ジンVS・・・ Lメモ「ジン・ジャザム、暁に死す!?」  投稿者:Sage
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A few days ago...(数日前)
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「どっがあぁぁぁぁん!!!!」
 放課後のひととき、爆発音が校庭に響いた。
 試立Leaf学園では、爆発、炎上等はそう珍しい物ではなかった。
 そう、今回の事件の起因となった物もそうであった。



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Now...(現在)
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「菅生、約束は守ってもらうぞ。」
 夕日が校庭を血の色に染め上げる中、ジン・ジャザムは、正面に立つ一見やさ男に見
える青年、菅生誠治に言い放った。
「ああ。ただし、これが最後の勝負だぞ。」
「あたりめえだっ。これで決めてやる!!」
「・・・いいだろう。」
 誠治はくるりときびすを返すと、後ろにひかえる、大型機械に向かった。
 『汎用人型高機動兵器”ドラゴンナイト”』。
 某国で正式配備され始めたばかりのこの兵器がなぜこの場にあるのかは、ジンにもわ
からなかった。
 だが、彼にはそんなことはどうでもよいことだった。
 そう、彼には、目の前の敵と戦って、勝てさえすれば良かったのである。



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A few days ago...(数日前)
 After explosion...(爆発の後)
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「誠治さん、壊れてしまいました。」
「ど、どうしたんだ?電芹!?」
 工作部に顔を出した電芹は、全身すすまみれで、服も所々破れていた.
 その両手には、やはり真っ黒焦げになった、箱状の金属が抱えられていた。
「えへへへ・・・・。レンジが爆発しちゃったぁ。」
「いやあ、ちょっと調子に乗りすぎたかに。」
 電芹のあとから、同じくすすだらけになった、川越たけると、柏木梓が顔をだす。
「どうやったら、レンジが爆発するんだ?」
「いやあ、お料理の早づくり勝負を私とあかりちゃんでやっていたのよ。んで、レンジ
での加熱にかかる時間を短縮しようと、電芹ちゃんに、ちょちょっと、改造してもらっ
たの。最初はいい調子だったんだけど、つい、電圧上げ過ぎちゃって・・・。てへ。」
 梓はぺろりと舌をだすと、自分の頭をこつんと小突いた。
「電圧を上げすぎると危ないと、言ったのですが・・・すみません。ブレーカーを付け
忘れた私のミスです。」
「それで、けが人は?」
「調理室の床と天井に穴が開いた以外は、全員無事です。」
「そうか・・・。しかし、建物に被害がでる程の破壊力とはなぁ。もう一度、耐久度の
試験、やっとくか。」



 てなことで、学校の裏山。
 科学部や、工作部の実験、ジンやDセリオのバトルの場ともなるこの場所は、爆発な
どがあっても周りに被害が及ばない、という点で重宝な場所だった。
 くぼみの真ん中には、オーブン電子レンジ。
 工作部謹製。
 図書館カフェテリアで使用していた物で、調理実習室で爆発したのと同型である。
「よし、んじゃ、試験開始。」
「はいっ。電圧上げますぅ。」
 レンジから数十メートル離れたテントに陣取った工作部の面々。
 コントロールパネルの前に座るちびまるが、電圧を徐々に上げる。
「現在、通常の10倍のエネルギーゲインですぅ。」
「ふむ・・・。レンジ内は?」
「電磁波の渦ね。牛乳くらいなら、コンマ数秒で沸騰するわ。アルミくらいなら熔ける
んじゃないかしら。」
 モニターを監視する赤十字美加香が誠治の問いに答えた。
「よし。事故の再現だ。電圧をマキシマムまで上げてくれ。」
「はい。いきまーす。全員、対ショック、対閃光防御〜。」
 全員がゴーグルを装備する。
「さ〜ん・・・に〜ぃ・・・い〜ち・・・ぜろっ!!」


 ズビィィィィィィィーーーーーーーーー!!!


