**************************************** ご注意。 このLメモは、佐藤昌斗個人の捏造した俺ちゃん様的設定や、思惑が交差しまくっており ます。 ですから、当然このLメモ内の出来事は、正規のLメモ設定などとはまぁ〜〜〜〜ったく 関係ありゃしません。 平行世界の出来心……出来事と思っていただければ差し障りないかと。 要するに、個人版のLメモちゅーことでございますので、他の設定とごっちゃになさらな いよう、お気を付けになって、読む方はお読みになり、飛ばす方・無視無視Qな方は、そ のようにしちゃって下さいませったらませ〜(深々)。 **************************************** ”力“と言うものは、大小様々であるが、人が望んで止まないものである。 ――例えば、他者を捻じ伏せる圧倒的暴力としての力。 ――例えば、自身が望む事を何でも叶える力。 ――例えば、幸運と言う目に見えない力。 ――例えば、権力と言う人間だけでなく、時には国すらも動かせる力。 大小様々な力は存在する。 しかし、全ての力を認識させる事は難しい。 だから、様々な力の中の一つだけを選ぶ事とする。 では、どう言った力を選ぶのかと言えば、それは一番認識し易い力だ。 一番認識し易いとは、何か? それは、”暴力“ではないかと思う。 暴力としての力は、自身で簡単に認識できる。 簡単に認識できると言う事は、力として感じ易いと言う事だ。 そして、簡単に理解できると言う事が、人がこの力を欲する理由の大部分ではないだろ うか。 ――例えば、何か物を壊す。 ――例えば、何か重い物を持ち上げてみる。 ――例えば、誰か強い相手と戦ってみる。 このような事で、暴力としての力は、自身で実感する事ができる。 そして、その力は他者を退け、自らを護る。 そう。 護れるのである。 だが……果たして”力“は、本当に自らを守るのであろうか? それは、恐らく力を手に入れないと解らない事なのであろう。 もし、普通は手に入らないであろう力を手に入れる事ができた時。 その時、その力を手に入れた者は、何に使うのであろうか? 何かに対する復讐だろうか? あるいは単なる憂さ晴らしに? もしくは、誰かを力で捻じ伏せる? いや、それとも……。 これらは、私個人の考えでしかない。 しかし、私はこの考えを間違えているとは思わない――いや、思えない。 果たして、私がこれから成そうとする事、そして成そうとする物によって、何が起こる のだろうか。 私は、是非ともそれが見てみたい。 そう、切に願う。 <以上、とある研究員の私的記録の中より抜粋。> 試立Leaf学園の私闘 「力と強さ」 >5月20日。 午後2時26分。 隆山市郊外。 顔の長い男。 『それ』が無くなった事に、顔の長い男が気がついたのは、昼をかなり回ってからの事 だった。 「――おや? あれは……何処にやりましたかね? いやはや、弱りましたねぇ。あれが 無くなったとなれば、厄介な事になりますし……ふぅむ」 男が発した声は言葉の内容とは裏腹に、いかにものんびりとした、およそ緊張に欠ける 声であった。 しかし、男は言葉の内容通りに、困っていたし、また焦ってもいた。 だからこそ、少しばかり広い純和風の自室のいたる所を、あるいはひっくり返し、ある いは掻き分け、それこそ、部屋中を必死になって捜しているのだった。 だが、それでも目的の物は一向に見つからない。 「いやはや……これは弱った。ここには、既に無いようだ。いやぁ〜弱った。本当に弱っ たなぁ、これは」 探し物の為に、ほんの少し前の整理整頓された姿が、まるで嘘だったと思える程に物を 散乱させた部屋の中央で、男は呟きながら考えた。 