『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』第七話 〜3vs1 再び〜 投稿者:Sage

 窓の外には、喧噪と爆煙があふれていた。
 時々大きな爆発音が窓枠を揺らす。
 が、工作部前の廊下に並ぶ男達の耳には聞こえていないようだった。
「次のかたどうぞ〜」
 SDマルチタイプのお手伝いロボット”ちびまる”がドアをあけ、列の先頭に並んで
いた男性を中へと促す。
「どうぞそこへお掛け下さい。
 予選のルールを説明いたします。
 勝負は10問。
 問題は来栖川エンターテイメント社のクイズデータベースより無作為に選ばれます。
 チャレンジャーは、問題10問のうち、チャンピオンより1問でも多く答えられたら
予選通過です。
 決勝に残り、優勝しますと、二人っきりでチャンピオンの服を脱がす権利、それと
チャンピオンより”それはもう特別なプレゼント”を贈呈させていただきます。
 よろしいですか?」
 こくり。
 男性はうなずくと、自分の隣に座る女性の横顔を見た。
 保科智子。
 気怠そうな表情で窓の外を眺めながら、彼女はため息を一つついた。



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「3vs1 再び。」

 〜どよめけ! ミス・L学コンテスト 第7話〜

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■数日前
「まさか・・・部長?」
「お、お、俺じゃねぇぇぇ!!俺はやってねぇぇぇ!!」
 振りかざされた巨大ハリセンにおびえつつ、工作部長菅生誠治は思いっきり怯えた。
「誠治さんじゃないとするとだれやろ?」
 昼休み、生徒会から工作部にいた保科智子の元に一つの荷物が届けられた。
 それは”どよコン”のエントリーシートと、コンテスト中に着用が義務づけられて
いる制服だった。
 保科智子にはエントリーした記憶がなかった。
 ということは、誰かが勝手にエントリーした、ということである。
「智子さんのシンパか、または敵対する者か・・・」
「シンパといっても、コンテストに優勝させるのが目的なのか、脱がすのが目的なの
かでまた変わってきますからねぇ。」
「どちらにしろこっちの意見なんて聞きもしない連中であることは間違いなしやね。」
「で、どうするんだい?どよコン。」
「・・・出る。」
「え?」
 キャンセルするかと思っていた部員達から驚きの声があがる。
「なんにせよ、私の承諾無しでこういう事をするという事は悪意があるとしか思えん。
 今までは無視して来たけど、いい機会や。
 きっちり落とし前つけたる。」
「・・その口調だと、推薦した奴に心当たりがあるようやな。」
「・・・まあ・・・少しはね。」
「だが、工作部としては立場上あまりサポートはできんぞ?」
「大丈夫。ちびまるちゃんだけ手伝いに貸してください。
 コンテストと言っても結局は戦いと同じ。
 要は戦略と戦術。
 誰に喧嘩を売ったか思い知って貰うわ。」
 ニヒルに笑う智子の眼鏡の奥の瞳がきらりと光る。
 保科”軍師”智子。
 彼女が工作部随一の策士であることを知る者は、学園内にそれほど多くはいない。



■同時刻、教室にて
そのころ2年の教室では、3人の娘達が大騒ぎしていた。
「保科がエントリーを受託した、ですって!?」
「うん。今ぁ受付やってる子からメール入ったのよぉ。」
「辞退するかと思ったのに・・・」
「ほんとにくったらしい奴!
 ・・・ところでなんで私たちまでエントリーされてるの?」
「はーい、私がエントリーしておきましたぁ〜」
「リカ!?」
「あーんーたーねぇぇぇぇ!!(怒)」
「えぇ〜、だっておもしろそうだったしぃ〜」
「エントリーしちゃったら私らまで狙われる立場になっちゃうでしょっ!!
 キャンセルよキャンセル!!」
「え〜、さっきエントリー正式受諾の紙、出してきちゃったよぉ」
「なんですってぇぇぇぇぇ!!!!」



