我が刃を携えよ狩人4.1 投稿者:Rune
<前回までのあらすじ……って何で短編が続いてんだ>
 ルーンらの策略により、密室半裸の男女魅惑のうきうきパニック事件がついに起こる。
 2年生の更衣室が舞台なのに何故かいるぞ1年生のヒメカワ星人!
 そして暗躍生徒会に入会、何でそんな無謀な真似をしたんだミヤウチ星人!
 更に目覚めたは、エディフェルの前世を持つ慎み深い(筈だった)エルクゥ柏木楓!
 そしてご存知絶対争乱鎮圧火器乱装少女Dセリオ!
 4つ巴の大激闘の幕が、今切って落とされた!
「るーちゃん……僕らって今回出番は……」
「ないねぇ」
「とほほ(死語)」

 うぞうぞうぞうぞ。
 チャバネメタオたちが駆け巡る。
「っきゃあああああっ!?」
 とりあえず理緒が慌てふためいて着衣を胸元に引き寄せた。
 ……………………
 ……………………
 違和感。
 そっと。
 そっと、自分を見下ろす――
 あまり豊かとは言えない胸に、しっかとメタオが――
「うひゃぁぁぁぁぁっ!?」
 とりあえず前よりもパニックになってメタオをひっ掴み、ぶん投げた。
 それは大きくカーブを描いて――
 すかこぉぉぉぉぉんっ。
 同じくパニックに陥って固まっている瑞穂の後頭部に命中した。
 そして――
 閃光。
 ギャグ漫画よろしく髪の毛をちりちりにさせて、瑞穂がぼーぜんと突っ立っている。
 胸から何かこみ上げてくる衝動。
 けぽっ。
 黒い煙を咳と共に吐き出して、瑞穂はそのまま俯せに倒れた。
「うげぇ……(汗汗汗汗汗)」
 浩之が呻こうとして――
「何じっと見てるん、藤田君!」
 いきなり後頭部をはたき倒された。
 さすが委員長。
 着替えも鬼のように素早い。
 返す右手の人差し指で、悠朔と西山英志を指さす。
「あんたも! あんたも! 何ぼーっとしてんの! 早よ出ていき!」
 言われずとも。
 少なくとも良心的な男子生徒は出ていこうとしていたのである。
 だが。
「鍵がかかってるですよねー……これが」
 のんびり(外見上は)答えるT。
「これが、で済むかっ! 俺たちの命がかかってるんだぞ!?」
 喚く昌斗をよそに、智子を密かに慕うFoolが、ひきつった笑顔で理性的な情報交換
を持ちかけようと試みた。
 智子は――というか女子一同は――男子更衣室のドアがロックされているために男子が
この場から逃れることができないということを知らない。
 その状況さえ伝われば、これが不可抗力であるということも伝えられる筈だ――
「ほ・保科さんっ!」
「何?」
 冷たい視線。
 寒い。非常に寒い。
「えーと、実は、そのっ……」
「後で聞いたるから早よ行きっ!」
 行きたいんだけどね。
「実は、ドアに鍵がかかって――」
「っぅわぁぁぁぁぁっ!?」
 説明しようとした矢先に智子当人から悲鳴が上がる。
 見れば、肩先に止まったメタオがうりゃうりゃと触角を振っている。その内の一本が、
ぴしぴしと智子の頬を叩いていた。
 智子だって、花も恥じらっちゃったりする乙女であるからして。
 やはり、こゆのは弱かった。
 …………男なら強いのか、とゆーと、必ずしもそーでない気がするが。
「っゃぁぁぁぁぁっ!?」
 肩口からメタオを払い落とす智子。
「だ、大丈夫、保科さんっ!?」
 慌てて近づくFool。
 ぜえぜえと息を荒らげて智子は頷こうとし――再び、固まった。
 Foolの頭にも。うりゃうりゃと2匹ほどメタオが睦んでいる。
「っひ……」
 智子の呼吸が止まった。
 すぱぱぱぱぱぱーんっ!
 何処からか取り出したはりせんで往復びんた三回。
 肘も交えて何と9 Hit Combo!
 かくて、「説明して穏便に事を済ませよう計画」は終わった。
 とゆーか、そんなつまらない展開を許すほど、暗躍生徒会は甘くない(笑)。

 一方。
 月島瑠璃子はさっさと着替えをすませ、さっさと退室していった。
 そう。
 女子更衣室のドアは開いているのである。
 メタオたちも、瑠璃子に手を出したら上司にスクラップということくらいは理解った。
 ……それ言ったら瑞穂に手を出してもスクラップなのだが、ま、そのくらいの命知らず
でなくては、悪の手先など勤まらないのである。
 時給150円でこき使われ、妻と3人のぐれた娘を養っていかなくてはならない彼らの
哀愁に満ちた業界の、何かそんな感じのイメージを彷彿とさせた覚悟だった。