どうすれば、問題が起こる前に探し出せるのか。 そして、既に問題が起こった場合に、どう対処すれば良いのかを。 だが、男には紛失した物を探し出す才能は皆無だったし、また、問題が既に起こってし まった場合に対処する方法も、持ち合わせてはいなかった。 (いやぁ〜本当に弱った。はてさて、どうしたものかねぇ……) 男はしばし考え込むと、唐突にある事を思い出した。 (――あっ。そうだ。先生に頼もう。うん、それがいい。いやぁ〜どうして直ぐに思い出 さなかったのかなぁ〜) そう、男は思い出したのである。 この問題を解決できるであろう人物の事を。 そして、その人物ならば、確実に問題を解決してくれるに違いない事を。 「さてさて、さっそく電話、電話っと。えぇ〜っと、先生の所の電話番号は――」 こうして、男の抱えた問題は、その”先生“へと持ち越され、やがて、男が思っていた 以上の騒動へと発展してゆく事になる。 だが、当然そんな事になろうとは、男はまったく考えていなかった。 いや、この時はまだ誰も考えていなかったに違いない。 >5月20日。 午後2時35分。 試立Leaf学園園内。 ティリア・フレイ。 「あ〜ぁ。今日も、収穫はなしか」 活発そうな印象を受ける顔を曇らせ、その女性――ティリア・フレイは呟いた。 (ほんと、何処にいるんだろ? こっちの世界に来てるのは、間違いないはずだけど……) だが、見つからない。 この事実が、ティリアの表情を曇らせていた。 ティリアは、この世界――今いるこの世界の人間ではない。 ティリアは、この世界とは異なる世界から、サラ・フリート、エリア・ノース、そして ”もう一人“と、この世界へある目的の為にやって来た。 だが、この世界へ渡る途中、何者かの妨害かあるいは事故によってか、そのもう一人と 逸れてしまった。 そして、ティリア達三人は、この世界に出現した場所である、ここ試立Leaf学園で、 学園の校長の采配により寝床と、そして教師と言う役職を貰い、今までどうにか暮らして 来たのだった。 無論もう一人を探し、そして、この世界に来た目的を果たす為の行動もしながら。 しかし、ティリア達三人の必死の捜索にもかかわらず、今日もまた何の手掛かりも得ら れずに、捜索予定時間は終わってしまう。 今までの捜索で、この近くにいるらしい事は判明していた。 だからこそ、見つからない焦燥感がティリアを襲い、こうして普段活発な彼女には似合 わない、溜息を吐いているのであった。 (……ここで、溜息ばっかり吐いてても、しょーがないか。さっさと、サラ達と合流しよ っと。何か成果があったかもしんないし) そう思い、自分達が寝床としている待ち合わせの場所に向かおうとしたその時、不意に ティリアは呼び止められた。 「ちょっ〜と、いいかの? 勇者の嬢ちゃん」 何処か人の悪い感じがする笑みを浮かべ、角刈りに着流しと言った姿の老人――学園内 の施設の一つである、第二購買部の初代beakerは、ティリアに言うのだった。 >5月20日。 午後4時47分。 試立Leaf学園第二購買部店内。 ???? 『それ』は、待っていた。 目覚めてからずっと。 ただ、己の中にある強い欲求を満たす、手助けとなる存在を。 それは、ずっと待っていたのである。 そして、この場所に他の物と紛れて来て、暫らく経ったその時。 ついに、その瞬間はやって来た。 「……なんだろう? これ」 そう言う声が聞こえ、そして、それは自分に触れる存在を感じた。 そして、それは触れられた瞬間、触れる者の心を感じた。 良い。 この心は、とても良い。 それは歓喜した。 この存在ならば、自分の欲求を満たす手伝いを必ずしてくれる。 それを理解し、それは歓喜した。 >5月20日。 午後4時50分。 試立Leaf学園第二購買部部室。 坂下 好恵。 「ありがとうございました!」 客の背中にお礼の声を掛け、手早く商品帖に書き込み、代金をレジに入れる。 「ふぅ〜……もぉ、まったくbeakerの奴。人に店番任せっきりで、どこにいったのかしら ッ? 文句の一つも言いたいくらいよッ」 そう苛立ったように言い、首を軽く捻る。 そして鳴るコキッ、と言う音に、何だか年を取ってしまったような気がして、制服姿に 第二購買部ロゴ入りのエプロンを掛けた、短髪の少女――坂下好恵は、少し悲しい気持ち になった。 そうして、ふと部室の壁に掛けられた、古いデザインの時計を見る。 現在の時刻は、午後4時52分。 時間を確認した瞬間、好恵は急に疲れが襲って来たような気がした。 もう少しで、4時間。 ただでさえこう言う客商売に不慣れなのに加え、今日は、お客もほとんど来ないと言う ――来たら来たでそれも嫌だったが――苦痛にも感じられる退屈な時間。 それが、もう少しで4時間である。 ちょっと店番を頼む、と聞かされてもいただけに、いい加減、我慢強い方である好恵も 忍耐力の限界であった。 「もうッ! 格闘部の活動が始まってるじゃないのッ。beaker、いくらなんでも遅すぎよ!」 「それは、すみません」 「――えっ?」 独り言のつもりで言った好恵は、返事が帰ってきた事に驚き、その声のした方に視線を 慌てて向ける。 するとそこには、白いYシャツに黒いコート姿、小さなサングラスを掛けた少年――好 恵の言うbeakerが、いた。 好恵は、一瞬驚いたがやがて、先程までの怒りを思い出しbeakerに今までの鬱憤を少し でも晴らす為、文句の一つでも言おうと口を開いた。 「beaker、酷いじゃないの! 私は、少しの間って聞いたからッ――」 「すみません、好恵さん。まさか、こんなにかかるとは思ってなかったものですから。あ っ、これ良ければ食べて下さい。美味しいですよ。今評判の店のですから」 だが、beakerは、それを遮るように笑顔で一息に捲くし立てると、文句を言おうとした まま固まってしまっている好恵の眼の前に、綺麗な白い箱に収められた洋菓子を、すっと、 差し出したのである。 「さぁ、どうぞ」 「あっ、ありがと……」 と、少々呆気に取られたように好恵は、beakerの差し出した小箱を受け取ってしまった。 この時点で、勝敗は決したと言えるであろう。 流石は、やり手と言われるbeaker。 見事な手腕である。 ……単に、好恵が扱い易い、と言うだけの事かもしれないが。 >5月20日。 午後5時13分。 試立Leaf学園エディフエル棟屋上。 月島 瑠璃子。 溶鉱炉にも似た太陽が、沈むその時に見せる赤い陽光(ひかり)。 そんな陽光が照らす屋上に、一人の女生徒がいた。 その女生徒は、沈む夕日を眺めているのか、それとも屋上を囲むフェンス越しに見える 景色を眺めているのか、どちらともつかない瞳で前を見ていた。 水色のセミロングの髪と、たゆたう水のような瞳。 そして、作り物めいた整った、だが子供のようなあどけなさを感じさせる顔と、規定の 制服に包まれたほっそりした肢体。 それら全てを紅く染め、その少女――月島瑠璃子は、紅い世界の屋上にいた。 と、突然瑠璃子の表情が、一変する。 「だめだよ。『それ』は、だめだよ」 そして、まるでその場に誰かがいるかのように呟く。 しかし、当然その声は誰にも届くはずはなく、そしてまた、先程までと同じように辺り に静寂が下りる。 と、その時。 ギィッ。 微かに軋んだ音を立て、屋上の扉が開かれた。 そして、その開いた扉を潜り、一人の少年が現れる。 