『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』 第十五話 〜ランチ・テーブル〜 投稿者:霜月祐依


− 章前 −

 どよコン本戦が開始されて一時間あまり経過した頃。
 (名目上)T-str-reverseを探すべく放たれた悠朔の操る式神は、学園の一角での
ある光景を目にしていた。
(あれは? たしか、ボードゲーム部にいるエビルとかいったか…)
 目にした光景。それはエビルが直径1m程度の魔方陣を描いている姿だった。
(Tは一緒にいないようだが…何のつもりだ? 参加者のバンダナも見えないが)
 もう少し近づいてみようと高度を下げようとした瞬間。悠はえもいわれぬ恐怖を
感じ、大慌てで逆に高度を上げた。

「見つかった?」
「い、いや…」
 悠の様子の変化を感じ取ったひづきが問い掛ける。が、悠はそれを否定する。
(何なんだ、アレ…。『殺される』かと思った…)
 何度も死線を潜り抜けて来た悠であったが、あそこまで強烈に『死』のイメージを
叩き付けられたことは久しく記憶にない。

「あと1m降りてきたら、バッサリとやれたのになぁ…」
 地上で遠ざかる鷹(の式神)を見つめながらエビルが呟く。
 その手には多くの人々の命を刈り取ってきた『鎌』が妖しく煌いていた。

 一方、その頃。
 同じように空中から偵察を行っていた隼魔樹の使い魔『じぇりーず:ナンバー“8”』
も、別の場所で魔方陣の準備をしていたイビルを発見。もうちょっとで焼きクラゲに
なる所を逃げ延びていた。
 この後、悠の式神と隼のじぇりーずは同じ地点まで逃げてきてしまい、奇妙な対峙を
することになるのだが――。
 もしこの時、お互いの見た光景を情報交換していたら。雀鬼達が行っていた行動の意味が
判ったのかもしれない。

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   『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』 第十五話 〜ランチ・テーブル〜
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− 午前11時20分:暗躍生徒会室 −

「ふぅむ、思ったより長引きそうだな」
「そりゃそうでしょ。みんなタダでは転ばない人ばかりだし」
 大会を主催する暗躍生徒会の室内。ここは運営本部となっているだけあって、
逐一エントリーヒロインの状況が伝えられる。
 本戦開始から一時間あまり経過したが、脱落したと報告が入っているのは
大庭詠美・来栖川綾香・小出由美子・宮内レミィのわずか4名。
「エスケープゾーンを頻繁に利用している様子もないし…」
 学園内随所に設置されたモニターを眺めながら、Runeが呟く。
 最終的な優勝者が決定するまでには時間はかかると踏んでいたが、開始直後の混乱で
ある程度は振り落とされると踏んでいたので、この展開は彼らにとって以外だ。
「きっと、ナイトの皆さんが頑張っているからですよ」
 と、Runeと健やかの会話に月島瑠香が割り込んでくる。
「ふん、どーだか…」
 そこまで言って、Runeは腕時計を一瞥し時刻を確認する。
「そーいや『準備』は出来てるのか?」
「さっき、完了したって報告は入ってるよ。るーちゃん」
「じゃ瑠香、放送よろしく」
「はーい」


− 同時刻:SS不敗流の庵 −

「服の方は大丈夫か?」
「はい、たださっきの様に動いたら判りませんが…」
 愛と裏切りの妖星(待て)XY−MENとレミィ&広瀬ゆかりの攻撃を退けたは良い
ものの、柏木楓・西山英志のペアはある問題に直面していた。
 ゆかりが放った最初の攻撃は致命傷にはならなかったものの、楓の特注制服の肩口を
破られている。これが普通の制服なら問題はなかろうが、今回は大会用に特注された物
であり、強度はかなり劣る。
 当然のことながら、糸・当て布などによる補修は制服の強度を高めるための反則行為
とみなされる為に、針一本通すことも許されない。
 ここに座し、ダメージが累積されるばかりで良いものか。
 全校中に運営本部からの放送が響き渡ったのはそんな時だった。



 『ピンポンパンポーン
   どよコン運営本部よりお知らせします――』

「ん? なんだ一体…」
「ディルクセン先輩、問題に挑戦するの? せぇへんの? はっきりしぃやぁ」

 『――校内の至るところで熱い闘いが繰り広げられています。
   長期戦になることも予想され、参加された女子生徒の健康面を留意し――』

「私の精神面は考慮してくれなかったくせにー」
「もぅ脱落したんだからいいじゃない」

 『――生き残っている参加者の方々に対して、お食事を用意いたしました』

「あら、そうなの? 折角腕によりを掛けて作ろうと思っていたのに」
「「助かったぁ……」」

 『――食事は、学生食堂及び学園女子寮食堂にて提供し、
   学生食堂ではフランク長瀬氏。
   女子寮食堂では江藤結花さんが腕によりを掛けて、
   料理を作って貰えます――』

