ずぅりずり… 重たい足を引きずりながら廊下を歩くのはへーのき=つかさ。 次の授業がグラウンドでの体育であるため、移動の最中である。 「はぁ〜」 今日何度目かのため息をつくへーのき。 彼の不調の原因はアルバイトの警備保障の任務がいつも以上にハードだった為だ。 アルバイトとは言え、実質的な警備保障のトップに立つへーのきの主な仕事は 『苦情処理』 このただ一点に尽きる。 主たる苦情の内容はDセリオによる校舎の破壊+α。 校舎の破壊自体はいつの間にか直っていたりするのだが、やっぱり被害を蒙った 各方面からの苦情は殺到する。 ついでに言うと大会直前の剣道部員を全員ノシしてしまって、最後の大会となるはず だった三年生の青春をあっさり棒に振ったDガーネットとか。 警備中に『女体が俺を呼んでいる』(本人談)と女子寮に侵入を図って、捕らえられ た霜月祐依なんかもへーのきにとっては苦痛のタネだったりする。 昨日は例に挙げた問題行動が全てセットでへーのきに降りかかって来た訳で、 結局のところ殆ど寝てなかったりする。 話を戻そう。 前の授業も精神的疲労と睡魔でフラフラだった為、気がついたらクラスのみんなは へーのきを置いて移動してしまった。 ここで授業中にキッチリ睡眠をとればいいものの、根が真面目なへーのきにそんな 選択肢は無い。 つーか、前時限は全てにおいて妥協を許さないシンディ宮内の英語だったりするの だから。 ――ずるぅり、ずるり。 先ほどより一層重たくなる足取り。 階段の踊り場でふらつきそうになるのを、手すりを掴んでやっとこらえる。 その瞬間――。 ドッゴォォォォォンンン!! 耳に届くのは爆音。 クラブハウス棟の方角だ。 ピピピピッッッ!! ポケットの中で鳴り響く電子アラーム。 警備保障の人間が持っている緊急連絡用のトランシーバーなのだが、 これが鳴る=(イコール)やったのはDセリオという方程式が成り立つ。 空いた手でポケットのトランシーバーに手をやると同時に、まだ終わってない昨日の 苦情処理を思い出す。 瞬間、腹部に感じる抉るような強烈な痛み。 へーのきは思わず手すりを掴んでいた手を胸にやる。 「―――――!?」 拠り所を失ったへーのきの肉体は、受け身も取れず階段の下へまっ逆さま――。 授業開始のチャイムを聞きながら意識が闇に沈んだ。 ちなみに発見されたのは次の休み時間になってからであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 私的Lメモ「来栖川警備保障勤務簿その4 〜ナースでQ〜」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「「「「………え〜〜〜っっっっと?」」」」 OLH・T-star-reverse・榊・霜月のアルバイト4人は、警備保障につくなり 内部の状況にたっぷりと硬直してからやっと声を絞り出した。 なんだかんだで警備保障のフロアー内は整理整頓がされていて綺麗なのだが、 まるで強盗にでもやられたかのような惨状である。 「森川先生!?」 ティーが中央にいた森川由綺に声をかける。 警備保障で一番の年長者(実際にはティーの方が遥に年上だが)にも関わらず、 見るからにパニクっていた由綺は4人の姿を認めるなり半泣きで近づいてくる。 「あのねっ、あのねっ、セリオちゃんがねっ、がーで、わぁーで、どっかぁーんでね、 ガーネットちゃんもね、止めようとしてね、振り回してね、マルチちゃんもね、 絡まっちゃってね、ボックスちゃんがね、走り回っててねっ――」 「…さっぱりわからん」 霜月の意見に皆が頷く。 「まずは落ち着いて下さい」 ティーかなんとか落ち着けようとする。 「でさー、へーのきはどうしたんだ? あいつなら何か事情を知ってるんじゃないの?」 周囲を見回しながら、OLHが当然の疑問を口にする。 「やれやれ、指揮系統がリタイヤするだけでこうも醜態を見せ付けてくれるとはな。 学園随一と呼ばれた治安組織も底が知れてる」 それは突然の訪問者を告げる声でもあった。 「「「ディルクセン!」」」 「単身我々に喧嘩を売りに来たわけでもなさそうですが、どういったご用件で?」 