『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』 第二十話 〜Woman A Go! Go! 〜 投稿者:霜月祐依


 『第129問。
  White Album 25トラック目に収録されているボーナストラックで
  歌詞中にToHeartトレーディングカードに関する会話がありますが、
  そのうち長岡志保は何枚目でしょうか?』

 工作部に特設された「クイズに勝って保科智子を好きにしちゃおう大会」会場。
 問題を読み上げるちびまるの声に続いて、衝立で仕切られた机に並んで腰掛ける一組
の男女。
 回答がすぐにわかったのか、二人とも黙ってマジックを走らせる。

「――時間です」

「「15枚目!!」」

 と、同時に自信たっぷりといった感じで解答が提示される。
 しばらく間をおいて――。

「二人とも正解です」

 ちびまるの正解を告げる声と共に、両者の机に設置されている正解ランプがともる。
 その様子を見守っているギャラリーからは溜息ともつかない声が漏れる。
「ディルクセン先輩やるやないの」
「ふん、安穏と日々を暮らしてきた連中と一緒にして貰いたくないものだな」
 衝立付きの机に座っている男女の、女性の方――。
 『チャンピオン 保科智子』は衝立越しに座っている男性に向かって声を掛ける。
 一方、『挑戦者 ディルクセン』は予選を全問正解で迎えての挑戦。
 周囲のギャラリーは審判・運営・その他を請け負っている工作部の面々以外は、全て
予選で敗れ去っている連中だ。
 決勝戦はチャンピオンと挑戦者との一騎打ちで始まり、全10問のウチ多く正解した
方が優勝というルールだ。
 だが、知能指数で言えば学園内でも5本の指に入るこの両名。
 10問全て正解で決着が付かず、どちらかが不正解になるまでのサドンデスマッチと
なった。

「はん、でもディルクセン先輩がこんなに血眼になって、クイズに挑戦する人やとは思
わへんかったわ」
「なななっ、ち、ちがっ、俺はだなぁ、こんな馬鹿馬鹿しい大会で保科に辱めを受けさ
せる訳には、風紀上としても問題があってだなぁ…」
 真っ赤になって反論するディルクセンに対してギャラリーからは『むっつりー』とか
『正直に言え〜』と言った野次が飛ぶ。
 が、そんな茶々もちびまるの次の問題を読み上げる声によって中断される。





          『第130問…
            お互いのぱんつの色を答えなさい』






                 「「はい?」」



 たっぷり固まってから、声を揃えて聞き返す智子とディルクセン。

「はいっ、そー書いてありますから。この場合だと保科さんがディルクセンさんの。
ディルクセンさんが保科さんのになりますね」

 何の疑問も保たず、元気良く答えるちびまる。
「ちょ、ちよっと待ったってや! なんでそんな問題があるの!?」
「そうだ、そもそもクイズではないだろう!!」
「そう言われましても…」
 問題カードに書かれていたことを素直に読み上げただけなのに、解答者から反論を喰
らってすこし泣きそうになるちびまる。
 ちなみに問題は工作部が用意はしていたのだが、参加人数の多さとディルクセンの粘
りによって足りなくなってしまった。
 そこで、急遽暗躍生徒会が『学園祭 楓祭』の際に企画したが、都合で中止に追い込
まれたクイズ大会の問題を借り受けていた。
 よって工作部の面々が全ての問題と答えを知っているわけではない。

「全ての問題はチェックしたはずなのに…」
「しょーもない問題の一つや二つは覚悟したけどよりによって」
 頭を抱える美加香と誠治。
 暗躍生徒会から借り受ける以上そういった事態は覚悟はしていたが、膨大な問題を少
人数でチェックした事による人為的ミスで紛れ込んだ問題が、よりによっているのであ
る。

 智子の水着姿が拝めるかもと残ったは良いものの、問題の難易度の高さにクイズを考
える楽しみを奪われていたギャラリーにとって、予想外の問題にやんややんやの大歓声。
 ギャラリーに向かって非難の声を浴びせるディルクセンとは対象に、顔を伏せていた
智子であったが。
 意を決した顔で面を上げると

「おもしろいやないの。逆を言えばディルクセン先輩をこの場で曝し者にして確認でき
るやろうし。ウチが正解して、あんたらに見せたくないもの見せたるわ」

「ほ、ホンキか…」
 そこまで言って、ディルクセンは智子の目を見る。
 そして智子が酔狂でも自棄になったのでもなく、膠着した展開に勝負を付けたがって
いることを理解した。