「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
 一瞬、時が止まる。
「・・・部長、今、ビームが出なかった?」
「・・・美加香も、そう見えたか?」
「・・・うん。それに、ほら、あそこ・・・」
 美加香の指さすほうを見る。
 そこは、レンジから発射されたビームの延長線上。
 大きな岩が、どんとあったのだが・・・・


 まんなかにぽっかり穴が開いていた。


「部品に耐久力がありすぎるのも問題だな。」
「ですね。これじゃあ、たとえば落雷とかあったとき、危ないですよ。」
「さすがにこりゃ、一般には売りだせんわなぁ。」
「まさか、電子レンジ用の発振ユニットがあそこまで高出力に耐えられるとは。」
「俗に言う、荷電粒子砲と同じですからねぇ。」
「こいつを世の中にだすのはまずいよなぁ。」
 テスト結果の記録をまとめながら、検討を話し合う部員達。

 だが、そこから少し離れた場所を、たまたま通りがかった男がいた。
「す、すげぇ・・・。あの武器があれば・・・。」
 そう。大方の読者の予想通り、ジン・ジャザムであった。 



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★Round1:VS 菅生誠治
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「たのむっ!あの武器を譲ってくれっ!!」
「武器?」
 ジンは早速、誠治に直談判しに行った。
「おう。裏山でテストしてた、あのビーム兵器だっ!」
「ああ。あれは武器じゃないよ。オーブン電子レンジ・・・」
「なんでもいいっ。攻撃に使える物は武器だっ!たのむっ、あれを俺に譲ってくれっ!」
「だめ。」
「へ?」
「だめ。」
「たのむっ!!」
「だめ。」
「この通りっ!!」
「頭を下げてもらっても、駄目な物はだめ。」
「うぐっ。んじゃ、とっておきの『ヒーローアニメオープニング大全集』をやろう。」
「いらない。」
「えぇぇぇぇぇ!?ならば、涙を飲んで、俺の魂でもある『超合金マ●ンガー●復刻版』
を・・・」
「いらん。」
「ががーん・・・な、何故だっ!漢なら、100%オッケーするはずがっ!!」
「あのテストは、危険かどうかの確認をするためのもので、レンジはそのテストで危険
と認められたんだ。今後、一切、あの型は作らない。大人しくあきらめろって。」
「そ、そんなぁ〜(うるうる)」
「・・・子供じゃないんだから。泣いてもダメなものはダメ。」

「ちっくしょ〜。千鶴さんにいいつけてやるぅぅぅ!!!!」
 ドッガーン!!

 ジンは扉も開けずに外に出ていった。
 誠治は、ドアの修繕代を考えると、レンジをあげてしまったほうが安かったのではな
いかと、ちょっとだけ後悔した。



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★Round2:VS 赤十字美加香
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「うむ、いきなり菅生の所に行ったのは間違いであった。やはり『将を落とすならまず
馬を射よ。』だな。ということで、副部長の美加香。なんとか部長を説得しろ。」
「それって、人に物を頼む態度ではないような気がします。」
「細かいことを気にしてると、大きくなれないぞ。」
「どうせ、平らですよっ!!(がすっ!!)」
「ぐはっ!そ、そういう意味で言ったんじゃないぞっ!?まあ、小さいのは認め・・・」
「(どがすっ!)」
「がはっ!!な、なかなかいいパンチだ。」
「ジンさん、最近、秋山さんみたい・・・」
「・・・・・・・(滝汗)。ま、何はさておき、頼んだぞ。」
「いやです。」
「なぜ!?」
「私も誠治さんと同意見ですから。私たちが作った物で、万が一、怪我人でも出たら嫌
ですもん。」
「それならまず、ひなたを何とかした方がいいと思うぞ。」
「そうなんですよねぇ・・・・って、話を反らさないでくださいっ。」
「ならば、こうしよう。俺と勝負して、もし俺が勝ったら、菅生に頼んでくれ。」
「勝負って、あのですねぇ・・・・・。あっ、そうだ。」
 美加香は何を思ったのか、机の一番下の引き出しを開けると、奥の方をごそごそ探り
始めた。
「あった・・・。ジンさん、いいですよ。勝負受けましょう。」
「ほ、本当か?よし、勝負はなんだ?素手か?格闘戦か?それとも・・・」
「これです。」
 美加香は手に乗るほどの正立方体をジンに差し出した。
「こ、これは・・・・・昔懐かしのルー●ックキューブ!?」
「ええ。昨日、部室を片づけてたら出てきたんです。制限時間は1時間。キューブを壊
したりせずに色がそろったら、私から誠治さんにお願いしましょう。」
「ちょ、ちょっとまてい。」
「では、用意、スタート。」
 腕時計を操作し、美加香はストップウォッチをスタートさせた。
「お、おい。くそっ。しょうがねぇなぁ。えっと、まず・・・」

 かちゃ・・かちゃかちゃ・・・・

 かちゃかちゃ・・・・ばきいっ!!

