テニスエントリー(確認)&練習Lメモ「いや、まじめもあるんだってさ」(まにあうかっ?!)  投稿者:しろりん

   …テニス大会参加決定の後…(makkeiさんのLの続きと思ってください)


   何処かで見たような夕焼けをバックに歩く和樹と沙織。
   すでにエントリーを住ませた二人は、明日からの練習について話すべく一緒に帰っ
   ていた。

    「というわけで城下くん、明日から練習だね!あたしいつも祐クンにル−ル教えても
   らってて、あたしじゃよくルール分からないけど、よろしくねっ!」
   その沙織はいかにもわくわくした表情で和樹にそう言った。変な日本語では、ある。
   和樹は苦笑気味に言う。
  「沙織ちゃん…俺も、テニスってル−ル知らないんだ。」
   足を止める二人。お互いの顔を見る。

   和樹はにっこり。
   沙織もにっこり。

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   城下和樹・新城沙織組 気分はもう初戦敗退♪



   テニスエントリー(確認)&練習Lメモ「いや、まじめもあるんだってさ」



   「…と、とりあえず練習あるのみ! そう、希望はみえるわ!」
   部員獲得のためか、いつもより熱血気味の沙織のその言葉に一言。
   言葉もどこかスポ根が入っている。
   「ルールすら知らないんじゃあねぇ…」
   やる気のない和樹の返答。和樹自信は運動能力はそこそこなのだが、やはりスポ−
   ツは付け焼き刃で身につくものじゃないと知っているためか、どこかあきらめ気味
   である。

   「じゃあ城下くんは、このままおめおめ引き下がるっていうの?!」
   逆に沙織は熱血で、こういう逆光に燃えるらしい。
   「でも沙織ちゃん、優勝商品が目的じゃないんでしょう?」
   和樹が言う。
   沙織がゆっくりとうなずき…和樹と間を取る。

   「そう! 活気のないバレー部の部員は減る一方!期待の城下くんはいっつもサボ
    ってるし、真面目に出てくるみんなもこのままじゃあ可哀想だと思わない!?」
   大げさな身振り手振りを加えて話す沙織。
   「だ・か・ら!ここはバレー部はテニスもできるんだぞって事をみんなに見せびら
    かして、その活躍で部員を引きこもうって寸法!」
   夕日をバックに、腰に手を当ててえっへん。

   どうでもいいがこの娘はやはり大げさである。

   「う〜ん…そんなもんかなぁ…」
   「そう!」
   「…わかった! 俺も全力で協力するよ!」
   「うん、一緒にあの夕日に誓おう!」
   びしっと夕日を指す沙織。
   「俺達は、運命になんてまけないぜ!」
   びしっと夕日を指す和樹。
       …カァ−……カァ−……
   カラスの泣き声がむなしく響き渡っていた…

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   ・

   次の日の朝

   パコ−ン…パコ−ン…
   静かな朝、テニスコ−トに複数の球がはじかれる音が響く。
   欲望、恨みなどが大半を占めているようなテニスコ−トのオ−ラは凄まじい。
   たまに爆発音や悲鳴も聞こえるが、まぁいつもの事である。

      「必殺技?」
   なぜか赤いテニスルックを身にまとった和樹が、そう聞き返した。
   「そう、本格的に勝つンだったら必殺技ねっ!」
   沙織は対照的に青いテニスルック。色だけでも目立つ。
   そのうえはしゃぐ沙織はコ−トの中でもかなり目立つはしょうがない事だろう。
   「あたし、ル−ルはよく知らないけど、打ち返すだけなら、バレーの応用で、こう
    …手首からこういうふうに…」
   「バシ−ン?」
   「そうそう! 分かってるじゃないの〜」
   分かるわい。

   「…で、沙織ちゃんの必殺技は良いとしても…俺には何を?」
   和樹のとりえと言えば、走るスピードである。もとい、加速力。
   バレーボールの反応に対してかなり機敏に反応できるため、主戦力と言われる。
   めっきり最近はそのほかの事でその能力を生かしているが…

   それはさておき

   「城下くんは、スピ−ドを活かして、相手のボールを確実に返して行くのが良いん
    じゃないのかなぁ。長期戦になれば、体力のあるあたしたちが有利だしっ」

   テニスとは見た目以上に走るスポーツである。さらに、腕を振る力を加えるとなれ
   ば、それは2、3日の特訓で体力が身につくものではない。

   「だからこそ、それが俺の必殺技?」
   「そうっ! 時間が立てば立つほど有利になるというわけ、で、城下くんの援護が
    必要なの」
   にっこりと笑う沙織。その顔、目の下にはすこし”くま”が出来ている。夜遅くま
   で考えた結果なのだろう。
   方針が決まればおのずと練習方法は見えてくるもので、二人はその内容を確認しあ
   った。

