我が慟哭に戦け弾劾者 投稿者:Rune
「……どう、セリス君? 新しい機体の乗り心地は」
「マルチの匂いがする……」
 だが、それはデビルガンダムだった! 危うしセリス!
(よく理解らん)

 セリスさ〜んセリスさ〜ん。
 磯野家のセリスさ〜ん。
 セリスさ〜んセリスさ〜ん。
 磯野家のセリスさん〜。

 調理室。
「裏切ったな、ジンっ! 僕を裏切ったんだ!」
「問題ない……」
「あるわぁぁぁぁぁっ!」
 じたばたじたばた。
「ふふふ。ごめんなさいね、ジンくん」
「はっはっは。いやぁ、千鶴さんの頼みなら、不肖このジン・ジャザム、命を賭してでも
果たしてご覧に入れますよ」
「父さん! やめてよ父さん!」
「構わん。そいつは使徒だ! 我々の敵だ!」
「父さんはこのために僕を呼んだの……!?」
「乗るのなら速くしろ。でなければ帰れ!!」
「帰してくれぇぇぇぇぇっっっっっ!(涙)」
「仲がいいのねー」
「はっはっは。こいつ、憧れの千鶴さんに手料理を食べさせて貰えるから、興奮して少し
錯乱しているんですよ」
 食べさせて貰う。
 ある意味その通りだった。
 セリスは縛られていたから。
「それにしても、ジンくんはやっぱり頭がいいわよね。みんな、一口食べたら何故か感激
で倒れちゃうから、複数用意しておこう、なんて」
「いえいえ。いつも俺がお世話になってますから、たまにはみんなも食べたかろうな、と
思っただけです」
 原案。暗躍生徒会(<ほら暗躍してる)。
 作画。ジン・ジャザム。
 ちなみに栄えある犠牲者第一号。セリス。
「ままま。ぐっとやって下さい、ぐっと!」
「じゃ、お言葉に甘えて――はい、セリスくん、あーん☆」
 ふるふるふるふる。
「あーん☆」
 ごきゃっ。
 顎の骨が握り潰される音がして、それは流し込まれた。

「動け動け動け動け! 動いてよっ!
 今ここで動かなきゃ駄目になるんだ――!」
 どくん。
 どくん。
 どくん。
 どくん……

 暗躍生徒会本部。
「セリス、再起動っ!」
 香奈子が叫ぶ。
「シンクロ率が400%を超えていますっ!」
 何とシンクロしてるんでしょうね。
 べき。ばきばきっ。
「拘束具が……」
 呟くレミィ。
「拘束具?」
 ルーンが聞き咎める。
「あれは、装甲なんかじゃないヨ。セリスの本当の力を封じるための拘束具なノ」
「ていうか、縛られているのが拘束具なんだから当たり前だけどね」
 冷静な健やかの指摘に、全員がちょっと沈黙した。

 うぎゃぁぁぁぁぁおおおおお。

「マサカ……」
 レミィの瞳が限界まで開かれる。
「暴走?」
「一話に戻ってるよ、宮内さん」

 ぱりぃぃぃぃぃんっ!
 その時、窓を割って、セリスが虚空へと身を踊らせた!
「逃げたぞっ!」
 モニターしていたテルオが叫ぶ。
「暗躍生徒会はただちに3年生セリスの追撃を遂行せよっ!」
「了解っ! 行くよ、お前たちっ!」
『アラホイサッサ!』
「俺たちも出るぞ、七瀬!」
「僕はここで留守番するぅぅぅぅぅっ!」
 ……………………
 瞬く間に。
 暗躍本部は月島一人しかいなくなった。
 きょろきょろと辺りを見回す。
 そして……
「…………だルリコ☆」
 両頬を両手で包み込みながらそう答えた。
 後ろではTaSとデコイが森川由綺と緒方理奈の新譜の振り付けを練習していたが。
(由綺と理奈のCGを、髪だけアフロにして想像すると楽しいよね)

『愛という〜形ないもの〜囚われている〜』
 そんな音楽の授業が上方から振ってきたが、セリスは全く意に介さず走っていた。そう。
どこかにまずは隠れろと、獣の本能が告げている。
 まずは――!

「しかし、素早いですね〜」
 現場に急行した、生徒会。
 とりあえずHi−waitを生贄に差し出して千鶴を大人しくさせると、ルーンは首を
捻った。
 ジン・ジャザムのレーダーにはもうセリス反応がないそうである。
「侮れないわ。やはり3年生ね」
 頷く香奈子に、とりあえずルーンが手を挙げた。
「とりあえずHi−waitが潰れるのは時間の問題ですから、自分はここに残って少し
時間を稼いでおきます」
「そうね……この中で千鶴先生の料理にまで普段からがっついているのはルーンくんだけ
だし……」
「みんなまずいまずいって言うけど、そこまで致命的とも思えないんですよねー」
 そう話しているルーンと香奈子を複雑そうに見やるジンに、健やかがつんつんと右肩を
つついた。
 そっと振り返るジンに、健やかが囁く。
「初めからるーちゃんを生贄にしておいてもよかったんじゃない?」
「……美味しそうに食べられたら……何か悔しいんだよ。俺の入る隙間もないし」
 ……何となく納得した表情で苦笑しながら、健やかは引き下がった。

 とりあえず作戦会議。
「校内を手分けして探しましょう。タケダテルオはメタオを指揮して物陰とかをお願い。
 私こと太田香奈子と健やか先輩は、各教室他、人の集まりそうなところを積極的に探す
ことにしましょう」
「任せとけ」
「了解」
 口々に頷く男二人。
「七瀬先生は職員特権を利用して、生徒が入れないところの捜索をお願いします」
「うん」
 あまり気乗りしない様子の七瀬。
「ジンさんとレミィはここで待機。何かあったら全力で駆けつけて素早く片を付けて。
 敵のスピードは尋常じゃないと目撃が報告されているわ。一度逃がすと相手は警戒する
から厄介よ。ここで力を温存して、その一度に全力を振り絞るつもりでお願いします」
「大船に乗ったつもりでいろ」
「Yes。フフ、一瞬で楽にしてあげる」
「では今後連絡はインカムを使って行くわよ! 散開っ!」

「……どう、美味しい、ルーンくん?」
「いや、それはもう」
 早くもノックダウンされたHi−waitは部屋の隅に転がしておいて、ルーンは一人
で食事を堪能していた。
 ちなみに、Hi−waitが最初に食べたのはステーキ。
 もちろん、それで最後だったのだが。
 ルーンは口に運ぶ肉が、得も言われぬ酸っぱさを発散していることに気がついていたが、
とりあえず食べられるだけ幸せだった。
 草や薬を飲んでも、トルネコの大冒険なら4%満腹度が上昇する。
 それと同じ事だ。
 そして――
 スープに行き着く。
 鼻腔を甘くくすぐるこの香りは――
 ……………………
(なるほどね。そーゆーことか)

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 何か勘づいたらしいルーン!
 果たしてセリスはどうなるのか!?
 それ以前に果たしてこの話終わるのか!?
 一口サイズの暗躍生徒会、後編、ちょっとだけ待っててねっ!

健やか「素直に一日では書ききれませんでしたって謝りなよ」
 しくしくしくしく……
 あ、まさたさまに念のためメールしておかなくっちゃ……