『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』 第一話 〜Meeting Time〜 投稿者:霜月祐依


『それじゃ、どよめけ!  ミスLeaf学園コンテスト――――スタアァアトッ!!』

 壇上で司会を行っていた志保のかけ声と共に、「どよめけ!  ミスLeaf学園コンテスト」
「通称:どよコン」が開始された。と言っても、この場でいきなり始められたら先走った一部の
参加者等によって大会そのものがブチ壊しにされかねない。よって各参加者には、身を隠すなり
対策を練るなりの一時間の猶予期間が与えられた。

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 『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』 第一話 〜Meeting Time〜
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「よっしゃぁ〜、気合いが乗ってきたぞぉ!! まだかなまだかなぁ〜」
 自分の教室に戻り、装備を調えていたのは霜月祐依。本来ゴーストスイーパーとして
第一線で戦っている事もあり、戦闘用装備はそれなりに揃えている。机の上には神通棍・
破魔札といったオカルトアイテムが並べられている。
「ちょっと、ユーイ! あんたこの詠美ちゃん様をしっかり守りなさいよ!! 仮にも
私の『したぼく』なんですから」
 そう喰ってかかるのは、大庭詠美である。その脇には菅生誠治や橋本。長谷部彩の姿
もある。
「あぁ、俺それどころじゃないから」
 さらりと言ってのける霜月。
「お前、それちょっとひどくねー?」
「私も、そう思います」
 橋本の言葉に彩も同意する。
「じゃ、みんなお友達でいましょーってか? 来栖川だって参加してるし、芳賀だって
参加している。ラブ&ピースな大会じゃぁないんだぞ」
「ユーイが参加させたくせに…」
「乗せられて『この詠美ちゃん様が学園で一番のクィーンになるのよ』って豪語したの誰だよ」
「それと」
 と言って霜月は詠美に近寄ると、おもむろに詠美の着衣を脱がしにかかる。
「ちょ、ちょっといきなり何するのよ!!」
「こんな目立つマント羽織ってたら、襲ってくださいって言ってるモノだ」
「まぁ確かに」
 呟く橋本に向かって、霜月が詠美から剥ぎ取った深紅のマントを投げる。
 その下には普段の詠美が着用しているLeaf学園の制服と変わらない、大会参加者用の特注制服
で覆われていた。服の隙間からわずかながら着用している水着も覗かせている。
「俺がなるたけエッチな…もとい、邪魔な奴は狩ってくるから、なんとかなるだろ。それに、
いざという時のために、『そいつ』の使い方は教えたし」
 霜月が詠美の手に握られたソレを指さす。
「今、思いっきり嬉しそうに発言してましたよね」
 彩の鋭い指摘が入る。
「そういえば、ここ数日ドコ言ってたんだ?」
 誠治が思い出したかのように問いかける。
 ドヨコン直前の数日間、霜月は無断で学校を欠席していたのだ。
「ちょっと、使えそうなオカルアイテムを手に入れに…ね」
「だったら、第二購買部でいいじゃんかよ」
「坂下ったけか? 彼女も参加するしね。手のウチは見せたくなかったのよ」
 橋本の指摘に、霜月は答える。空手一筋とはいえ、長いこと第二購買部のアルバイトを続けて
いれば嫌でも商品知識は付く。それに妙なアイテムであればあるほど、店主であるbeakerが懇切
丁寧に解説する可能性が高い。それを恐れての行動であった。
「ま、参加者ったって自分が一番居心地のいい場所。つまり、よく出没する場所に居るだろうか
ら、何処が危険かとか予測はつくし」
 装備品で最後に残った左腕のアームガードを固定させながら話す霜月。ただ、強がっていても
頼れる存在がいなくなる寂しさが詠美から漂っているのは感じ取れる。
「心配するな、詠美はいつもの自信家で堂々としてりゃいいんだ」
「う、うん…」
 ちょっと乱暴に詠美の頭を撫でる。と、同時にどよコン開始を告げるチャイムの音が鳴り響いた。
「ウシ、行くか」



