テニス大会エントリーLメモ「そんな、声まで変わっているなんて……(古い・笑)」  投稿者:神無月りーず
「なぁ、おまえどーするよ?」
「もちろん参加するぜ、なんてったって優勝商品があれだろ」
「だよなぁ、こんなチャンス見逃す手はないよなぁ」

 最近こんな会話が、学園のいたるところで聞かれるようになった。
 原因は、一週間前に掲示板に張り出された一枚の紙切れからであった。

『暗躍生徒会主催 男女混合テニス大会
 優勝商品は隆山温泉ペア二泊三日招待』

 色物イベント多い試立Leaf学園にしてはやや平凡ともいえるこの企画、最初こそ優勝商
品が提示されていなく、しかも主催が暗躍生徒会というのもあってか、あまり注目度が高
くなかったこのイベント、しかし優勝商品が有名な隆山温泉に、しかも「ペア」で招待と
なれば話が違ってくる。テニス部員はもちろん、これをきっかけに意中の女子と仲良くな
ろうと競い合って参加する男子(もちろん声を掛けて玉砕した生徒もいたが)がどっと押
し寄せた。

 そして、ここにも――

「…温泉旅行…これは、チャンスだっ…」

 学園にいま、新たな戦いが巻き起ころうとしていた。






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   テニス大会エントリーLメモ「そんな、声まで変わっているなんて……」


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 朝、教室はホームルーム前の一睡眠をとる生徒や昨日のドラマの内容を話す生徒などで
にぎわってていた。
「葛田さんは来てるっ??」
 と、そんな喧燥にも負けないくらい大きな声で扉を開けて一人の生徒が駆け込んできた。
 駆け込んできたのは、一見すると少女と見まごう容姿をした神無月りーずであった。た
だ今日は制服の上着はボタンはかかっていないし、いつものさらさらの髪もぼさぼさであ
った。まるで朝起きて着替えもそこそこに飛び出してきたようだ。
「りーず君おはよう。葛田さんならまだ見てないよ」
 そんなりーずをいったん驚いたように見つめ、廊下に近い席で初音とゲームの話をして
いたゆきがそう答える。
「ありがとっ、それじゃっ」
 挨拶もそこそこに再びりーずは教室を飛び出して廊下を走り去っていく。
「ねぇ、ゆきちゃん、りーず君の声いつもより高くなかった?」
「そうだった? 気がつかなかったけど…」
「うん、まるでほんとの女の子みたいだったよ…私びっくりしちゃった…」
 初音とゆきは顔を見合わせ……再び会話に花を咲かせた。

(いったい何処に行ったんだ、葛田さんは!!??)
 廊下を駆け回りながらりーずは自分の胸を押さえた。息が苦しいからではない、走りに
くいからだ。もしすれ違う生徒が注意深く見ればその胸が微妙に揺れているのが分かった
であろう。幸いというかそこまで注意してみる生徒はいなかったが。
 人類の約半分を占める生命体、XX染色体保有体、メス…まぁいろいろ言い方はあるが…

 ――つまり、現在りーずは女だった。
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 時は現在より15時間ほど溯る。

「…と、いうわけで一緒に出ようっ!…」
 放課後、生物部部室で薬品整理していた神無月りーずに葛田玖逗夜は開口一番そう言っ
た。
「何が『と、いうわけ』ですか…僕は出ませんよ」
 りーずは葛田のほうをちらりと見るがすぐに棚のほうに向き直り、薬品のラベルをチェ
ックしその残量と入荷日を記帳するという作業に戻った。まったく興味なし風である。
「大体、僕じゃなくて月島瑠璃子君を誘えば良いじゃないですか」
「…僕だって、僕だって瑠璃子さん誘おうとしたさ……だけどっ…」
「……誘おうとするたびに月島先輩が出てきて邪魔されたらしいですよ」
 今日も今日とて自分のアフロはずすため分析実験をしているYinがテーブルの向こう
から葛田の言葉を続けた。


 曰く――


 葛田 「…瑠璃子さん、僕と一緒にテニス大会に出てくださいっ…」
 瑠璃子「うん、いいよ……あ、お兄ちゃん」
 拓也 「…太陽の日を受けてきらめく汗、真っ青な芝生のコートで踊る真っ白なテニス
     ウェア…健康的なフトモモ、覗くパンチラ…るるるる瑠璃子のフトモモとパン
     チラぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!」

 ちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちりちり…………っっ

 葛田 「…むぎゅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!??…」


 ――ということらしい。


「ふーん…」
「鼻血噴出しながら電波撒き散らすんですから、あれじゃ誰も誘えませんよ。しかも結局
同じ一年の響君と、瑠璃子さんは一緒にテニス大会出る事になっちゃってるし――」
 Yinは苦笑して軽く肩をすくめ――
「…プアヌークの邪剣よっ…」
「むぎゃぁっ!?」
 葛田の光熱魔術を受け、沈黙。ちょっと焦げたアフロがいい香り。
「…だから、もう君しかいないんだっ…」
 Yinを光熱波で黙らせた葛田は息を切らせてりーずのほうに振り向いた。目が血走っ
ている。
「それでもだめですってば、僕と葛田さんじゃそもそも参加資格がないじゃないですか」
 りーずはそんな葛田の気迫にちょっと毛押さえながらも、大会予告のチラシの一角を指
差した。確かに『参加資格は男女ペアのみ』とある。
「…だから女――…」
「――装はいやですよ」
「…しくしくしく…」
 一考の余地もなく却下。葛田、敗北。
 りーずはそれを尻目に黙々と作業を続けていた。もっとも実はさっきの話のときから手
は動かしっぱなしだったのでもうほとんど終わりだったのだが。
 相変わらずそっけないというか淡白である。
「んー…と…あれ??」
 棚の奥から瓶を取り出したりーずは首をかしげた。本来薬品名が書いてあるシールが擦
り切れていてまったく読めなくなっている。
「葛田さん、これなんでしょう……かっ!!??」
 振り向いた瞬間、りーずが立っていた脚立の足が折れ、がくん、と大きく体勢が崩れて
体が前に倒れる。
 そして傾いた衝撃で薬品瓶が手から離れ、空中に放り出された。
 瓶はくるくるときれいな弧を描いて回転し――

 ばちゃ

「うわっぷ!?」
 ――りーずの頭に中身をぶちまけた。
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 以上、回想終わり。
(あれだっ、ぜぇったいあの薬品が原因だ。思えばおかしかったんだ。あの後葛田さん
妙に素直に帰してくれたし…)
 必死の形相でりーずは廊下をひた走る。
「葛田さんっ――」
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・・
 そんでもって……更にいくつかの教室を回って、もうじきホームルームと言うところ
で、その体格ゆえ教室に入れないので廊下でうろうろしているJJとすれ違った。
「お、りーずさん、さっき葛田さんが探していたぜ」
「なにぃぃぃぃぃぃ、何処でですっ、何時何分何処にいたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??」
 りーずは食いつくようにJJの胸倉をつかんで――あ、馬だから無理か――もとい、た
てがみを引っ張って乱暴に揺さぶった。
「そそそそんなに焦るなよ、そこの廊下でだって…あ、ほら――」

 ふぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ

「…りぃずくぅ〜〜〜〜〜〜ん♪…」
「うひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……って、葛田さぁぁぁぁぁぁぁぁん、いったいどーいう事
ですか、これはっ!!??」
 首筋に息を吹きかけられ鳥肌立てつつも自分の胸を指差し、凄い剣幕で葛田に詰め寄る
りーず。
「…うんうん、うまくいったようだね…ささ、これでテニスに出れるよねっ…」
 それに対し、りーずの胸を見て満足げに葛田はうなずいた。
「やっぱりぃぃぃぃっ……じゃなくて元に戻る薬はないんですかぁっ!!??」
「…ん? そんなのないよ…」
 残酷な現実が、葛田の口から告げられる。
「は??」
「…だから、ないんだって(にっこり)…」
 ゆっくりと目の前が暗転する。
(ああ、もう一生このまま……?? 耐えられない、絶対そんなのに耐えられない…耐え
られないなら、いっそ……)


 …………………………………………ぽんっ♪


「わ〜い、おにーさま会いたかったですぅ〜(だきっ)」
 りーず、現実逃避でろーずに薔薇反転。
「…ろーずっ、会いたかったっ!…(ひしっ)」
 熱い抱擁を交わし、葛田はろーずの耳元でそっと囁いた。
「…ええとね…(さわっ)…実は頼みがあるんだけど…」
「なんですかぁ?? あんっ…おにーさまの頼みだったら何でも聞いちゃいますよ」
「…実は今度テニス大会があるんだけど…(はみっ)…僕と一緒に出てほしいんだ…」
 葛田は耳元で囁きながらさりげなくなんだかいろいろしてたりする。
「うひゃぅ…はぁ……はぁい、もちろん出ますぅ」
「…ありがとう、きっとろーずなら出てくれると思ったよっ…(がばぁっ!)」
「きゃ、おにーさまったらこんなところで…あんっ、駄目ですよぉ〜」
「あんたら…学校の廊下で何やっとるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 パカ、パッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンっ

「…絶対に優勝して温泉旅行こぉぉぉぉぉぉぉねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜…」
「ああん、おにーさま、二人きりで温泉なんて恥ずかしいですぅぅぅ〜〜〜〜〜〜!!」

 恋路を馬――JJに邪魔され、それでもお気楽幸せな二人であった。
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 ――後日、『「女装、もしくは男装」でも出場は可能』と言う裏ルールを知ったりーず
が半狂乱になって学園内で暴れまわったのはまた別の話だったりもする。




 葛田玖逗夜×神無月ろーず(りーず)出場決定っ!!

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 アフロに参加できなかった分、今回は絶対に参加したかったんだけど…何とか間に合っ
た…・・・(安堵)
 それにしても…いやぁ、難産難産……やっと書きあがってこの出来かい、僕(涙)
いろいろ不満はあるんですけど(Lキャラとか)、締め切りと言う事で結局アップ(汗)
(ゆきさん、Yinさん、JJさん、しゃべり方おかしかったらごめんなさい(ペコリ))
 あ、ちなみに裏ルール、事実です(笑)<女装・男装出場可
 今からパートナーいなくて出れないって人もこれでオッケーっ!!(笑)

 って事で、よっしーさんへ:
 この大会では僕は女の子(ろーず)です、当然ミニスカです。
 そこんとこ、よろしく(笑)