ジャザえもん第二話 「ってゆーか勝手に続き書くな」の巻 投稿者:セリス


「ジャザえも〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」
 今日も今日とて、情けなさそうな少年の呼び声が響きわたる。
 少年の名はbeaker、いじめられっ子で勉強出来なくて運痴でその上超マイナーなTHキャ
ラに愛を注ぐという、(色んな意味で)非常に気の毒な少年である。
 ジャザえもんとは、beaker少年宅で居候しているロボット。
 22世紀の未来からある日突然beakerの部屋に現れた邪悪なエルクゥロボットだ。
 毎度毎度お馴染みのイベントに、ジャザえもんはうんざりしていた。
(全くあいつも俺に頼れば何とかなると思いやがって。一度殺しておく必要がありそうだ
な)
 そんな事を考えながらゲッタードリルの手入れをしていると、突然机がグラグラと揺れ
出した。
「ジャザえもん!!」
 部屋の障子を開いて飛び込んできたbeakerの目の前で、いきなり机の引き出しがガラッ
と開くと、中から一人の少年が出てきた。
「やぁ、はじめましておじいちゃん。ジャザえもんも元気でやってるか?」
「………おじいちゃん?」
 引き出しから出てきた少年は、beakerを見ていきなり言った。
「ぼくはおじいちゃんの孫の孫で、セリスって言うんだ。ジャザえもんをここに送ったの
はぼくなんだよ」
「テメェが送りつけやがったのか、この邪悪な屑鉄スクラップを」
「スクラップかどうか貴様自身の体で確認してみろ、beaker」
「面白い、今度こそ製鉄工場でもうちょっと世のため人のためになる鉄製品に生まれ変わ
らせてやる」
 殺気を放ち、火花を散らして睨み合う二人。
 この後に起こった凄惨で残酷な戦いについて描写するのは、倫理規定に反するので割愛
します。
 こんなシーンがあると分かっていたら、「このSSには暴力シーンやグロテスクな表現
があります」の三角シールを貼っておくんでした。
 ただ、二人とも三途の川を見てきた、と言うことだけは書いておきましょう。




