2月14日。校門にて。 投稿者:Sage

「今年こそは・・・今年こそはっ!!」

年に1度訪れる「血の2月14日(ブラッディー・バレンタインデーと読む(笑))」。
毎年毎年チョコレート等の不法持ち込みに怒りを感じていたディルクセンは、風紀委員会
生徒指導部メンバーのぶーぶー言う意見を忙殺しつつも、前日の夜から泊まり込んで防衛
戦を張るという手段にでた。
そして、作戦当日、夜明けと共に正門の前に彼は立ちはだかった。

「いいかっ!一人も、一つも逃すなっ!!」
「「・・・・・・・・・おー」」
「むっ!気合いがたらんぞっ!そんな事でどうする!!」
「でも、眠いです〜」
 そこかしこから苦情の声が挙がる。
「しゃきっとせんかっ!各自持ち場につけっ!拿捕率が一番低かった物は、罰則の対象に
 なると思えっ!」
 さすがに”罰則”の単語が出ると、生徒指導部員達もしゃきっとして持ち場に散って
いった。

「さーて、今年こそは一人も・・・」
「おや、今朝ははやいんやね。」
「あ、お、おはよう、保科。」
 一人校門に残ったディルクセンの前に現れたのは、保科智子だった。
「はい。」
「へ?」
「『へ?』ってチョコレートに決まってるやん。」
「俺に?」
「そうやけど?」
「あー・・・えーっと・・・・」
「早くしまってな。なんかそんなじっと見てられると恥ずかしいわ。」
(ちょっと頬を染めつつも怒った表情を浮かべる保科の表情もまた・・・・
 ってそうじゃなくてっ!!)
「じゃ、私、部室の方も顔ださんとあかんから。んじゃ、がんばってや。」
 というが早いか、保科はすたすたと歩いて言ってしまった。
「お、おいっ!チョコレートは持ち込み・・・・」
 持ち込み禁止だと言おうとしたディルクセンの声は、そのまま校庭を駆け抜ける冷た
い風にかき消されてしまった。

(どうする、このチョコレート・・・(汗)
 まさか取り締まる人間が持っていてはしめしが付かないし、かといって没収箱に入れ
たとあっては保科に悪い・・・・・)

「ほーーーーーーーーーーーーーチョコですね?それは。」



   ぎっくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!



「ディルクセン先輩もすみにおけませんねぇ。後輩からチョコレートもらうなんて。
 ま、そのことは黙っておいてあげましょう。人の恋路を邪魔するなんて事はこの志保
ちゃんにはできませんからねぇ(にやり)
 でも、まさか自分はチョコレート貰っておいて、人がチョコレート渡すのを妨害する
なーんて事はありませんよねぇ?」
「な、な、な、な、・・・」
 いつのまにか背後に立っていたのは”生徒指導部 要再指導生徒一覧”に名を連ねる
要注意人物、長岡志保であった。
「こ、これはだなぁ!!」
「何を言っても無駄ですよ?ぜーーーんぶ見てましたから。」


   ぴしっ


 その時、ディルクセンは破滅の音を聞いた。

「さ、みんな学校入ろ〜。」
「はーい。」
「おはよーございまーす。」
 どこに隠れていたのか、志保の声を合図に女生徒全員が手に紙袋やら綺麗に包装され
た小箱やらを抱えて、ぞろぞろと校門をくぐっていった。
 そしてその数時間後、始業時間ぎりぎりに駆け込む藤田浩之に、手にチョコレートを
持ったまま校門前で立ったまま真っ白に燃え尽きているディルクセンが目撃されて以降、
しばらく彼の姿を見た者はいない・・・らしい。



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●2年の教室にて
智子「あんなんでよかったん?」
志保「や、委員長、ありがとうっ!あんたのおかげよ!!」
智子「しかし、なんかはめたようで気が引けるわ。」
志保「いいじゃない。ディルクセン先輩は可愛い後輩からチョコレートもらえたんだし、
   女子は無事チョコレートを彼氏とかに渡せたんだし。
   みんな万々歳よ。」
智子「でもなぁ・・・」
志保「そもそも校長みずからチョコレート持って、耕一先生追いかけ回しているのに、
   生徒だけ規制しようってのがおかしいのよ。」
智子「まあ、それもそうやな。」
   (ぽんぽん、と志保の肩をたたく手)
志保「はい?」
耕一「頼むから教職員、生徒を問わず、食い物関係は禁止にしようぜぇぇぇ(滝涙)」
志保&智子「・・・・(冷汗)」

(C) Sage 2001