Lメモ「五月雨堂の者達がLeaf学園に来た…」 投稿者:沙留斗


 五月雨堂の者達がLeaf学園に来た…


 一日前。「ちづるせんせいとさると」

 校長室。
 手狭であり、広くも見える其の中には、2人の人物。
 五月雨堂の皆の入学届及び編入手続き書を持ってきた沙留斗と。
 其れにぽんぽんと景良く判子を押す千鶴先生。
 千鶴先生は押さなくて良い物にまで判子を押しているが、其れはご愛敬。

「(ぽん)……はい、此れで良いですよ。お疲れさま」
「有難うございます、先生…ちょっと無茶言ってしまったようですけど」
「くすっ、構わないわ。生徒が増える事は良い事ですから」

 にっこりと先生用の笑みを浮かべる千鶴。
 梓嬢に言わせれば、偽善者スマイルというのだろうか?

「ともかく、これで貴方の言う五月雨堂さんが、このLeaf学園の一員になる
事を許可しました。お疲れさま」
「はい、どうもありがとうございました、では宜しくお願いします…」

 軽く礼を言って、去ろうとする沙留斗。
 其れに対し。

「あっ、ちょっと良いかしら?」
「え、はい? なんでしょうか?」
「其の骨董品屋さん…五月雨堂さんって面白い?」
「はぁ?」
「実はね、わたしってそういう骨董品屋さんとかって行った事が無くて。ねえ?
楽しいの? いろんな物が有るんでしょ? わたしも行っても良いかしら? も
しかしたら、とっても素敵な物が有るかもしれないし……
 あっ、ドレスとか宝石とかってある? もし有った耕一さんにおねだりしち
ゃおうかしら…きゃっ(ハート)」
「は、はぁ…有るんじゃないでしょうか? 多分……」
「そうなのっ!? わぁ、楽しみぃ。うふふっ☆」

 いやんいやんという感じで身をくねらせる千鶴先生。
 そんな千鶴先生を、ちと引いた感じで見やる沙留斗。
 放って置こう……そう思って帰りかけた時、ふと思い出したように彼が言った。

「あっ、でも五月雨堂さん、『胸が無い人は入店禁止』……(ざしゅっ)」



「(かきかき)……追加要項。胸に関する記述は取り下げる様に……っと。うん、
これで良いわね☆」

 千鶴は手を血に染めつつ、届け出た資料にそう書き加えておいた。


 〜〜〜


 1日後。「すふぃーとりあんとけんたろ」

健太郎:「そういえばさ、スフィーやリアンは学校どうする?」
スフィー:「うりゅぅ? がっこう?」
リアン:「え……もしかして、私達の入学手続きを…?」
健太郎:「ああ。沙留斗が紙を置いていったよ。この紙に何処に行きたいか書い
    て出せば次の日から行ってOKだってさ。俺は大学生扱いで申請するよ。
    で、リアンやスフィーはどうする? 年齢相応で行けばやっぱ大学生に
    なるけど…」
リアン:「あの……高校生…などは駄目でしょうか? 私、こちらの学生生活を
    楽しんでみたくて…」
健太郎:「あっ、其れは良いかも。リアンは外見も幼いから、問題はないかもな」
リアン:「あぅ……そういうつもりじゃ……」
健太郎:「あはは、冗談冗談…実際、リアンの学力だったら高校生じゃなくて大
    学生でもいけると思うぜ。結花も『リアンは本を良く読んでるし、頭が
    良い』って言ってたよ」
リアン:「そんな…私なんて……(///) 高校生でも過分なのに…」
スフィー:「は〜いは〜い。あたしは、健太路と一緒のだいがくせーが良い♪」
健太郎:「はぁ? お前がかぁ?」
リアン:「ね、姉さん…幾らなんでも其の身体じゃぁ…(汗笑)」