「では、よろしいでしょうか? それではお答え下さい」

 両者とも納得したとみた誠治はちびまるに再開するように指示を出した。
 ちびまるの声に続いてシンキングタイムのメロディーが流れる。

(ディルクセン先輩はさすがにブリーフ派って事は無いだろうから…。
 それでも、トランクスに逃げたくないとか思っているんやろうか)

 今までのディルクセンの性格から真剣に推察を始める智子。
 一方、ディルクセンはというと――。

(保科の場合はやはり白なんだろうか…。
 だが、案外かわいいピンクとか水色とか。
 まてよ、今は水着だから無色って事になるのか!?)

 妄想がいけない方向に突入してしまい、やや前屈みになる年頃の男の子(爆)

 が、無情にもシンキングタイムのメロディーが終わりを告げている。

「ええいっ、ままょ!!」
 ディルクセンは無我夢中でマジックを取ると、頭の中に唯一残った映像を思い出して
その色名を記入する。
 書き終えた瞬間。

「時間です」

 ちびまるがシンキングタイム終了を告げた。
 両者の頭に残った色は一体――?



 −−−−−−−−−−−−−−−



「リアン急いで!!」
「うん!」

 一方、学園上空を必死に飛び回っているのはスフィーとリアンの両名。
 どよこん開始してから時間を追う毎に上昇するマナ濃度により、スフィーは大ピンチ
に陥っていた。
 スフィーの場合、自身のマナキャパシティがスフィーの身体サイズに直結する。
 よって、マナ濃度が濃いと言うことはより多くの魔法が使える為に、スフィーにとっ
ては有利なはずだ。
 今回は、襲撃者の総数を減らす為にはマナキャパシティーが最も充実している大人形
態(Lv.4)よりも、最もマナキャパシティーの少ない小学生形態(Lv.1)の方が有利と
判断した。
 だが、それが完全に裏目に出た。
 付近一帯のマナ濃度の上昇により、小学生形態のスフィーに否が応でもマナが流れ込
んできているのである。
 マナが充実して、キャパシティーが一定量を超えた場合、スフィーは小学生形態(Lv.1)
から中学生形態(Lv.2)へ。更に高校生形態(Lv.3)、大人形態(Lv.4)へと身体サイ
ズが大きく変化してしまう。
 子供用の特注制服+特注水着を着込んでいるスフィーが大きくなると言うことは、
まぁつまり、「ふしぎなメ○モ」の大人用キャンディーを舐めた感じになるわけだ。

「だんだん、身体に流れ込んでいるマナの量が増えている。近いわ!」
 その瞬間、スフィーの身体が大きくはねる。
「姉さん!!」

「まじかるさんだー! まじかるさんだー!! まじかるさんだー!!!」

 慌てて、四方八方に向かって魔法を連発する。
「な、なんとか大丈夫…。でも、次に来たらヤバイかも」
「姉さん…」
 心配そうに見つめるリアンであったが、状況はそうも言ってられない。

「で、何がヤバイって?」

 スフィーが魔術を放った方向からの突然の声に、慌てて振り向く二人。
そこには、魔物の槍を携えたイビルが立っていた。
「あなたは、確か魔族の…」
「なんの用よ!!」
 いきがるスフィーを余所に、イビルは魔物の槍をふたりに向かって突きつける。
「いきなり雷撃を放つなんていい度胸してるじゃないか。この槍が避雷針代わりに受け
てくれなかったら、真っ黒焦げになっていたぜ」
 よく見ると、イビル自慢の槍が焦げている。
「不幸な事故って事で納得しなさいよ!」
「できるかっ!!」
「あの私たちは事情があって、この近くにマナを増加させる原因の魔法陣があると思う
ので、それを探しているのですが…」
 激しい運動をしてスフィーの制服が破られたらたまらないと、戦闘を避けようとリア
ンが事情を説明する。
 が、その瞬間にイビルの顔つきが変わる。
「その魔法陣をどうする気だい?」
「決まってんでしょ、そんな邪魔な奴は破壊するのよ。は・か・い」
 嫌みったらしく、わざわざ言い直すスフィー。
「じゃぁ、あんたらは俺の敵になるんだよなぁ…」
 そう言って、イビルは懐から鉢巻きを取り出して頭に巻く。
「ルミラ様は、邪魔する奴が居たら容赦なくやっていいって言ってたし――」
「ルミラ様って、あのルミラ=ディ=デュラル!?」
「え、誰それ?」
 小学生形態と言うことでオツムも小学生並(元からだという意見もあるが)の
スフィーの質問に青くなるリアンと、こめかみに血管が浮かび上がるイビル。
「魔界貴族のルミラ=ディ=デュラルですよ!!  今は理由あって、人間界で暮らして
いるようですけど、魔界ではかなり上位にいる魔族ですよ」
「良く知ってるじゃん。じゃぁ、その配下のイビル様も知っているよな」