   二人とも言えるのは、まずルールを覚える事。
   沙織は必殺技に磨きをかけ、それなりにボレーを打ち返せるようになること。
   和樹はボールの反応にだけ集中し、完璧までいかなくとも沙織のサポ−トをするこ
   と。
   言うだけなら簡単だが、息を合わせないとまず無理なコンビネーションである。
   
   「城下くんは普段はぼけぼけってしてるけど、試合のときはいっつも真剣だから、
    今回も信用してるよっ」
   「あ、うん。ありがとね」
   二人でにっこり笑いあう。

   …しかし。

   「お、おもったよりしんどい…」
   はぁはぁ…
   地面に尻をついて、和樹はつぶやいた。

   和樹がいましている練習は、オーソドックスに壁打ちである。
   不規則に反応する相手の行動を見こなして、わざわざぼこぼこの壁を利用した練習。
   不規則が故に、集中しなければいけない。そして、体を反応させるのだ。
   
   「…すこしやすもう…」
   汗だくの体を、顔を真っ白なタオルで拭きながら、回りのコ−トを見る。
   ……
   あらら?
   知った顔が数人、いた。

   どごぉぉんっ!!
   コート内に強烈な音が響き、続いて地鳴り。
   紛れも無く爆発である。
   「…懲りてないんですかっ! あんたはっ!!」
   すすだらけになりながらも頬を引きつらせて美加香は叫ぶ。
   「なにを言うっ! これは僕の必殺技だっ!!」
   まけじと風見も言い返す。
   「どうみても地雷じゃないですかぁぁぁぁっ!!」
   「口答えするんじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!」
   ボールを上に上げる風見。
   「必殺!!…」
   耳と目をふさぐ和樹。

   …
   …

   カッ!   ちゅっどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっっっ!!!

   …
   …

   そろそろと目を開く。
   
   「あ、月だ…」

   コート表面にボコボコ空いた穴を見て、和樹はつぶやいた。

   「ははははっ!! どうだ、この…」

   どごぉんっ!

   風見の言いかけた言葉は爆音でかき消された。
   ふとみると、あちこちで爆発が起こっている。

   「…みんな、がんばってるんだね…」
   30%は違う方向の練習と思うぞ いや、勝利信念からだろうけど。

   「俺もやらなくちゃね…」
   むくりと起き上がる和樹。みんなが、がんばっている。自分もやらないでどうする
   のか。
   そして、おもむろにボールを叩きだす。
   パコーンッ! ガッ パコンッ!
   …いつもその真面目な方向にベクトル向ければ良いのだが…


   その日の放課後 3時30分


   「こんちわ〜☆」

   がちゃり。

   和樹がある部室のドアを開ける。
   ドアには「情報特捜部 関係者と部員になりたい人以外お断りっ! ばい志保ちゃ
   ん☆」とかいてある。非情に分かりやすい。ドアの半分が名前で埋まっているのだ
   から。

   「…あら、城下さん。」
   にっこり。お茶をすすって座っているシャロンが椅子に座っていた。
   「あ、ども〜…あにゃ、誰もいないんですか?」
   きょろきょろ…
   
   無骨にいろんな物が散らばる部室…を見渡す限りはシャロン一人である。

   「ええ、シッポさんも悠さんもテニスの練習ですよ。」
   「…先輩達もでるんですか、知らなかった…」
   和樹は悠、そしてシッポをあえて先輩と呼ぶ。
   それは、途中から部に入ったからという理由もあるが、わざわざ同年代の男を先輩
   と呼ぶあたりが和樹らしい勘違いだ。 ちなみに二人を年上といまだに思っている。

   「和樹さんは新城さんと一緒でしたよね、がんばってくださいね。」
   またにっこり。非情に優しい、透明な笑みだった。
   「はい! ありがとうございます。 じゃ、今日はそのまま練習に行きますね〜」
   和樹もつられてにっこり。
   「がんばってくださいね。それでは…」
   シャロンの声を背中で聞いて、和樹は部室を後にした。


