Lメモ報復伝3.4『有限と無限の報復劇』 投稿者:春夏秋雪
『幸せってどんなのだろう?
 硬いのかな? 柔らかいのかな?
 強いのかな? 弱いのかな?
 白いの? 丸いの? 生きているの?
 目に見えるの? やさしいの?
 ・
 ・
 ・
 そうだ、僕達は何も分かっちゃいないんだ』

「・・・・・・」
 風見ひなたは、目の前にいる女性を見ていた。
 彼女は、その視線に気が付いてないようだった。
 彼女はそこから見える光景を、眺めている。
 ただただ、小さくなっていく風景を。
 今、彼らは観覧車の中にいる。
 彼らは向かい合って座っている。
 ひなたは誰に言うという訳でもなく呟く。
「・・・一体、いつまで続ける気だ?」

Lメモ報復伝3.4「有限と無限の報復劇
〜ENDLESS LOVE AND PURE HEARTS〜」

「・・・いつ気がついたの?」
 ひなたの方には振り向かずに、四季は尋ねる。
「この前、Lメモ掲示板見て」
「あらら、いけないと思うよぉ、楽屋ネタは〜」
「しかし、よくあれだけの面子を揃えることができたな」
「びーちゃんに頼んだの」
 そういって、初めてこちらに顔を向ける四季。
「やる時には、徹底的にやらなきゃね」
 四季はそこで微笑む。
 ひなたは、この笑顔にはやはり抵抗がある。
 四季は、今は女性の姿をしているが、元は『春夏秋雪』という男性だった。
 それを知っているひなたにとっては、彼女の笑みは生理的に受け付け難いものになっている。
「そう」
 ひどく冷めた声で答える。
 あれからも、凄かった。
 ゴーカートでは、我が師である西山、きたみち、ハイドラントと、共にデスマッチレースをしたり、
 コーヒーカップでは、TASが踊りアフロにされかけ危うくアフロ同盟に入りかけた、
 ほかにも、ジェットコースター、メリーゴーランド、フリーフォール、バンジージャンプetc・・・。
 すべての乗り物に、それぞれ妨害が入っていた。
 しかも、風見本人のみを狙って。
 そして、夕方になりそろそろ帰ろうかとみんなが言い出したとき、四季が『最後にあれに乗りたい』と
 観覧車を指差したのだ。
 幸いここは普通の従業員がいた。
 観覧車自体もこれといって変わったところはなかった。
 ひなた達が乗る観覧車だけ『愛妻号』とピンクの字で書かれていた事を除けば。
 ひなた自身も、「毒を食うなら皿までだぁぁぁっ!」とヤケクソで乗車したのだが
 一向に仕掛けてこない、それどころか四季も四人用のこの観覧車でひなたの
 隣ではなく、反対側の席に座った。
「どうして、何もしてこないんだ?」
 ひなたが尋ねる。
「何かしてほしいの?」
「いや」
 ひなたが四季の質問に即答する。
 金属の軋む音が聞こえると同時に観覧車が高度を下げ始める。
 夕日がまぶしく感じる。
「思い出がほしいからかな?」
 唐突な回答に驚いて、ひなたは四季の顔を見る。
 しかし、夕日の逆光でひなたには四季の顔が暗くなってよく見えない。
「私ね、夕日って好きなんだ! だってね昼と夜が一緒にあるみたいで凄く素敵に思うの!」
「えらくロマンチックだな、お前にしては」
「これでも、花も恥らう乙女ですから」
 そう言って、二人は爆笑する。
 そうこうしている内に、一周を終え観覧車が到着する時間になった。
「今日はごめんね、ひなたちゃん」
 四季が、不意にそう言った。
 さすがのひなたもこれには驚いた。
 あの、天上天下唯我独尊的問答無用破壊娘が謝ったのだ。
「どうしたんだ? 本当に?」
「さあ、帰ろう! ひなたちゃん」
 ひなたの疑問に四季は答えなかった。

 そして、メインディッシュは終わった。

『不幸な気持ちってどんな気持ちなんだろう?
 辛い? 悲しい? 悔しい?
 楽しい? 嬉しい? 微笑ましい?
 不幸ってどんな色なんだろう?
 黒? 白? 赤? 青? 緑? 黄色?
 橙? 紫? 金? 銀? 透明?
 ・
 ・
 ・
 やっぱり、僕達は何も知らない』

 お腹がいっぱいになった時って、デザートが出たってあんまり嬉しくない。

 帰ろうとした時にそれは起きた。
 不意に辺りに殺気が篭る。
 そして、次の瞬間、六人は(ひなたは沙織を岩下は瑞穂を抱えて)飛んでいた。
 刹那、先ほどまで彼らが居た場所の空間が歪み、轟という音と共に空間がえぐられる。
 (誰だ?)
 ひなたはそう思いながら辺りを見渡す。
「あ・・・あの! ひなた君、痛いんだけど」
 沙織が恥ずかしそうに言う。
 気づかないうちに力が入っていたようで、ひなたは謝りながら手を離す。
「・・・ありがとうね」
 そう言う沙織を見て、ひなたは自分の気持ちを再確認するのであった。
(当分、手を洗わないでおこう)
 先ほどまで感じていた沙織の温もりを手のひらに感じひなたはそう誓った。
「ひとーつ、人の生き血をすすり・・・」
 声が聞こえた。
 とてもよく知っている声だった。
「ふたーつ、不埒な悪行三昧・・・」
 できれば聞き間違えであってほしかった。
「みーっつ! 退治てくれよう桃・・・」
「この大馬鹿娘がぁぁぁぁぁあぁぁぁあああぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