さすがにムッとした口調でティーが問い掛ける。 「折角、へーのきの事をわざわざ伝えに来てやったのにご挨拶だな」 「生徒指導部がへーのき君に何かしたとでもいうのか?」 神通根を構え、臨戦体制に入る霜月。 「勘違いするな、今日は保険委員としてだ」 やれやれといった表情でメガネのフレームに手をやる。 「へーのきなら、本日第3時限放課中に2階階段踊り場で倒れていたのを保護。 保健室に連れて行った」 「「「「は?」」」」 「貴様らの耳は節穴か? へーのきさが階段の踊り場の下で倒れていただけだ」 「おいおいちょっと待て待て、へーのきに何があったんだ」 OLHがテディルクセンに詰め寄る。 「どうやら階段から落ちた時に腕をポッキリと折ったみたいだな。 あと胃に大穴も開いているのが発見された」 「「「「……………」」」」 絶句するアルバイト4名とオロオロ具合が悪化する由綺。 一方のディルクセンは『胃に大穴』というあたりで、妙に同情するような口調で あるのが印象に残る。 「で、へーのきの奴はまだ保健室か?」 「あれほどの重症人を保健室に置いて置けるか。病院――と言いたいところだが、 奴は仮眠館にいる」 榊の言葉を即座に否定するディルクセン。 更に、ディルクセンの口から関係なさそうな単語が飛び出す。 「なんで仮眠館なんだ?」 「近隣の病院は全て本学の生徒と判明した瞬間に断ってきたそうだ。 それに、どうやら精神的なストレスが原因らしいからな。静養も兼ねられるのは 仮眠館以外に無かろう」 呆れたような口ぶりで話すディルクセン。 要件は伝えたとばかりに、『少しは上に立つ者の苦労もわかってやれ』とのセリフを 残し去っていった。 「で、どうするよ?」 「へーのきの見舞いに行かないと」 「それはそれとして、フロアー内がなんでこんなになったのか説明がついてないぞ」 「推測でしかないのですが――」 ティーがフロアー内に踏み入り、書類やら何やらが積み重なって出来た小山を かきわけてみる。そこにはDシリーズが折り重なるようにダウンしていた。 「――ウゴケマセン、ウゴケマセン」 Dボックスだけは無事のようだが。 「――つまりへーのきさんの事故を知ったDセリオさんが、動揺のあまりにこうなった んでしょうね」 気絶状態にあるDセリオ・Dマルチ・Dガーネットを見て呟いた。 「…だろーな」 「ついでに言うと、ここが原型を留めている事は奇跡なんだろうね」 霜月とOLHが感想を漏らした。 「とりあえず――だ」 散らかった部屋は、その後やって来たお子様組と共に片付けた。 Dシリーズは工作部に協力してもらって、武装も外してもらった。 未だに落ち着かない様子のDセリオはともかくとして、平穏は保たれたのである。 「へーのきの見舞いに行くのはいいんだが――」 この場を仕切るOLHが続ける。 「そっとしてやるのが一番だから、みんなで押しかけるのは勘弁してくれとの事らしい」 へーのきの苦労は表には出さないものの、みんなわかっていた事だから心配には変わ りが無い。だが、事情を聞いた仮眠館の主である幻八からも見舞いは少数で、静養に勤 めた方がいいのではと言われた。 いつもの騒ぎで、自分の仮眠館を壊されたらたまったものではないと言うホンネがそ こかしこに現れているのだが。 「誰かが代表で見舞いというか看病してやって、様子を見てからみんなでいこうか」 「――誰かとは?」 Dセリオが言った途端に、残る全員の視線が自分に集中した。 「――わ、私ですか!?」 「Dセリねーちゃん、へーのきお兄ちゃんが心配なんでしょ?」 「へーのきお兄ちゃんもきっと喜ぶよ」 こうティーナと笛音に言われてしまえば、更にうろたえてしまうばかり。 「――わ、私は別に、職務上のパートナーとして無断欠勤されるのはですねぇ…」 「でもさー」 切り出したのは榊。 「Dセリオさんの、そのアガリ症をなんとかしないとへーのきの退院って遅くなる んじゃあ?」 Dセリオも普段重火器でぶっ放したりとかするのは平気なくせに、いざ戦闘以外で 異性と関わったりするのはてんで駄目。 聞けばへーのきは腕をギプスで固定されて、自分で食事するのもままならない。 「へーのきさんも意識すると逆効果でしょうしね」 ティーの言葉に、一転して心配そうな表情を見せる。 