 十分後。
「二人とも気は済んだ?」
 二人と同じ部屋に居ながら、まるで怪我をしていないセリスが口を開いた。
「お前は傷一つ負ってないな…」
「M.A.フィールドで防御してたから」
「まぁ良い…。で、なんだ?」
「うん。おじいちゃんのところに、ジャザえもんを送った理由なんだけどね」
「…って、ちょっと待て、お前は僕の孫の孫だって言ったな?!」
 ハッとしたようにbeakerが突如セリスに詰め寄った。
「く、苦しいよおじいちゃん」
「ってことは、僕は結婚したってことだよな?! あ、相手は!? 相手は誰なんだ?!
好恵さん? 好恵さんだろ? 好恵さんだよな?! そうだよな?! そうじゃなきゃい
やだぁぁぁっっっ!!」
「い、言う、今からそれを言おうとしてたんだよ、だから離してよおじいちゃん」
「あ、ああ、悪い」
 セリスはゼーハーゼーハーと苦しげな息を吐いている。
「ゼー、ゼー……三途の川でおじいちゃんが手を振ってるのが見えたよ…」
「おじいちゃん? ってこの僕か?」
「そうだよ…優しそうな笑顔で『早くお前もこっちにおいで〜』だってさ。全く、『ぼく
はおじいちゃんに殺されそうなのに、何言ってるんだよ!』って言ってやったけどね」
「待て、僕はまだ生きてるが」
「気にしないでよ、ぼくにとってはおじいちゃんは過去の人なんだから」
「分かった、気にしない。そんなことより俺の結婚相手は?!」
「い、今言うから、そんなに興奮しないで…」
 またbeakerに首を絞められる事を警戒して、セリスはジャザえもんの側まで下がった。
「えっと…なんて名前だったっけ?」
「俺に聞くな、覚えてない」
「ぼくも良くは覚えてないんだよ。もの凄く地味でマイナーな人だから」
 セリスとジャザえもんのヒソヒソ話を聞き、beakerの顔が少しずつひきつっていく。
「えーと…確か”好”の漢字がつくんじゃなかったっけ?」
「うーん………あっ!」
 ジャザえもんはぽんと手を打った。
「吉田兼好!」
「そうだ、それだよジャザえもん!」
 セリスもジャザえもんと手を打ち合わせて喜んでいる。
「分かったよ、おじいちゃん! おじいちゃんのお嫁さんは、吉田…ブッ」
「何が悲しくて歴史上の人物と結婚せにゃならんのだ!!」
 beakerのストレートがクリーンヒットして、セリスは倒れた。
「分かったよおじいちゃん。こんな事もあろうかと、カンペ持ってきたから」
 鼻血をふきながら起きあがったセリスは、上着の内ポケットを探り始めた。
「忘れる事もあると最初から計算してたのかよ…」
「まぁいいじゃねぇか、beaker。どうせ忘れられるようなキャラって事なんだから」
 慰めるように言うジャザえもんに、beakerのシャイニングフィンガーが決まる。
「あべしッ」
「あ、あったよおじいちゃん。えーと…坂下好恵」
「好恵さんッ?!」
「うん。おじいちゃんは坂下好恵って人と結婚する事になってるみたい」
「や、や、や、や、や、や、やっっっっっっっったああぁぁぁぁぁ!!!!」
 今までの怒りはどこへやら、beakerは一転して歓喜の笑みを浮かべた。
「そうかそうか、僕は好恵さんと結婚できるのか。それだけで全ての事は許せる。そう、
ジャザえもんが邪魔で邪魔で邪魔ではた迷惑でクソゲー以下の存在意義しかなくて、僕が
どれだけ困っていても」
「人がおとなしくしてたらいい気になりやがって、誰がはた迷惑だコラ」
「ウソつくな、お前がおとなしくしてた事なんて一度も無いぞこのポンコツ」
 再び臨戦状態に入ろうとする二人だったが、セリスは気にせず説明を続けた。
「いやぁ…おじいちゃんは問題ないんだけど…」
 言いにくそうに口ごもる。
「次が問題なんだ」
「次?」
「おじいちゃんと坂下好恵さんの間には、息子が一人生まれたんだけど、その子は大きく
なって、何を思ったかエロゲー会社を作ったんだ」
「ふんふん?」
「だけどこれが大失敗。ソフトは全然売れず、大赤字であっと言う間に倒産。64兆8億
円もの日本の国家予算に匹敵する借金を抱えちゃったんだ。あ、ちなみに数字では
64800000000000円ね」
「げげっ…って、ちょっと待て、なんで会社潰れたくらいでそんな天文学的数字になる」
「その人、ソフト一本作るのに60兆円かけてたから」
「60兆注ぎ込んで売れないソフト作る方が難しいよーな気もするが」
 beakerの突っ込みも気にせず、セリスは嘆くような口調になった。
 小学生のくせに演技派だ。
「その借金のせいで、ぼくの家は極貧暮らし。お小遣いやお年玉なんて全然貰えないんだ
よ…」
「そうか…君たち子々孫々にまで迷惑をかけてすまない。…って、貧乏なくせになんでジャ
ザえもんを買えたんだ? 一応ロボットだし、高いんだろ?」
「ああ、ジャザえもんは近所のゲームショップで、クソゲーと一緒にワゴンセールで10円
で売ってたから」
「10円でロボットが買える時代なのか…」
「この時代だって、クソゲーが100円で買えたりするじゃん。似たようなもんさ」
「まぁそうだが…。とにかくすまなかった。そんな事にならないよう、俺が息子をしっか
り教育するから」
「あ、悪いけどそれは無理だと思うよ」
 反省したように言うbeakerだったが、口調を一転させたセリスが突っ込むように答えた。
「どうしてだ?」
「beakerおじいちゃんと好恵さんの結婚式は、今から15年後に行われるんだけど、おじ
いちゃんは新婚四日目に、ハネムーン先の熱海の旅館で急逝しちゃうんだ」
「ハネムーンが熱海かよおい」
 ジャザえもんの呆れたような言葉も、自身の死期を明確に告げられ、衝撃を受けたbeaker
には届かない。
「な、なんだって?! 死因は?! 癌か、心臓発作か、脳溢血か?!」
「”ふくじょうし”なんだって」
「フク…ッ」
「遺言も残ってるよ。えっと…」
 セリスはズボンのポケットに手を突っ込み、ゴソゴソと探って一枚の紙切れを取りだした。
「なになに…”三日三晩、やり続けるんじゃ…ナカッタ…”だってさ」
 読み上げると、クシャクシャと丸めてゴミ箱に投げ捨てる。
「漢字変換するとまずいらしいから平仮名で言ってみたけど、どういう意味なの?」
「いや、小学生のお前はまだ知らなくて良いんだ」
 beakerはひきつった笑いを浮かべつつ、取り繕うように誤魔化した。
 ってゆーかお前も一応小学生のくせに何故知っている。
 その時、ポン、とbeakerの肩に手が置かれた。
 振り向くとジャザえもんが、両腕を軽く広げて肩を竦め、
「フッ…」
そう言ってニヤリと笑った。
「一遍死んでこい腐れロボット」
「おもしれぇ、やってみろやこの色ガキ」
 またまた冷戦を始めるbeakerとジャザえもん。
 数秒後には全面核戦争と相成るのだが、今回もセリスはM.A.フィールドで一人だけ
安地(シューティング用語。ボス戦などで絶対にやられないポイントを指す)にいるのだっ
た。