その少年は、前髪を少し伸ばした感じの黒い短髪に、規定の制服と言う姿の少し小柄で、 一見すると少女に見える顔立ちをしていた。 「ごめん、瑠璃子さん。待った?」 その少年――長瀬祐介は、瑠璃子の姿を見つけると、一言そう言った。 「ううん。そんなことないよ、長瀬ちゃん」 瑠璃子はその言葉に応えるように、今までと違い、優しげでそして無垢さを感じさせる 笑顔を浮かべ、祐介に振り返る。 「瑠璃子さんに、呼ばれた気がしたんだ」 「困ったな、って思ってたの。長瀬ちゃんなら来てくれるって、そう思ったよ」 「……うん。届いたよ、瑠璃子さんの電波」 その言葉に満足したからか、瑠璃子は、かつて現実を放棄し、世界を隔てる扉を潜ろう とした祐介を救った時と同じ笑みを浮かべ、ただ静かに祐介を見た。 だが、急に先程までの表情になり、 「長瀬ちゃん。また、助けてくれる? あの子、このままだと戻れなくなるの」 と、湖の底を思わせる瞳を、祐介に向けて言った。 「あの子? 戻れなくなるって……?」 瑠璃子の言葉に戸惑い、詳しく話を聞こうと、祐介が口を開こうとしたその時。 ――チリチリチリチリチリチリチリ。 「これは……?」 「あそこ。あそこだよ、長瀬ちゃん」 祐介が瑠璃子の指差した方向に注意を向けると、そこから先程受信した電波が発生して いるのが観(み)えた。 「長瀬ちゃん、助けてくれる? また、助けてくれる?」 「……僕に、助けられるんだね?」 「うん。長瀬ちゃんなら、きっと助けてあげられるよ」 「……分かったよ、瑠璃子さん。僕にできるのなら、いくよ」 祐介は瑠璃子にそう答えると、踵(きびす)を返し、階下へと続く階段に向かい駆け出 した。 その祐介の背中を、紅い、何処までも紅い世界に一人だけとなった瑠璃子が、ただ静か に、無垢な笑みを浮かべ見送っていた。 >5月20日。 午後5時14分。 試立Leaf学園リネット棟裏手。 広末 了子。 試立Leaf学園。 この学園は、いわゆる普通の、何処にでもあるような学園とは違う。 規則にしても、規模にしても、施設にしても、そして……ここに通う、生徒や教師まで も。 しかし、他の学園とは全てが違うか? と言えば、そうではない。 変わらないもの。 それは、生徒が生徒であり、教師は教師であると言う事だ。 そして、その他にも他と同じ部分がある。 決して、表立っては見えないような、そんな部分。 本当なら、同じであってはいけない、そんな部分が。 そして、そんな部分が今、丁度見えているところだった。 「おれらなぁ、今、すんげ〜……ムカツイてんだョ」 「そーそー。このままじゃ、ストレスで病気になっちゃうンだよねぇ〜」 「ボクら友達だろォ? だからさァ、ストレスの発散させてくれよ。なッ?」 放課後の、陽もろくに刺し込まないようなそんな場所で、三人の少年達が、一人の少年 を取り囲んでいる。 「ごめんなさい……許してください……ごめんなさい……許してください……」 取り囲まれた少年は、震える声で地面に縮こまり、三人に対して許しを得ようと、まる で壊れたテープのように同じ言葉を繰り返していた。 それが、少年達の加虐心を煽るとも知らずに。 ……いや、分かっているのかもしれない。 何を言っても、少年達は気の済むまで殴り、蹴り、嘲(あざけ)る事を。 無力な者は、力のある者には逆らえないと言う事を。 「助け呼ばねーのォ? まっ、この時間じゃこんな所に誰もこねーだろうけどッ!」 少年の一人が、そう言って、蹴りつける。 そして、そんな少年の言葉を聞き、昏(くら)く嘲(わら)う少年達。 だが、少年達は知らない。 丁度、少年達には死角になり見えない場所で、一人の少女がこの一部始終をぼんやりと 眺めている事を。 