 さくっ

 やけに気持ちの良い音を立ててトマホークが彼女−赤十字美加香−の脳天に突き刺さる。
「い、痛いじゃないですか!! 何てことするんですか!? ひなたさん!!」
 あまり聞いていないのか、数秒後に起きあがる美加香。
「それはこっちの台詞です、一体どういうつもりですか? 美加香」
「ふぃにゃひゃしゃんよ、はきゅにょてきゃきゃみゃみょるきゃきゃぢゃすぅぅぅぅっ!!!
(訳:ひなたさんを、悪の手から守るためですぅぅぅぅっ!!!)」
 ほっぺたを全力で引っ張るひなたに、涙顔で訴える美加香。
「悪?」
 オウム返しで呟くひなたに美加香は指差す。
「彼女です」
 その指差す方向には四季がいた・・・。
「どう言う事? それ・・・」
 沙織は美加香の方を睨み、
「あなたねぇ! 変な言いがかりは止しなさいよ! しきりんがそんな事する訳ないでしょう!!」
「証人も居るんですから!」
 そういって、どこからかYOSSYがワイヤーでぐるぐるに巻かれて出てくる。
「本当です、私は四季に言われて今朝風見君に妨害工作をしました。」
 ワカメ涙でそう語るYOSSY。
 気まずい雰囲気が辺りを支配する。
 そして、前置きもなくYOSSYが吹っ飛ぶ。
「余計な事をしゃべって・・・」
 そう言いながら、四季は髪をかきあげる。
「一体どういうつもりですか!?」
 そう言い寄ってくる長瀬。
「・・・プログラム『一撃必殺』」
 電子を帯電させた拳を何の躊躇もなく長瀬に打ち込む。
 そして、長瀬は大きく飛ばされ地面に2回跳ねてそのまま気絶する。
「四季君! 君は自分のやった事がわかっているのかいっ!?」
 岩下の詰問に四季は平然と答える。
 その時、彼は見た彼女の瞳が笑っていない事に。
「ええ、分かっています、立場の分かっていない愚者に鉄拳制裁をしただけです。」
「そんな、酷い・・・」
 瑞穂が呟く。
「酷い? 私が?」
 そう言うと、鼻で笑う四季。
「笑わせないで、最近出番の少ないあなた達『雫』のキャラを出してあげたのに感謝はしてもらっても
非難される覚えはないのに」
「き、キサマァァァァッ!!!」
 そう言いながら、自ら生み出した炎を四季に打ち込む岩下。
「プログラム『絶対領域』」
 しかし、四季の作り出したシールドで防がれる。
 炎は四季の目の前で霧散する。
「あなた達、勘違いしすぎよ」
 四季はそう冷たく言い放つ。
「ひとつ、私はあなた達を仲間だと思っていない。
 ふたつ、今回私は風見ひなたに対する私怨で動いたわけではない。」
 そう言う彼女の目には生気が感じられなかった。
 ただ、喋るだけのマリオネット。
「今回だって、隙あればss使いの命を狙っていたんだから・・・」
 そういって、不快な笑みを浮かべる。
「忘れたの? 私は強化人間、あなた達を消すためだけに生まれた兵器なのよ・・・」
 四季の周りを風が舞う。
 それは少しずつ強くそして彼女の姿を隠す。
「・・・私の名は『四季』」
 彼女の声だけが聞こえる。
「強化人間C型、式使いの四季・・・」
「待て! 四季!!」
 風見は前に進もうとするが如何せん風が強くて前も良く見えない。
「フフフフフフフフフフフフフフ・・・」
 四季の微笑が木霊する。
 そして、風が収まると同時に四季はそこから姿を消していた・・・。
「・・・一体どういうつもりだ!?」
 岩下がすこしヒステリック気味に叫ぶ。
 風見は何も言えなかった。
 彼女の台詞からすれば今までの行動は全部芝居だったのだろうか?
 あの観覧車での出来事でさえ・・・。
 彼は、自分が後ろで引っ張られているのに気づく。
 引っ張っていたのは、沙織であった。
「ねえ、嘘だよね・・・」
 沙織は今にも泣きそうな顔で尋ねる。
「しきりんがこんな酷い事するなんて何か理由があるんだよね!」
 最後のほうは、幾分力を入れて語る。
 自分にいい聞かせるように・・・。
 ひなたは何も言えなかった。
「だって、彼女・・・・・・泣いていたもん」
「え?」
・
・
・
・
・
・
・
・
 彼女はひざを抱えて座っていた。
 今は雨。
 彼女はびしょ濡れだった。
「楽しかったなぁ・・・」
 周りはすでに薄暗く、肌寒い。
「・・・ごめんね」
 独白する。
「ごめんね」
 ただ、その言葉を繰り返す。
「ごめんね」
 壊れかけたラジオのように弱々しく。
「時間が・・・ないの」
 ただ、雨が彼女を冷たく、しかし優しく包み込んでいた。


『完』

後書き
春夏「まことに申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁっ!!」
浩之「奪たらそんな事しなければ良かったのに・・・」
春夏「この通り、額を地面に擦りつけるほど頭を下げますゆえにお許しください!!!」
浩之「それはいいから、これで報復伝は終わりなんだろ?」
春夏「はい! メインディッシュの所で終わりです!」
浩之「で? 最後の辺りは?」
春夏「次回のLメモの伏線です」
浩之「(次回の大雑把な話の内容を見る)・・・マジ?」
春夏「はい! 人間やれる事はやっておこうと!!」
浩之「まあ、それはかまわんが・・・」
春夏「ではでは、今回の話で大変お世話になった、風見ひなたさん、あとその他のSS使いの
   皆様に深くお詫びをして! さらば!!!」