試立Leaf学園工作部奮戦記 第1章:雪の節(後編) 投稿者:Sage

 ここは試立Leaf学園。

 この学園にはさまざまな組織がある。
 クラブ、委員会、同好会・・・・・
 ほとんどの組織が学園に申請し、予算を貰い、活動をしている。

 そして年度末。
 この時期は、各組織が使用した予算を学園に報告する「決算報告」の時期である。

 だが、ここで一つの壁があった。
 事務員の南の存在である。

「駄目ですね。もう一度提出してください。」

 彼女の承認なくしては事務処理の終了とはならない。
 それは来年度、予算を得られないということでもあった。
 そのため、どの組織も血眼になって報告書を書いた。
 だが、彼女のチェックは厳しかった。

「どうしよう・・・」
 そしてここにもその壁にぶち当たった二人の少女がいた。
 バレー部員、第2茶道部員、図書館カフェテリア従業員でもある川越たける。
 そして彼女と行動をともにするメイドロボ、電芹である。
 彼女達の出した決算報告書は残念ながら受理されなかった。
「誠治さんに相談してみます?」
 電芹は、自分の整備を担当している先輩、菅生誠治の名をあげた。
「おお、そうしよう。れっつごー!!」
「れっつごー!!」
 かくして二人は誠治のいる工作部の部室へと向かうのであった。


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試立Leaf学園工作部奮戦記 第1章 : 雪の節(後編)

                   だいぶ「Go!Go!ウェイトレス」風味

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「こんにちわー!」
「こんにちは。」

  し〜ん・・・・

 工作部の部室のドアをあけ、川越たけると電芹は声をかけたが、返事は無かった。
「あれ?だれもいないのかな?」
「おかしいですね・・・少なくともちびまるさんはいるはずですが。」
 顔を見合わせるたけると電芹。
 と、背後から突然声がした。
「すみませぇん、通していただけますかぁ?」
「え?」
「あ、はいはい。」
 そこには子供ほどの背丈の少女が水の入ったタライを手に立っていた。
 緑色の髪、耳の特徴的なセンサー、ちょうどメイドロボのマルチタイプを子供にした
ような外見は、工作部に所属するSDマルチタイプサポートロボ、ちびまるであった。
 ぱたぱたと部室に入ってゆくちびまるは、そのまま奥の部屋へとタライの水をこぼさ
ないようにしながらも、急いでかけていった。
 ひょいっとたけるが中を覗くと、そこには簡易ベッドに横たわる工作部部長菅生誠治
の姿があった。
 ちびまるが、タライの水に浸したタオルを絞り、誠治の額に乗せる。
「う〜ん、う〜ん(汗)・・・・・・Y2Kがぁ・・・・・・表計算がぁ・・・・」
 誠治はうなされているようだった。
「ちびまるちゃん、どうしたの?」
「ぶちょーが今朝倒れたんです。」
「だ、大丈夫?(汗)」
「はい・・・お医者さんの話では寝不足と過労だから、寝ればなおるだろうって・・・
ぶちょー、ここ1週間くらい色々な部から決算の相談をうけてて、収支統計プログラム
の修正だとかでずっと寝てなかったんです・・・・」
「ありゃぁ(汗)」
 心配そうなちびまる。
 その頭をあやすように電芹がやさしく撫でてやっていた。
「うー、これじゃあ、相談できないよぉ・・・どうしよう、電芹?」
「そうですね・・・とりあえず新城さんの所へ行ってバレー部のほうを片づけ、茶道部
とカフェテリアについては弥生さんに相談してみましょう。」
「うん、そうだね・・・あ!それと大事な事をだまってたハイドさんにお仕置きだね!」
「そうですね。お仕置きは何にしましょうか?」
「うーん・・・ハイドさんと葛田さんが抱き合ってる写真をばらまいちゃう!」
「それはこの前『それだけはやめてくれぇ』って泣いて頼まれたよね。」
「じゃあ、女装させて・・・」
「それはこの前やりました。」
「お茶に雑巾の絞り汁でも入れるとか?」
「それじゃ嫌な上司に対するOLのいたずらですよ。」
「じゃあ・・・・・」
 そんな話をしながら二人は2年の教室がある棟へと向かった。



