クラスメイトLメモ「サード・ジェネレーション シーン2(中編)」 投稿者:Sage


 試立Leaf学園の3年生全員は、美術の授業の一環として美術館を訪れていた。
 美術館の敷地に立つ絵画展示館に、ひとつの絵をじっと見つめる男子生徒がいた。
 その男子生徒が見つめる、日本女性のしなやかさを描き出したその絵画を見て、観月
マナは、ふと知人の女性の事を思い出した。
 マナはその男子生徒、月島拓也に話し掛けた。
「ねえ月島君、あの絵のモデル、なんとなく森川先生に似てない?」
「・・・いや、似てない。」
「そう?」
「・・・瑠璃子に似てる。」
「へ?(汗)」
 どう見ても、月島の妹、月島瑠璃子には似てなかった。
「それじゃあの絵は?」
「・・・瑠璃子に似てる。」
「そこの鳥の彫像は?」
「・・・瑠璃子に似てる。」
「どうみても抽象画のその絵は?」
「・・・瑠璃子に似てる。」
「おみやげコーナーの売り子のおばあさんは?」
「・・・瑠璃子に似てる。」
「じゃあ、あそこの彫刻は?」
「瑠璃子に似てる。似ているぞぉぉぉ!!瑠璃子おおおおおおお!!!」
「あ・・・・・・・・・・そう(滝汗)」
 彫刻に抱きつき、押し倒す月島の姿を見て、マナは強い疲労感に襲われた。



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 クラスメイトLメモ「サード・ジェネレーション シーン2(中編)」
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「さて、飯だ飯。」
 男子生徒達も芝生にマットを広げ、おのおのに弁当を広げ始めた。
「はぁ・・・」
 霜月祐依がふとため息をついた。
「どうした?」
 菅生誠治が声をかける。
「みんなうまそうな弁当でいいなぁって思ってね。俺もうまい弁当を作ってくれる彼女
が欲しいなぁ・・・。」
「あははは。言っておくけど、俺も忍も弁当は自作だぞ。」
「そうですよ。きたみち君とかも自作だし、寮住まいの連中はパンとかですませてるみ
たいですし。ジン君やFENNEK君は燃料で済むから楽かもしれないでしょうけどね。
彼女が作ってくれるなんて人は、ごくごく少数じゃないかな?」
 くすっと笑いながら東雲忍が補足する。
「あれ?橋本は家から弁当持ってきたんじゃないのかい?」
 誠治がふとパンをかじっている橋本に気がつき、声をかけた。
「え?いや・・・まあ、たまにはいいと思ってね。」
 橋本には言えなかった。
 いつのまにか、家から持ってきた弁当がすりかえられ、薔薇部員一同手作りのハート
マーク付きの弁当になっていた事は・・・・。



 一方、そのジンの方は、食べ終えたゴミを適当に放り投げ、ゆっくりと立ち上がり、
伸びをした。
「くうっ・・・。ふう、食った食った。さぁて、腹ごなしに一発!ロケットパァ・・・」
「「こんなところでやめいっ!!」」
 スパパァン!!
 ディルクセンとセリスの容赦ない突っ込みがジン・ジャザムの後頭部にヒットした。
「学内の破壊活動ならいずしらず、公共の場での不埒な行動は、このディルクセンの目
の黒いうちは許さんぞっ!」
「ちっ。なら、その目をつぶしてやろうか。(にやり)」
「それはいいけど、ジン。もし、この美術館で物とか壊して、その請求が学園に来たら
千鶴先生・・・・・・すんごく怒ると思うよ。」
「そ、そうだな。(滝汗)」
 やはりジンの扱いはセリスに一日の長があった。



 ピピピピ・・・チチチチ・・・・
 青い空にヒバリが鳴いていた。
「いい天気だねぇ・・・」
 弁当を食べ終えた柏木梓はキャンピングシートに寝そべって空にぽっかり浮かぶ小さ
な雲を目で追っていた。
「そうですねぇ・・・・」
 その隣で食後のお茶を飲みながら、長谷部彩も梓の意見に同意した。
「しかし・・・美術館ってのも暇よねぇ。たいした絵があるわけでもないし。よっぽど
マンガ喫茶とかのほうが為になると思うんだけどなぁ・・・」
「くすっ。」
「あははは。」
 自らもマンガを書く、いかにも大庭詠美らしいせりふに思わず彩と梓は吹き出した。
「な、なによぉ。」
「いやあ、あんたらしいと思ってねぇ。」
「でも、絵画にはマンガに見られない描写方法や表現方法があります。マンガの勉強に
なります。」
「彩のマンガは、そういうの気にしすぎなのよ。もっと自分の感じるまま、思うままに
書けばいいのに。ちょっと技巧に凝りすぎ。」
「そうでしょうか・・・・」
「うんそう。もっとバーンと・・・」

  バーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!

