リレー企画・勇者ゲーマーコンバットビーカー第六話『四天王の謎』Bパート  投稿者:セリス
【CM】

「うーむ、今回はなんだか妙に長くないか?」
「そうでしょうか? 私は気付きませんでしたけど…」
「お前はパーだからな」
「ひっどーい、女の子にそーゆーこと言ってるともてませんよ」
「別に良い。…お、後半が始まるな」


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 クルスカワセイヴァーは、マルチとセリオの二人が力を合わせ、合体することで変形出来る
『超メイドロボ』とでも言うべき存在だ。

注)『超メイドロボ』…それは千年に一度だけ現れるスーパー戦士にのみ与えられる称号であり、
その戦闘力に比する者はこの宇宙に存在しないと言われている。
(民明書房刊・「超戦士生誕の秘密」・著者:超サイヤ人ベジータ)

 本来戦闘用としては作られてはいなかったため、マルチとセリオが各々強化パーツを用い
なければ合体することはできなかったのだが、ダーク十三使徒・対岩石妖魔戦に於いて
目覚ましい活躍を見せたため、合体機構を簡略・効率化され、今では単体のマルチとセリオ
だけで合体できる。
 ちなみに、元々は長瀬源五郎主任の好みだけで付けられた機能だったりする。
 はっきり言って趣味丸出し、他社でこんな事したら懲戒免職もあり得るくらいの職権濫用
なのだが、それが良い方に転がった。
 簡略化された合体機能は研究所のサポート無しでも機能するようになっており、今回のように
研究所が襲撃されても独自に反撃する戦力を持つことができたからである。
 しかし彼女達とてメイドロボ、研究所襲撃による電線破壊の衝撃で幾らかダメージを
負っていた。
 一応、たけるのクルスカワセイヴァー弱体化作戦は成功したと言える。
 もっとも、多少の傷程度で戦闘力が落ちるほど安っぽいメイドロボではない。
 クルスカワセイヴァーは、川越たける・電芹の二人と互角に戦っていた。
「雷撃……」
 鷹揚の無い声で電芹が命じると、雷雲から無数の稲妻が襲ってきた。
『『甘いッ!』』
 クルスカワセイヴァーはバーニアとブーストの加減を調節してかわすと、
『『プラズマ・モップ!』』
いかづちを帯びたモップを横に薙ぎ払う。
 雷神トールが宿題忘れた罰当番として廊下掃除させられた時に使ったと言われる伝説の武具だ。
「…………」
「それで私に当てようっての?」
 たけると電芹は軽く避ける。
 ちなみにクルスカワセイヴァーが避けた稲妻…流れ弾ならぬ流れ稲妻は、クルスカワ
セイヴァーの足下に位置している白亜の建物を直撃していた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ…………」
 長瀬主任らしき人の叫び声が聞こえたような気もするが気にしない。
 もし何かあったとしても不慮の事故だ。
「長瀬主任、成仏して下さい。立派なお墓を建ててあげます」
 クルスカワセイヴァーは本当にまるで気に留めず、再びたけるに斬りかかる。
「くっ!」
 たけるは咄嗟に剣を出し、プラズマモップと斬り結んだ。
 遙か神話の時代、『スタ○バイSayYou!』という名の魔人がHU○ANの術により
生みし剣。
”声優魔人”の二つ名で呼ばれる呪われた魔剣だ。
 金属質の鋭い音が淀んだ空気を切り裂く。
「………電芹!」
「雷撃…」
 たけると斬り合うクルスカワセイヴァーの背後から、電芹お得意の稲妻攻撃が襲う。
『『あ、ああああああっっっ!!』』
 虚をつかれたクルスカワセイヴァーに防御バリアを張る暇などあるはずもなく(実はバリアも
使えたりするのだこいつは)、直撃を喰らってしまう。
『『くっ! まだまだ!!』』
 なんとか体勢を整えてプラズマモップを構え直すが、その消耗は明らかだ。
 そもそも万全の状態で出撃できたわけではないのだから。
「無理しなくても良いわよ、今楽にしてあげる」
 たけるは右腕に持つ声優魔人を肩口に構え、柄越しにクルスカワセイヴァーを見やった。
 その目は喜びに満ち溢れ、口元には微笑さえ浮かんでいた。
