神牙獅斬L第三話リメイクバージョン「例えば僕ならこうするね!!」  投稿者:神牙 獅斬
 この作品は神牙L第三話の風見リミックスバージョンです。
 どうか神牙L第三話と照らし合わせの上で最後までお読み下さい。
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「知ってる?二年に転校してくる人のこと」
「うん、聞いた聞いた。『番長』……でしょ?」
「そう。前の学校で暴れすぎて転校してきたんだって」
「どんな怖い人が来るのかしらね……」

 校門の前に立ち止まった青年は、眼前にそびえる校舎を俯瞰した。
 万感の思いを込めた口調で言い放つ。
「ここが試立Leaf学園……俺様の今日からの学舎か……」


 神牙獅斬L第三話リメイクバージョン「例えば僕ならこうするね!!」


 校門をくぐった青年の耳に、唐突に男女の争う音が聞こえてきた。
「てめえD芹!!今日こそ勝負を付けてやるぜ!!」
「懲りない人ですね」
 彼女の呟きと共に、何処に仕舞われていたのか巨大なミサイルが飛び立つ。
「ICBM発射!!」
「でええええっ!?」
 男の悲鳴が校庭に響きわたる。
 青年は軽く眉をひそめると、空から落ちてくるミサイルを見上げた。
「ふうん……」
 そんな呟きと同時に、青年の身体が掻き消える。
 まるで空間から消滅したように。
 次に青年が現れたときには、ミサイルのすぐ目の前に現れていた。
「危ない!?」
 突然の青年の乱入に娘は声を挙げる。
「馬鹿野郎!!人間が喰らったら死ぬぞ!?」
 娘と争っていた男も目を剥いて怒鳴った。
 と、言いかけて彼は硬直する。
 そこに居たのは人間ではなかった。
 ミサイルに向かって爆走する巨大なコアラだった。
「何いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
 彼は思わず口を大きく開き、絶叫を挙げる。
 だが巨大コアラは顔色一つ変えず、傲慢な口調で不敵に男に言い放った。
 よく見れば顔の部分だけ人間だ。実は単なる着ぐるみなのである。
「ふはははは、そこで見るがよい!!俺様の無敵の武術を!!」
「なっ………?」
 男の間の抜けた表情。
 それを見ることもなく、巨大コアラはミサイルに向かって飛びついた。
「秘技・キグルミ交殺法!!コアラ大爆発!!」
 その瞬間、青年の掌から眩いばかりの光が放射される。
 あまりの閃光に思わず二人はカメラアイを焼かれそうになり、慌ててフィルターを落と
した。
 男は眼を懲らし、そこで何が行われているかに気付いて声を挙げた。
 コアラのキグルミの男はまるでユーカリの樹にしがみつくコアラの如く、ミサイルにし
っかり抱きついてその動きを止めていたのだ!!
「馬鹿か!?なんて馬鹿さだ!!」
「いや、多分本当に馬鹿なんだと思いますけど!?」
 普段冷静沈着を誇る少女までもが驚愕の声を挙げる。
 そこに居たのは謎の転校生ではなく、ただひたすら大自然の神秘を身に纏いミサイルと
格闘する一匹の野獣であった!!コアラだけどな!!