 突然、爆発音が静寂を切り裂いた。
「なんなの!?」
「詠美、アンタ・・・」
「な、なんにもやってないってっ!!」
「冗談はさておき、なんなんでしょうか・・・。」
「行って見るカニ。荷物よろしくっ!」
 梓はそう言い残すと、音がした方向に駆け出した。



 古美術や、遺跡から発掘された物を集めた建物の前に人だかりが出来ていた。
 梓はその中に知った顔を見つけ、駆け寄った。
「きたみちくん、どうしたの!?」
「わかりません。僕も今来たばかりで・・・」
 中は埃が舞っていた。
 黒煙も少し混じっているようだ。
「げほっげほっ・・・・」
 真っ黒になって出てくる人影があった。
「忍くん!?どうしたの?」
 中から出てきたのは忍であった。
「わからない。芹香さんや誠治くん達と一緒にいたんだけど、芹香さんが調べていた壷
が突然爆発して・・・。」
「ほかの人はどうしたの!?」
「芹香さんとかが閉じ込められてるんだ。誠治くん達が助け出そうとしてるけど・・・
僕、FENNEKさんやジンさん、探してくる!」
 忍はそういうと駆け出していった。
 恐らく救出には力が必要になるからだろう。
「きたみちくん!アンタも忍くんを手伝って!」
「あ、ああ。って、梓さんはどうすんの!?」
「私は中を見てくるっ!」
「ちょっ!危ないって!!梓っ!!」
 きたみちの忠告を無視し、梓は中へと突入した。



 中はそれほど崩れていなかった。
 黒い煙は階段から流れて来ていたが、消える寸前だった。
 口にハンカチを当てながら階段を降りて行く。
 消火器から出た消火液の臭いが鼻をついた。
 先へと進むと、数人の人影があった。
「・・・誠治?橋本?」
「よう、梓・・・」
 消火器を手からぶらさげ、つかれきった表情を浮かべながら、橋本が力のない挨拶を
返した。
 その横には誠治の姿。
 なにやら心電計のような機械を壁に取り付け、モニタを懸命に操作していた。
「いったい何が・・・」
「わからん・・・。芹香さんがこの建物にいるって聞いて、霜月とかとやってきたんだ。
芹香さんが壷を調べていて、霜月がちょっかいをだして、その壷が落ちて、でかい音が
して・・・・。」
「恐らく何かがその壷に封印されていたんだと思う。」
 いままでだまっていた誠治が口を開いた。
「何か・・・なにかって?」
「・・・・・こいつだよ。」
 誠治は壁をたたいた。
 ポヨン。
 壁はやわらかい、ゼリーのような物質で出来ていた。
「壷にこのぶよぶよした物体が入っていたらしい。それが壷が割れた瞬間、爆発的に膨
張し、俺達がいた部屋を埋め尽くした。さっきのでかい音はこいつが壁をぶち破り、部
屋に充満した時の音だ。」
「・・・芹香や霜月は?」
「・・・・わからん・・・・奥にも部屋はあったから、そこに逃れていてくれればいい
が、最悪このゼリーみたいなやつに・・・・」
「そんな・・・・」
「それに、よしんば逃げられていたとしても、もし、こいつに入り口を密閉されていた
としたら空気があまりない・・・・急がなければ・・・・。」
「あたし、きたみちくん、呼んでくる!あいつの刀なら・・・」
「頼む。それと、関係者にこの建物の設計図を持ってこさせてくれ。」
「わかったっ!」
 梓は降りてきた階段に向かって駆け出した。
「・・・誠治よぉ・・・」
「なんだ?」
「こっちの火は俺が消したけど、もし、奥でも火災が起きてたら・・・・」
「・・・・今は救出する事を考えよう。」
「・・・・そうだな。」
 橋本は消火器を転がすと、ゆっくり起きあがり、服の埃を落とした。
「俺に手伝える事はあるか?」
 橋本に、いつものナンパな軟弱男の表情は見えなかった。