 力の加減を間違えたのか、ジンの手の中でバラバラになった。
「はい、ゲームオーバー。」
「ちょ、ちょっとまてぇぇぇ!!」
「往生際悪いですよ。漢らしく、すっぱりあきらめてください。」

「うわぁぁぁん、ぐれてやるぅぅぅ!!!」
 ドッガーン!!

 ジンは扉も開けずに再び外に。
「・・・・あ〜あ、さっき誠治さんが直したばっかりの扉を・・・・。」
 美加香も、素直にジンの言うことを聞いておいてあげたほうが良かったのではないか
と、ちょっとだけ後悔した。



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★Round3:VS FENNEK
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「ということで、よろしく頼むぞ。FENNEKくん。」
「・・・『ということ』と言われてもなにが何やら。」
「ええい、血より熱いオイルが体を流れる者同志、それくらい察しろっ!!」
「無理です。」
「・・・ノリが悪いやつだ。この前実験で使った電子レンジと同じものが欲しいのだ。
頼む。菅生に頼んでくれっ。」
「え?あれは危ないから、もう作らないって部長が・・・」
「どうせ俺が使うんだ。今の俺の危険度と、あのビームを打てるようになった俺とで
は、対して危険度はかわらんっ!!」
「・・・それって、自慢にならないと思いますが。」
「そーんなことは、どうでもよいのだっ!頼む!!」
「ふう・・・しょうがないですね。頼んでもいいですが。」
「ほ、ほんとか!?」
「ええ。でもその前に、隣町の鶴来屋別館まで、行って・・・」
「なに!?そうか、そこまで俺とFENNEKとで競争して、勝つのが条件ということ
だな!?よし、いいだろう。相手に不足はないっ!!では、早速、よーい、どんっ!!」

 ドッガーン!!

 ジンは扉も開けずに三度外に。
「行って・・・来ないと・・・ならないんで・・・後でもいいですか? って言いた
かっただけなんだけど・・・・。あぁ、ドアがまたぼろぼろ・・・。」
 FENNEKは、よけいなことを言わずに、ただ了承しておけば良かったな、と少し
後悔した。



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★Round4:VS 保科智子
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「頼む!この通りだっ!!」
「頭さげられてもねぇ。部長がだめやっちゅうなら、だめやと思うで。」
「そこを何とか!!」
「あかんもんは、あかん。」
「開(あ)かんのなら、力でこじ開けるまで!!」
「・・・・つまらん。やっぱり、今回の話はなしや。」
「ま、まて、えっと・・・『マリモは阿寒(あかん)もんに限る!』とか・・・」
「・・・・さっきのがまだましや。」
「くうっ!!それならば・・・」

 結局この後、数時間に渡りジンは駄洒落を考え続けた。
 今回はドアは無事だったが、智子は無駄な時間を使ってしまったと、後悔した。



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★Round5:VS ちびまる
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「ちびまる、お前だけが頼りなんだ!頼む!」
「いいですよ。」
「ほ、本当か?」
「はい。(にっこり)」
「おお、さすがちびまる。人間が・・・いや、メイドロボが出来ているのぉ。」
「あ、でも、お願いが一つあります。」
「おう。俺に出来ることなら、何でもやるぞ。」
「えっと・・・・たしかここに・・・・」
 ちびまるはロッカーをごそごそあさった。
「あった。はい。」
「おう。・・って、これはスケッチブックとペン?」
「はい。お願いなんですが、私の似顔絵を書いてください。」
「・・・はぁ?」
「この前、お使いに行ったとき、街頭で似顔絵書きのおにいさんがいたんですが、とおっ
ても上手だったですぅ。だから、ちびまるもいっぺん似顔絵って書いて欲しくて。」
「に、似顔絵かぁ。俺はあんまり絵は・・・」
「(にこにこにこにこにこにこ・・・)」
「わ、わかった。」
 サインペンのキャップを外すと、ジンはスケッチブックに向かった。

