さてさて、さらに時は進んで放課後、生徒にとっての憩いの時間の始まりである。あ るものは部活動へ、又あるものは愛の語らい等、まあ様々である。さて、佐藤はと言う と、とある用事のためにある場所に向かう途中であった。 ふと見ると、中庭のベンチでは、岩下信と藍原瑞穂のカップルが、仲むつまじくして いる姿があった。それと、そんな二人を木の陰から暗い瞳で見つめている長瀬祐介の姿 も見える。その他にも、地面に何やら描いている来栖川芹香と、その横で地面を見てい る猫のエーデルハイドも見えた。佐藤は視線を戻して、目的の場所へと向かった。さて、 そのある場所とは・・・。 「すいませーん。例の品物入りましたか?」 佐藤は目的の場所である、第二購買部の出入り口をくぐりながら、店の中にいる店主 のbeakerに声をかけた。 「毎度どうもーっ。おや?佐藤さんでしたか。えーっと・・・はいはい入荷していま すよ。この二つですよね?一応、確認お願いします」 beakerはそう言うと、カウンターに佐藤の注文していた二品を置いた。その二品とは、 一つ目は松原葵のテニスルックの写真。二つ目は一文字流斬岩剣・秘伝書と表紙に書か れた古い一冊の本であった。佐藤は確認すると、 「・・・はい、間違いありません。それで、おいくらですか?」 と、財布を制服のズボンの後ろポケットから取り出しながらbeakerに尋ねた。beaker は、レジに打ち込みながら、 「写真が2000円、本の方が1500円で、合計3500円と成ります。あっ、ち なみに税込価格です」 佐藤は、どうも、と言って財布から千円札三枚と500円玉一枚を出してbeakerに渡 して早速、写真を生徒手帳に入れて、本を小脇に抱えると第二購買部を後にした。その 背後からbeakerの、次回もよろしくお願いします、と言う元気な声が聞こえてきた。そ の後、佐藤はbeakerと最近付き合っていると噂されている坂下好恵と廊下ですれ違った。 第二購買部に向かっているであろうことは、容易に想像がついた。 第二購買部を後にした佐藤は、自分の腕時計で時間を確認すると、最近開館した図書 館へ、先ほど買った本を読もうと思い向かった。この図書館には様々な本がそろってお り、全校生徒に大いに役立っていた。その他にも、密かな生徒たちの深夜の集会場(戦 場)と、成っており何度か壊滅したこともある、らしい。佐藤は新しいはずだが何故か きしみを上げて開く扉を開けて、図書館の中に入った。 (しかし・・・相変わらず広いな・・・読書室は何処だっけ?) 佐藤が、きょろきょろと読書室を探していると、制服のズボンを誰かに引っ張られた。 (うん?何だ?) そう思い、下を見るとそこには、一匹のペンギンがいたのだった。 「へ?何でこんな所にペンギンが??」 佐藤は思わず疑問を口に出していた。しかしこの疑問はすぐに答えが出た。何故かと 言えば、 「もちろん、ここに住んでいるからに決まってましゅ。それよりも何か探してるんで しゅか?」 と、ペンギン本人(?)が答えたからである。佐藤は、この学校ならどんなことが起 こっても不思議ではないことを、改めて思い出し、読書室の場所を聞くことにした。 「うーん・・・今日はよしといた方がいいでしゅよ。理由はだいたい予想がつくと思 いましゅがね・・・」 佐藤は、このペンギンの提案を素直に聞くことにした。出口に向かっていると、この 図書館の館長であるまさたに出会った。 「あっ、丁度よかった。おいしいお茶が手に入ったんですが、飲みませんか?」 と、にっこりと微笑みながら聞かれたが、佐藤はこの申し出を丁重に辞退し、図書館 を後にした。まさたは残念そうな顔を一瞬浮かべたが、丁度通りがかった結城光(実験 体)に、にっこりと微笑みながら声をかけたのを、ちらりと振り返った佐藤は見かけた。 (さてと、晩御飯の買い物して家に帰るとするか。今の時間ならサービスタイムに成 っているだろうしな) と、妙に所帯じみたことを思いつつ、一つ背伸びをすると佐藤は学園を後にした。 「ただいまーっ」 と言って、自宅の玄関を開けると、そこにはひづきの靴の他に、もう見慣れてしまっ た男性ものの靴があった。 (何だ、又来たのか・・・。今日はどっち何だろう?) そう思いつつ、居間の方に行くと、ひづきと楽しげに話している柏木耕一の姿があっ た。耕一は佐藤に気付くと、 「よう、今帰ってきたのか。おじゃましてるぞ」 一方、ひづきもいつもの態度が嘘のように、 「あっ、お帰りなさい。ごくろうさま」 と、佐藤が不覚にも見ほれるような笑顔で言うのだった。 (ちいっ、この嘘つきめ・・・。いいこぶりやがって) 等と思ったが、むろん表面には出さない。佐藤は二人に、着替えてくると言って、二 階の自分の部屋に向かった。背後から耕一が、 「速くしろよ、腹減ってるんだ。早く飯作ってくれ」 という、実にずうずうしい声が聞こえてきたが、その言葉は無視することにした。 その後、佐藤はけっきょくさっさと着替えを済ませ、晩御飯の支度を始めた。ここでも、 珍しいことに、ひづきが佐藤の手伝いをしていた。そのおかげか、単に時間のかからない 献立だったのか、晩御飯の支度はわりとすぐに終わり、楽しい食事の時間となった。楽し い一時はやがて終わり、耕一はやがて帰っていった。どうやら、今日は飯をたかりに来た 方らしい。そして、耕一が帰ると、ひづきはとたんに元に戻り、 「じゃ、片づけよろしく。私はお風呂に入ってくるから」 と、言いスタスタと、洗面所の方に去って行った。けっきょく、あのような態度をとる のは耕一がいる時だけらしい・・・。 佐藤は、ワカメ涙を流しつつ食器を洗い、風呂に入ってさっぱりした後、寝るために二 階の自分の部屋へと向かった。寝る前に佐藤は、生徒手帳から例の写真を取り出し、しば らく眺めると、 (ひづきも、葵ちゃんみたいだったらよかったのに・・・) 等と溜息を一つつくと、電気を消して床につくのであった。こうして、佐藤昌斗の一日 は過ぎて行った・・・。 一方同じ頃、とある場所のモニターにデータが更新されていた。そのモニターには、 <被験者の、休息を確認。続きのデータ収集は明日へと移行される・・・> と、記されていた・・・。 「「終」」