 耳をつんざく鋭い金属音。
 それが全て止んだとき、ミサイルはコアラ男の手によってしっかりと食い止められてい
た。
 まさに奇跡である。奇跡以外の何者でもない。
 コアラ男は事も無げにその腕の中のミサイルを見ると、小さく息を吐いて呟いた。
「ま……こんなものだな!さすが俺!ナイス俺!ああ、聞こえるぞ俺を讃える歌が!!」
「お前は……一体……」
 男はごくりと唾を飲んで訊く。
 コアラ男は振り返り、初めて男の存在に気付いたという表情をした。
 ちっちっと指を振り、男の顔を覗き込む。
 あまりの奇天烈さに思わず男は一歩退いた。
 コアラ男は更にずずいと彼に詰め寄り、驚いた声を挙げた。
「俺様に名を名乗れと言うのか!?このウルトラな俺様に!?いや、違う!!そんなのは
正しくない!!むしろあんたたちが名乗るべきなのだそうなのだ!!名乗れ名乗るのだ!!」
 毒気に当てられた男は冷や汗を浮かべて応えた。
「お……俺は三年のジン・ジャザム。サイボーグだ」
「私は来栖川警備保障所属、Dセリオです」
 どことなくDセリオまでもが怯えているように見える。
 ジンは名乗るが早いか、コアラ男を何かとんでもないモノを見るような眼で訊いた。
「で、お前は何なんだ!?何でコアラのキグルミなんだ!?しかもミサイル止めるか!?」
 コアラ男はふっとニヒルな笑みを浮かべて、ジンに訊き返した。
「あんた……『形意拳』ってのを知ってるかい?」
「ああ、中国武術の一派だろ?確か動物の動きを取り入れた武術だったか……?」
 青年は不敵な笑みを浮かべると、右手にミサイルを抱えつつ、空いた左手で自らの胸を
指した。……いや、違う。自らの纏ったコアラキグルミを指した。
「俺様は更にその上を行く武術を継承しているのだ!!聞いて驚け、俺様は動物のキグル
ミを着ることでその動物のパワーを手に入れることが出来るのだぁぁぁ!!!」
「でえええええええええええええええええええええ!?」
 ジンは驚いた。
 ただし、そのあまりの頓狂さにだが!!
 コアラ男はその叫びを自らへの賛辞と受け取ったか、堂々と胸を張って言い放った。
「俺様こそがこの地上最強の武術『キグルミ無敵伝説』の正統継承者…………………!!
人呼んで『キグルミ番長』とはこの俺様、神牙獅斬のことだぁぁぁぁぁ!!!!!!」
 ジンは驚いた。
 神牙と名乗るコアラ男の表情には一片の疑問もなかったのだ。
 そう、自らへの絶対的な自信!!それがこの男の顔を覆い尽くしていた!!
(っていうか少しは自分に疑問を持てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)
 ジンがそう思った瞬間、どこかでカチッという音がした。
 まるで時計の針が刻まれるような音。
 その正体に気付き、ジンは慌てて飛びずさる。
 更にそれから数瞬の間を置いて、Dセリオの声が響きわたる!!
「秘技・時間差ICBM爆破アタック!!」
「へ?」
 コアラ男神牙の間抜けた声が静かにその後を追い………。
 校庭が閃光に満たされた。

 ちゅごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!

 閃光と轟音が納まった後、キノコ雲の中には一人の青年が立ちつくしていた。
 もはや黒こげになり、着ていたコアラのキグルミも跡形ない。
 それでも青年は絶対的自信を持って、堂々と言い放った。
「ふ、あの爆発を受けてなおかつ俺様の身を守るコアラキグルミとそれを操る俺様………
すごい!!ああ、凄すぎるぜ俺様!!まさに!!まさに無敵なりぃぃぃぃ!!」
 その言葉を最後に……キグルミを失った元コアラ男神牙はばったりと倒れた。
 さすがにダメだったらしい。
 ジンはニヤリと笑うと、その焦げた手をしっかりと握りしめた。
「おもしれえ!!なんかとってもおもしれえぞお前!!とりあえず戦友に認定だ!!」
「よ……よきに計ら……えっ……!」
 それが、この学園最初の生徒との出会いだった。
 側で見ていたDセリオは無表情にメモに一文を書き込んでいた。
「本日、また一人危険人物増加。ベクトル的に変態。要注意のこと」


「俺様が今日からこのクラスの一員になる神牙獅斬だ!!」
 神牙がそう言った瞬間、わらわらとクラスの人物達はざわざわと囁き合った。
 それもそのはず、神牙は紅いもじゃもじゃが一杯付いた謎のキグルミを着込んでいたか
らだ。はっきり言って怪しすぎる。
「あ……あれが『番長』………?」
「な、何……あの人は……?」
「想像と違う……」
 神牙はなおも堂々と胸を張って続けた。
「前の学校じゃ暴れすぎて『キグルミ番長』って呼ばれてた俺様だが、まあよろしく頼む!」
 その一言でクラスの一同は吹っ切れた。
 こんなの気にしてちゃあここではやっていけない!!
「おう、よろしくな!」
「神牙君、どこから来たの!?」
「その服、カッコイイね!!」
 一同に取り囲まれ、神牙は照れたように笑いを漏らした。
「いやあ、みんな親切だなあ」
 確かに優しい。
 その視線には同情が溢れまくっていたが。
「……ふん」
 クラスの一番最後の列の席に座っていた生徒が小さく呟いた。
 全身黒づくめの改造制服に身を包み、敵意を込めた目で神牙を睨み付けている。
 神牙は人懐っこい笑みを浮かべて、その男の元に近付いていった。
「アンタもよろしくね」
「寄るな変態」
 黒づくめの男は不快そうな目で神牙を見つめている。
 ただにこにこと微笑み続ける彼の後ろで、一人の生徒が忠告の声を掛ける。
「やめとけよ、そいつはハイドラントっていうヤツだ。学園の暗部で暗躍してるって噂の
男だぜ」
「そうだよ、危ないよ」
 その隣にいた赤い髪の女生徒も神牙に忠告する。
(キミほど危なくはないけど)と心の中で呟きながら。
 しかし神牙は構わずハイドラントに向かって手を伸ばした。
「よろしくね」
「………………黙れ!」
 突然放たれたハイドラントの叫びが、光熱波となって神牙を襲う。
 ハイドラントはそのまま立ち上がり、もんどりうって転けた神牙の前に立った。
「俺はガラモンと戯れるつもりはない!!近寄るなぁぁぁ!!」

 その暴虐を見かねて、前の方の席の少女が立ち上がる。
 流れるような黒髪と切れ長の瞳が印象的な女生徒だ。
「ハイド!いきなり何してるのよ!!」
 少女はつかつかとハイドの元に駆け寄り、非難の声を挙げる。
「だって綾香、ガラモンだぞガラモン!?こんなの着て登校してきてるんだぞ!?」
 ハイドラントは少女に向かって涙混じりの声を放つと、頭をぶんぶんと振った。
「気にすることないわよ。単なる同族嫌悪だから」
「だれが同族かぁっ!?」
 綾香は思っても見ない強い声でハイドに反論されて、少し面食らった。
 それが一瞬の隙となった。
「ははは、世界最強のフェミニストである俺様の前で女を侮辱するとはな!!」
 神牙はにいっと不気味に笑うと、紅く染まったキグルミでハイドラントに詰め寄った。
 背筋を走る悪寒に気付いて、ハイドは慌てて神牙の方を向く。
 嫌だ!!ガラモンは嫌だ!!
 だが遅い、神牙はその時既に攻撃態勢に入っていた。
「その報い、しかと受けるがいい!!俺様の宇宙怪獣ガラモンの一撃によって!!」
「何だ、この邪気はっ………!?」
 その叫びが終わらない内に、ガラモン男の体当たりがハイドの腹を強打していた。
 教室自体が振動するほどの激震が神牙を中心に撒き起こる。
 生徒達は慌てて床に伏せ、机という机がひっくり返る。
  神牙の拳のなす衝撃に肺腑を貫かれたハイドラントは、白い眼で床に転がりのたうち回
るガラモン男を見下ろしていた。
「………何なんだ、お前は………」
「ぐふうっ!!俺様としたことがガラモンと間違えてピグモンのキグルミを着ていたとは!!
貴様、実はなかなかやるな!?」

