「すっかり遅くなっちゃったな…」 OLHは凍えるような寒さに白い息を弾ませつつ家路を急ぐ。 今日は、クリスマス・イブ。 子供達にとって、 家族にとって、 恋人達にとって特別な一日となる。 時間は既にかなり遅い。 警備保障でのバイトがいつにも増して長引いた。 今日はティーナと笛音の三人でパーティーをするつもりなのに。 もちろん「早く帰ってきてね」と念を押されていたし、自分だってそのつもりだった のだが。 「ちょっと走るか…」 残念ながら、天気予報ではホワイトクリスマスにはならないだろうと言っていた。 が、路面は凍っているし、降ってきてもおかしくないぐらいに寒い。 両手に抱えたクリスマスケーキと二人のために用意したクリスマスプレゼントを 落とさないように気をつけながら、100mちょっとの距離を掛けだした。 「たっだいま〜。ティーナに笛音、遅くなってごめんな…」 OLHはそこまで言って、思わず首を傾げる。 いつもならば先を争うようにと、リビングから飛び出してきてOLHに抱きついてく るのだが、それがない。 「お〜ぃ、帰ってきたよ〜」 再度呼びかけてみるものの、反応がない。 これは二人をホンキで怒らせてしまったかなと、心の中で冷や汗をかく。 (もう寝ちゃったのかな) OLHは二人にどんな言い訳をしようかと考えつつリビングに向かう。 気配感じられるから、とりあえず起きているようだ。 「笛音にティー…なぁ!?」 ボトリ たっぷり硬直したOLHの両手から、クリスマスケーキとプレゼントの包みが仲良く 自由落下の音を立てる。と、同時に鳴り響くクラッカーの音。 「「メリークリスマス、お兄ちゃん」」 「い、いや、てぃ、ティーナに、ふ、笛音に、そ、その、格好は」 動揺の余り、見事に呂律の回らないOLH。 クラッカーを鳴らしたティーナの格好はサンタクロース。 …と言っても、上着はノースリーブで肩は露出してるは、下はミニスカ。 正座の状態から膝から下を「ハ」の字に広げて、その間をちょこんとお尻を埋める。 ティーナの前に横たわっている笛音に至っては、 スクール水着の上から生クリームでデコレーションされていて、 おへそと両胸には真っ赤なイチゴ。 ティーナはともかくとして、ちょっと恥じらい気味の笛音の表情はOLHに 『つうこんのいちげき』を与える。 いつの間にかティーナは胸元にワイングラスを差して、器用にそこへシャンパンを 注ぐ。 「「どちらになさいます? お兄ちゃん」」 −−−で、翌日 ズドドドド、バタァン!! 教室の扉が乱暴に開け放たれる。 中の人間が一斉にそちらを注視する。 目的の人物がその中にいるのを認めると、ありったけの力を込めて―― 「ダークフレア! ダークウインドォ!! ダークトルネードォォォッッ!!!」 「ってーな、いきなりなにをするんだOLH!!」 「霜月、貴様ァ!」 OLHは教室の端までフッ飛ばされた霜月の胸ぐらを掴むと、鬼のような形相で 睨み付ける。 「お前、ティーナと笛音に何を吹き込んだぁ!!」 「なんの話だ一体」 「とぼけるな! 二人にあんな事吹き込んだのは貴様しかおらん!!」 「ティーナちゃんと笛音ちゃんがどーかしたのか?」 「昨日だなぁ…」 「はっきりしないなぁ。 昨日ってクリスマス・イブだろ? ん? そーいえば、ちっょと前に――」 −回想− 「「ねーねー、霜月お兄ちゃん」」 「どーしたの、二人とも」 「「あのね、クリスマスイブに男の人はどういう事してもらえると嬉しいかなぁ」 「それはだね…」 −回想終わり− 「――って聞かれたことがあって」 胸ぐらを掴むOLHの力が一層強まる。 「正直に、俺だったらどんな事して欲しいかって答えただけだけど?」 ズゴスッ OLHの空いた左手が流れるような動作で霜月の脳天を殴りつける。 「やはり貴様が原因か!」 「二人とも、真に受けてホントにしたの?」 コクコク 「こんなセリフも言って貰えたら嬉しいってのも実行したの?」 コクコクコク 「…で、喰ったのか?」 コクコ―― 「何故、そこで赤くなる?」 続かない(笑)