 十五分後。
「まだ話には続きがあるんだけど、良いかな? おじいちゃん」
「お、おう…僕的には好恵さんと結婚できるだけでハッピーハッピー教に入信して世界中
を青く塗りたくりたい気分だが、聞くだけ聞こう」
 ジャザえもんとの戦いでレベルアップしたがボロボロになってしまったbeakerが答えた。
「それでね。ぼくがジャザえもんをここに送ったのは、そういった借金だらけの家系図を
残さないようにするためなんだ」
「ああ、でも俺は息子にはどうしようもないんだろ? …はっ、まさか、”去勢”すると
かッ?! 頼むそれだけはやめてくれ、好恵さんと一発○○○するまではッ!!」
「おじいちゃん、発言が危ないよ。それに、そんなことしたら子供が産まれないじゃない
か」
「そうか、そう言えばそうだな。んじゃどうするんだ?」
「ぼくのいる22世紀で、大金持ちな人の家系に組み込めばいいんだよ」
「…はぁ?!」
「色々調べたところ、”来栖川財閥”が一番良いんだ。22世紀では世界的大財閥になっ
ているし、この時代でも、偶然おじいちゃんと来栖川家のお嬢様の一人がクラスメイトだ
しね」
 イヤな予感を懸命に抑えつつ、beakerはセリスに話の続きを促した。
「…で?」
「えーと、来栖川………綾香さん、だっけ? おじいちゃんには気の毒だけど、好恵さん
との結婚は諦めてもらって、綾香さんと結婚してもらう、と。そのためにジャザえもんを
20世紀、つまり今この時間に送ったというわけさ。分かった?」
「そ、そんな! せっかく好恵さんと結婚出来るのに、なんで諦めなきゃいけないんだ!
それに綾香なんて、ホントにタダのクラスメイトだぞ!!」
「そこをなんとかするために、このジャザえもんがいるんだよ」
「おう、全てこの俺様に任せておけ」
「イヤだイヤだ、僕は好恵さんと結婚して三日三晩○○○するんだ!!」
「さっきから伏せ字多いよおじいちゃん。さ、それよりもジャザえもん。早速綾香さんに
アタックしてきなよ」
「おう、住所は掴んでるからな。お前はもう帰るんだろ?」
「うん、タイムテレビで見てるから。しっかりやってよ」
「任せとけ。んじゃな」
 笑顔のセリスに見送られ、ジャザえもんはbeakerをズルズル引きずりながら来栖川の邸
宅目指して歩き出したのだった…。