 (ピンポンパンポ〜ン):今のスフィーはLV1相当です。

スフィー:「なんでよぉっ! 少しぐらい構わないでしょ? 大体、あたしは本
    当は21歳なのにぃ!(ぷんすか)」
健太郎:「う〜ん。行きたいって言うなら別にとめないけど…だたし」
スフィー:「ただし……何?(小首を傾げ)」
健太郎:「こっちの大学、勉強がきついぞ?」
スフィー:「うっ……」
健太郎:「しかも、高校生程度の学力は最低いるぞ?」
スフィー:「うぅっ!」
健太郎:「加えて、授業も長いぞ?」
スフィー:「うぐっ……じゃ、じゃぁ高校生を…」
健太郎:「高校生も結構勉強しなきゃ行けないんだが。お前、出来る? 店の釣
    り計算も時々しくじりそうになってるのに」
スフィー:「うりゅぅ…で、出来ない…かも…(汗)」
健太郎:「悪い事は言わん。中学生か小学生にしておけ」
スフィー:「で、でもでも……」
健太郎:「ちなみに、中学生までなら給食も有るし、遠足も、文化祭だってあ…」
スフィー:「そっちにするっ!!(0.001秒)」
健太郎:「うむ、人間素直が一番だな、あっはっは」
スフィー:「うふふ〜、給食かぁ、美味しいのかなぁ…えへへ☆」
健太郎:「おお、美味いぞ。其れにいくら食ってもタダだしな」
スフィー:「そうなの!? うふふ……じゃあ一杯食べてくるねっ!」
健太郎:「おう食ってこい。でも動けないほど食うんじゃないぞ?」
スフィー:「はーい、分かってるってぇ…くす、楽しみだなぁ…学校♪(にぱっ)」
リアン:「あ、あははは…な、何か違う……様な……(汗笑)」


 〜〜〜


 2日後。「すふぃーとけんたろとおきゃくさん」

「ねえねえけんたろ、これなぁに?」

 お店の整頓をしてた時、変な物を見付けちゃった。
 なんだか丁寧に梱包されてるほうき…
 綺麗なアクリルの箱に入って、なんだか鑑定書まで付いてる。

「ん〜、それか? 見てのとうりのほうきだ」
「……あのね。何でそんな物を店に出してるの? こんなもの売れないんじゃな
い?」

 呆れた感じでそのほうきを見るあたし。
 どー見たって、そこいらにある唯のほうきにしか見えなんだけど…
 ん? 良く見ると何か彫ってあるし、細かなアタッチメントも…?

「ちっちっち。甘いなぁスフィー」

 するとけんたろは、なんだか勝ち誇ったように言い始めた。

「此れはな、『来栖川重工 HM−12付属ほうき』といってな、HM−12型
って言うメイドロボの初期付属ほうきだ。その筋じゃかなりレアな品なんだぞ」
「めいどろぼ? それってなぁに?」
「ん〜……簡単に言うとな、ロボットのメイドさんだ。12,3歳ぐらいの碧髪
の女の子に見える、な。家の家事や掃除、洗濯を代わりにしてくれたり、会社な
んかで雑務をしてくれたりするんだ。確かこの学校にも何人か居る筈だぜ」
「へぇっ……其れって、なんだか凄いね。人間の代わりになるお人形さんでしょ? 
まるで魔法見たいっ♪」
「ん〜……まあ、ある意味そうかな。科学って言う魔法の結晶、だな」

 くしゃくしゃとあたしの頭を撫でながら、けんたろがそういう。
 でも……

「でも、このほうきってそんなに価値が有る物なの?」
「ああ。手に入れるのは結構苦労したんだからな。何せ数こそは有るけど、使わ
れて状態が最悪だったり、壊れてたりするだしな。それに、残ってても大抵、本
来の持ち主が手放さないんだ。やっぱ、使う為に。だから、結構プレミアが付い
たりするんだ。まあそれでも、この店の他の物よりも値段は、結構下がるな」