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 マメ知識……ウルトラ怪獣ガラモンは凶暴な怪獣である。
       だがそのそっくりさんのピグモンは非常に弱く大人しい怪獣なのだ。
       本編でもピグモンに化けたガラモンが暴れる話があって、なかなか難儀。
       ちなみに作者は両者の見分けが付かない(笑)
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「す……すごい……!」
 綾香は眼を見開いて神牙を見つめた。
「なんて凄い馬鹿なの!?」
 だが、当の神牙は軽く苦笑して肩を竦めてみせる。
「なーに、俺様は女性の味方だから。女の子に手を上げるヤツが許せないなのさ………。
今すぐ立ち上がって貴女を侮辱したこの男を惨殺してやるぜ!!」
「へえ、紳士気取りなのね………」
 そう言いながらも、綾香の眼には困惑の色が隠せない。
 一体何なの、こいつ!?
 神牙はただただ苦笑するばかりだった。
「とりあえず頭のメモ帳には面白いキグルミさんとして記憶しておくわ」
「参ったな……女の子にモテモテだよ、俺様」
 しかし、神牙も案外まんざらではなさそうではあった。
 そうこうしている内に痛みも納まってきたらしく、神牙はピグモンキグルミを脱ぎ捨て
てハイドラントを見つめる。
「ふ……さあ、見ているがいい!!こう見えても俺様はコアラとピグモンの他にも十数着
のキグルミを持ってきているのだからな!!」
「嫌だぁぁ!!俺、お前なんかと戦いたくねぇぇ!!!」
 涙を流して狼狽えるハイドラントを見て、神牙は得意そうに笑った。
「ははは!!俺の実力に気付かず喧嘩を売った弱者は何故かいつもそうやって泣くのさ!!」
 その『何故か』ってのは何なんだ。
 一瞬のうちにハイドラントを精神的に追いつめた奇跡の転校生を見た生徒達は、驚愕の
溢れる眼差しで神牙を見つめる。
「すげえ……あのハイドが怯えてるぞ!!俺も怯えてるけど!!」
「凄いヤツがやってきたな!!」
「神牙君おかしすぎ……私、生態観察クラブ作っちゃおうかな……!」
 ざわざわと騒ぐ生徒達を前に、ようやく教壇に立っていた耕一は正気に戻って一同に言
った。
「こら、みんな落ち着くんだ!!席に戻れ!!……神牙君」
 神牙は耕一に言われるよりも先に、深々と頭を下げて心底申し訳なさそうに言った。
「すみません、転入早々乱闘を起こしてしまいました。この不祥事の結果は如何様にでも
とるつもりです」
「うーん………乱闘って言うかなんていうか……なぁ」
 耕一は困惑した顔で神牙を見る。
 そこに綾香が手を上げた。
「先生、もう諦めましょう。こうなったら決着を付けるまで戦わせちゃいましょう」
 そこに被さる、そーだそーだというクラス全体の合唱。 
 耕一はため息を吐いて、大きく頷いた。
「仕方ないな……とゆうわけでどちらかが死ぬまで戦ってくれ」
 耕一の寛大な処置に、クラス中が歓声に湧く。
 その中で綾香はハイドの方を向いて、一つウインクをして見せた。
「やったね、ハイド☆」
「綾香ぁぁぁぁぁぁ!?お前そんなに俺が嫌いかぁぁぁぁぁ!?」
 神牙はそれを見て、軽く苦笑を漏らした。
「ふ、綾香さんも俺様の活躍が見たいのか!!ならばよかろう、俺様の奥義を見せてやろ
うではないかぁぁぁぁぁぁ!!」
 そう叫ぶと同時に、いつの間にか背負っていたリュックの中から巨大な電柱のキグルミ
が姿を現す!!
「キグルミィィィィ!!蒸着ゥゥゥゥゥ!!」
 何故かがっしぃーーーんと響きわたる謎の機械音!!
「何故ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
 ハイドは頭を押さえて圧倒的な理不尽さにもがき苦しんだ。
 すっかり電柱に化けた神牙はそんなハイドを見て高らかに笑う。
「ははは、恐れるがいい、俺様はこの格好でこれからずっとお前の後を付けてやるぞ!!
お前の精神がストーキングの恐怖に堪えかねて発狂するまで永遠にだ!!すごかろう!?
これぞ我が奥義……『電柱の舞い』なのだああああああああああああぁぁ!!」
「もうワケわかんねーーーーーーーーーっ!?」
 ハイドは自分に机にしがみついてがんがんと頭を打ち付けまくった。
 既に半ば錯乱している。
 と、その頭突きを受けて机の中の私有物が一切合切外に転がり出る!!
 得意そうに笑っていた神牙の表情が、その中の一つを見て強ばった。
「こ、これはぁぁぁぁぁ!?」
「んっ?」