  かきかきかき・・・・

  にこにこにこ・・・・

  かきかきかき・・・・

  にこにこにこ・・・・

  かきにこかきにこ・・・

「で、出来たぞ。うむ、これならちびまるに見える。」
「わぁい。見せてくださぁい。」
 ジンに駆け寄り、スケッチブックを受け取るちびまる。
「ほれ、どうだ?俺にしては会心の出来だぞ。」
「どきどき・・・。(ぱっ)・・・ほえぇ?。」
「どうだっ。うまいものだろう。」
「ひっく・・・ひっく・・・うえぇぇぇぇん、怖いですぅぅぅ!!!(滝涙)」
「なぜ泣く!?ほら、ちゃんとセンサーもついてるし、どこからみてもメイドロボだろっ!?」
「うえぇぇぇぇぇん」
「な、泣くな。(かきかき) ほら、ヒゲも付いて、強さ倍増だっ!」
「びえぇぇぇぇぇん」
「わ、わかったっ。俺とお揃いでロケットパンチもつける。なんなら目も8個くらいに
増やしてやろう。360度オールレンジで見れて便利だぞ?」
「うわぁぁぁぁぁん」
「・・・・なにしてるんですか?ジンさん。」
 ジンが声に反応し、後ろを見ると、ドアの所に電芹が立っていた。
「え?いや、ちびまるにちょっと絵を・・・」
「絵ですか?ちょっと見せていただけますか?」
 ひょいっと、電芹はジンからスケッチブックを奪うと、ちびまるが見ていた面を自分
に向けた。
「・・・・・・・・・。」
「あ、あははは。俺もあんまり絵はうまうくねぇから。」
「・・・・・・・・・。」
「最初はちびまるの似顔絵を描いてたんだけどな。いろいろ書き足していくうちにこん
なになっちまった。」
「・・・・・・・・・。」
「おーい、電芹?」
「ぶしゅううううう・・・・・・・(ばたんQ)」

「・・・・・・どちくしょおぉおぉおぉおぉ!!(滝涙)」
 ドッガーン!!

 ジンは扉も開けずに再び外に。
 電芹とちびまるは、数日の間、地球外生命体に襲われる夢にうなされ続けたらしい。
 ちびまるは、そのあと『似顔絵恐怖症』にかかったという。



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★Round6:VS 菅生誠治、再び
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 そして時は現在へと戻る。
「わかった。そっちが望む勝負をしてやるから、頼むからこれ以上部員に手をださない
でくれ。」
「手をだしたわけではないんだが・・・・。ま、勝負が出来るなら、それでいい。相手
は菅生か?」
「ああ。ただし、これが最後の勝負だぞ。」
「あたりめえだっ。これで決めてやる。」
「・・・いいだろう。」
「俺は、あれを使う。かまわんか?」
「ほほう、人型機動兵器か。柳川先生が見てた雑誌の表紙と同じやつだな。」
「昔のつてで借りてきたんだ。それでルールは?」
「夕日が沈むまでの時間で、もし、俺がそのロボットを倒せたら、例のビーム兵器をく
れ。もし、倒せなかったら、俺もすっぱりあきらめる。」
「いいだろう。」
 菅生誠治はきびすを返し、後ろに膝を突くようなかっこうで控える汎用人型高機動兵器
『ドラゴンナイト』へと乗り込んだ。
 ジンもドラゴンナイトから少し離れ、間合いを取る。

 ウィィィィィィィィィィィ・・・・・・・

 モーター音が響き、ドラゴンナイトが起動する。
 ウイン、ウイイン。
 全高6mほどの人型をしたドラゴンナイトは、重そうな外見に反して、スムースに立
ち上がった。



「・・・・ゆくぞっ!!」
「こいっ!!」
 誠治とジンの凛とした声が夕焼けに染まった校舎に響き、それを合図にジンとドラゴ
ンナイトがダッシュで互いの間合いを一挙に詰める。
「どりゃああああああああ!!!!とりあえず、ロケットパァンチッ!!!!!」
 出会い頭、いきなりジンはロケットパンチを放った!
 と、ドラゴンナイトの右腕が跳ね上がり、ひじよりちょっと先から羽根のようなもの
が、急に飛び出した。
「ロケットパンチッ!!」
 誠治の声に反応し、ドラゴンナイトの右腕が切り離され、その断面から、勢い良くロ
ケットエンジンの炎が噴出する。
「な、なにをぉぉぉ!?」

 どっがあああああああん!!!!!!