 こんこんとアクリルの箱を叩きながら、けんたろは言った。

「なるほど……でもまあ、見る人が見れば、レアなんだね。納得」
「そう言う事。分かったか?」
「うん♪ でも、これって売れるかな?」
「ん…実はな……」

 ウィ〜ン

 けんたろが何か言おうとした時、ちょうどお客さんが来ちゃった。

「あっ、いらっしゃいませ〜♪」
「いらっしゃいませ」
「こんにちは、お邪魔させてもらいますね」
「どうぞ、ゆっくり見ていって下さいね☆」
「くす……では…はじめてなので、ゆっくりと」
「はい、御ゆっくり」
「うん、分からない事が有ったら、なんでも聞いて下さいね」
「はは…有難う」

 えいぎょ〜スマイルで答えるあたし達。
 あたし達の接客にたいし、お客さんはにこやかに会釈をしてくれた。
 そのお客さんは、黒い髪で茶色の瞳。顔はとっても優しそうな笑顔。
 見た感じ、フツーの高校生といった風かな?

「ふむ……いろんな物が有りますね…」

 お客さんは店先をくるりと回って、古物や書籍がある棚に立った。
 時々、古い本なんかを手に取っては見てる。
 古い本って、若い人はあんまり見ないんだけど……めずらしいな。
 あたしなんて読み出したらすぐ寝ちゃうのに。

「ん……此れは?」

 っと、お客さんがあの、ほうきの前で立ち止まった。
 うりゅ? なんだろ…
 って思ってたら、お客さんがけんたろを呼んで、あのほうきの前で話始めた。

「店主、ちょっとお聞きしたいんですが…」
「はい、何でしょうか?」
「この品、もしかして……」
「此れですか…? お客様…お若いのになかなかお眼が効くようですね」
「うん、ちょっと、ね……この品、来栖川重工の……だね?」
「えぇ、そのとうりです」

 意味ありげな視線をそのほうきへを送るお客さん。
 その眼を見ながら、けんたろは声のトーンを落として話し始める。
 なんだか、いつもと違う感じがするんだけど…けんたろ。

「しかも、ここ、ここを見ていただけます? ほら……柄の部分」
「うん? …なっ! こ、此れはっ!」
「はい、ナンバー7…マルチ型HM,第一期生産の7型…一桁台の品です」
「むぅ…レア中のレア…しかも、状態も良いようですね」
「ええ。其の点に関しては…無論、鑑定書も付いてます」
「成るほど…」

 しみじみと感じ入ったようにうなずくお客さん。
 仕切りにそのほうきに感心してるようだけど……あたしにはよくワカンナイ。
 あんなほうきの何処が良いのかぁな?
 な〜んて思ってたら、値段の交渉に入った見たい。

「それで……値段のほどは?」
「そうですね、この品だと出すところに出せば…1万は軽く越えますしね」
「う……やっぱり其の位しますか……」

 値段を聞いて、一瞬顔をしかめるお客さん。
 そりゃそうだよね。
 いちまんえんも有ったら、ホットケーキ20枚も行けちゃうもん。
 あたしだったら買わないなぁ……絶対。
 ホットケーキ20枚や、お子魔女グッズの方が断然良いよね。

「ですが…まあ、お客さんも学生さんですし…5000円…でどうでしょうか?」
「5000円? むぅ……お手頃ですね……良いんですか? さっきの1万にし
ろ最低価格では?」
「いえいえ構いません。但し、今後もごひいきに…お目に適う品、そろえて置き
ますので」
「ふふ……なかなか商売上手ですね……良いでしょう、買います。このような品、
なかなか有る物でもないですし」
「毎度有難うございます…」

 あ。買っちゃった。
 しかも5千円だって。
 うわぁ…凄いなぁ…良く買うなぁ…
 信じられないなぁ…ホットケーキ10枚分…
 っと、ボーッとしてる場合じゃないね。
 梱包梱包…