「ぐすぐす…僕は好恵さんと結婚できれば満足なのに…」
 ようやく自分で歩くようになったbeakerだが、いまだに泣きベソをかいている。
「まだ言うか貴様。俺の存在意義を根底からぶち崩すそのセリフ、二度と言うなよ」
「そんなの僕には関係ないよ…僕は好恵さんと結婚すれば幸せなんだよ…」
「じゃあお前は子孫が借金地獄で苦しんでもいいって言うのか?」
「そうは言わないけどさ…そもそも無理なんだよ、来栖川財閥のお嬢様と結婚なんて。だ
いたい…」
 ジャザえもんが女々しい野郎どもの唄を歌い続けるbeakerに嫌気が差し、ナイトメア・
オブ・ソロモンを撃ってやろうと思い始めた頃。
「そうだぞbeaker!!」
 突然近くから声が上がった。
「beakerのくせに綾香と結婚しようなんて生意気だ!!」
「一発ぶん殴ってやる!!」
 見ると、そこにいたのは…。
「わぁぁジャザえも〜ん、ハイドラントと悠朔だよぅ!」
 途端に及び腰になってジャザえもんに泣きつくbeaker。
「beaker! 綾香は俺と結婚するんだ! お前の出る幕はない!」
「ハイドラントに綾香は渡さないが、beakerなんかに横取りされてたまるか!」
 ハイドラントと悠朔は悪者笑いをした。
「わぁぁぁぁ、ジャザえもぉぉぉぉぉん!!」
「腰に下げてるチャカは何のためにあるんだよ、おい」
「ハイドラント達には何故か勝てないんだよぅ〜」
「ジャザえもんに縋ったって無駄だ! さぁハイド、一発ぶん殴ってやれ!」
 悠朔が肝付兼太氏の声で喋る。
「beakerのくせに生意気だぞ。思い知らせてやる」
 ハイドは拳を固め、ハーと息を吐きつけた。
「しょうがない、逃げるぞbeaker!」
 ジャザえもんがそう言ったが、その時にはジャザえもんはbeakerを置いてとっくに逃げ
出していた。
「あっ、待ってよジャザえもぉん!!」
 beakerも慌てて後を追う。
「ちっ! こうなったら面倒だ、魔術で一気に吹き飛ばしてやる!!」
 ハイドラントは胸の前で印を組み、魔術の構成を編み出した。
「やばいぞbeaker! ハイドラントの奴、黒魔術を使うつもりだ!」
「なんだって?! …というかこんなギャグパロディLメモでシリアス技なんか使うなよ」
「ダーク十三使徒だけにやることがえげつないな」
 素早く応戦体勢を取るbeakerとジャザえもんだったが、ハイドラントが魔術の構成を編
み上げる方が早かった。
 完成させた魔術を発動するため、キーとなる音声を発する!!

「おっっれっっはハイド〜、ガッキだいしょう〜〜〜〜〜!!」

 その言葉は超音波となり、同時に放たれた黒魔術がbeaker達を襲う前に、彼らとそして
悠朔の鼓膜をさんざんに切り裂いた。
「グッ………でもこれで……綾香さんへのアタックはうやむやになったから……ちょっと
らっきぃ………ガクッ」
「………無念!!」
「ハイドラント、その技は使うなと台本にも書いてあるのに………ぐふっ」
 それぞれの遺言を残し、三人は倒れた。
「うむ、三人を一度に倒すとは、さすが俺! この黒魔術の力さえあれば、俺は世界をも
この手に出来る! そしていつかは綾香をも…グフフフフ」
 勝手な勘違いをして悦に入るハイドラント、そして…。
「フン…ばっかみたい。あたしはあんた達みたいな人とは結婚しないわよ」
 何故かこの光景を目撃し、四人に呆れている綾香であった。





 二十二世紀。
「うーん…ジャザえもん、いまいち上手くやってないなぁ」
 貧乏だと言った割に結構質のいいマンションの一室で、セリスはタイムテレビを見なが
ら呟いた。
「しょうがない、君に行ってもらうしかないみたいだ」
 そう言って傍らに目をやる。
「ジャザえもんと同じオイルで作られたけどジャザえもんより100万倍高性能なロボッ
ト、ユキミちゃん。頼むよ」
「うむ、わらわに任せるのじゃ」
 言いながらTV画面に入ってきたのは……………。




       続く(多分続かない)



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 makkeiさん、勝手に続き書いちゃってごめんね(笑)