「じゃあね」
 言葉と同時に右腕を突きだし、そのまま勢いを殺さずにクルスカワセイヴァーへ向かって
いった。
 牙突の要領だ。
『『くッ!』』
 クルスカワセイヴァーはプラズマモップでなんとか受け止めると、逆にたけるを押し
返そうとした。
 しかし、なぜか力が入らない。
『『………! ま、まさかッ?!』』
 クルスカワセイヴァーを戦術兵器として分類するならば、強襲型ということになる。
 このタイプの兵器は、総じて性能は高いのだが、エネルギー消費量が多いため長期戦には
向かないのだ。
 実戦二回目のクルスカワセイヴァーに、エネルギー配分を考えた戦いなどできるはずもない。
『『バッテリー残量20%………も、もたないっ?!』』
 ところで、この時たけるは何を思っていたのか。
 クルスカワセイヴァーを破壊する喜びに浸っていたのなら、それはもう悪役の素質
バッチリなのだが、実は違った。
(ああ、あの漫画読んでから、いつか使いたいと思っていたこの技! ついに使うことが
できたのね…思った通り、気持のいい技だわ!!)
 こんな事を考えていたのだ。
 嬉しそうにしているのは、牙突を使う事ができたからだったりする。
 それでもダーク十三使徒として、クルスカワセイヴァーを破壊しようと思う気持ちも
多少はあった。
「さようなら、クルスカワセイヴァー。永劫の闇の中でゆっくりお眠り…」
 出力低下でもはや押し返す力のないクルスカワセイヴァーに止めを刺すべく、腕に
力を込めた。
 beakerが駆けつけたのはちょうどその時だった。
 騒ぎを聞きつけたジン・ジャザムも一緒にいる。
「クルスカワセイヴァー!!」
 悲痛な叫び声に目を向けたクルスカワセイヴァーは、信頼できる仲間が来てくれた事に安堵し、
「…バッテリー残量0.3%…。…システム保持のため…強制スリープモードに移行…。
…コンバット…ビーカー…後は…たの…み…ます…」
そのまま事切れたように眠りについた。
「クルスカワセイヴァー…。見ていてくれ、僕は君達の分まで戦うッ!」
「…その声、もしかして?」
 後ろを向いていた少女が振り返る。
「き、君は川越たけるッ?! どうして君がここにいるんだッ?!」
「beaker。妙なところで会うわね」
「ま、まさか君は…ダーク十三使徒の一員なのか?!」
「そうよ。…でも、あなたみたいな一般人にまでダーク十三使徒の名前が知られていたのは
意外だわ。葛田ったら、ミスばっかやってるからこんな事になるのよ」
「や、やめるんだたける! 僕は君と戦いたくない!」
「一般人が何言ってるのよ。いい子だからおとなしくしてなさい、早死にしたくないでしょ?
ま、ハイドラントの目標が達成されたらどのみち死ぬ事になるんだけど」
「…ハイドラント? それが君達ダーク十三使徒のリーダーの名前か?」
「通行人Aがうるさいわね。外野は黙ってなさい」
「僕は外野じゃない! …くそっ、仕方がない。行きますよ、ジンさん!」
「おうッ!」
 二人は力強く頷き合うと、それぞれ変身ポーズをとる。
 beakerはクリムゾンを高く掲げて叫んだ。
「せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜっ!」
 クリムゾンが生物的なうねりを見せながら巨大化し、瞬く間にbeakerの右腕を巨大なアーム
ランチャーへと変化させた。
 ジンは額に破滅の紋章を浮かび上がらせながら叫んだ。
「ロ・ケ・ッ・ト・ノ・ー・ト!!!」
 ジンの顔の右側に「ロ・ケ・ッ・ト」、左側に「ノ・ー・ト」の文字が赤い色で描き出され、
右肩に巨大なキャノン、背中に大きなロケットブースターを装備したパステルジャザム
へと変身する。
 この変身で大王パワーを132消費した。
「まぁ…あなたがコンバットビーカーだったの? ちょっと意外だったけど、まぁいいわ」
「…おい。さっきから俺を無視して勝手に話進めてんじゃねーよ!」
 ジンが挨拶代わりとばかりにロケットパンチを放った。
「はっ!」
 たけるは迷刀・声優魔人で軽くはねのける。

  ドックン!

