Lメモ私的英雄伝9 投稿者:春夏秋雪
    知的暴走と感情的消去、この二つを貴方は同義するというのですか?

「血…?」

 たった一つの疑問の始まりは…

「なんで…?」

 私の全てを壊す。

 Lメモ私的英雄伝9
『目を閉じれば… 〜WHAT THE THEY LOOK AHAED TO?〜』

 私ハモウ貴方ヲ好キダッタ私ジャナイ…!!

 手についていた血を見る。
 血はもう乾いて錆色になっている。
 私は自分の体を見る。
「どこも…怪我はしてないわよね」
 だったら、この血は何だろう…?
 ふと、不安が過ぎる。
 何だろう、凄く怖い…。
 無意識のうちに私は自分の両肩を抱いていた。
 震えが止まらない。
 そして、気が付くと私は部屋を出ていた。
 …お母さんの元へと。

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 全ては分かっていた。
 全ては決まっていたことだ。          
 難しい方程式は実に難解ではあるが、行き着く先には必ず『解』と言う結末がある。
 私はただモニターを見ていた。
「えっと、『C』型だけど見て分かるように覚醒前はわずかFランクにも満たないけれど、       
 覚醒後はSランクに匹敵するね。もしかしたらスプリガンと同レベルかも♪」 
 エミリアはそう言うと、無邪気に笑う。
「…本当に良いんですか?」
 私は、ステフに問いかける。
 彼女はデスクに肘をつき瞑想に耽っている。
 彼女は沈黙を守っている。
 私はあきらめてモニターにまた眼を向ける。
 そこにはよく知っている女性がいた。
「…四季ちゃん」
 私は誰に云うというわけでもなく、独白した。
 そこには彼女が映っていた。
 肉塊の城を築く彼女は
 
 真紅のドレスを纏っていた…。
 
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  お母さんの部屋には先客がいるみたいだった。
  私は部屋の扉を少し開けて中を覗く。
 最初はなんだか分からなかった。   
 お母さんの部屋には、エミリアと春夏くんもいた。
 みんな、目の前のモニターを見ていた。
 そして、そのモニターに映っていたモノを見たとき…
 心臓が…
 いや、心が凍り付いた…。
 そこには、人の返り血を浴びてその快楽に酔いしれる私がいた。
 その姿は自分でも妖艶で美しいと思った。
 『私』が舞う。
 そして、絶望と恐怖そして死のアンサンブルを奏でる。

 そして…
 私は鳴いた。

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短い悲鳴が聞こえた。
私は咄嗟にドアを開ける。
「…四季ちゃん」
 僕はその小さな手で顔を押さえている彼女を見た。
 何も言えなかった。
 彼女はステフが与えた睡眠薬で寝ているはずだった。
 どうして薬を飲まなかったんだっ!!
 そう、言いたかったのを押さえる。
 そうすれば、少なくとも自分のこんな姿を見ることはなかったはずだ。
 一歩、足を前に出す。
 彼女は一歩下がる。
 私と彼女の距離は変わらない
「どうして…? 何で私が…?」
 彼女は震える声で誰に問うこともなく質問する。
「…見ての通りじゃない? あんたはただの殺人マシンなのよ」
 彼女の質問に応えたのは、エミリアだった。
「あんたは施設で創られた強化人間で実戦でどれだけの能力を示すか測定するために
 この施設に送られたのよ…」
 そして、エミリアはケラケラと笑った。
「だいたい、善意であんたを引き取ろうなんて馬鹿この世にいるわけないじゃない」
「…エミリア!!」
 私はエミリアを睨む。
 しかし、彼女は何も動じずに
「私は本当のことをいったまでよ! それなのにこいつったら『家族』とか『幸せ』とか
 恥ずかしがらずに堂々と語っちゃって、訊いてる方が恥ずかしかったわ」
 そして、また笑う。
「…私、わたし、ワタシ!」
 四季ちゃんは涙を流しながら呟く。
「いや、イヤ、いやぁぁぁぁぁっ!!」 
 そう言って、叫びながら外に駆け出していた。
「四季ちゃんっ!?」
「追いかけても無駄よ! 春夏っ!」
 そう言ってエミリアは私を止める。
「アイツはもう駄目よ、精神と肉体のバランスがとれてないのに
 今の現状を知ってしまったら精神面がもう正常じゃないわ!
 …壊れた玩具は捨てるのが良いのよ」
 そう、いままで薬物で少しずつ肉体と精神を調整してきたが、今のでもうその均衡は
 れてしまっただろう。
 分かっている…。
 分かっているけど…。
「見過ごすわけにはいけないだろう!!」
 そう言い捨てて私は彼女を追った。
「貴方も壊れてるんじゃない…?」
 背中越しにエミリアの言葉が耳に届く。
 私は聞こえない振りをして走っていった。
 