「要はへーのき君がDセリオだって気が付かれなければ、後はDセリオが頑張れば いい事なんだし」 霜月が我に妙案ありとの表情を見せる。 「ちょっと考えがあるんだ」 「う……、ん………」 ゆっくりと瞼を開く。 半開きの眼から飛び込んでくる視界は、ピントがぼやけているとはいえ真っ白な 天井が目に映る。 少しずつ、全身の感覚が現状を把握しようと行動を開始する。 「ここは…?」 まずは視覚。 なんどか瞬きをした後、眼のピントが合わせられる。 記憶を辿る。 確か最後に見た光景は急速に近づいていく階段の踊り場であったはずだ。 だが、目に映る真っ白い天井。 次に聴覚。 喧騒とチャイムの音を捉えていたと記憶していたはずだが、今は時折聞こえる 風の音のみ。 嗅覚。特に変わるものでもない。 味覚。少し喉が渇くが、大した事ではない。 最後に触覚。 自分の全身を何か柔らかい物で覆われているようだ。 「布団?」 少し身体を動かそうと、脳から神経に指令が行き渡――ろうとした瞬間、 右腕の痛覚が悲鳴をあげた。 「痛ッ!」 右腕の自由が利かない。 何かで固定されているようだ。そして右足も同じように固定されているようで 動かせない。 自分が寝かされているらしいというのはわかった。 首を左右に振って、もう少し視覚に情報を与えてみる。 小さな一室にはこのベットにテーブル・イス・開け放たれた窓に揺れるカーテン。 殺風景とは言わないが、どこかシンプルな部屋だ。 コンコン 「――あら、お目覚めになられたのですか?」 「セ、リオ…さん?」 室内に入ってきた人物を見て、弱々しい声で尋ねる。 「――ずっと眠られたままなので少々心配しましたが、お気づきになられて良かったです」 「えっと、君は…」 最初は自分が一番身近にいてくれるあのセリオかと思ったが、橙色の神を纏め上げて うなじを露わにし、ナースの衣装を身にまとっているのを見て違うセリオだと思った。 少なくとも、彼女ならこんな衣装は恥ずかしがって絶対に着ない。 「――申し遅れました。 私、来栖川重工科学技術病院から派遣されました救急看護型HM 『HM−13Q セリオ』と申します。皆様からは救セリと呼ばれております。」 「……出だしはうまい事いってるじゃん」 所変わって、来栖川警備保障メインモニター前。 モニターに映される映像を見て、霜月が満足げに呟いた。 「あんなウソ臭い病院名が出たときはバレたかと思ったけどな」 「Dセリオもなかなかどうしてうまい演技じゃん」 これはOLHと、榊の両名。 「最初君達から依頼を受けたときはビックリしたけど」 と、本来は警備保障の人間ではない菅生誠治が続ける。 「Dセリオがちゃんと看護できるようにカスタマイズパーツを作ってくれって、 性格的な事もあるからうまく制御出来るかなって思ったけどね」 セリオタイプである以上、Dセリオが看護を行う為の情報はサテライトサービスから もってくるだけでいい。 だが、Dセリオにはニトログリセリン並に危険な破壊衝動と、極度の恥ずかしがり屋 さんな少女マンガチックな感情を持ち合わせている。 理性を軽く凌駕してしまいかねないこの感情が、Dセリオがへーのきの看護を行う上で 一番のネックとなった。 そこで、工作部に依頼してこれらの感情を逆に慈愛の感情へと変換させる装置を作成。 Dセリオもとい、救セリが被っているナースキャップに搭載されていた。 で、心配な警備保障の面々はデバガ…暖かく見守っている次第である。 「ここ仮眠館だったのか、どーりで病院ッポくない部屋だなぁって」 「――静かな環境でゆっくり静養なさった方が良いと、先生のご判断でして」 「病院だと確かに落ち着かないから…イタタッ!」 仮眠館に担ぎこまれていたへーのきは救セリの説明に苦笑いしてクセで頭を掻こう と、ギプスで固定された右腕を動かし激痛に襲われる。 「――じっとしていないと、それに包帯も解けちゃって…」 階段から落ちただけかと思ったら、受け身が全く取れなかった事によるダメージは 事の他大きかったらしく、頭をはじめとして至るところに包帯が巻かれていた。 今の動きで頭に巻かれていた包帯が解け、へーのきの視界を遮る。 