「そーか!」
 そんな瑠璃子に気がついた人間は少なかった。
 そしてbeakerは、そういったパニックの渦中で、唯一理性を保っていられた、数
少ない人間の一人でもある。
「無理矢理にでも女子更衣室から脱出できれば、この事態を打開できるぞっ!」
 飛び来るメタオと、飛び来る彼の知り合いの沙耶香が放ちまくるサブマシンガンの弾幕
の中で、彼は一縷の望みを賭けて突進した。無論、彼には勝算がある。
 この学園では特殊能力が鬼のように沢山あるが、彼にもそういった中に埋もれていた、
とっておきの能力があった。
 時間停止。
 10秒ほど時間を止めていられるというとんでもない能力である。
「っはぁぁぁぁぁっ!」
 一声己を鼓舞するために吠えて、彼は疾駆した。
 あかりが彼の方を見てにっこり笑い――
 悪寒。
「――ザ・ワールドっ!」
 惜しい。天駆熊閃がbeakerの鼻先2mmで止まっていた。
(よし、今だっ!)
 その脇をすり抜けようとした矢先に――にゅう、と物陰からデコイが現れる。
 ぶつかった。そのままもんどり打つように転倒する。
「っ、何だっ!?」
 時間が止まった世界で動けるのはbeaker一人の筈だ。
「あ、どーも、beakerさん」
「どーもじゃないっ! どーして動けるんだっ!?」
「ほら、アフロですから」
「関係あるかっ!」
「No、そんなことはないネ。というわけでアナタも真アフロ転生・アフロサマナーズ第
2作目『アフロハッカーズ』に出演できることにするネ」
「TaSさん、いつの間に……って、アフロにされてるぅぅぅぅぅ!?」
 ヅラかぶせただけどね。
「サア、派手に行きましょう!」
 はあ。ご自由に、TaSさま。ところで――
「トコロデ、何デスか、作者ことるーんサン」
 既に時間停止の10秒が切れていますけど。
「Oh! デハ、さらばデス」
 ふよっ、と空間を渡ってTaSとデコイが姿を消した。
 そして時が動き出す。
 せめてもの情けに、そーだなー……
 坂下好恵に渾身の右ストレート一撃で沈まされたということにでもしておきましょうか。

「はっはっは! 愚かな前座は終わった! ついにこの私の出番だなっ!?」
 やけにノリがいいハイドラントが、威勢良く喚いた。
 佐藤昌斗が迷惑そうな顔でハイドラントを見下ろす。
 浩之が同じく半眼で呻いた。
「そーゆーことは埋まった土砂から這い出してからにしろよ、お前」
 前回のラストで、壁の方を向かされたまま、ハイドラントは土砂に首まで埋まっていた
のである。
「だって、誰も助けてくれないんだもん」
 拗ねたように寂しく答えるハイドラントに、悠が即答した。
「お前、絶対、助けたら綾香に痴漢行為を働くだろう」
「男に生まれてやらんでどーする! ちょっと失礼かなーとか思わないのか!?」
「思うかっ!」
「悠、お前はいい。綾香の下着姿を見て堪能したなぁとか満足できる可愛いレヴェルだ。
 だが! 真の男とは、そこで一線を越えることを躊躇わない筈だ!」
 無理矢理手込めにしちまえへっへっへ、というノリか。
「紳士じゃないぞ、それはっ!」
「やかましいっ!」
 ぎゃあぎゃあ喚く二人。
「大体、何が紳士だっ! 観察力とか記憶力とか欠落してD箱以下のくせにっ!」
「何だとっ!? 剣士の戦況把握能力を甘く見るなっ!」
「なら目を瞑って答えて見ろっ!」
「おうっ!」
「男子女子合わせてロッカーの数はっ!?」
「96個だっ!」
「倒れている男女の数はっ!?」
「31人っ!」
「綾香の今日の下着はっ!?」
「3/4カットのブラ! 上下共に白でレースをあしらった――」
 語るに落ちたか悠朔。
 罰ゲームとしてサブマシンガン乱射による天井崩壊に巻き込まれて貰おう。
「何の罰ゲームだぁぁぁぁぁっ!?」
 まあ、目を瞑っていたんだからかわしようはないわな。

 Tが落ち着いて問う。
「昌斗さん。このドア斬れませんか?」
「う……<運命>持ってないんですよ、今は……」
 刀といえ女性人格。男子更衣室に連れていくのには気が引けたのだ。
「じゃあ、西山さん、このドア破れませんか?」
「特殊合金だからね……あの爆発でもびくともしなかったし」
「冬月さん?」
「いや……ピンポイント爆撃は無理ですね。屋内ですから……」
「葉岡さん?」
「やってやれないことはないですけど……バックファイアでみんな消し飛ぶかも……」
 当たり前である。
 大体、そんな普通の校舎だったら、覗きが絶えなくてそもそも更衣室もプライバシーも
何もあるわけがない。
 その時――

 かっ!!!

