クラスメイトLメモ「サード・ジェネレーション シーン2(前編)」 投稿者:Sage

「おっか〜を越〜え〜ゆっこ〜ぉよ〜♪くっち〜ぶえ〜ふきつ〜つ〜♪」
「くす。梓さん、ご機嫌ですね。」
「そういう彩だって、ご機嫌じゃない?うーん、いい天気、いい空気。まさにハイキン
グ日和りだねぇ。」

 柏木梓と長谷部彩は肩を並べながら遊歩道を歩いていた。
 今日は校外学習というところで、3年生全員で小高い山の上にある美術館を訪れた。
 美術館の敷地のほとんどはオープンスペース。
 そこに数々の彫刻などが並べられていた。
 遊歩道を歩きながらその彫刻を見るわけであるが、木立や丘を抜けるそのコースは、
まるでハイキングコースのようだった。

 真っ青な空、
 ぽっかり浮かぶ白い雲、
 小鳥の囀り、
 暖かな日差し、
 ほのかな草の香り、
 そして・・・・

「梓あぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!! なんでここにいるっ! あんたは2年だろおぉぉぉ!」

   どっごーん!!

 突然現れ、梓に抱きついてぶん殴られる秋山も、もはやそこにあって違和感のない
風景だった。



         どこがだっ!!(怒)by柏木 梓



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 クラスメイトLメモ「サード・ジェネレーション シーン2」
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 3年生一行は美術館へと到着。
 いくつかのグループに別れて見学へと向かった。
 橋本と一緒に歩いていた菅生誠治は、ある石像の前にふと立ち止まり、橋本に問い
かけた。
「なあ、これ・・・・誰かに似ていないか?」
「ああ。」
「ここ、たしか『来栖川彫刻美術館』だったよな。」
「ああ。」
「作者、だれになっている?」
「『来栖川芹香(13歳)』」
「・・・・おっさんも大変だな。」
「ああ・・・」
 そこには全裸でポージングしているセバスチャンの彫像があった。
「(ぼそぼそぼそ・・・・)」
「『下手ですみません。』だなんて、そんなことないよ・・・ってうわっ!芹香さん、
いつのまに(汗)
「や。芹香さんの作品見たよ。彫刻もやるんだね。」
「・・・・・(ぽっ)」
「でも、すごいよな、あんな大きな石像・・・」
「(ふるふるふる)・・・・ぼそぼそぼそ・・・」
「え?『あの彫刻は、私が粘土で作った物を大きくしただけです。』って?ああ、そう
なんだ。」
「(こくこく)」
「にしても、そっくりだったよ。あれって、やっぱりセバスのおっさんをモデルにしたの?」
「(こくり)」
「ふーん。・・・もしかして、あのポーズ通りの格好を?」
「(こくり)」
「・・・もしかして、パンツいっちょうで?」
「(こくり)」
「・・・あの石像の原型、作るのにどれくらいかかったの?」
「・・・・・・・・」
 ちょっと考えた芹香は、片手を広げ、更に指を3本加えた
「8時間くらい?」
「(こくり)」
「・・・もしかして、その間、おっさんは、身動きせず?」
「(こくり)」
「ぜんぜん?」
「(こくり)」
「・・・さすが、執事歴うん十年・・・」
「ぼそぼそぼそ・・・・」
「え?『おかげでいいものができた。』か。そうだね。」
「ぼそぼそぼそ・・・・」
「え?石像のおかげで泥棒の被害にあわなくてすんだって?どういうこと?」
「ぼそぼそぼそ・・・・」
「『はい、石像が泥棒を追い払ってくれました。』って・・・あの石像、動くのか?(汗)」
 慌てて振り返る誠治と橋本。
 心なしか、石像の視線が二人をにらみつけているように見える誠治と橋本だった。



 一方そのころ、柏木梓は長谷部彩といっしょに廻っていた。
「彩は、彫刻はやらないの?」
「はい。以前にチャレンジはしたんですけど、わたし、非力でノミとか彫刻刀とか扱い
きれなくて・・・。梓さんは絵や彫刻は?」
「まったく興味なし!ま、『料理はアートだ!』っていうから、素質はあるかもね。」
「梓さんのお料理、いつも美味しそうですものね。」
「いやあ、彩には負けるよ。家庭科の調理実習とかで彩が並べた皿をみると、『ああ、
これが美術的センスなんだな〜』って思うもん。」
「え?でも、私の、美味しくないですよ・・・。それに、綺麗に並べられたとしても、
味が良くなければ・・・」
「そんなことないって。美味しかったよ。詠美なんかと比べたら天と地だって。」
「なんですってぇ?」
「あ、大庭さん・・・。」
「あちゃ、聞いてた?(汗)」
「そりゃあいいわよ。梓は料理うまいし、ナイスバディーだし。それに比べ・・・・」
 ずぅぅん・・・・
(おいおい、自分で言って落ち込むなよ・・・)
 苦笑するしかない梓だった。
「あ、そろそろお昼ですね。ご飯にしませんか?」
 彩が助け船をだす。
「そ、そうだね。ほら、あそこにいい感じに芝生がある。あそこにしよ。」
 梓は率先して歩いていった。
「う〜、漫画の才能だったら負けないのにぃ・・・」
「さ、行きましょう。」
 彩に促され、詠美もとぼとぼと歩きだした。


 芝生にナップザックから出したキャンピングシートを広げ、その上に腰を下ろす。
 秋の暖かな日差しがあたりを包み、芝のちょっと青臭い香りが鼻をくすぐった。
「さーて、飯だ飯。」
 どかっと座った梓は、バッグから弁当箱と水筒を出した。
「・・・・そんなに食べるんですか?」
 梓の弁当箱・・・いや、お重と言った方が正しいだろう・・・を見て、彩が言った。
「ん?ああ、私が食べるんじゃないよ。弁当になると、大抵決まって・・・」

  どどどどどど・・・・・

 どこからともなく地鳴りがした。
 ふと音の方を見ると、なにかが土煙を上げて近づいて来る。

「な、なに!?なんなの!?」
「来た・・・・・」
 梓はお重のうちの一段を手に取ると、すっくと立ち上がった。

「あずさああああああああああ!!!!!!」
「ほおら、餌だぞ!とってこおおおおいっ!!!!!」
 突進してきた秋山と、90度違う方向に向かって、梓は全力で弁当を投げつけた。
 カクンと方向を変えた秋山は、弁当の方へと向かう。
 梓の鬼のパワー全開で投擲した弁当は、丘を越え、遙か彼方へと飛んでゆく。
 その弁当を追って秋山も・・・・。

「ふう、さて、ご飯にしましょうか。」
「・・・梓さんも、大変ですね(汗)」
「・・・梓、ペットは選んだ方がいいよ(汗)」
 少し食欲の無くなった彩と詠美だった。



(C)Sage 1999