Lメモ私的英雄伝4 投稿者:春夏秋雪(四季)
『強くなりたい』と、いつも思っていた。
戦うことが好きな訳じゃないけど
でも、必要な時に戦える強さが欲しい…
人の声に惑わされずに、流されずに
突き進んでいく強さが欲しい
自分で律する強さが…
負けることを恐れない強さが欲しい

……負けたら
そこから這い上がれるだけの強さが欲しい…

Lメモ私的英雄伝4

『強い弱さ、弱い強さ』

「随分と変わられましたね、紫音」
「お前も変わったよ……四季」
数十年ぶりに旧友に会うような穏やかな会話。
「……退いて下さい。」
「嫌だと言ったら…?」
「決まっているでしょう?」
「……」
その瞬間、風が舞った。
「…繰術…『邪』っ!!」
浩之が懐から無数の暗器を紫音に向かって投げつける。
しかし、紫音はそれを避けようとせずに右手のみで全ての暗器を叩き落とす。
「SS使いの技は見よう見まねで出来るほど易しいモノではないぞ…」
「……なぜ…邪魔をするのです…」
構えを解き、哀しい目で訊ねる四季。
「…………」
紫音はただ四季を見つめていた。
「…どうして、応えてくれないのです?」
「…意味がないじゃないか」
その言葉に四季の目尻がつりあがる。
「何故です!!何故意味がないのです!?私の"証拠"にどうして意味がないのですかぁぁっ!!!」

ダッ!!

感情を露わにして、紫音に襲いかかる。
駆け引きも策略もない、ただ感情のままの攻め。
紫音は哀しい目で四季を見つめながら、攻撃を避けていた。
「そんな目で見るな!見るなっ!!みるなぁぁぁぁあああぁぁっ!!!」
四季が叫ぶ。いつもの楽天的な笑みは消えている。
「私は、人を殺めるために生まれました。私が人を殺せばそれが私の生きた証拠になる。
私が存在した証拠になる。それがどうしていけないのですっ!!」
他人を傷つける事でしか、自分の存在を表すことの出来ない人形…
「……哀しい奴だな」
セリスが哀れな人形を見て、そう独白した。
「貴方だって、私と同じでしょうっ!!紫音!!」
「…この体の持ち主は…」
紫音が言葉を発する。
「どうしようもなくお人好しで、優柔不断でLEAF作品でも主人公出来るんじゃないか?って奴だけれど、こんな俺のことですら心配してくれるような優しい奴だよ…」
そう言って大きく後ろに飛び、四季との間合いを取る。
「ここにいるSS使いたちも、色々な人を想ってそして想われて生活している…
『人を想って、人に想われる』それでお前の言う"証拠"ってやつになると思うんだが…」
「……そうしたら、今までの私を否定してしまうではありませんか…」
四季が呟く。
「私はもう後戻りが出来ないのです…。私はその『想い』を壊してでしか自分を見いだせないのですっ!!!」

ダッ!!

四季が大地をける――――紫音に背中を向けて……
「なっ!?」
四季の先にいるのは…
「逃げろ!!マルチィィィィィっ!!!!」
ゆきが叫ぶ。
「同じ"つくられたもの"なのに…目障りですっ!!」
そう叫ぶと同時に浩之の鬼の手がマルチにむかって―――振り下ろす!
「いやぁぁぁああぁぁぁぁぁぁああぁぁっ!!」
逃げることも出来なかったマルチはたた、悲鳴を上げることしかできなかった…
「なっ!!」
「やめろ!四季っ!!」
そして、刻が止まった。