「ねっねっリアン、結花さんのホットケーキが食べられるよ!」
「そうですけど、それだと…」

 『――時間は、昼食が昼12時から1時まで。
   夕食が午後6時から7時まで。
   また、翌朝も続いた場合は朝の7時から8時までと――』

「私たちの充電もおこなえるのでしょうか」
(アルカリ乾電池だったりして…(--;)

 『――尚、現在開会式会場である体育館に設置されているモニターで
   参加選手の当落状況を確認できるようになっておりますが、
   こちらでも参加選手の当落状況が確認できるようになっております』

「へ? そうだったの、岡田」
「あんたルール良く読みなさいよ」
「岡田だって初めて知ったって顔してるじゃない」
「うるさいわねっ、開会式で説明しなかった長岡さんが悪いのよ。そーゆー事にしましょう」
「どうでもいいけど、おなか空いたなぁ…」

 『――状況が変わり次第、またお知らせを致します。
   それでは、皆様ご健闘をお祈りしております』

 その放送は一見運営本部からのプレゼントとも思われ、反応は様々であった。
 好意的に受け取る者も、数多くいた。
 だが、その放送を素直に聞く者ばかりでもなかった。


「うー、温泉子パンダさえいなければ、ゴージャスな料理を食べられたのに…」
「いや、そーでもないぞ」
「なんでよ」
 廊下でこの放送を聞いていた詠美の質問に、霜月は空き教室の黒板を使って
説明をする。
「いいか、学園全体があって学生食堂のある建物が一年生・リネット、二年生
棟・エディフィル、三年生棟・アズエル、教職員棟・リズエルに囲まれる形に
なってる。そして、女子寮は学園の外れのこの位置」
「ふみゅ?」
「つまりだ、学生食堂は誰がいたって文句は言えないから、何時・誰に襲われて
も文句はいえない。だが、利便性は文句無し。
 一方、女子寮は俺やYOSSYだって、侵入するには手こずるセキュリティシ
ステムがあるから、男子生徒は入ってこれない。襲われる確率は学生食堂に比べ
れば格段に少ない。
 だが、さっきも言ったように女子寮は学園の外れだから、道中は危険が伴う。
そこで移動に時間を掛けていると、『私はここにいます』とアピールしてるよう
なものだ。わかった?」
「うるさいわね、わかってるわよそれくらい!!」
 霜月は絶対に理解してない詠美を呆れつつ、黒板消しを手に取る。


「…それだけじゃない。問題は時間だ」
「そう、です…ね」
 岩下信の言葉に藍原瑞穂は間を置いて同意する。
「始まってまだ間がないから、昼食タイムにどれだけ集まるかは期待しない方が
いい。一食ぐらい抜いたって、さしたる問題はないからな。
 だが、夕食はどうなる?
 準備万端の人間も多いだろうが、全員がそうではあるまい。連続した緊張状態で
まともに食事を取らない人物が、朝まで保つほどこの大会は甘くない」
 そこまで言って、信は一息つく。
「心配しなくても、君は俺が全力をもって護ってみせる」
「信さん…」
 なんだかんだで、恋愛好感度急上昇中の信と瑞穂。その脇でSOSがワカメ涙を
流しながら、ハンカチを噛んでいることに全く気づいていなかった。


「しっかし、琴音ちゃんの安全を考えたら女子寮まで護衛するとして…」
「問題は、私達が中に入れないことなんですよね」
 そう呟くのは、琴音を護衛しているOLHと神凪遼刃。
「要するに、他のヒロインと鉢合わせになっちゃうんだよなぁ」
「中で何も起きないという保証はないですからね」
「「心配だぁ〜」」
 二人のため息がそろって漏れた。


「ま、私たちは人間の食事を取る必要はないんだけど…」
 自分しか居ない空間で、麻雀牌を指で弄んでいるのはルミラである。
「タダなんだし、ご馳走になろうかしら。もしかしたら私たちの『ご馳走』
にありつけるかも知れないし」
 瞬間、ルミラが掴んでいた麻雀牌が音も立てずに砂状に崩れ落ちる。
「ああっ、また麻雀牌ダメにしちゃった。ティーってば最近うるさいのよ
ねぇ…。部の備品壊すと」


「さて、どう出るかな? 諸君…」
「人が来なかったら来なかったで、余った料理は僕達で食べられるしね」

 ゴスッ

 Runeのツッコミが健やかを沈黙させる。
「そーゆーのじゃない!」
 が、直後Runeのお腹の虫が盛大に鳴り響き、説得力はあまりない。
「ま、せいぜい潰しあってくれたまえ…」

                         to be continued…

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っと、勝手にルールというか場所を追加してしまって申し訳ありません。
しかも、慣れない書き方したので文面が変(;_;)

食事タイムは、昔ウンナンの番組であった24時間耐久かくれんぼ
からヒントを得てます(殆どそのまんまですが)
あと、学園内施設配置についてはいい加減なので深く気にしない
で頂けるとありがたいです(^^;

食事休憩抜きで一晩中戦っても良いのですが、
みんながみんなそーもいかないだろうと。
それに、ヒロイン同士の一対一の駆け引きの場になれば幸いです。

この件に関してチャットで意見を下さったYOSSYFLAMEさん
ありがとうございます。m(..)m