「んっと、お待たせしましたぁ」
「あぁ、有難う」

 綺麗な色紙でその箱を包んでから、私はその箱をお客さんに渡した。
 お客さんはほくほくした笑顔でそれを受け取る。
 まるで子供みたいに微笑んで、取っても大事そうに箱を抱えてる。
 うにゅ……来た時と随分印象が違わない?
 そして、商品を受けとってから、お客さんはけんたろに向って話し掛けた。

「店主、此れからもちょくちょく寄らせていただきますね…出来れば、今度はも
っと良い物を期待してます」
「はい、今後ともごひいきに……有難うございました」
「ありがとうございました〜」
「ふふっ……此れをプレゼントしたら、マルチ喜ぶだろうなぁ……」

 商品を抱えて嬉しそうに帰っていくお客さん。
 なんだかスキップしてる見たい…変なの。
 でもすっごく喜んでるなぁ…

 そして、お客さんが見えなくなってから、けんたろがくるっとこっちを向いた。

「と、まあ。ここはああいう物でも、買う人がいるわけだ。分かったか?」
「うん…とっても…ああいう変な物でも、買う人は居るとこにはいるんだね」

 変に爽やかに言うけんたろ。
 それに対し、もう十分にね、という感じで答えておいた。
 ホントは、あんまり分かりたくなかったかもしれないけど…

「そう言う事。まあ、ここなら面白い物でも結構はけるだろうな。遣り甲斐が有
るぜ。ほんと」
「あはは……そだね。がんばろっか。深く考えても仕方ないしねっ☆」
「おうっ、その意気だっ」

 ふぅん……この学校って変な物が売れるんだ。
 だったら取りあえず、変な物でも面白かったら店頭に並べてみよっかな…
 なんて思った日だった。


 〜〜〜


 3日後。「てぃーなとすふぃー」

 小学部棟。

「と、言う訳で…今日から皆のお友達に成る、スフィー=リム=アトウェリア=
クリエール君だ。みんな、仲良くするように」

 手短にスフィーを紹介するは、長瀬源一郎国語教員。
 ビールッ腹はいまだ健在である。

「スフィーです、宜しくお願いしま〜す」
『は〜〜〜い!』

 そしてスフィーの言葉に元気良く反応するのは、クラスの一同。
 言うまでもなく、小学生小学生している、小学生達だ。

 結局スフィーは小学校にしたらしい。
 其れに合わせて身体もLV1……即ち、8歳程度に落としている。
 あまつさえ、ピンクの長袖に赤いふりふりのスカート、背中にはランドセルを
背負って黄色い安全帽まで被っている。
 流石に年齢や外見を小学生に合わせておかないと、21歳としてのプライドが
もたなかったらしい。

「え〜…じゃあまずはスフィー君。あの席に座ってくれないかい? あこが此れ
からの君の席に成る。近くの子達は、スフィー君を助けてあげるように」
「あっ、はい。有難うございます☆」
『は〜い、分かりましたぁ』

