テニス大会特訓Lメモ2「それも、思いでのために・・・(前編:柏木家にて)」 投稿者:Sage
 ある日曜日。
 天気は快晴。
 そよ風が、開け放たれた戸から、部屋の中に吹き込んでくる。
 縁側では猫が丸くなって寝ていた。
 時計は9時をちょっとだけ回っていた。
 柏木4姉妹の長女、柏木千鶴がまだ眠そうな目をこすりながら新聞を取りに玄関に
向かうと、スウェットに身を包んだ次女の柏木梓が、玄関の縁に腰掛け、シューズの
ひもを結んでいた。
「あら?梓、おはよう。出かけるの?」
「うん。ちょっと学校まで。」
「部活?」
「う、うん。まあね。」
「あれ?梓お姉ちゃんも出かけるの?」
 千鶴の背後から声がした。
 四女の初音の声だった。
「あら?初音もお出かけ?」
「うん。ちょっと友達と約束があって、学校まで。」
「あなたもなの・・・・・」」
「あ、千鶴姉さん、朝食用にスープが作ってあるから、トーストでも焼いて、適当に
食べてね。帰りは夕方になるから、お昼は適当に済ませてね。」
「あ、私もお昼は食べてくるから。耕一おにいちゃんが来たら、『借りてた本は、テ
レビの上に置いてある』って伝えてくれる?」
「う、うん。わかったわ。二人とも気を付けてね。」
「はーい。いってきまーす。」
「いってきまーす。」
「いってらっしゃい。」

 千鶴は居間に戻り、机の上にとってきた新聞をばさっと置くと、台所へと向かっ
た。
「あ、おはよう。・・・トースト、焼く?」
 台所には3女の柏木楓がいた。
「あ、御願い。・・・あなたもお出かけ?」
 冷蔵庫の前に立つ楓も、既に着替えを済ませており、台所のテーブルの椅子にはボ
ストンバッグが下がっていた。
「うん。今日は練習があるから・・・。」
「練習って?」
「テニスの練習。」
「あ、そっかぁ。それで梓も初音も運動着来て出かけてったのね。」
「・・・姉さん、主催者じゃなかったの?優勝商品だすんでしょ?」
「へ?・・・・ああ、そういえばそんな約束をしたような・・・。てへ。すっかりわ
すれてた。」
「ふうん・・・・。あ、パン、焼けたよ。」
「あ、ありがと。」
「それじゃ、私も学校行くから。」
「はい、いってらっしゃい。」
 楓は自分の使っていたカップや皿を流しに入れると、鞄を手に取り、台所を出て
いった。

 ひとり、ぽつんと残った千鶴は、焼きたてのトーストをかじっていた。
 楓が焼いた目玉焼きをつつきながら、スープをすする。
「なぁんか、忘れてるのよねぇ・・・・・・。」
 トマトに塩をふりながら、千鶴はつぶやいた。
「あっ!!!」
 何かを突然思いだし、がばっと立ち上がる千鶴。
 椅子ががたんと大きい音をたてて後ろに倒れる。
「対戦させるチーム、集めてなかった!!!」
 Runeと千鶴の間にかわされた条件は、『鶴来屋の宿泊券を商品に提供するかわ
り、もし千鶴が推薦したチームが優勝したら、学生を鶴来屋の手伝いに使う。』 と
いうものだった。
 そのためには、優勝をねらえるだけのチームを選定しなければならない。
「いっけなぁい、どうしよう・・・」
 とりあえず、千鶴はパンの残りを口に放り込むと、自分の部屋へと向かった。
 急いで着替えると、家の鍵をしめ、学校へと向かう。
 休日返上で練習しているであろう、テニス経験者をゲットするために。

(千鶴編は、ジンさんの「テニスエントリーLメモ『好き勝手やってます』(いつもだけどな)」に続く。)
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  楽してるか?(爆)