 声優魔人がロケットパンチに触れた瞬間。
 ジンの中の「なにか」が動いた。
 理屈ではなく感覚で、思考ではなく直感で…なにかを感じたのだ。
 なにか…ずっと忘れていたなにか、失ってしまったことすらも忘れていたなにか。
 パステルジャザムである自分と、…そしてコンバットビーカーであるbeakerと同じ…「なにか」を。
「馬鹿な………この感じ………奴もクソゲーハンターなのか?!」
「ジンさん、どうしたんです?!」
「あ、ああ…いや、何でもない。…まさか、そんなはずないからな」
「? まぁとにかく、戦闘中に気を散らさないで下さい」
「わりぃわりぃ。んじゃ、パーッと行くか!」
「はいッ!」
 beakerはクリムゾンを構える。
「クリムゾン・ショォッッッッット!」
 轟音と共に撃ち出された弾丸は、たける・電芹とはまるで別の方向に飛んでいった。
「くそっ! さすが動きが早い!」
「あたしら動いてないんだけど…」
「ぐはぁっっっっっっっ!!」
 突然beakerが倒れた。
「ど、どうしたbeaker?!」
「しまった…流れ弾がヤツに当たってしまった!」
「ヤツ?」
「…佐藤だ!」
 ジンがハッとして振り返ると、beakerの着弾点には不思議そうに辺りを見回す佐藤雅史の
姿があった。
「そうか…佐藤を撃ってしまうとライフが減る。これはクリムゾンの使い手の鉄則だからな…」
 気の毒そうに言うと、ジンはたける達に向き直った。
「卑怯な! このような汚いトラップを使ってまで勝ちたいのか!!」
「だからあたし達は何にも…」
「お前達には戦士としての誇りはないのか?! 戦いという崇高な空間に身を置く者としての
最低限の礼儀すら知らないのか!!」
「ちょっと、人の話を…」
「正々堂々と戦う事、それ自体に意味がある! そんな事すらも忘れ、ただ勝ちにのみ固執
するなど愚の骨頂!!!」
「…電芹、雷撃」
「はい」
 びびびびびびびびびび。
「ぎゃほろたげびしおあぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……………」
 熱く語りすぎて自分の世界に没頭していたジンはあっさり倒れた。
「…なに、こいつら? ホントにこれが、私達ダーク十三使徒を苦しめたクソゲーハンターなの?
信じられない…ただの馬鹿じゃない」
「しかし、たけるさん。データはデータとして信用できるものがあります」
「そうね。このままでも勝てるけど、念には念を入れましょうか」
 たけるは声優魔人をしまうと、電芹の手を取った。
「友情合体マスターセリオ! いくよ、電芹!」
 魔女ッ子モノ系の決めポーズを取ってたけるが叫ぶと同時に、電芹の目がひときわ強い
光を発した。
 たけると電芹の体がシルエットとなり、電芹のシルエットが一瞬バラバラになってたけるを
覆い込むように動いていく。
 イメージとしてはまんま某月の美少女戦士の変身シーン。
 たけるが電芹のパーツを鎧状に纏っているようにも見える。
 この手の変身シーンでは攻撃しないというお約束を厳守するコンバットビーカーだが、
さすがに毎度毎度見せられると飽きてきた。
 今回に至っては、パステルジャザムと共に完全な傍観者に徹している。
 どこから取りだしたのか、醤油煎餅をパリパリかじっていたりする。
 どうでもいいが、お前らいつの間に復活したんだ。
「うーむ、遂に敵方にも合体するヤツが出てきたか」
「カッコ良いことはカッコ良いけど、あれって一歩間違えるとかぶり物ですよ」
「か、かぶり物って言ったわねぇぇぇぇっっっ!」
 二人の囁きを耳ざとく聞いたたけるが怒って叫んだ。
「どうやらトラウマだったよーだな。ってゆーか合体中のくせにこんなに離れた場所の