 何かまた奇妙なことを始めた神牙を、恐る恐るハイドが見上げる。
 神牙はガタガタと震える指でその赤い品物を指さしていた。
「そ……それはマニア垂涎の伝説のキグルミ……『消火栓』ではないかぁぁぁっ!?」
「そ、それがどーかしたのかっ!?」
 ハイドの問いに、神牙は絶望的な表情を浮かべて悶絶した。
「くそおおおお!!まさか!!まさかこの学校に俺様すら持っていない伝説のキグルミを
持っているヤツがいるとはぁぁぁ!!さてはあんた伝説のキグルミ師っっっ!!!!!
『キグルミ・マスター』なのだなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「人を勝手に奇怪な名前で呼んでるんじゃねええええええええええ!!!」
 ハイドラントは涙を流して必死に抗議の叫びを上げる。
 だが、それを無視して神牙は絶叫した。
「くそ、否定するのか!?俺様如きとは闘えないと言うのか!!侮辱か!!くそうっ!!」
「否定もクソもないわあっ!!人を何だと思ってやがるっ!?」
 ………と。
 神牙の動きがぴたりと止まる。
 不敵というかどことなくヤバげな笑みを浮かべ、ハイドラントを睨み付けた。
「いいだろう……!いいだろう、俺様のハートに火が付いた!!今からあんたは俺様の
ライバルだ!!俺様はあんたを倒して、そのキグルミも!!想い人をも奪い取ってやる!」
 そのあまりにも勝手な発言にハイドはびびりまくった表情をする。
「ちょっと待てえ!!俺はお前なんぞライバルにしたくねえぞ!!第一!!」
 そのまま綾香の腕を取って、びしいっと神牙に叫ぶ。
「綾香は既に骨の髄まで俺の恋の奴隷よぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「くっ、良い自信だ!!それでこそ俺様のライバル!!」
「……ちょっと?」
 綾香はちょいちょいとハイドラントの手をつついたが、彼は全く気にせずに神牙を睨ん
でいる。
 そこにがらっと教室の扉が開き、オオサンショウウオのキグルミを着た少年が現れる!
「導師!!見て下さい、ついにこのレアなキグルミをゲットしました!!」
「葛田!?何でこんなバッドなタイミングに!?」
 と、少年の姿を見た神牙の顔が蒼白になる。
「オオサンショウウオだと!?馬鹿な、こんなレアなキグルミ使いをすら手下にしている
というのか、ハイドラント!?」
 その言葉を受け、葛田がえっへんと胸を反らす。
「ふっ、何を隠そう僕と導師は切っても切れない師弟の間柄なのです!!」
「ああああっ!?言わなくても良いことをっ!?」
 慌てるハイドラントを後目に、更に葛田は続けた。
「何せ僕は導師率いるダーク十三使徒の幹部なのですからね!!」
「ああああああああああ!?」
 ハイドラントの声が虚しく響く。
 神牙はやたらマジな顔をして、冷や汗を垂らした。
「ダーク十三使徒!?そうか、キグルミ使いを集めて世界悪のキグルミ計画を目指す団体
だというのだな!?そんな野望、『キグルミ番長』の名にかけて断じて見過ごすわけには
いかん!!」
 彼はハイドラントにびしっと指を突きつけると、大きな声で宣言した。
「俺様は今からあんた達の敵だ!!必ずやそのキグルミの野望、打ち砕いてみせる!!」
「ふ、望むところよ!!」
「望んでねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 葛田の首をぶんぶん締めながら、ハイドラントは泣き叫んだ。
 土気色に染まった葛田の首を握ったまま、神牙に向き直って叫ぶ。
「消火栓のキグルミが欲しければくれてやる、もう俺の前に出てこないでくれぇぇ!!
俺はすっかり奴隷状態の綾香さえ居てくれればキグルミなんていらねぇんだぁぁ!!」
 と、そこで今まで黙って堪えていた綾香の怒りが炸裂した。
「だぁぁぁぁぁれがアンタの奴隷なのよぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!!」
「がほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
 ハイドラントは綾香に蹴飛ばされ、葛田ともども窓から勢いよく吹っ飛ばされていく。
「ああっ!?逃げたかぁぁぁっ!?」
 神牙は悔しそうに叫んだ。
 かくして、ここに二度と元に戻らない深い誤解が生まれたのであった……。
「くそうっ、卑怯者め!!まあ取り合えず、綾香さんだけでもゲットしたぜっ!!」
 綾香の腰を抱いてガッツポーズを取る神牙に、綾香の拳がぷるぷると震える。

「アンタもかあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うぎょえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 きらりぃん。



―――この世の果て―――

 大気との摩擦熱による赤い炎に包まれながら、お星様となった神牙はハイドにしがみつ
いて叫んでいた。
「さあ、やられたからには俺様と共に怪獣墓場で眠りに着こうではないかぁぁぁ!!!」
「もぉいい加減にしてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーっ!!」

                 完

―おまけ―
 後日。

「と、ゆーわけで僕を仲間にしてくださーい。共にキグルミの野望を防ぎましょー」
 しきりにドアの向こうから響いてくる声を受けて、セリスは気味悪そうに岩下に訊いた。
「……なんです、あれ?」
「……なんか……エレキングが仲間にして欲しいらしい……」
「へ?」
 ドアの向こうではエレキングのキグルミを装着した神牙がひたすらジャッジの門を叩き
続けていた。
「開けて下さいよー。皆さんの分も用意してきたんですからー」

 彼の手にはメタルジョーやバルタン星人のキグルミがしっかりと握られていたという…。

                    今度こそ完

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 さて、リメイクバージョンです。
 僕の渾身の力を込めて、「第三話を自分なりに改良すればこうなる」をやってみました。
 

 この作業に取りかかる直前、HPでハイドさんの怒りの書き込みを読んで愕然。
 自分の行動が許せなかっただけで、別にハイドさんやびかさんを攻撃したわけでは…。
 と思いましたが、結果的にそういう事になるので深く謝罪します。
 これではただの毒吐きになりかねない、と思っての発言だったのですが……。
 実に配慮のない発言でした。面目次第もありません。


 そんなわけで、これは自分の神牙Lに対して嫌悪感を抱いたことに対する僕の答えです。
 僕の意見では、確かに神牙Lという形で失敗の具体的な見本を与えることは出来るけど
も、ただそれだけでは新人パッシングに繋がりかねないと思ったのです。
 ただの毒吐きでは自分にも読者にも不快感を与えるだけだと思ったのです。
 そこに葛田さんの「このままだと毒の吐き逃げ、新たな方向性を見つける何かが必要」
という有り難い一言を受け、自分はリメイクをすることにしました。
 僕は具体的な改良点と見本を示してこその毒吐きにしたいのです。
 読者にマイナス効果しか与えない可能性がある毒吐きではなく、誰がいつどこから見て
もプラス効果がある、まっとうなものにしたいのです。

 そういうわけでお願いです。
 ハイドさんbeakerさん、お怒りはごもっともですが敢えて僕の挑戦を受けて戴け
ませんか?
 僕は第一話と第二話を、あなた方自身の手で良作にリメイクしてみて戴きたいのです。
 それでこそ神牙Lは本当の意味での「見本」になると思います。
 駄作の模範を見せた、あなた方の考える改良手段を僕やみんなに見せて戴きたいのです。
 自分のSS使い生命を賭けてお願いします、どうかこの挑戦に乗って下さい。

 なお、この「挑戦」は神牙駄作Lを書こうとした他のSS使いにも向けています。
 是非ともみんなにこの挑戦を受けていただきたい。
 別に改良バージョンを出さなかったからと言って、どうなるわけでもありません。
『文句を言うだけ言って自分では具体的にどうすればいいかも考えられない作家』などと
 見下すつもりは僕には全くありません。
 無理に僕の挑戦に乗る必要などなく、そもそもこの挑戦自体受ける必要性を持たない
 のですから。
 ですが、駄作を良作に変えてみようと試みる、という行為は非常に修行になります。
 どのようなものが「駄作」で「良作」なのか。
 「駄作」をどうすれば「良作」に出来るのか。
 これを考えて、しかも自分の手で改良するというのはよい修行になるはずです。
 騙されたと思ってわざと挑戦に乗せられてみるのも一興ではないでしょうか。

 それではこれをもって感想掲示板・チャットにおける自分の発言の結論。
 及びHPにおけるハイドさん・やーみぃ君両氏への返答に返させて戴きたいです。
 僕は僕なりの責任を取りました。
 少なくとも自分はその積もりです。

 ではハイドラントさん・beakerさん、どうかお願いいたします。


 文責:風見 ひなた