 −生徒指導部部室−

 ソワソワ…ソワソワ…

 生徒指導部の部室に戻ったディルクセンは、どよコン開始のチャイムが鳴り響いた直後から
落ち着きが無くなっていた。本人としては平静を装っているつもりなのだが、端から見ている
ととてもそうには見えない。
「まだ、何も起こらないのか…」
 思わず呟く。
 そう、どよコン開始のチャイムが鳴り響き、いまから血で血を洗う制服剥ぎデスマッチが起
こるかと思いきや、学園内は奇妙なまでに静まりかえっていた。
 普段の喧噪すら聞こえないのである。それがディルクセンの不安をかき立てるモノとなって
いた。
 では一体、彼の心配事とは何であろうか?
(ああ見えてもアイツ、無理するところがあるし…。工作部がついていると言ってもなぁ…)
 言わずもがなの想い人『保科智子』の事である。
(要注意人物であるYOSSYFRAMEに霜月、それに最近目立っている平坂蛮次がどう出るか)
 もちろん、保科の『純国産ゴイスバディ』を心配してのことなのだが。YOSSYや霜月は
ともかく、平坂蛮次はちゅるぺた萌えであって巨乳恐怖症であるから。仮に『お好きにどうぞ』
と保科の首にリボンが巻かれていても、ゴメンナサイと逃げ出すことを完全に失念している。

 コンコン

「ちょっと、兄さんいい?」
「べ、別に俺は保科がどうなろうと、ちっとも関係ないぞ、なぁ」
「はぁ?」
 悶々とした空間に入ってきたのは、松原美也であった。
「ちょっと、保科さんに確認して貰いたい資料があるんだけど」
「資料? なにもこんな時に…」
「何言ってるの、こんな時でも通常の職務はなんらかわりなくこなさなければならないのよ」
「確かに、そうだが…」
「ここの部分なんだけど、私より兄さんが説明したもらった方が解りやすいから」
 といって、美也から何ページかに渡る資料を受け取る。内容は風紀委員会の予算承認に関す
る内容であったため、確かに美也よりも自分が聞いてきた方が早い。
「で、これは急ぎなのか?」
「今日中に提出すればいいんだけど」
「そーかそーか、急ぎならしょうがないな。仕方がない気乗りがしないがちょっと聞きに行っ
てやるか」
 やたら『気乗りがしない』の部分を強調するディルクセン。彼は資料を手に取ると、足取り
も軽やかに生徒指導部を出ていった。
「予想以上にうまくいったわね…」
 美也は内心ほくそ笑むと、生徒指導部でも信頼のおけるメンバーに招集を掛けた。

 15分後、永井や鈴木と言った生徒指導部でも信頼の置ける数名が極秘に集められた。
「…とゆーわけで、このどよコンに介入するわ」
「どーゆーわけだ」
 すかさずつっこむ永井。
「どよコン優勝者は生徒会長代行の権利が与えられるのよ。労せずして私達が権力握れるのよ」
「…と言われましても、我々の中で優勝できそうな人はいませんしねぇ」
「本当は、広瀬が参加していたら『不幸な事故』で、制服どころか水着まで引き裂かれて、アイ
ドル生命まで絶っていたのに…」
「「おいおい」」
 さすがに、永井と鈴木のツッコミが入る。
「それにディルクセンの奴はどうした? この話知っているのか?」
「兄さんには秘密にしてあるわ。もし…」
「「もし?」」
「我々の中から生徒会長代行が生まれたら、男子生徒全員坊主。着用を認めるのはアフロの
み!!」
 いきなり、頭のネジが3本近くブッ飛んだ美也の発言に思わず目が点になる面々。
「これで、父の日に送るとかこつけてデパートの育毛剤コーナーで2時間も行ったり来たりす
るとか、リア○プが前頭部には効きにくいという報道にショックを受ける兄さんの姿を見なく
ても済むわ。兄さんの事だから、事前に知ったら驚かないだろうし。私たちの感謝の気持ちと
してビックリさせてあげたいのよ」
 ディルクセンじゃなくてもビックリしないし、十二分に嫌だと強烈に思った。が、今の美也
に口出しするのは危険なので止めることにした。
「でしたら、美也さんも参加してれば良かったのに」
 もっともな鈴木の言葉が、美也の思考を中断させる。美也はどよコンそのものにはエントリー
していなかったのだ。
「心配はいらないわ。今、陽平を暗黒生徒会に潜入してもらって、参加者が最後の一人になっ
た頃に私の名前を参加者名簿に加えて貰うように言ってあるわ。そして、私たちがその残った
一人を全力で潰せば…。もぅ完璧な計画よ!!」
 コバンザメ戦法より汚い戦法だと永井は思った。それに、陽平じゃ失敗するだろうとも。
が、やはり口に出すのは憚られた。
「そして…、生徒会長代行となった私は代行権限で橋本先輩を副会長に指名するの。そうすれ
ば夕日の沈む生徒会室で恋に落ちる二人。誰もが羨む理想のカップルの完成よ!!」
((そっちが本音かい!!))
「とにかく、わかったから作戦開始よ!!」
 お願いですから拒否させて下さいと言いたくても言えなかったのが、その場にいた残り全員
の共通の意志であった。