 長瀬教員に対し、揃って元気良く返事をする一同。
 小学生に嵌まりきっているスフィーであった。

「えっと……よろしくね」

 席に付いて、横の子に挨拶をするスフィー。
 表情は、店に出ている時用の社交的な笑顔である。
 人当たりはばっちしだ。

「うん、こちらこそ宜しくね。スフィーちゃん」
「えへへ…よろしく。貴方のお名前はなんて言うの?」
「えっとね、私ティーナって言うの。良い名前でしょ?」

 にぱっと花丸笑顔で答えるは、チビHM三人娘が一、元気っ子ティーナである。
 其の笑顔につられて、スフィーもにこっと微笑む。

「うん、凄く素敵だよ。ティーナちゃん」
「えへへっ、スフィーちゃんも取ってもかわ……いい?」

 その時ふと、ティーナがなにかを思い出しそうに成った。
 スフィーもその名前を聞き、なにかを思い出しそうに成った。

「……ティーナ?」
「……スフィー?」

 其処まで言って、改めて、互いの顔を見合わせる。
 そしてきっかり10秒後。

『あぁぁぁぁぁぁっっ!?』

 教室中に響き渡りほどに、大きな叫びを上げる。

「ティーナっ! あんたがあのっ! レザムヘイム代表のっ!?」
「そ、そおいうアンタこそ、スフィー! グエンディーナの!?」

 ズビシッ! っとお互いを指差しつつ叫ぶ2人。

「なんだ? 2人とも知り合いか?」

 少々驚きつつ尋ねる長瀬教員。
 しかし其の問いに答える事無く、2人は見詰め合い…いや、睨み合っていた。

「ふっ……ふふ……捜したわよ、ティーナ……戦いの場が此所だからって言うか
らどこかに居るとは思ってたけど……まさかあんたがこんなすぐ側に居るとわ。
盲点だったわね…」
「ふふん、私こそ待ちくたびれちゃったよ。誰かさんが恐れをなしたんじゃない
かって心配したくらい。其れとも、課題が難しいから怖かったのかな? 私との、
『Leaf学園をどっちが平和に出来るか』勝負が…」
「何ですってぇ? 誇り高いグエンディーナ代表! そして王女たるあたしがっ!
何処の馬の骨とも知れないレザムヘイム代表なんかに恐れる訳無いでしょぉ?」

 鼻先でせせら笑うように言うスフィー。
 さりげなく手の甲を口元に持っていく辺りが、効果倍増である。

「(かちん) ふ〜ん…そぉ…でも遅れてきたのは事実よねぇ。迷子にでも成っ
てたのぉ? グエンディーナ代表は迷子になるんだねぇ…わあ、恥かしい」

 其れに対し、妙に色っぽい仕草で流し目を送りつつ、婉然と微笑むティーナ。
 加えて、見下げる感じでクスッ…と笑う。

「(カチン) ふ、ふん……こ、こっちはちょっと用事が有ったのよ。死に掛けた
人を助けるって言うっ。この学園の平和を守る前に、ちょっとした人助けをして
きたのよぉ。くす、余裕の成せる技よねぇ…」
「でも遅れてきたのは事実じゃない。約束も守れない様じゃぁ、お里が知れるわ
ね。オバサン♪(くすっ)」
「っ!? だ、誰がオバサンよっ! あたしは21歳よっ! ピッチピチの!!」
「ふふん、私から見ればオバサンだもん。や〜い、オバサン☆」
「何よこのチビガキっ! アンタなんてお尻に殻の付いてるひよこちゃんじゃな
いの。やぁねぇ、こんなおこちゃま相手に勝負するのぉ? もう勝ったも同然ね。
所詮レザムヘイムなんてグエンディーナの敵じゃないみたいね。この程度の人材
しか居ないなんて…(くすすっ)」
「なぁっ! ば、馬鹿にしないでよっ! 私は此れでも女神様なんだからねっ!」
「クスクス、ひよこの女神さまぁ? まあ可愛い。餌はいる? ひよこちゃん」
「きぃっ!! このオバサンっ!! オバサンオバサンオバサンンッ!!!」
「何よチビガキっ! やるって言うのぉ? 受けて立つわよっ!!」
「こっちこそ望むところだよっ! 直接ぶっ飛ばしてあげるんだからねっ!」

 双方椅子を蹴倒して立ち上がり、くっついてしまいそうに顔を接近させる。
 かみ締める歯軋りすら、教室中に聞こえそうだ。

 その時。

「あ〜……何を盛り上がってるか知らんが……」

 長瀬教員が、胃の辺りを押さえつつ、こう呟いた。

「2人とも、騒いだ罰だ。廊下に立ってなさい」

『あ……』

 取りあえず、スフィーとティーナの緒戦はダブルKOに成ったらしい。


 〜〜〜


 4日後。「だいにこうばいぶとさみだれどう」

理緒:「ひ〜、ふ〜、み〜……」
beaker:「どうです? 雛山さん」
理緒:「う〜ん……だめ、やっぱり売り上げが落ちてるよ、beaker君」
beaker:「そうですか…やはりあちらの影響は少なからず出ますか…」
理緒:「そんなに酷くはないけどね。でもやっぱり、箪笥とかって高いし、一つ
   売れないだけでも結構…」
beaker:「骨董品屋の強みですか……其の当たりの客、全員あっちに吸い上げら
    れましたしね…」