その少女――広末了子は、別に慌てるでもなく、止めようとするのでもなく、そして、 怖がるでもなく、少年達の行為をただじっと眺めていた。 (早く、終わらないかしら? そろそろ、時間になるのだけど……) 右手に巻いた腕時計で時間を確認しながら、気だるげな溜息を吐く。 どうせ、命を取るまでには至らないだろう。 何故なら、一人ではやらず数に頼り、他人を呼ぶ事で自分を優位に立たせる……そんな、 彼等だ。 多分、痛めつけてお金を脅し取って、それで終わりだろう。 最近では、それだけで終わらない場合も多くあるらしいが、彼等はそこまではしないだ ろう――いや、できないだろうと、了子は暫らく眺めている間に、少年達をそう分析して いた。 ただ、こうして待っていれば勝手に終わってくれる。 だから、別に自分が動く必要は無い。 力の無い者は、力のある者に従うしかない。 ……別に、おかしい事じゃない。 何故なら、自分もそうなのだから。 だから……今の光景は、おかしくはないのだ。 (あの子が気絶したら、アイツら、すぐ逃げ出して終わるのに。気絶でもしないかしら? あの子) 了子はそんな事を思いながら、少年達に蹴られ、罵声を浴びせられている少年の姿を、 ぼんやりと眺めた。 そして、もう一度時間を確認しようと左腕の腕時計に視線を落とした、その時。 「あん……? なんだァ、こりゃ?」 了子が視線を上げて見ると、少年達の中で一番背の高い少年が、長い棒のような物が入 った袋を手に取っているところだった。 その時、顔を両腕で庇い蹲(うずくま)っていた少年が、顔を上げて背の高い少年の方 を見た。 そして、視線が背の高い少年の持っているモノに合うと、少年の顔が驚愕に変わり、 「――?! そ、それは……っ!?」 今まで、ただ同じ言葉を繰り返すだけだった少年が、明らかに動揺と解る声を発した。 「あん? ……はッ、なるほどォ。こいつで、おれらに復讐でもするつもりだったのか」 背の高い少年は、蹲ったままの少年の今までと違う反応に、ニヤニヤと嫌らしい笑みを 浮かべながら、袋を外してゆく。 「おいおいッ、怖ぇーなァ」 「おれ、小便もらしちゃうゥ」 背の高い少年の方を見ながら、太った少年と眼鏡の少年が、おどけた風に言い、そして、 軽薄な笑い声を上げた。 やがて、全員が注目する中袋が解かれ、袋に包まれていた物が姿を現した。 「……に、日本刀……??」 だが、袋から出てきた物は、少年達が予想だにしないものだった。 「は……ははッ、ど、どうせはったりのニセモンだろォ?」 明らかに動揺した声で、少年が刀を鞘から抜いて見る。 そして、鞘から現われた存在は、この場を一気に静寂へと変えた。 ――何かが、起きる。 姿を現したギラギラと輝きを放つ刀身を見て、了子は確かにそう感じた。 >5月20日。 午後5時31分。 試立Leaf学園中庭。 XY−MEN。 「さぁ、いらっしゃいッ! できたばかりのあッつ熱。美味しいたこ焼きだよ!」 放課後の中庭で、食欲のそそる匂いと、元気な声が上がっている。 「っと、そろそろか」 そう呟くや否や、帽子を被った銀髪の少年――XY−MENは、慣れた手つきで、鉄板 の上で頃合に焼かれたたこ焼きを、錐(きり)で軽く刺し裏返して行く。 そうしておいて、既に返す必要のなくなった分を、傍らに積んである箱に取り分けて並 べる。 そして、その上にソース、青海苔、鰹節の順に掛け、これで一人前のたこ焼きの完成で ある。 と、そんなところへ、 「ふ〜ん……美味しいのか。じゃあ、美味しくなかったらとうぜん、値段は下げるわよね?」 少しからかいを含んだ声をXY−MENに掛けながら、腕に風紀委員の腕章を着けた少 女が現われた。 「いらっしゃ……なんだ、広瀬か。