 −それよりちょっと前・ボードゲーム部部室−

「「「「「それ、本気ですかルミラ様!?」」」」」
 狭い部室にルミラに従う雀鬼達の声が響く。
「そ、ふつーにやったっていいけど、念には念を入れてね」
「しかし、そんな大それた真似、本当にできるんですか?」
 と、エビルの言葉。
「今からだと、間に合うか微妙ですわ」
 フランソワーズが冷静に分析する。
「本当は事前にやっておきたかったんだけど、ココにはそれに目敏い連中が多いからね」
「それなら、ルミラ様自ら施されたほうが短時間で強力なモノがつくれません?」
「私が自ら動くと、マル分かりなのよ。押さえているとはいえ、来栖川のお嬢さんから見れば、
巨大な魔力の固まりがどう動いているかだけで狙いがわかっちゃうし」
 と、メイフィアの言葉にすかさず返す。
「だから貴女達にお願いするの。参加して無くても貴女達が攻撃をしているわけじゃないから
ルール上は何も問題はないわ」
「…あの、私はどうしたらよいのでしょうか?」
 と、アレイが遠慮がちに聞いてくる。
「アレイも狙われる立場だからね。薔薇部にいれば別に怪しまれないわ。もしかしたら、私と
みんなとの連絡役をやって貰うことになるかとは思うけど」
「エビルとイビルはそれぞれ二カ所やって貰うから結構負担だけど、任せたわよ」
「「はいっ」」
「それじゃ私は、上海でもやってましょうかねぇ…」
 ルミラは中央の卓に麻雀牌を広げ、順番に並べていく。そして、残りの雀鬼達はめいめいの
場所に向かっていく。
「頼んだわよ…」



 −競技開始より30分後−

「どぉれに、しよっぅかなぁ…」
 女子更衣室の片隅で鏡の前にたって居るのは教師であり、薔薇部顧問の芳賀玲子である。
水着姿の彼女の周りには、たくさんのコスプレ衣装が散らばっている。
「ブルマーじゃ安直だし…、メイド服は昨日シタからなぁ」
 ちなみに、水着の上に身につける衣装はすべて競技用の特注素材のモノでなければならない。
そうでなければ、他の参加者と素材強度で差が出るならば不公平が生じるからだ。
 更に言えば、特注素材の生地で作った同一デザインの制服でなければならない。
 しかし彼女は事前に大量の同一素材による生地を購入し、一目で参加者の特注制服と判るよう
にすることを条件に衣装も全て自前で制作したのである。
「よし、これでいこっと」
 彼女が悩みに悩んだ末に選んだのは、とある格闘ゲームにあった主人公の衣装。短ラン
にバンダナのその姿は、数あるコスプレ衣装の中で一番気に入っているコスプレの一つで
あった。

「よし、それじゃいきますかっ」
 着替えが終わった後、玲子は更衣室から出るべくノブに手を掛ける。
 が、その瞬間。そのノブが勝手に回り、扉が外側に向かって開かれる。
「誰?」
 そこまで言って、玲子はしまったと思った。扉の隙間に覗かせる、反対側のノブを開いた
人物の半身。その頭部には大会参加者であることを示す鉢巻き――。

「キャァァァァァァァ!!」
 玲子の悲鳴が響き渡る中、その人物の腕が向かって伸びる―。

                                  to be Continued…。