Lメモ「GO!GO!ウェイトレス 第1話:オープン☆」 投稿者:Sage
「そうですか?喜んでいただけてうれしいです〜☆」
 1年生の川越たけるが作ってきたおはぎを囲んで、図書館の中にちょっとした人だかりが
できていた。
「うん、うまいよ。これ。」
「どれどれ、俺にもひとつ。」
「おーい、だれかお茶くんでこいよ。」
「あの、川越様、ひとついただいていってもよろしいですか?」
「うん、えっと、電芹さんだったっけ?どうぞ、どうぞ。あれ?でも、食べられるの?」
「いえ、ちょっと別室にいらっしゃるかたに持っていこうと思いまして。」
「ふ〜ん、別にいいよ。いっぱいあるし。」
「では、一ついただきますね。」
 電芹は小さな皿にたけるお手製のおはぎを1つとると、事務室へと向かった。
 そこで緑茶をちょっと熱めに入れると、事務室の裏手にある階段を上っていった。
 図書館の屋根裏にある、隠し部屋へとむ向かう。
「コンコン」
「どうぞ。」
 ノックをすると、中から声がした。
「失礼いたします。下でおはぎをいただきましたので、お一ついかがかと。」
「うむ。」
 電芹からお茶の入った湯飲みを受け取ったハイドラントは、数日前、電芹を第2茶道部
にスカウトした。
 ハイドラントの指導をうけ、電芹のお茶の腕前はさらに上昇していった。
 メイドロボとはいえ、お茶など感性を必要とする物は、人間同様、学習によって技術が
向上してゆくのだ。
「ほう、この餡はなかなかだな。手作りだな?」
 楊枝で小さくちぎったおはぎをほおばりながら、ハイドラントは電芹に言った。
「はい。私と同じクラスの川越様のお手製だそうです。」
「ふむ。ところで電芹、学校側はなんと?」
「現状、生徒が第1閲覧室に飲食物を持ち込んでいる事を考えると、特に問題ないだろう、
とのことです。ただし、第1購買部が、図書館内での軽食販売を考えているようですので、
もし計画を実行に移されるのでしたら、早めに手を打たれた方が良いと思います。」
「そうか。ふふふ。趣味の人間観察がこんなところで役に立つとはな。どうだ、密偵とし
て、私の下で働くか?」
「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。私がハイドラントさんにお伝えでき
る事は、一般生徒でも知りえる情報に限らさせていただいておりますので。」
「残念だな。まあいいだろう。よし、ではこの書類を綾香の捺印をもらった上で、庶務課
に提出してくれ。」
「アルバイトの件、どうなさいますか?あと数名は必要だと思いますが。」
「あまりクオリティーを下げたくはないな。とりあえずは営業時間を放課後に限定する。
だが、もう2〜3人は必要か・・・・・。」
 食べかけのおはぎが目にとまる。
「ふむ、電芹、これを作った彼女にバイトする気がないか、聞いてみてくれ。」
「はい。わかりました。」
 数日後、図書館第2閲覧室が取り壊され、その跡に、軽食をとりながら本の閲覧や談話
をするためのスペースとして、カフェテリアが新設されることになった。

「えぇ?私が?」
 放課後、もう数人の生徒しか残っていない教室に、川越たけるの声が響いた。
 たけるの話の相手はセリオタイプのメイドロボ。
 髪をポニーテールに束ねているのは電芹の特徴だ。
「はい。先日、バイトを探しているとおっしゃってましたよね?」
「う〜ん、条件もいいし、料理は好きだけど、ウェイトレスなんてできるかなぁ。」
 電芹の持ってきた、アルバイトの募集要項を眺めながらたけるがつぶやく。
 『アルバイト緊急募集。調理兼ウェイトレス。場所:図書館に新設のカフェテリアにて』
 学園の中で働けるのは魅力だ。通勤時間などにかかる時間も働くことが出来る。
「もしご都合がよろしければ、ぜひお願いします。川越様。」
「バイトは他に何人くらいいるの?」
「現在は私一人なんです。最終的には4名程度になる予定だそうですが。」
「う〜ん、電芹さんもいるのかぁ・・・・。うん。やってもいいけど、条件を一つだけ出さ
せてくれる?」
「はい?私で何とかなることでしたらなんでもいたしますが・・・」
「私のことはたけるって呼んでね☆」

 そしてカフェテリアオープン当日、お客は店舗よりも、彼女たち2人のウェイトレス姿を
見に来た男達であふれかえる事となった。

【つづく】

(C)Sage1998