 ジンとドラゴンナイトの中間地点より、ややドラゴンナイトよりの地点で、2つのロ
ケットパンチは交錯。
 拳と拳がぶつかり合い、大爆発を起こした。
「くそっ!こうなりゃ、近接戦闘しか・・・・。へ?」

 ガチン。

 ジンは目を疑った。
 ドラゴンナイトのふくらはぎにあたる部分がぱかっとひらき、そこから予備の腕が出
てきたのだ。
 そして・・・。
「ロケットパンチ、その2ぃぃぃぃ!!!!」
 再び誠治の声が響く。
「・・・・・腕は2本って決まってるだろうがっ!!きったねぞぉぉぉぉ!!!!」
 ジンの叫びは、ドラゴンナイトのロケットパンチ第2射の発射音にかき消された。



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After the battle...(戦いの後)
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「くっ。日が暮れる・・・。俺の負けだ。」
 誠治の背後に沈み行く夕日の残映を見つめながらジンはつぶやき、そして膝をついた。

 誠治は最初から時間稼ぎをする作戦だった。
 ジンが近づこうとすると、ロケットパンチを構え、けん制する。
 無理にジンが近づこうとすれば、回避しつつもロケットパンチを発射、そしてすぐ次
弾を装填する。
 通常、機関砲などを収納する部分にも、ロケットパンチの予備弾をつめていた。
 さらには背中のバックパックにも腕がいっぱい詰まっていた。
 5〜6回無理な特攻を繰り返したジンも、次から次から現れる予備弾(予備拳?)に
身動きがとれなくなった。「
 これは、『ロケットパンチ』を主攻撃とするジンだからこそ、プレッシャーを与えら
れる戦法だった。

「しかし、こいつのロケットパンチを2発も食らって立っているとは、さすがだな。」
「ふっ。やわな鍛え方はしちゃいねえよ。」
「・・・・・ちびまる!!」
「はぁい。」
 てこてこと、誠治に呼ばれたちびまるがジンに歩み寄る。
「はい、ジンさん。プレゼントです。」
「こ、これは・・・。」
 ちびまるがジンに手渡したのは、見覚えのあるオーブン電子レンジだった。
「い、いいのか!?」
「ああ。ただし、使うときは本当に気を付けてくれよ。」
「おうっ!!早速、改造して装備してみるぜっ!!」
「ああ。」
 レンジをちびまるから受け取ると、ジンは科学部の部室に向かって全力疾走。
 戦闘の疲れなど、みじんも見られなかった。
 そんなジンの後ろ姿をを誠治は苦笑しながら眺めていた。

「男って馬鹿よね・・・。」
「ほんま。」
 そんな男達を、女達も苦笑しながら眺めていた。



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Ending...(終演)
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「先生!!柳川先生!!すんげー武器手に入れたんだ!俺にこいつを装備してくれ!!」
「やかましいぞ。客が来てると言うのに。」
「あら、ジンちゃん。」
「あ、ち、千鶴さん・・・」
「あら、それは?」
「え?あ、これは、菅生からもらったオーブン電子レンジ・・・」
「まぁ!!」
「ふむ、これは好都合。」
「へ?」
「いや、千鶴校長の家の電子レンジが壊れたと修理を頼まれたのだが、部品がなくて困っ
ていたところなのだ。これは好都合。」
「ジンちゃん、私が困っているのを聞きつけて、新しいのを探してきてくれるなんて、
本当にやさしいのね。(にっこり)」
「えっと・・・いや・・・その・・・」
「ふむ、ついでに千鶴校長の家まで持っていってやれ。俺はそろそろ帰る。」
「あ、柳川先生、ありがとうね。さ、ジンちゃん、行きましょうか。お礼に今日は腕を
ふるって、ジンちゃんの好きな料理作ってあげるわね。」
「・・・・・・・・・・はい。」

 既にジンは、千鶴にあらがう気力は残っておらず、真っ白に燃え尽きていた。


 【完】


(C)Sage1999