一陣の風が吹く。
マルチに向かって振り下ろされたはずの狂気は、マルチには届かなかった。
「なっ!?そんな…!?」
四季が驚く。
鬼の手は紙一重で止められていた。
奇跡が起きた…
「……マ……チ…逃………げろ…!!!」
「……ひ…浩之さん…?」
浩之の思いによって……
「そんな…そんな馬鹿な!!」
四季に動揺が走る。
「……速く…逃げろ……!」
次の瞬間、ゆきがマルチを抱えて走っていた。
「そんな…私の精神操作が不完全だったというのですか…?」
「……へへ…残…念だったな…こっちにも……主役の……意地ってモノが
…あるん…だよ!!」
そう言うと、浩之は無理に笑みを作る。
「……壊してやる…」
四季の瞳に殺意が宿る。
「そんな減らず口が二度と叩けないように、壊してやるっ!!!!」
「やれるもんなら……やってみろぉぉぉぉぉおおぉぉぉっ!!!」
二匹の獣が吠える。
「やめろぉぉっ!!」
紫音の叫びも虚しく、次の瞬間世界が弾けた………。
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一体どれくらい時が経ったのだろう…。
俺――藤田浩之――は、ただそこに漂っていた。
一体ここがどこか分からない。
ここは何処だろう?
そんなことを考えている俺の目の前に映像が映る。
その映像には、一人の少年がいた。
俺はそいつのことを知っていた。
――――春夏秋雪――――。
四季と名乗り、オレたちを殺そうとした奴。
しかし、俺の知っている春夏より5・6歳幼く見える。
……これは、過去の映像だな……。
直感的にそう感じる俺。
理屈なんてモノはない、ただそう思えた。
その映像には、ただ、ただ――――
殺戮が行われているモノだった。
血。
血。
血。
そこには映画では味わえないシビアな世界があった。
俺は吐いた。
吐くモノがなくなっても。
自分の汚らしいモノを追いやるかのようにはき続けた。
これが春夏の過去なのか……?
『そうです。これが私の記憶です。』
!!
俺の隣には春夏がいた。
奴は無感情に言葉を発す。
『私は人を殺めるために、作られました。それだけが私の生き甲斐でした。
そして、それ以外は私には必要ないと想っていました…』
そう言うと、春夏は苦笑して
『けれど、この学園に来てからその考えに疑問を持ち始めました。
みなさんが優しすぎるのです。私も知らず知らずの内に感化されていました。
けれど私は…私は…』
そう言うと、春夏は頭を垂らす。
俺…よく分からないけど、いいじゃんそれで。
『?』
過去は過去、今は今。その一瞬を大切にした方がいいぜ。
『しかし―――』
まぁ、俺はお前が今までどーゆー風に生きてきたかってよく分からないし
他人の人生に口出しできる程、経験豊かな訳じゃないけど。
今のお前がオレたちに関わっている事がお前の生きている証拠にならないか?
『………』
ああっ!!もう!なんていやーいいんだ?だから―――
『……ふ…ふふふ』
?なんだよ。いきなり笑い出して気持ち悪いなぁ。
『いや…失礼。しかし、貴方みたいな脇役に励まされるとは。』
俺は主役だ!!
『そうですね。今の私を見てくれて感じてくれる人がいればそれで
私の生きた証拠になるんですね…』
おいっ!!訊いてるのか!?
『ありがとう…』
こらぁっ!!勝手に自己完結するなぁっ!!
俺は主役だぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああぁぁぁっ!!!!!
そして、世界が暗転していった……。
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そして、俺が目覚めたのはあれから三日後の事だった。
ゆきやセリスもすっかり元気になり相変わらずの生活を送っているらしい。
マルチは、俺が目を覚ましたと訊くと飛んできてその場で大泣き。
必死で宥めた。(この後、案の定ゆきとセリスが飛んできた)
春夏秋雪の姿はあの時から消えているらしい。
俺は夢のような話を、お見舞いに来てくれた紫音に話した。
すると、紫音は顔色を変えて言った……。
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一週間後、俺はいつものように登校していた。
周りであかりや雅史か談笑しているが俺の耳には届かなかった。
頭の中で紫音の言った言葉が気になる。
あれは一体どう言う意味なのだろうか?
「浩之くん。」
「?」
そんな俺の肩をポンと叩かれ呼ばれる。
振り向くとそこには全く面識のない女の子がいた。
艶やかな黒髪の美少女だ。
「やっと、目が覚めたんだ。良かったぁ。」
そう言うと彼女はドキッ!!とするほどの笑顔を俺に向ける。
「……あのぅ、どちら様でしょう?」
俺が訊ねると
「あっ!そうかこの格好だから気づかないかぁ。マスク1号よ!!」
………………………。
「はぁ?」
とてつもなく間の抜けた声を上げてしまう。
すると、彼女は小声で
「だから、私ですよ。春夏秋雪です。」
……………………………………。
「なにぃぃぃぃぃぃいいいいいぃぃぃぃいぃぃぃっ!!!?」
「うわっ!!いきなり大きな声ださないでよ!!」
「だって、お前はお、お、お―――」
『男だろう。』そう言いたかったが動揺して上手く言えない。
「あれ、言っていなかったっけ?私ね、男でもあり女でもあるのよ。わたし、強化人間でしょう?精神的改造のほかに、肉体的改造を受けたの。」
開いた口がふさがらん。
「だったら、なんでいきなりそんな格好するんだっ!!?」
「それは…」
春夏は少し躊躇ったが、俺の顔を見て
「貴方に惚れてしまったからですぅっ!!」
ちゅどおおおおおおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉっ!!!
自爆する俺。
「どうしてまたそうなるっ!?」
「あの時、貴方の言葉を訊いて感動して想ったんです。これは恋だっ!!って!!!」
それは『恋』じゃなくて『変』だ!!
「だから、私の愛を受け取って!!ダーリンッ!!」
「だぁぁぁぁああぁぁっ!!来るな!!」
そういって逃げる俺。
「待ってぇぇぇぇっっ!!ダァァァァリィィンッ!!」
「浩之!!僕の愛の方を受けとってっ!!」
「藤田殿!!それがしの愛をうけとってくだされれええええええっ!!!」
「浩之ちゃん!!その子だれっ!!?」
「だぁぁぁぁぁぁああぁぁっ!!!なんでお前らまで来るんだよ!!!」
「ダァァァァリィィィィンッ!!!!」
「薔薇はいやぁぁっぁぁぁぁぁぁああああああっ!!」
逃げる俺の頭の中で紫音の言った言葉の意味がやっと分かった。
『あいつは一度想ったら突き進むタイプだからなぁ…。まぁ、がんばれよ。』

今日もLEAF学園は騒がしかった。
《完》
あとがきは後ほど…。
(分かります!!言いたいことは分かります!!!けど、待って下さい!!)