   *3時30分+ちょっと


      数分後、和樹は暗躍生徒会に行こうとしたが、やめた。
   …主催が暗躍生徒会。なのにバレー部で出る和樹。
   
   あああ、きっと何か言われる…
   
   そんな予感をかみ締めながら、Uターン。
   実際誰も気にしちゃいないんだけどね。自分でなにも言ってないし…
   書かねぇSS使いはただの人さ(んなこと言っていいんか?俺)


   *4時過ぎ


   次に第二購買部へと来た。予定の物を受け取るためだった。
      しかし、部内には誰もいない。
   ガラーンとしている。
   積まれた瓦礫。
   壊された樹の板。
   人の血。
   ふむ。




   っていうか、店がねぇよ(爆)




   …いつもの事かと思いつつ、その場を去った。

   予定の物は大会当日にもらう事にした和樹は、沙織との練習があるためにテニスコ
   ートへと向かった。



   舞台は夕焼けのテニスコート。



   朝と同じく地味に壁打ち特訓。
   沙織も別でスマッシュの練習をしている。

   ぱこーん ぱこーん ぱこーん
   ぱこーん ぱこーん ぱこーん
   ぱこーん ぱこーん ぱこーん………ぽんぽんぽん……

   朝に比べると、打ち方のコツを掴んだのか、前より続くようになっていた。
   
   最初は打ち返すだけで疲れていたものの、なれると結構面白くなったらしく、コツ
   掴みの速さはさすが体育会系と言えよう。
   
   ぱこーん ぱこーん ぱこーん
   ぱこーん ぱこーん ぱこーん
   ぱこーん ぱこーん ぱこーん
   ぱこーん ぱこーん ぱこーん

   「……城下くんっ!」
   「ひゃぁっ!!??」

   ぶぅん……ずべしっ!!

   後ろからいきなり声を掛けられ、驚いて思いっきり素振りして顔面からぶっこけた
   和樹。
   …さすが体育会系。

   「……なにしてんの?」
   「…お、太田さん?!」

   和樹の背後から声をかけたのは、太田香奈子その人であった。
   半ば強引に暗躍生徒会に連れ去られた、張本人である。

   「あ、あの、なにかご用ですか?」

   いつも雑用ばかり押しつけられている和樹にとって、香奈子は恐怖の存在である。
   それがいきなり声をかけて来たのだ。

   香奈子は地面にへたり込んでる和樹を見て、
   「ちょっと見たような顔が壁に向かってボール打ってたから、ね。」
   足元のボールを拾い和樹に投げ渡す。

   「っとと…」
   「かりにも暗躍生徒会の会員でもあるんだから、負けちゃだめよ。しっかりね…」
   それだけ言うと、香奈子はそのまま去って行った。
   
   ……ぐはっ
   あの香奈子さんが今日はなにもしなかった…
   もとい、何もさせられなかった…
   負けたら一生こき使わされる…
   ……負けられねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!
   
   香奈子の事は酷い言いようだが、とにかく和樹のやる気(恐怖心)に火をつけたよ
   うだ。


   練習再開 その後は軽く沙織とボールの打ち合いをし(ルールしらないから少し激
   論もかわし)て終わった。


   「城下くん、今日はお疲れ!また明日からもよろしくねっ」
   帰り道、沙織はそういって、帰ろうとした。
   「あ、ちょっとまって! あのね、言わなきゃいけない事が一つ…」
   「ん?」
   顔だけ後ろを振り返って、和樹を見る沙織。
   沙織に近づいて、耳でごそごそと喋る。
   
   「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!! コ…もぐもぐぅっ!!」
   「しっ! 沙織ちゃん声大きいっ!」
   慌てて沙織の口をふさぐ和樹。
   
   「むぐむぐっ…ぷはっ!……ほ、本当にするの?それ…」
   沙織も驚いたようで、かなり狼狽している。

   「目立つには、それくらいしなきゃ…、やっぱり部員獲得が主だし。」
   和樹にっこり。それをみて沙織も、
   「やってみたいとは思うけど…大丈夫かな?」
   「大丈夫大丈夫! 沙織ちゃんならOKだよっ!」
   「うん…じゃあ、恥ずかしいけどやってみるねっ!」
   沙織も少し恥ずかしげながらOKした。
   
   「じゃあ、また明日〜!」
   「うん!また明日ね、城下くん。」
   お互いに手を振って、別れた。

   テニス大会までもう間がない。一つ一つの練習をしっかりやって、やれるだけの事
   はやろう。
   和樹は勝利を誓って、家の帰路についた。




   数日後 なぜか化粧品を買いこむ和樹の姿が目撃されたと言う。