ひそひそ話を聞いてんじゃねーよ、地獄耳」
「あ、あ、あ、あんた達なんかにこのマスターセリオの凄さは分かんないのよッ!」
「別に分かりたくない。だいたいお前も今回一話限り登場のゲストキャラで、結局は俺達に
倒されるんだし」
「そんな事言ってられるのも今のうちよ! 覚悟しなさい!!」
 たける…いや、マスターセリオは突然眼鏡を取り出すと、スチャッと装着した。
「何の真似だ?」
「こういう真似よッ!」
 マスターセリオは眼鏡から光線を放った。
 何の予備動作もない行動だったため、ビーカーもジンも反応することが出来なかった。
 光線は二人の間をすり抜け、路面に一本筋の痕を残した。
「フフ…どう? この眼鏡のお味は?」
 得意げに言うマスターセリオの眼鏡をよく観察すると、デザインが普通の眼鏡とは少々
異なっている。
 それを見たとき、ジンの脳裏にピンと閃くモノがあった。
「ま、まさか…………プラネット○ョーカーッ?!」
「そう、私はあの眼鏡の片方が妙に大きく光反射率がやたら高い、通称オプティックブラスト娘!
覚悟しなさいコンバットビーカー、パステルジャザム!」
 言うが早いか、マスターセリオはその眼鏡の光っている側から光線を放った。
「くっそう、やりやがったなぁ!」
 咄嗟に体を捻って光線をかわすコンバットビーカー。
「ちっ、ロケット噴射!」
 パステルジャザムもバーニアの噴出力でなんとか攻撃をかわす。
 しかしたけるは容赦なく攻め立て、光線による攻撃を繰り返す。
 コンバットビーカー達は避けに専念するので精一杯で、とても反撃の隙がない。
「ちょ、ちょっと待て! いくらなんでもそれは反則だ!」
 たまらず叫んだ声で、ようやくたけるはその光線攻撃を一旦止めた。
「なに? 何が反則だって言うわけ?」
「おまえなー、隙がなくて連射可能で速度が速くて威力まである飛び道具なんて卑怯だぞ!
ゲームバランスを崩してる!」
「甘いわねパステルジャザム。戦いに卑怯もクソもないのよ!」
「それ言ったらコンバットビーカーの連載自体が終わってしまう…」
「それに、オプティックブラストは元ネタがX−M○N! あれはクソゲーなんかじゃない、
超ドシリアス漫画! よって、この技もシリアス級に強いのよッ!」
「ンな無茶苦茶な理論があるかいっ!」
「信じなくても結構! 何故ならあなた達は此処で死ぬのだからッ!」
 再び光線攻撃を開始するマスターセリオ。
「なっ…ならば!」
 素早く攻撃をかわしたコンバットビーカーは、内ポケットからPHSを取りだした。
「敵がX−○ENならば…こちらはッ…!」
「伏せ字の位置変わっとるぞ」
 パステルジャザムの突っ込みを無視して短縮ダイヤル一番を押す。
「…trrrr…trrrr…」
「早く、早く出てくれ!」
 祈るように受話器を耳に押しあてる。
 この電話の間にマスターセリオが攻撃してこないのは、パステルジャザムが引きつけて
いるからである。
「はい、坂下です」
「好恵さんですか?!」
「beaker?! あんた今どこにいるのッ?!」
「あとで話します! それよりも、一つお願いがあるんです!」
「お願い? 何?」
「好恵さん、頼みます! 彼を呼んできて下さい!」
「彼…?」
「はい、彼の名は…………」
「…………なるほど、分かったわ。彼をそこに連れて行けば良いのね?」
「彼こそがこの戦いの命運を握っているんです。頼みますよ!」
「任せといて! あんたも死ぬんじゃないわよ!」
 ピッ。
 それで電話が切れた。
「よし、後は好恵さんが彼を連れてきてくれるのを待つのみ…!」
「beaker! 話は済んだのか?!」
「はい! 好恵さんを待つだけです!」
「よし、んじゃ一発おっぱじめようぜぇ!!」
 