 ステフはずっと黙ったままだった…。

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 がむしゃらに走った。
 何も考えずにただ走った。
 呼吸も忘れるぐらい。
 息が出来ない。
 苦しい。 
 けれど、今はそれ以上にこの心の苦しさを忘れたかった。
 結局私は見かけだけの幸せに浸っていただけだ。  
 他人のシナリオで踊っていたマリオネット。 
 何も考えずに惨めに操られていた。
 意識が遠くなる。
 誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。 
 誰だったっけ…?
 とても好きだった人?
 よく分からない。
 そして、意識が跳んだ…。

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(お願いもう来ないで!!)
「四季ちゃん! 待って!!」

You can't awake forever.

(それ以上私に近づかないで!!)
「四季ちゃん!!」

Response can't come ever.

(もう…)
「僕だよっ!!春夏だよ!!」

It's just private.

(もう私は貴方を愛した私じゃない!!)
「分からないのっ!?」

And I get out the gate.

「貴方のその顔、切り刻んでやるわ!」

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「四季ちゃん! 四季ちゃん!!」
 私は春夏君に抱かれていた。
「ごめん!僕こんな事するつもりじゃ…!!」
 彼は泣いていた。
 何で泣いているか分からなかったけど私が悪いと思った。
 大丈夫、気にしないで…。
 そう言いたかったのに、声が出なかった。
 …もう、彼が何を言っているのか分からなかった。
 …温かい。彼の腕の中でそう感じた。
 ……凄く眠い。
 ……瞼が重い。
 そして、私はまどろみの中に身を委ねた…。

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 私の中で四季ちゃんが眠っている。
 もう、二度と目を覚ますことのない眠りへと。
 私はその時初めて吠えた。
 




 



 エピローグ



「どう? 調子は?」
 そう、エミリアが訊ねる。
「別に変わったことはないよ」
「じゃあ、大丈夫みたいね春…四季かな?」
 そういって、頭を傾げる。
「さあ? 自分でも分からないや」
 私は曖昧な笑みで応える。
 私はあれから四季ちゃ…プログラム『C』のデータを自分に入れた。
 自分から志願した。
 私は『四季ちゃん』の一部を身につけた。
 私が誰かと問われたら、応えられる人はいないだろう。
 自分でも分からないことなんだから。
 私は春夏秋雪。
 私は四季。
 そんなことは今や不定だ。
 そして、大きな鞄を持つ。
「大丈夫?」
「何が?」
「ううん、何でもないわ」
「そう」
 靴を履く。そして笑顔で言う。
「じゃあ、行って来ます」
「行ってらっしゃい」

 そして、私は足を進める。
 LEAF学園へ。
「さあ、行こうか?」
 誰に言うというわけでもなく私は呟いた。

                         (完)
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あとがき!!

春夏(以下、春)「と言うわけで、書き終わったぞっ!!独りよがりのSS!!」
浩之(以下、浩)「終わったな…。自己満足作品」
春「良いじゃないですか…。」
浩「しかし、何か今回えらく英語を使っているな?」
春「そうですね。自分でも驚きです」
浩「サブタイトルにも英語を使われているし」
春「ちなみに『THEY』は私と四季のことです」
浩「途中の英詩は?」
春「引用をしてます。何からかは秘密!!」
浩「さて、あんまり語ることもないな」
春「そうですね… あ、そうそう、皆様の非難囂々の感想お待ちしております!!」
浩「では! 次回作で会いましょう!!」
春「さばらっ!!!!!!(ふるい?)」