 レジの中の金を勘定しつつ、頭を悩ませるbeaker。

理緒:「どうする? なにか手を打たないといけないんじゃ…」
beaker:「まあ、すぐどうにかなるって言うほどの物ではないですが…其れでも、
    売り上げが下がるのは癪に障りますね…(ニタリ…)」
理緒:「beaker君……眼がちょっと怖いんですけど……(汗)」
beaker:「ふふっ……こう成ったら、あの手しかないですかね…」
理緒:「あの手……?」
beaker:「古来より伝わる、商売敵滅殺の秘儀っ! それを実行するしかないよ
    うですね…」
理緒:「な、何? それって……」
beaker:「ふっ……それは……」



 場面は変わり五月雨堂。

健太郎:「有難うございました」
スフィー:「ありがとうございました〜♪」
唯の生徒:「また来るよ〜」

 コチラは本日も盛況のようである。
 そして、其処から少し離れたところ。

beaker:「さて…行きますか…」
理緒:「び、beakerくぅ〜ん…止めようよぉ…」
beaker:「何を言ってるんですっ! 先手必勝、出る杭は叩き潰すっ! 弱肉強
    食のこの世、この学園に、情けは無用ですっ!」
理緒:「そうじゃなくてぇ、この方法ってぇ……(汗)」
beaker:「なんですか? この姿が気に入らないんですか? 似合ってますよ、
    理緒さん」
理緒:「あぅ……」

 2人の姿は、制服の上に黒いコート、おまけにサングラスを付けている。
 ちなみに2人の黒コートは、beakerは「フェ○ス/○フ」の、理緒は「マ○リ
ッ○ス」のコートだったりする。

beaker:「あ、そのコートは貸すだけですから。汚さない様に注意して下さいね」
理緒:「うぅ……せこいよぉ…?」
beaker:「何も聞こえませんねぇ。さ、行きますよっ!」
理緒:「くすん……」

 結局流されるままに、beakerに付いていく理緒。
 そして、2人はサングラスを目深に掛けて、五月雨堂へと入っていった。

 ウィーン、ガチャ…

スフィー:「いらっしゃいませぇ☆」
beaker:「…………」
理緒:「こ、こんにちはぁ…」
スフィー:「はじめてのお客さんですね、ゆっくりしていって下さいねぇ」

 にぱっとした社交的笑顔で接客をするスフィー。
 しかしbeakerは店に入ってから一言も話さず、ゆっくりと店を見て回っていた。
 理緒も、居心地が悪そうにbeakerについて回っていた。

beaker:(癪に障りますが…良い店ですね…なかなか……)
理緒:(そ、そうだね…綺麗だし、整頓も行き届いてるし…)
beaker:(ふふ……だからこそ、好都合です。きっと店の中の清掃整頓には自信
    があるでしょうしね…それが覆されれば……)

 そして、結構大き目な壷の前に来た時、ふとbeakerが動きを止めた。

beaker:「…………」
理緒:(び、beaker君っ、ほ、本当にやるのぉ?)
beaker:(無論ですよ。此所まで来て止められると思ってるんですか?)
理緒:(で、でもでも…)

