5人
を見下ろしているところだった。よく見ると、いつのまにか勇希は幾つもの勲
章の様な物や、顔写真入りの身分証明書の様な物をぶら下げた、まるでどこか
の軍隊の司令官の様な服に着替えていた。
「勇希先生、いったい……その格好は?」
「先生じゃないわ。いい、今後ここでは私の事は司令と呼ぶように」
「司令い?」
 まるっきり見たままの事を言われて、風見達5人は少し呆れ果てた。

  〜 〜 〜

「そう。OLH君達前生徒会メンバーも、実は裏ではガクセインとして戦って
いたのよ」
「そうだったんですか……」
 あまりの事に、にわかには信じられないといった表情の5人。彼等は今、L
学園生徒会の真の顔の話を聞かされたところなのだ。勇希の話では代々のL学
園生徒会メンバーは『ガクセイン』となり、裏では『シャッカー』との戦いの
日々を送っていたというのである。
「まだ信じられないみたいね。いいわ、証拠を見せてあげる。あなた達、左手
を出しなさい」
 そう言われて5人は左手を前に出す。その腕には、全員OLHが風見に渡し
たものと同じ腕時計がはめられていた。
「よしよし、みんなちゃんと持ってるわね。それじゃ3、3、5ってボタンを
押して」
 いぶかしみながらも風見が勇希から言われたとおりにボタンを操作すると、
突然腕時計が輝きはじめ、風見の全身を光る粒子で包んでしまった。やがて輝
きが収まると全身をぴっちりとした真紅のスーツを身にまとうシルエットが現
れる。
「さあ、いきなさい、ガクセイン・レッド! シャッカーを倒すのよ!」
 勇希は満足そうな表情で、そうガクセイン・レッド=風見に命令した。

  〜 〜 〜

「そうだ。おとなしくしてれば危害は加えない。黙ってそのトラックに乗るん
だ」
 校庭では黒覆面の怪人物が新入生を校門に乗り付けられたトラックに誘導し
ようとしているところだった。しかし、そこに澄んだ声が響き渡った。
「そこまでだっ!」
 怪人物があたりを見渡すと、カラフルなスーツを身にまとった5人の人影が
校舎の方から近づいてくるのが目に入った。
「……くっくっく……そうか。貴様らが新しいガクセインか。だが我等シャッ
カーが本格的に活動を開始した今、貴様らに未来はないっ!」
「若人の、輝かしい光を、お前達には渡さないっ!」
 怪人物の宣言に、しかしガクセイン・レッド=風見が叫び返す。
「ふっ、威勢だけはいいな。よかろう。我が名は、メーサク。俺自らが相手と
なってやろう。いくぞっ!!」
 怪人物、メーサクはそう叫ぶと口元に不適な笑みを浮かべながら、ガクセイ
ン・レッドに向かっていった。
「ヒラシャインっ! お前達は他の奴の相手をしてやれっ!」
「イーッ!」
 走りながらも部下に向かって指示を下し、同時にメーサクは腰につけたサー
ベルを引き抜く。
「らあああっ!」
 そして渾身の力を込めガクセイン・レッドに打ちかかった。
「うわたたたたたた」
 なんとか身をかわしたガクセイン・レッドだが、さらに連続してメーサクが
切りかかる。
「うらっ! うらっ! うらっ!」
「うわっ! うわっ! うわっ!」
 その様子を司令室からモニターで見ていた勇希が、マイクに向かってガクセ
イン・レッドに指示を出した。
「ガクセイバーを使うのよっ!」
「が、ガクセイバー?」
「早くっ! マニュアルを見ればわかるわっ!」
「ま、マニュアル?」
 容赦無い攻撃を避けながら、それでも意識を凝らすとヘルメットに装備され
たオーバービュー・ディスプレイにガクセイバーの説明が現れる。風見は一気
に跳躍しメーサクから離れると態勢を整えなおした。そして腰に装着されたス
ティックを握り締める。
「ガクセイバー!」
 風見の気合に反応するようにそのスティックからエネルギー粒子がほとばし
り、光の剣が作り出される。
「たあっ!」
 そして再度跳躍すると、今度は一気にメーサクに切りかかった。
「くうっ!?」
 メーサクは驚きながらも、自らのサーベルでガクセイバーの斬撃を防いだ。
双方の剣から火花が散る。
「てえええええっ!!」
「があああああっ!!」
 力対力の押し合いは、しかし、あっけなくけりがついた。
「てええええ、うわっ!?」
 いきなりメーサクが力を抜き、しゃがみこむと、そのまま回し蹴りをガクセ
イン・レッドに放ったのだ。結果、風見はバランスを崩し、そのまま地面に倒
れこんでしまった。
「これまでだな」
 すかさずサーベルを喉元につきつけ、メーサクがにやりと笑う。
「くっ……」
 しかし、その時……
「ガクセイバーっ!!」
 叫びと共にエネルギー粒子がメーサクの足元に打ち込まれた。慌てて飛び退
りメーサクがその声の方を向くと、ガクセイン・ピンクがマグナムモードのガ
クセイバーを構えているのが見えた。さらにまわりを確かめると部下達の大半
は他のガクセインに倒されている。
「……くっくっく……命拾いしたな。まあ良い。勝負は次回の持ち越しとしよ
う」
 そう言うとメーサクは地面に何かを叩きつけた。

 シュバッ!!!!!

 あたりに閃光が走った。反射的に目を押さえた風見達ガクセインが次に目を
あけた時、シャッカーは全て撤退していた。

「……くそう……」
 風見が地面に拳を打ち付ける。
「そんな、悔しがらないで下さい。新入生達は守れたじゃありませんか」
「しかしっ!」
「大丈夫です。ついさっきガクセインになったばかりで、あれだけの事ができ
たんですから。次は絶対メーサクを倒せます」
 ガクセイン・ピンク=美加香の言葉に、しかし風見は素直にうなずくことは
できなかった。

  〜 〜 〜

「……まだまだ……始まったばかりなのよ、あなた達の戦いは。頑張りなさい」
 その様子をモニターで見守る勇希司令の瞳は優しさと厳しさで光っていた。

=== 第一話 了 ===



昔々、その昔にチャットで行われた即興劇をベースにして、暖めて、練り上げ
て、煮詰めて、そして焦がしてしまいました(笑)
ネタとしてはあと3話分ストックがあるので続きを書くつもりは有りますが、
ま、気長に待って下さい。
なのに、他のガクセイン3人のキャストは、未だ決まってません。どーしたも
んだか(笑)

なお、冒頭にも書きましたが、これは純粋なLメモじゃありません。性格も多
少違ってますし。