   ☆


 好恵がある男を連れて来栖川研究所に着いたのは、それから十分後の事だった。
 戦いは未だ続いており、好恵はbeakerが無事だった事にまず胸をなで下ろした。
「beaker、beaker?!」
「好恵さん?!」
 好恵の呼び声にすかさず反応し、戦いを一旦中断して駆け寄ってくる。
「連れてきたわよ、この人でしょ?」
「はい! これで勝ったも同然です!!」
「おい、ちょっと…」
 beakerは男の声を無視して好恵と話を続けた。
「ありがとうございました好恵さん。ここは危険ですから、安全な場所に避難していて下さい」
「うん…。beaker、死ぬんじゃないわよ」
「もちろんですとも!」
「俺は…」
 好恵が立ち去るのを見送りながら、beakerは隣に立つ男に話しかけた。
「来てくれてありがとう。おかげで助かった」
「いや、だから…」
「さぁ、こっちに!!」
 男の手を引き、マスターセリオの前まで引っ張ってくる。
「マスターセリオ! もう終わりだ、降伏しろ!」
「はぁ? あんた、この状況でよくそんなこと言えるわね」
 マスターセリオの言うとおり、戦況は勇者チームが不利だった。
 2対1と数の上では勝っているのだが、個人の能力はマスターセリオに遙かに
及ばないのだ。
 息のあったコンビネーションによる攪乱戦法もそろそろ限界にきていた。
 だがbeakerは自信たっぷりな態度を崩さない。
 男を前面に押し出し、勝利を確信した力強い声で叫んだ。
「ふっふっふ、お前が○−MENならこちらは…XY−MENだッ!!」
「なんでオレが…?」
「はぁ…?」
 XY−MENは事情をよく把握しておらず、マスターセリオは呆れたような目になったが、
それでもやっぱりbeakerは自信満々である。
「君の名前は、敵の名前であるX−ME○+Y! すなわち敵よりも優れているに
決まっている!」
「そーゆーもんか?」
「そーゆーもんだ! プラスされていれば常により良い、それがお約束!」
「Microsoft Plus! みたいな例もあるわよ」
「ああッ! クソゲー以外、ってゆーか意味が分からない人が大勢出そうなネタをッツ!」
「あーもううるせー! オレは早いところ帰って、たこ焼きの新ネタを考えたいんだ。
beaker、一つだけヒントをやろう。よく考えてみろ」
「おお、なんか急に偉そうな態度になったのは見逃してあげましょう。で、なんです?」
「いいか…新技だ!」
「…新技?」
「そうだ。古来より、ヒーローは全体ストーリーの半ばで第一話で身につけた必殺技を破られ、
大ピンチに陥るものだ。だが、そんな時は必ず新たな必殺技を編み出して敵を殲滅する!」
「そんな事、容易く出来るわけもないでしょう」
「お前が持つその銃の特性を忘れたか? クリムゾン…またの名を…」
「…ああっ、そ、そうか!」
「そういうことだ」
 XY−MENはフッと笑った。
「これで良い。オレもいつかはコンバットビーカーやパステルジャザムのような、偉大な
たこ焼き屋になりたいものだ」
「シメに入るのはまだ早いっ、ってゆーか戦いを前にしてそーゆー事を言っちゃダメだ!
将来の夢とか語るな!」
 唐突にイヤな予感が沸き上がったコンバットビーカーは慌ててXY−MENの口を塞ごうと
するが、時既に遅し。
 XY−MENは服の内ポケットから小さな小箱を取りだすと、軽い音を響かせてその蓋を
開けた。
「ほら、これを見てくれ。オレ、実は好きな人がいるんだ…その人のために、生活費を
貯めて指輪を買ったんだ。これからもしばらくは食を切り詰めなくちゃいけないし、
安物なんだけどさ…喜んでもらえると良いな…なんて思ってるんだ」
「ああああっ、恋愛系の話をして、しかも指輪なんてゆー決定的な小道具まで出すとわッ!!」
 コンバットビーカーとパステルジャザムは頭を抱えているが、XY−MENは良く
分かっていない。
 しみじみとした表情で指輪を見つめている。
「もたもたしてるんじゃないよ! マスターセリオ!」
 マスターセリオが両腕に内蔵されているハイパースタンガンを取りだし、構えた。
 電芹時の200倍の電力を発することが出来る優れ物だ。
「やぁっ!」
 二つのハイパースタンガンから放たれた強力な放電がXY−MENを襲う。
「ぐはぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ……………」
 XY−MENは黒こげになって倒れた。
「やはり死んだかXY−MEN…」
「ええ。戦いの前にあの手の話をするというのは、自分の死刑執行書にサインするのと
同義ですからね…」
「ほら、あれを見ろ」
 パステルジャザムの指さした先から、何かが飛んできた。
 やむなしと言った顔でそれを受け止める。
「予想通りのブツだ」
「指輪ですか」
「ああ」
 地に倒れているXY−MENが持っていたハズの指輪が何故空から飛んでくるのか?
 そんな無粋な突っ込みしちゃイヤーン。
「beaker…XY−MENの死を無駄にはするな!」
「はいっ! 彼の心意気に報いるためにも、私達は…」