 そして、2年の教室。
 バレー部部長を勤める新城沙織の所へたけると電芹は来ていた。
「すみませーん、新城部長いますかぁ?」
「はーい。なぁにぃ?」
 教室の中央あたりの少女が振り向き、そう応えた。
「あ、部長、決算なんですが、『新入部員が増えた分の予算が決算に入ってないよ!』
って南さんに起こられちゃいましたよっ。」
「あちゃ〜、忘れてた。ごめんっ!」
 謝るときに手を合わせて拝みながらウインクするのは彼女の癖のようであった。
「で、どうすればいいんでしょう?直さないと受理されないんですが。」
「えっと、ちょっとまっててね、たしか貰った書類になんか書いてあったと思うから。
・・・・うーん、ないなぁ・・・鞄にもないし・・・ロッカーじゃないだろうし・・・」
 沙織はごそごそ鞄や机の中をかきまわすが、目当ての書類は出てこない。
「うーん・・・どこに置いたかなぁ・・・・」
 腕を組み、片手を顎に添え考え込む。
 ふと、沙織の視界に人影が入る。
 その人影は沙織の視線に気が付くと、慌てて目をそらす。
「うふふ・・・ゆぅくぅ〜ん。」
 そこにいたのは長瀬祐介、沙織のクラスメイトである。
「な、なにかな?(汗)」
「今日の放課後ちょぉっと付き合ってくれない?」
「え、えっと・・・今日は瑞穂ちゃんに手伝いを頼まれた気が・・・・」
「しないわよね?」
「・・・・・はい。」
「ということで、書類の修正は私がやっておくから。ごめんね、手間かけさせちゃって。」
「いえ、それじゃよろしくお願いします。」
 ぺこりとお辞儀をすると、たけると電芹は部屋を後にした。
 『僕がやることになるんだろうなぁ・・・』という祐介のつぶやきを聞きながら・・・



 
「弥生さぁん」
 たけると電芹は第2茶道部へ向かう途中、篠塚弥生の姿を見つけることができた。
「はい、なんでしょうか。」
「決算報告なんですが、かくかくしかじかってことで、受け取ってくれないんですよぉ。」
「たけるさん・・・」
「はい?」
「『かくかくしかじか』と言われてもさっぱりわかりません。」
「えぇ!?マンガや小説では全てこれで意志の疎通ができるのにっ!!」
「それは話の省略の為でしょう。」
「じゃあ、『阿!』『吽!』ってのも!?」
「阿吽で通じるのはたけるさんと電芹さんの間だけです。」
「そうだったのかぁ・・・・」
「そうです。それで、何があったんですか?」
「えっと・・・・かくかくしかじか・・・・」
「・・・・忘れたならそう言ってください。電芹さん?」
「はい。会計監査報告を事務に提出したのですがカフェテリアの活動報告と第2茶道部
 の報告は別々に行うよう、事前にハイドラントさんに申し渡してあったそうなのです。
 今回作成したものは一緒になっていたため、受け取っていただけませんでした。」
「そうですか・・・・。」
 篠塚弥生はその長い黒髪を書き上げると、物憂げに窓の外に視線をやった。
 何を見ているわけでもない。
 考えをまとめる間、そうしただけなのだろうが、その仕草は見る者に妖艶な雰囲気を
感じさせた。
「わかりました。ではその決算、全てカフェテリア関連として処理して下さい。」
「え?それでいいんですか?」
「はい。使用項目のうち、『第2茶道部として』となっている部分を『カフェテリア内で』
 としていただくだけで結構です。第2茶道部の方はこちらで処理します。」
「でも、それでは・・・・」
「いいんです。」
 言い返そうとする電芹やたけるを制し、弥生はきっぱりと言い切った。
「わ、わかりました。んじゃ、電芹、ちゃちゃっとやっちゃおう!」
「そうですね。それでは弥生さん、失礼します。」
 たけると電芹はお辞儀をすると弥生と別れた。

「ふう・・・。」
 弥生は溜息を一つつくと、来た道を戻り、職員室へと向かった。
 そして椅子を引き腰をかけると、事務机の引き出しをあけ、真っ白な用紙を取り出す。
 机の上の小型プリンタにその紙を入れると、ワープロを立ち上げ、凄い勢いでキーを
叩き出した。
 3枚ほどの用紙がプリンターから吐き出されるまでわずか10分ほどの作業だった。
 それをコピーし、何ヶ所かに捺印すると、ファイルにそれをはさみ、再び席を立った。
 行く先は・・・南の所だった。

「第2茶道部の収支報告を持って参りました。」
「はい、お疲れさまです。」
 弥生からファイルを受け取ると、さっそく南はチェックを始めた。
「・・・これでいいんですか?」
 中身を見て、怪訝そうに尋ねる。
「いいんです。」
 弥生は間髪を入れずに答えた。
「わかりました。お疲れさまでした。」
「それでは失礼します。」
 一礼し、立ち去る弥生。
「ほんとに良いのかしら・・・・・」
 南はまだ弥生が出した資料に不安な点があるようだった。