 ぐいぐいと裾を引っ張って、beakerにすがり付く理緒。
 しかしbeakerは、そんな彼女を歯牙にも掛けなかった。

beaker:(んっと……(ごそごそポケットを漁り) えい。(目の前の壷に入れ))
理緒:(ああっ!? い、入れちゃったぁ……)
beaker:(さぁて、此れからですね……)
理緒:(あぅあぅあぅ…)
beaker:「んんっ…あ〜、あ〜。(発声練習) よし…すんませぇん」
スフィー:「あっ、はーい」

 beakerに呼ばれてちょこちょこっと近寄るスフィー。
 すると、beakerはニヤリ…と邪悪な笑みを浮かべた。

beaker:「よぉ、ねえちゃん。この店はゴキブリまで売るんかい? えぇ?」
スフィー:「えっ??」
beaker:「ちょっとこの壷みんかい。 中にゴキブリはいっとるやないかい」
スフィー:「ええっ!? そ、そんな……」
健太郎:「ほ、本当ですかお客さん!?」
beaker:「なにがそんなやねん。ちゃんとみんかい、ほれ」

 そう言って差し示す壷の中には…
 黒い塊…二本の長い触覚に、油でてかる羽…間違いなく、ゴキブリである。

スフィー:「う、嘘っ!?」
健太郎:「あっ……す、すみませんっ! こんな…」
beaker:「この店ぁ、こないなもん置くんやなぁ…たまらんなぁ、こないな物売
    りつけられるんか? わしらは」
スフィー:「そんなぁ……さっき綺麗にしたばかりだよぉ?」
健太郎:「馬鹿っ! 例えそうでも今現に……」
beaker:「なあ兄やん。この落とし前どないに付けてくださるんや?」
健太郎:「えっ、そ、それは其の……(汗)」
beaker:「この店は散々やなぁ……まいるで、ホンマ」

 にやにやといやらしく、何故か関西弁で喋るbeaker。
 そんなbeakerの背後には泣きそうな、って言うか泣いている理緒が。

理緒:(び、beaker君、も、もう止めようよぉ。ばれたら大変だよぉ?)
beaker:(ふ、リスクを恐れては成功は出来ませんよ)
理緒:(そういう問題じゃないでしょぉ?)
beaker:(何も聞こえませんねぇ、僕はぁ。(爽やかに))
理緒:(あぅぅ……(涙))

 理緒の涙に、しかし(というか当り前に)beakerは動じなかった。

beaker:「なあ、どうするんや? ちょっちょっとこの事実を知り合いに話した
    ら……それでもう、この店ぁお終いやなぁ…」
スフィー:「うりゅぅっ!!(汗)」
beaker:「なあ? どないする? 話してもええんか?(ニヤニヤ) でもわしも
    鬼や無い。なに、ちょっと色を付けて下さったら大目に見るで? なあ、
    どないしはるぅ?」
健太郎:「ぐ……わ、分かりました…では、お客様の望む様に……」

 健太郎が折れかけた時。

ひび猫:「にゃ。(ひょこっと壷の中から)」
一同:『どわぁぁぁっ!?』
健太郎:「ね、猫? なんでっ!?」
スフィー:「ね、猫…怖いよぉ…(ビクビクッ)」
beaker:「こいつはあのア〜パ〜小僧のっ!?」
理緒:「っていうか何処から出てきたのぉ!?」

 思い思いに叫ぶ一同。

ひび猫:「にゃ。(ひょこっと中に有ったゴキブリを見せ)」
beaker:「あっ!! こ、この馬鹿猫っ!! 止めなさいっ!!(あせっ)」
ひび猫:「にゃにゃ〜(ぽん、と健太郎の手の中にそれを放り)」
健太郎:「わわっ! こんな物いらっ……え……って、此れはっ!」

 健太郎は、受け取ったそれをまじまじと見た。
 手の中のそれは……精巧な玩具だった。

beaker:(し、しまった……でもしらばっくれてしまえば……)
理緒:「ど、どうしようbeaker君っ! ばれちゃったよぉっ!? あたし達の所
   為だってぇっ!?」
beaker:「って言うなぁっ! 言わなきゃ全然ばれないでしょうにっっ!!!」
理緒:「あっ……(汗)」