「そこまでは…」


 即答するリアンに、イビルの時間が止まる。
「上等じゃないか…。あんたらの制服から何から、全部消し炭にしてやるよ」
 5m程の距離を置いて互いに対峙する。
 が、乱入者が意外な方向から現れた。

「ちゅーるぅーぺぇたぁーーー!!」

「ひぃっ」
「見つかった!」
 乱入者の姿を確認し、息を呑むリアンとスフィー。
「ぐふふふ…。
 おいどんのちゅるぺたがどこかと探していたら、天からビビビッと痺れるように
閃いてのぅ…」
 その人平坂蛮次は、こぼれ落ちる涎をふき取ろうともせず恍惚の表情で見つめる。
 よく見ると制服が焦げているから、先程スフィーが放った「まじかるさんだー」が
直撃したのであろう。
「なんだお前…」
 気勢を削がれるイビル。
「ふむ、ちゅるぺた幼女を陵辱するのもいいが、こっちのちゅるぺたも捨てがたいのぅ」
 値定めするような蛮次の視線に思わず一歩下がるイビル。
「よくわからんが、貴様もやっつけた方がいいみたいだな…」

「スフィー姉さん…」
「どっちも私たちの敵みたいだから、やるしかないわよ」

「両手にちゅるぺた、最高じゃぁ〜!!」



 その情景は、はるか遠くに立っている人物の視界にも収まっていた。
「あらら、あの娘って確かグエンディーナの…。イビルもやっかいなのに見つかったわ
ね」
 教職員棟リズエルの屋上にやってきたルミラの視界には、期せずして勃発した三つ巴
の睨み合いが映っていた。
「横にいるゴツイのは、見たこと無いけど…。なんだか危険そうね」
 ルミラの推測はあながち間違ってない。
「このままだと、他の誰とも『存在』に気付かれないとも限らないし…」

 その直後、屋上へと続く扉が乱暴に開かれる。
「ルミラ様こちらにいらっしゃったんですかぁ…」
「あら、アレイじゃない」
「部室にもいらっしゃらなかったので探しました」
「で、どうしたの?」
「はい、フランソワーズさんとメイフィアさんの準備も終わりました」
「そう、ありがと。
 んじゃ、フランソワーズとメイフィアは一端ここに連れてきて。あと、エビルは
イビルの所に連れて行ってあげて」
「はいっ、わかりました」
 勢いよく返事をすると、再び階段を駆け下りていくアレイ。

「さてと…」
 ルミラは溜息を一つつくと、扉の脇――。
 誰もいないはずの空間に向かって声を掛ける。
「あの娘無鉄砲なところがあるから、十分サポートしてあげるのよ」
「いやはや、気付いておられましたか…」
 誰もいない壁であるはずの所から、ゆっくりと人影が浮かび上がる。
 学園きっての幻術師、ギャラである。
「アレイさんは、我々薔薇部が覇権を握るためには必要な人物。誠心誠意サポートいた
します」
「わかったから、ここで姑息なこと考える前にとっとと行きなさいな」
 ルミラはギャラに向かって、片手で追いやる動作をする。
「了解いたしました。それにしても手厳しいですな」
 それだけ言うと、ギャラの姿が先ほどと同じようにゆっくりと空間に溶けていく。
「大丈夫かしら…」
 ルミラはギャラの気配が消えたことを確認すると、向き直り空間に向かって片手を
突き出す。
「さて、そろそろ始めますか」

                              to be continued…

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 さて、委員長vsディルクセンの戦いはどーなる!?
 残された時間の少ないスフィ&リアンvsイビルvs平坂蛮次の結末は!?
 影ながらアレイをサポートするギャラの真意は?
 そして、ルミラは一体何をしようとしているのか!?

 つーわけで、誰も剥かずに伏線張りまくって次の人どうぞ〜(爆)