 圧倒的な火力が、ドアをぶち抜いて部屋を蹂躙した。
 純白の炎が床を舐め、男子更衣室を席巻する。
 二重三重に炸裂する衝撃波が、立っている者全てを窓の外まで吹き飛ばした。
 そこにいたのは――
 お待ちかね。Dセリオである。

 しかし、と香奈子は胸中で呻いた。
(とんでもないわね、うちの学校)
 来栖川、坂下、そして意外なことに柏木が的確にメタオを踏みつぶし、蹴り上げて壁に
叩きつける。無論、一糸纏わぬ下着姿なのだが。
 そして――肝心のヒメカワ星人だが。
「触手……?」
 どうも、何か手から糸か何か、とにかく間接のない何かを出してはメタオを捉え――
 捕食していた。
 ……………………
 ……………………
 今更よね、と香奈子は自虐的に呟いて、とりあえずおざなりにメタオを踵で踏み抜いた。

 うっすらと楓は微笑んだ。
 メタオが潰れる時も、炎が見える。
 美しく煌めく命の末期。
 まだ立っている、同族を感じた西山英志に対して、彼女は無邪気な微笑みを浮かべた。
「……西山さん」
「…………は、はいっ」
 多少の違和感を覚えながらも、英志はぴん、と背筋を伸ばして返事を返した。
 何だ、この楓は?
 まるで楓が楓でないような……
 ……そう、何かが偽った、そんな感じ――楓のもう一つの本質には変わりないが――
 そこで。はっと気づいた。そうだ。この感触は覚えがある。それも日常の身近な場所で。
 そう――
 楓がにっこり微笑んだ。
「――あなたを殺します☆」
(偽善者だとぉぉぉぉぉっ!?)
 英志は明らかに命の危険に晒されていた。

 ミヤウチ星人は、ヒメカワ星人を観察していた。
(ウン。これなら勝てる――)
 ざわざわと。ポニーテールがざわめいた。
 ミヤウチ星人は、幼体の時は髪が黒い。
 成長すると、超ミヤウチ星人になり、髪を金髪にできる(かつ、耳が生える)。
 それは一時的なものだが、更に『超ミヤウチ星人を超える』と、常時金髪でいることが
可能となるのだ(耳を生やすかどうかを自分で選択できる)。
 ヒメカワ星人の特殊能力を、レミィは知っていた。
 まだ、あまり成長していないようだ。
 糸腺が発達していないことからも伺い知れる。
「宴の始まり、ネ」

 dyeはこの騒ぎの中でも、ただ寝ていた。
 素晴らしく無傷である。
 へーのきも、それにあやかろうと必死に死んだふりを続けていた。
 どのくらい必死かというと、全身にくまなくびっしりと汗をかくくらいに必死だった。
 ひめろくは、彼の隣で正真正銘、失神しているが。
「へーのきさん。大丈夫ですか?」
 そんないたわりの声と共に。
 かちり、とへーのきは、何故か照準が合わされる音を聴いたという――

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 暗躍生徒会8/11。
 何故か、自分は今日海水浴に行かないといけないらしい。
 というわけで、今日はこのくらいにしておきますです……
 次が4.2と相成るわけです。それが今度こそほんとに終わる筈。
 ランスか? 自分は(笑)。

 以下はへーのきさまからのコメントより抜粋。
>んで、ミヤウチ星人の設定ですが・・・
>ヒメカワ星人がナメ○ク星人なので、ミヤウチ星人は野菜人。
>正式名称は、狩猟民族ミヤウチ人です。
>ただし、猿ではなく"生ハム"(爆)
>お尻にはハムスターのしっぽが生えてます(笑)
>当然野菜人なので飛べますし、かめ○め波もどきも撃てます。
>ちなみにスーパーミヤウチ人になるとハムスターの耳が生え、満月(写真でも可)を見る
>と巨大生ハムになってゴジラのように破壊活動を繰り広げちゃったりします(笑)