試立Leaf学園工作部奮戦記 第1章 : 雪の節(前編) 投稿者:Sage


外には雪が舞い落ちる2月・・・

 暖炉の火は赤く部屋を灯し・・・

  安楽椅子の揺らぎは眠気を誘う・・・

ただし、戦場から遠く離れた平和な場所での話である・・・

 そう・・・

  間違いなく、そこは戦場だった・・



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試立Leaf学園工作部奮戦記 第1章 : 雪の節(前編)

                   ちょっと「Go!Go!ウェイトレス」風味

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「・・・だめですね。」
「えっ!?」
「この書類は総計が違います。それと、これには添付書類をちゃんとつけてくださいね。」
「えぇ〜、そこをなんとか!御願いしますっ!!」
「だめです。はい、次の人〜」

 必死に食い下がる陸上部マネージャの日吉かおりを、机に座ったままで事務員の牧村南
は笑顔で一蹴した。
 試立Leaf学園職員室。
 年度末を控え、各クラブは1年の収支報告書を学校に提出せねばならなかった。
 部費の使用明細、領収書のまとめ、部員一覧の更新と、来年度の部費申請。
 次の年度の予算がこの報告書で決まると言っても過言では無かった。
 いくら生徒会や部長会議で予算を取り合っても、牧村南、彼女の承諾が無ければ「不要
な予算」と見なされてしまうのだ。
 だからどの部も必死であった。


 職員室に面する廊下には、号泣する生徒や倒れた屍などが並んでいた。
 戦いに敗れた死者の群である・・・(爆)
 そしてその中を突き進む勇者・・・

「ほら!じゃまやっ!ったく忙しいのに・・・」

 お下げ髪をなびかせ、颯爽と廊下を突き進むその人こそ、試立Leaf学園工作部部員
、会計担当、保科智子、そのひとであった。



 どさっ・・・・

 おどおどしながら南の検査待ちをする列の終端に並び、智子は他の部の5倍はあろうか
というファイルを机に音を立てて置いた。
 それを見た部員の数人は、自分の書いた報告書に自信が無かったのか、そそくさと列を
離れて出ていった。
「はい、次の人。」
 やがげ智子の番が回ってきた。
「お疲れさま。1番のファイルが工作部としての部活動のファイル、2番目が受託作業に
よる収支決算報告と、会計監査報告。3番目のファイルは学校から依頼された監査対象外
の収支一覧。既に個別報告もしてありますけど、一応まとめときました。」
「はい。さすが保科さんね。ちょっと見せてね・・・・」
 パラパラと、南がページをめくってゆく。
 ファイル1・・・ファイル2・・・ファイル3・・・・
「はい、お預かりします。」
「「「「おぉぉぉぉぉぉ・・・・・」」」
 周りから感嘆の声が漏れる。
 南の一発OKが出るのは、それほど珍しいことなのだ。
「では、失礼します。」
「はい。次の人・・・」

 颯爽と立ち去る智子の姿は、他の部員たちから見て、後光がさしていたという。



「さ、電芹、いくよっ!」
「はいっ!」
「えいえいおー!!」
「えいえいおー!!」
 職員室前の廊下に、川越たけると電芹の明るい声が響いた。
「・・・・(ぱらぱらぱら)・・・・だめです。」
「「えー(汗)」」
「まず、バレー部は新入部員がいたはずです。部費が年度中に変わっているはずなので
すが、それが書いてないですね。新城さんに確認してください。はい、やりなおし。」
「「ふわーい・・・」」
「それから、第2茶道部ですが、これもだめです。」
「「えぇー(汗汗)」」
「会計はカフェテリアとは別にして下さいと、先日ハイドラントさんにお伝えしたはず
です。」
「「聞いてないよぉ(涙)」」
「ということで、第2茶道部と、カフェテリア両方の収支を御願いします。そうですねぇ
・・・来週まで待って上げますから。」
「「ふわぁい・・・(涙)」」

 玉砕。

「どうしよう・・・」
「誠治さんに相談してみます?」
「おお、そうしよう。れっつごー!!」
「れっつごー!!」

 颯爽と立ち去るたけると電芹の姿は、他の部員達から見て、小学生が迷い込んだよう
にも見えたという・・・・。

 −−−続く−−−


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