 その1時間後、たける達が再び南のところにやってきた。
 いくつか質問を受け、間違いを何点か指摘され、その場で修正した後に、やっと南は
報告書を受領してくれた。
「ふう〜、疲れたねぇ。」
「お疲れさまでした。でもこれで部活動に関しては一安心ですね。」
「そだね。これで安心してクソゲーが楽しめるね〜」
「いえ。明日からは期末試験に備えて試験勉強です。」
「えぇ!?試験前って言ったら、部屋を片づけたり、ゲームしたり、、漫画読んだりして
現実逃避するってのが常識じゃないのっ!?」
「誰の常識ですかっ(汗)」
「えっとー」
「うむ、電芹、それは学生全員の常識だぞ!」
「あ、ハイドさん、こんにちは。」
「あ〜、ハイドさんだぁ。ハイドさんのおかげで会計監査報告大変だったんだからねぇ!」
「ん?そうなのか?まあ、それもカフェテリアのバイト料に含まれる苦労だと思え。」
「え〜、カフェテリアの分で苦労するなら納得するけど、第2茶道部のほうの方向で
苦労するのは別料金だよぉ!」
「むー、しょうがないな。ではこの前ジンから送られてきた怪しいパッケージのゲーム
を回してやるから、それで勘弁しろ。」
「わーい・・・・って、あっ(汗)」
「・・・『あっ』って何だ?『あっ』って。」
「えへへ、じつはハイドさんにお仕置きしようと思って・・・」
「思って?」
「ハイドさんが隠してた綾香さんのえっちぃ写真、綾香さんの下駄箱に匿名の手紙付き
で置いて来ちゃった。てへっ(はぁと)」
「なにぃぃぃぃぃ!!!あれは俺が血反吐をはいてまで綾香から隠し通して来た物なん
だぞっ!!!こうしてはおれん、下駄箱に・・うわっ!!!」

 ぶうん!!!

 突如、ハイドランドの後部から桃色の疾風が駆け抜けた。
 間一髪でそれをさけるハイドラント。
「はぁぁぁいぃぃぃどぉぉぉぉ(怒)」
「やあ、綾香ではないか。どうした?いきなり回し蹴りなんぞ繰り出して、俺におニュー
のパンツでも見せびらかしに来たのか?」
 ハイドラントにいきなりの蹴りを食らわせようとしたのは来栖川綾香であった。
 その手にはかわいらしい便箋が握りつぶされていた。
「よっくもこんなハレンチ(死語)な写真隠してたわねっ!いつ撮ったのよっ!!」
「お、俺は撮ってないぞっ!だいたいカメラなんぞ持ってるわけがないだろっ!!」
 綾香のラッシュをすんでの所で避けながら逃げるハイドラント。
「じゃあだれが撮ったっていうのよっ!!だいたいなんであんな写真あんたが持ってる
ってーのよっ!!!」
「し、しるかっ!俺の信者が偉大なる俺様に献上して来ただけだっ!」
「そんなよた話、誰が信じますかっ!!!」
「嘘ではないぞっ!だいたい写真を撮られる隙がある綾香もいかんのだっ!それにあれ
くらいの写真ならゆーさくだって持って(もごもごもご)」
「さ、さあ、綾香、今の内に天誅を・・・・(汗)」
 綾香についてきたのだろう。いつの間にか悠朔がハイドラントの背後に回り込み、
ハイドラントの口を塞いでいた。
「・・・・・ふーん、貴方もこういう写真を持っているわけね。」
「もももももももって無いぞ!」
「見え見えの嘘つくんじゃなぁぁぁいっ!!!」

 どっごーん!!!!!


 ・・・・・滅殺



 ちなみにこの戦いの風景はデコイ氏によりしっかり撮影されており、綾香に没収され
た写真と同じものの焼き回しと一緒にハイドラント、悠両氏に売却されたそうな。


 今回の教訓:大事な物はちゃんとしまっておきましょう。
       提出しなければならない書類は期限前に提出しましょう。


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弥生 「ところで導師、来年第2茶道部は部費無しですから。」
ハイド「なぜ!?(汗)」
弥生 「第2茶道部の会計をだれもやっていませんでしたので。」
ハイド「そんなに俺の財政を苦しめて面白いのかっ(涙)」
弥生 「はい。(あっさり(爆))」


 おわり

(C)Sage 2000