■ふたたび「どよコン」開催中
「戦う方法を定義しなければ、普通自分に優位な戦法を人は取るものだ。
 が、どちらか片方が、公正なルールに基づいて戦う方法を定義すると、人は考える
のを止めてしまう。
 一種の思考狭窄が起こる訳だ。」
「まったく別の攻め方ができるのにも関わらず正攻法にこだわってしまうわけですね。」
「そう。だから智子嬢が提案した方法以外で攻める方法があるのにも関わらず、クイズ
という彼女が最も得意とするジャンルで戦う道を選ぶ訳だ。
 まあ、あの方法は、『戦闘力が低くとも勝てる可能性がある』という点、『通常の
戦闘で脱がすよりも、おいしい目にありつける可能性がある』という点で、攻める側
にも魅力的な方法ではあるのだけどね。
 だからああして行列になる。」
「まったく男ってのは・・・・」
「ふふふ。まあ、ああして行列ができること自体が、他の戦法に対する壁にもなって
くれているんだがね。
 武力によって脱がす方法を採りたいと思っても、あそこに並んでいる連中がそれを
絶対ゆるさないだろう。
 抜け駆けが許されない状態を作り出すことで、それを保身に役立てている訳だ。
 さすが、智子嬢だねぇ。」
「ええ。まったく。」

 ずずず・・・・

「貴様らのんびりお茶なんてすすってる場合かぁぁ!!
 今にも魔の手が彼女に掛かろうかって言うのになにをのんびりしているっ!
 同じ部の人間として心配じゃないのかっ!!」
 屋外にテーブルを広げ、お茶をすすっていた菅生誠治と赤十字美加香の後ろから、
高圧的に怒鳴りつける男がいた。
「やあ、ディルクセン。」
「『やあ』じゃないっ!!」
「怒鳴るなよ。だってしょうがないじゃないか。工作部はセキュリティーを預かって
いる手前、今回のコンテストについては一部メンバーを除いて不可侵だ。
 だいたいそんなに心配なら、自分も並べばいいだろ?」
「な、なんで私が!?」
「並んで、彼女に勝って優勝すればいいんだよ。
 そうすれば誰も彼女に手出しはできない。
 ベストな解決策だと思わないか?
 それに・・・彼女に勝てば、きっと彼女も君のことを見直すと思うがねぇ・・・」

 数分後、列の最後尾にはディルクセンの姿があった。

 「まったく男って・・・・」
     by 赤十字美加香



「隙ありぃぃぃ!!!!」
 びりびりびりびりぃ!!!
「ぎゃぁぁぁぁ!!なにするのよこのパンダあああああああ!!!」
 オタク軍団に守られ、まるで女王様のようにつっ立っていた大庭詠美は、そのがら
空きの背後から近寄った猪名川由宇に制服をひんむかれた。
 守っていたはずのオタクは一斉に振り向くと、首から提げた望遠付きの一眼レフの
シャッターを押す。
 詠美まわりがフラッシュの光で満たされる。

 このような光景が学園内にあふれかえっていた。
 ただのエロオヤジ同然に女生徒を追いかけ回す者。
 日頃の恨み辛みをはらそうとする者。
 敵対する勢力を牽制する為に、コンテストとは別の意図で画策するもの。
 そして、日頃手を出すことさえできない相手に近寄る最大のチャンスとしてコンテ
ストを利用しようとする者達もいた。
「先生!愛してるんですっ!!」
「先生!!せんせぇぇ!!」
「その胸で泣かせてくださいっぃぃ!!」
「ぜーぜー・・・」
「あっちいきなさいっ!!ここから先は立入禁止だからねっ!!」
 教師の小出由美子は同行する相田響子とともに、命からがら安全地帯の女子トイレ
へと逃げ込んだ。
「まったく、先生をなんだと思ってるのよあの生徒たちわっ!!」
「まさか教師に手を出すとは思わなかったんだけどねぇ。
 やっぱり若いっていいわねぇ。」
「相田先生っ!!」
「冗談よ。」
「はぁ・・・頼りの耕一くんは『ごめん。生きていくためにやらなきゃならないことが
あるんだ』とか言って千鶴校長の所いっちゃうし、何とかして欲しいわ。」
「リタイヤすれば?」
「うっ・・・でも、『現存するすべての少女漫画を図書館にそろえる』という私の野望
がっ!!」
「貴方本当に国語教師?」
「いいじゃない、好きなんだからっ!」
「で、運動場の女子トイレに入ったはいいけど、ここからどうやって逃げるの?」
「え?」

 校舎のトイレと違い、ここは一切遮蔽物がない。
 入ってからわずか数分。
 すでにトイレの周りには男子生徒が十重二十重に囲んでいた。


つづく・・・だれかの作品へ(爆)