Lメモ「GO!GO!ウェイトレス 第2話:準備おっけー☆」 投稿者:Sage
 『第2購買部』のラベルが張られた段ボールが次々と運び込まれてゆく。
 カフェテリアはオープン直前の準備で大わらわだった。
「じゃあ、ざくっと機械の使い方を教えておくね。」
「はいっ」
 川越たけるは、メモを片手に真剣な面もちで、説明に耳を傾けた。
「まず、入り口に券売機がある。お客はこれに学生証を入れ、注文したい商品のボタンを
押す。」
 この学園の学生証は、ICカードになっている。
 これ1枚が身分証明であり、クレジットカードであり、図書館の貸し出し証でもある。
 学生証を券売機に入れると、ピッという音とともに、すべての商品ランプが点灯した。
「今はすべての商品がオンになっているけど、もし売り切れの商品が出たら、鍵を使っ
て、扉を開け、その商品のスイッチを切り替えてくれ。」
「はいっ(メモメモ)」
「それから、これを常に持ち歩いてくれ。」
 たけるはハンディータイプの端末機を手渡された。
「もし、テーブルで商品注文されたときなどは、この端末で、その注文をエントリー
してくれ。入力されたデータが無線で送られ、自動的に料金計算される。端末の操作法
は、あとで説明書をあげるから、読んでおいてくれ。」
「は、はいっ・・・覚えられるかしら・・・」
「大丈夫。慣れるまではお客には券売機をつかわせるようにすればいいんだ。それに、
わからなかったら電芹もいるしな。電芹には機器の使い方はすべて教えてある。」
「・・・電芹さんをご存じなんですか?」
「ん?ああ、自己紹介がまだだったな。3年の菅生誠治。電芹の管理者だ。」
「え!?そうだったんですか?わたしすっかり電気屋さんかなにかだって思ってたんで
すが電芹さんのお知り合いのかただったなんてしかもそのうえ3年生だったなんてわた
しの先輩じゃないですかってでもなんで生徒なのに機械の設置なんてしてるのかわから
ないしわたし先輩なんてあっきーしか知り合いいないし電芹さんいないのにわたしなに
をはなしたらよくわからないしどうしましょう電芹たすけてよおぉ(涙)」
「とりあえず・・・・・落ち着いた方がいいと思うよ。」
「あうぅ・・・」
 苦笑する誠治に、たけるは赤面してなにも答えることができなかった。

 カフェテリアは、客席、テラス、厨房、カウンター、の4つに分かれている。
 客席は中央に4人掛けの丸テーブルがならび、部屋のはしには12人掛けの、大きな
テーブルがある。
 そして室内の客席とは別に、オープンスペースのテラスがある。テラスは春から
秋にかけての日中から夕方にかけて、晴天にのみ使用される。
 カウンターにはドリンクサーバーやグラスラック、アイスメーカーなどがならび、
飲み物を作ることができる。教師などはここでカクテルも注文できるようになって
いる。
 そして厨房。大型の冷蔵庫、冷凍庫、製氷器、レンジやオーブンなどの器具が並び、
パーティーの準備など大人数相手の料理も可能になっている。
「う〜ん、ちょっと宝の持ち腐れかしら。」
「たしかにな。まあ、ハイド君の話だと徐々に人数は増やすらしいから、そのうち全て
の設備を使うことになるんだろう。とりあえず、たけるさんと電芹は、カウンターでの
仕事がメインになりそうだな。料理のほとんどは冷凍して搬入される。レンジなんかで
調理して、盛りつければできあがりだ。」
「う〜ん、愛情がないですねぇ。」
「ファミリーレストランと同じシステムだからね。」
「・・・料理はやっぱり手作りしたいです。」
「ふむ、二人で切り盛りするのに、いちいち手作りしている余裕があるとは思えないと
思うけど・・・あとで、どんなものが作りたいか教えてくれ。それ用の材料も用意して
あげるよ。」
「いいんですか?」
「ああ。そのかわりといったらなんだが、俺が来たときは、たけるさんの手作りをごち
そうしてくれよ。」
「ええ、よろこんでっ☆」

「ふむ、準備はできたようだな。」
「あ、ハイドさん、おはようございます。」
「うむ。おはよう。」
「機材の搬入は終了したんで、ここにサインを。」
 誠治の差し出したボードを受け取り、ハイドラントは流れるようにサインをした。
「あとは食材の搬入かな?」
「はい。それは今、電芹さんが付き添いにいってます。あと1時間くらいで戻ってくる
とおもいますよ。」
「ふむ。では問題はないようだな。」
 バサッっと、ハイドラントは脇に抱えていた包みを、たけるの前のテーブルへと放っ
た。
「これ、なんですか?」
「開けてごらん。」
 ガサガサ・・・。たけるが包みを開ける。中には2着の服が入っていた。
「わぁ!!」
 服を広げる。エプロンのついた、かわいらしいウェイトレス服。
「かわいいですっ!これ、店員の制服ですか?」
「服は好きに変えていい。だが、とりあえず電芹と二人、同じ服を用意した方がいいと
思ってな。」
 服を胸にあて、たけるがくるりと回る。
「わぁい☆」
 くるり、くるり。まるで服とダンスを踊るように。
「ふむ。似合うな。」
「ハイド君、・・・いい趣味だな。」
 店内に、タイミングを計ったようにBGMが流れ始める。
 曲にあわせ、頬のゆるむ二人の男の前で、たけるのダンスは続いた。

【つづく】

(C)Sage1998


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