って、勝手に決めんなッ!」 「風紀委員長としては、適正な判断で売られているかどうか? って言うのも、重要な取 り締まり事……だって、思わない?」 そう言って、またからかうようにして、やや長めの黒髪に美人にも可愛くも見える顔立 ちの、少し大人びた雰囲気を持つ少女――広瀬ゆかりは、楽しそうに笑う。 「思うわけねーだろ? こっちとら、生活がかかってるんだぜ?」 憮然としたように答えるXY−MENに、ゆかりは「そうね」とまた楽しそうに笑って 言った。 「なんかいい事でもあったのか? 委員長。なんつーか、楽しそうだが??」 普段のゆかりと、少し違う風に感じたXY−MENは、首を少し傾げながらゆかりに言 う。 「ん〜……ちょっと、ね。今日の私は、少し気分が良いの。だからたこ焼き、一皿くれる かしら?」 「?? まぁ……何でもイイや。んじゃあ、一箱で300円になります」 ゆかりは、制服のスカートのポケットから、可愛らしいデザインの財布を取り出すと、 小銭入れから300円取り出してXY−MENに渡し、たこ焼きを受け取る。 「ふぅ〜ん……6ッ個で300円なら、まぁまぁ安いんじゃないかしら?」 そして、箱を開けて中身を見ながら、少し感心したように言う。 「ふっふっふっ……それだけじゃねーよ。オレのは、味も良いのさッ」 ゆかりの言葉に気を良くしたのか、XY−MENは得意げに答える。 「本当かしら? まぁ、食べてみてから感想は言わせてもらうわね」 少し意地悪く言ってから、ゆかりが爪楊枝でたこ焼きの一つを刺し、口に運ぼうとした その時。 「ん? なぁ、なんかあったのか? 騒がしいみてーだが」 「えっ?」 XY−MENの言葉に、ゆかりは視線をたこ焼きから外し、辺りを見廻して見る。 すると、言われた通り、確かに何やら辺りが騒がしい感じを受けた。 「変ね? この時間なら、そんなに騒がしくなることないんだけど……。ちょっと、私見 てくるわね。それじゃ、XY−MEN君またね!」 そうXY−MENに言うと、ゆかりはたこ焼きの蓋を閉めて校舎の方へと駆け出してい く。 その時、ゆかりの遠ざかる後ろ姿を見送りながらXY−MENは、何故か黒い影が辺り を覆ったような、そんな感じを受けるのだった。 (……まさか、な。まぁ、ともかく今は客引きだな。今月、苦しいもんなぁ〜……) そう思い直すと、XY−MENはお客を呼び込むべく、また景気の良い呼び声を上げ始 めた。 >5月20日。 午後5時43分。 試立Leaf学園リズエル棟第ニ保健室。 相田 響子。 「ほらぁ、男の子でしょ? 我慢なさいッ」 「でもぉ〜痛ぇ! 痛ぇんだよォォ!!」 これから、借りて来た話題の新作映画でも見ようと思い、家に帰る用意をしていれば、 これだ。 「まったく……こんなに大きな切り傷、何処で作ったのよ」 シャギーの掛かった前髪を掻き上げながら、白衣を着た女性――相田響子は、呆れたよ うに呟いた。 もう、部活に所属してない生徒は、ほとんど帰り終わった放課後の第ニ保健室に、つい 先程運び込まれて来た生徒は、三人。 それも全て男子生徒であり、しかも、三人が三人とも、縫合が必要な程の裂傷を負って いた。 「先生ッ! 痛ぇッ!! し、死にたくねーよッ!! 俺、死にたくねえよぅ……」 縫合待ちの少年が、まるで哀願するかのように、泣き叫ぶ。 「バカ言わないの! そんな簡単に死なないし、死なせないわよッ!」 そう叱咤(しった)しながら、手を休める事もなく、手際良く響子は適切な処置を施し て行く。 「はい、終わり。さっ、次は誰?」 これは、残業手当てになるのかしら? と、響子は一瞬考え、慌ててその考えを打ち消 すと作業に集中した。 どうやら、今日はもう暫く帰れそうになかった。