 慌てて口を押さえるがもう遅い。
 健太郎とスフィーは……

スフィー:「……ふぅん……そっか。そういう事……(ジト眼)」
健太郎:「…お客さぁん…困りますねぇ、こういう悪戯……(ジト眼)」
beaker達:『うぅっ!!?(汗)』
スフィー:「ねえ、あなた達。あなた達こそ、此れがしかるべき所に伝わったら、
     困るんじゃないっかなぁ?(クススッ)」
健太郎:「そうだな、スフィー…で、どうします? お客さん達…(ニヤリ)」
beaker達:『いや、其の……此れは…………(汗)』

 しどろもどろに成るbeaker。
 其の背後では。

水野響:「(別の壷からひょこっと) うゆ? ここは何処でしょう??」
ひび猫:「にゃ〜。(ちょんと手を挙げて挨拶)」
水野響:「あっ、こんなとこに居たんですかひび猫。色々と捜したんですよぉ。
    さあ帰りましょうね♪(にこっ)」
ひび猫:「にゃっ」

 ゴロゴロと壷ごと転がりながら、2人(?)が帰っていく。

beaker:「あっ! ほ、ほらっ! 万引き、万引きですよっ!!」
スフィー:「えっ? あぁぁ〜〜! ま、待てっ! 壷からでなさいっ!!」
健太郎:「おをっ! って言うかなんで家の壷から出てきたんだアイツ等ぁっ!?」
beaker:「チャンスっ!! 理緒さん、逃げますよっ!!!(がっと腕を掴み)」
理緒:「えっ!? あの、ちょ……わわぁぁっ!!!(凄まじいスピードで引っ張
   られ)」
健太郎:「あ〜〜〜! こら逃げるなぁっ!!」
スフィー:「けんたろ〜! 壷、壷がぁっ!!」
水野響:「わ〜い、楽しいですねぇ♪(ゴロゴロ)」
ひび猫:「にゃ〜〜☆(ゴロゴロ)」
健太郎:「ああもぉっ! 取りあえず、スフィーは壷を頼む、俺はあっちをっ!」
スフィー:「う、うんっ! こら〜、待ちなさぁ〜〜〜いっ!!」
健太郎:「待てぇぇぇっ!!」
水野響:「あはは〜〜〜♪(ゴロゴロ)」
ひび猫:「にゃにゃ〜〜☆(ゴロゴロ)」
beaker:「誰が待ちますかぁぁっ!!!(ドギュ〜〜〜ン)」
理緒:「たっ、助けてぇぇぇぇっ!!!(涙が尾を引き)」



 其の頃の第二購買部は。

坂下:「beaker達…何処にいってるんだろうな、見せを開けっ放しにして」
沙耶香:「さぁ…分かりません…書き置きも無かったですしね…」
坂下:「ま、どうせろくでもない事でもしてるんでしょうけど。(はふっ)」
沙耶香:「あはは…其れはあんまりじゃないですか…?」
坂下:「どうだか? beakerだから、と思わない?(クスリ)」
沙耶香:「くす…まあ、確かに……」
坂下:「ほら、やっぱそう思うでしょ?」
沙耶香:「くす…そうですね。(にこ)」

 坂下と沙耶香が店番をして。

唯のお客1:「すんませ〜ん。これくださ〜い」
唯のお客2:「あっ、こっちもお願いっ」
唯のお客3:「えっと…注文してたの取りに来たんですけどぉ、来てます?」
坂下達:『あっ、は〜い。毎度有難うございます。(にこっ)』

 そこそこ繁盛していた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

後書いた:

 まじ☆アンL二弾目。
 細々した話を一まとめにしてみました。
 じつは、それぞれに設定的なコンセプトが有ったりします。
 まあ、それは見て下さったら大体分かるんじゃないかなぁ、と思います……(笑)
 わかんなかったら、煮るなり焼くなり聞くなり掘るなり埋めるなり買うなりして下さい。
 どうにかなるでしょう。(沙耶香:一部以外はなりません)

 いじょ。

追記……

 2日目に出てきたお客さんはさるSS使いの方ですが、誰だかお分かりになります?