Lメモ私的英雄伝3 投稿者:春夏秋雪
「…強化人間…?」
セリスが呟く。
『強化人間』
人を限りなく戦闘向きに改造したもの。その膂力や生命力ははエルクゥに匹敵し、
魔法などのメンタルパワーによる攻撃にもかなりの抵抗力がある。そして人を殺す事に何の抵抗も感じない究極の戦闘マシーン…。
しかし、欠点もある。
改造を受けた者は、長くて4・5年くらいしか生きらない…
まさに一瞬を輝くために存在している哀しい人形…

Lメモ私的英雄伝3『守る意志 愛する心』

「そうです。私は紫音と同じ強化人間です。
…もっとも、彼の様に肉体改造タイプではなく、精神改造を主に
施されていますけどね…。
この人形の様に…」
そういって、四季は浩之の方を見る。
「精神改造…?」
「そうです。わたしは他人の精神を乗っ取り自分の意のままに操れます。
そして、その『人形』の潜在能力をいつでも120%引き出すことが出来るのです。
極たまに発狂してしまって使いモノにならない事もありますけど。」
そう言うと、四季は無邪気な笑みを浮かべる。
「潜在能力って事は、浩之のその手も…」
ゆきの呟きに
「そうです。この力は『藤田浩之』本人の力です。
彼自身気が付いてないようですが、その能力はSS使いと同様かそれ以上ですよ。
…こんな風にねっ!!」
「「!!」」
そう言うと四季と浩之が飛ぶ。
そして、四季の両腕が舞う。
「繰術『念』っ!!」
浩之が二人を睨み付ける。

ビクウウゥゥンッ!!

「なっ!!?これはっ!?」
「琴音ちゃんの念力っ!?」
見えない力に押さえつけられる二人。
「繰術『炎』っ!!」
そのまま下にめがけて炎の弾丸を撃ち込む浩之。
「しまっ…」

ドカカカカカカカカカカカァァァッ!!!!!

辺り一面に火の粉をまき散らし大爆発。
「せりすさぁぁぁぁぁんっ!!ゆきさぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
マルチが叫ぶ。
そして彼らの元へ駆け出そうとした時、

シュタ…

「ヒッ!!!」
マルチは小さな悲鳴を上げた。
彼女の目の前には狂喜の男がいた。
「…貴方がこの『人形』が愛した人形ですか…」
そういって、マルチの頬にそっと触れる。
あまりの恐ろしさに声が出ない…出せないマルチ。
「……きっと、幸せでしょう。」
囁くように四季が語る。
「愛する者に壊される、そして愛する者を壊すということは…」
四季の両手が舞う。
「…い…嫌ぁ…」
マルチは涙をボロボロこぼし、絞るように声を出す。
「…だからぁ。マルチを泣かすなっていっただろうが。」
「同感。」
セリスとゆきが四季の後ろに立っていた。
「……いい加減五月蠅いですよ。」
四季は振り向かずに言い放つ。
「うるせえ…。マルチは絶対守ってやる。」
ゆきが唸るように言う。
「守る…?もう、立っているのもままならないあなた達がですか?」
見下した様に語る四季。
事実、セリスとゆきは立っている事さえ不思議なくらいな状態だった。
それでも、『マルチを守る』と言う一念が彼らを動かしていた。
「…守ってやるよ!!」
叫ぶセリス。
「滑稽ですね!!」

ダッ!!

そう叫ぶと垂直に飛びはねる四季。
「ならば、守れないように完全に壊して差し上げますよ!!!繰術『波』っ!!」

チリチリチリチリチリチリチリチリチリチリチリ…

浩之から紫電が放たれる。
毒電波である。
(やべぇっ!!)
(まさか、電波なで使えるとはっ!!)
その瞬間、二人は死を覚悟した。
・
・
・
しかし、その電波は彼らに届くことなく霧散する。
「少し度が過ぎたな…四季。」
「まさか、貴方が出てくるとは思いませんでしたよ。紫音」
彼らを守るような形で立っている紫音を四季は少し哀しいような瞳で見つめていた…
                                                     《続く》