「勝ぁぁぁぁつッッッッッッッッッッ!!!!」

 かけ声と共に、二人は天高く飛び上がった。
 そう、クルスカワセイヴァーもマスターセリオも合体することによってその強大な
戦闘能力を得たのだ。ならばコンバットビーカーとパステルジャザムが合体できない
はずがあろうか、いやない!!(反語)

「日記合体!! スーパーパステルビーカー!!」

 太陽を背にクロスを描くようにして、新たなる変身を遂げるコンバットビーカーと
パステルジャザム!
 合体後の決めポーズもバッチリだ!
 ジャキィィィィィィィィン!! というポーズ効果音まで聞こえるぜッ!
「な、なんですってッ?!」
 さすがのマスターセリオも驚きを隠せない。
 今までの二人の特徴…右腕のアームランチャー、右肩の巨大キャノン、背中の
ロケットブースターは受け継がれ、より鋭意な光を放っている。
 更に左手には小型バリア発生装置が組み込まれ、バリアシールドを作り出す事が
できるとともに、右腰部に付いたホルスターに収められているコルトガバメント改を
構えることも出来る。
 全体的に鋭角的で洗練されたフォルムはもの凄く格好良く、かなり強そうだ。
「我が親愛なる戦友クリムゾン…またの名を…」
 呟くように言葉を紡ぎながら、右手を少しずつ持ち上げて行く。
 重さは感じない。
「進化する銃ッ!!」
 声高く叫んだビーカーは、右腕と一体化している謎の銃を雄々しく掲げた。
「いでよッ! 究極兵器・エチゼンブレードDCッッッッ!!」
 右腕のランチャーが少しずつ変形してゆき、一本の刀となった。
 長さ・大きさはさほどでもなく、普通の日本刀程度だが、その輝きはエチゼンブレード
とは全くの別物。
 この世に斬れないモノなど無いと思わせられるような美しさだ。
「ふ、ふん! こけおどしじゃない!」
 口では強がっているマスターセリオだが、動くことが出来ない。
 パステルビーカーの気迫に威圧されているのだ。
 パステルビーカーはエチゼンブレードDCを大きく振りかぶり、一気に振り下ろした。
「……………ッ!!」
 マスターセリオ…川越たけるは死を覚悟した。
 目を瞑り、その時が来るのを待つ。
 最後の最後で目を瞑るなんて…私もまだまだ未熟者ね。
 そんな事をふと思った。
「……………?」
 しかし、いつまで待ってもその時はこない。
 ゆっくりと目を開けてみると、パステルビーカーのエチゼンブレードDCはたけるの
顔の目の前で止まっていた。
「どうしたの?! 何故トドメを刺さないの?!」
「………………」
「敵に情けをかけられたくはないわ! 早く殺しなさい!」
 馬鹿にされたと勘違いしたたけるが興奮して叫んだが、パステルビーカーはエチゼン
ブレードDCを引くと、静かに語りかけた。
「…俺はどうしても、お前が敵だとは思えないんだ…」
「………?!」
「…さっき、一緒に遊んだだろ? 鬼ごっこしたりかくれんぼしたり…。お前、すごく
楽しそうだったじゃないか…。本当は、お前…」
「…な、何よ…。アンタに私の何が分かるって言うのよ?!」
「何も分からないさ、一緒に遊んで楽しいヤツだって事以外はな。ただの鬼ごっこや
かくれんぼがあんなに面白い物だったなんて、俺、すっかり忘れていたよ。…だから…な?
また、一緒に遊ぼうぜ?」
 スーパーパステルビーカーの顔には、優しい笑みが浮かんでいた。
「…ふん、甘いわね、パステルビーカー。私はダーク十三使徒の女。クソゲーハンターには
ならないわ」
「たける…」
「そんな辛そうな顔しないでよ…戦意が鈍るじゃないの。いいわ、今回は見逃してあげる」
 マスターセリオは両腕に構えていたハイパースタンガンを収納すると、武器を装備して
いない両腕を軽く広げて見せ、敵意をもう持っていない事を示した。
「コンバットビーカー…最後に一つだけ、教えておいてあげる。四天王の狙いを…」
「四天王の狙い…?」
「あなたがどう思っているかは知らないけど…ダーク十三使徒四天王、そしてリーダー
ハイドラントの目的は、地球征服なんていう俗な物ではないの」
「な、なんだって?!」
 驚きを隠せないスーパーパステルビーカー。
 賢明なる視聴者諸君には既に周知の事実であるが、beakerはその事を知らなかったのだ。
 ウソだと思うなら五話までを読み返してみよう、beakerは一度もその手の話を聞いてないから。
「では、四天王の真の目的は?!」
「……永遠の理想郷…」
「永遠の理想郷?! そ、それは一体…?」
「私が教えるのはここまで。この先を知りたければ、自分で捜すのね…真実を」
 スーパーパステルビーカーは意気込んで話を促したが、マスターセリオは我関せずと
言いたげな態度でフッ………と空に浮かび上がると、
「じゃあね、コンバットビーカー。今度会うときは、正真正銘の敵同士よ」
どこへともなく飛び去って行った……。


   ☆


「なぁ、beaker。あいつ…川越たける、マスターセリオの事なんだが」
 戦い終わっての帰宅途中。
 ジンにそう言われたとき、beakerは内心(来たな!)と思った。
「ええ、彼女がどうかしましたか?」
 しかしそれでも平然と言葉を返すことができるのは、第二購買部で鍛えられたポーカー
フェイスのおかげだろうか。
「彼女は、俺達との戦いの中で、オプティックブラスト娘化したよな?」
「はい、確かに…。僕も見ました」
「オプティックブラスト娘の力を使うことが出来るのは、クソゲーハンターのみ。
それが出来たと言うことは、すなわち…」
「川越たけるもまた、クソゲーハンターと言うことですか…」
「だが、分からん。何故クソゲーハンターがダーク十三使徒に?!」
「…何にせよ、戦いたくはない相手ですね。出来れば味方になって欲しいところです」
「…そうだな…」
 beakerはやれやれと言った風に吐息をついた。
 また謎が増えてしまった。
 最近ため息をつくのが癖になりかけている…こんな癖は早く直そう。


   ☆


 四天王が求める永遠の理想郷とは?
 川越たけるの正体は一体?
 進化する銃・クリムゾンはどこまで進化するのか?
 そんなbeakerの悩みを知らぬかのように、満天の夜空には幾多の星々が輝いていた。

 なお、XY−MENは三十分後に意識を取り戻して歩いて帰った。



<つづく!>
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【次回予告】 
  ついにLeaf学園へと侵攻するダーク十三使徒!我らが学園を防衛せよ、魔術
機セリカクイーン、科学闘神ヤナギカイザー!

弥生「白雪合体パウダースノー・・・参ります」
りーず「我々オカルト研究会のセリカクイーン、そして科学部のヤナギカイザー・
・・勝てる!」
誠治「付喪神というオカルトの部分と、車のボディという科学の部分・・・科学
と魔術の架け橋になることが出来るのはFENNEK、お前しかいない!」

工作部の力を借りて、科学と魔術・・・人の生み出せし二つの技が、今、融合する!

「秘術融合!ソルジャーフェネック!!」

次回、コンバットビーカー第七話『戦闘学園』!お楽しみに!

これが勝利の鍵だ!『トモナミエレメンタルフェニックスビーム』