「――巻き直しますので、じっとしててくださいね…」 救セリは、へーのきの眼前で包帯をゆっくりと巻きなおす。 へーのきにしてみれば均整の取れた救セリの胸元が目の前にあるので、赤くなった 自分を悟られまいと必死になる。 「そう言えばどこで学習させたんだ、アレ?」 「学習って?」 「感情変換回路は載せたけど、元々Dセリオが有り余っているパワーの加減を調整って のは時間が無くてやってないんだが――」 モニターで様子を眺めていた誠治が疑問を口にする。 「破壊衝動は押さえ込んでる。 サテライトサービスによって知識もある。 だけど100の知識は1つの経験には適わない、経験による学習を積ませなければ ああはうまくいかないハズなんだが」 「あ〜、それね。いきなりってのは失敗するだろうから、経験というか、練習というか 実験台というか……」 途端に歯切れが悪くなる霜月。 「そこいら辺の奴じゃ、包帯や注射がそのまま凶器になって学習にならないってのは わかっていたから、多少の無茶をしても平気で、尚且つ力加減を図るのに最適な奴が っていうと簡単に絞り込まれるわけでさ…」 頬を掻きながら、冷や汗まで流す霜月。 「ちょうど仮眠館の隣の部屋に、千鶴先生の料理を食べた後で看護したほーがいい奴が 寝ててさぁ」 「………………」 「見舞いの品ってエンジンオイルでいーかな?」 「2スト用と4スト用とどっちにしよーか?」 「さぁー……」 シャリ、シャリ… 「――リンゴ剥けましたよ」 「あ、ありがとう」 フー、フー 「――これで熱くないと思います。あーんしてもらえますか?」 「あ、あ〜ん」 パクッ 「――お味はどうですか?」 「美味しいよ」 「きゅ、救セリさん、いいよっ! それぐらい大丈夫だから!」 「――ですが、今のへーのきさんでは排泄が困難…」 「だも、大丈夫なんだって!」 「――すぐに終わりますから」 「ちょっとし瓶だけは勘弁…」 へーのきの驚異的な回復力と、救セリの献身的な介護によってみるみる状況は 良くなっていった。 それから暫く経ったある日の事。 「――それでは、いって参ります」 Dセリオがへーのき入院の日から日課となった救セリへと変わる時。 「もーすぐ、へーのきも復帰出来るんだろ?」 「――……ええ」 OLHの言葉にも生返事のまま仮眠館へと向かう救セリ。 「そーいや、へーのきが帰ってくるのに元気無いよなぁ〜」 「うふふっ」 そんなOLHの呟きを傍らで聞いていた由綺が含み笑いをする。 「なんだよ」 「Dセリオちゃんも悩み多き年頃なんですよ」 「悩みねぇ……」 コンコン 「はい、どーぞ」 「――へーのきさん、ゴキゲンはいかがですか?」 「うん、もうかなり平気かな。明日にはこのギプスも取れるんでしょ?」 「――ええ、へーのきさんどちらへ?」 一旦床に視線を落とした救セリだが、へーのきが傍らに立てかけていた松葉杖を 手にしようとしているのを見て駆け寄る。 「外で風に当たりたいんだ」 「――大丈夫ですか?」 「うん、肩貸してもらっちゃってゴメンね」 「――お気になさらないでください。それよりもしっかりと捕まってて下さいね」 へーのきは救セリに肩を貸して貰い、仮眠館の屋上に来ていた。 学園の見える方向の手すりにもたれ掛かると、そのままじっと学園を眺めて 黙り込んだ。 「――何が見えますか?」 「……うん、いつもの平和な学校…かな?」 「――平和な…ですか?」 「いつもはトラブルを起こしたり、そこらかしこで校舎を爆破したり、 いっつも苦労掛けられっ放しだけどさ」 「――………」 「こうして俺がここにいる間もずっと心配だったんだ。 学校は無事か? みんながちゃんとやっているかってね。 でも、そんな心配する必要なくって安心したよ。 で、安心したらさぁ、真っ先にしたい事というか、楽しみが一つ出来たんだ」 「――楽しみとは?」 少し強く吹いてきた風にざわめく木々の音を背にしながら、聞いてみる。 「みんなに早く元気になった姿を見せてやりたい。 セリオさんを早く安心させてあげたいな」 「――安心ですか?」 「見舞いには来て貰えなかったけどさ、一番心配しているのはセリオさんじゃないかと 思うんだ。みんなにも会いたいけど、セリオさんには一番に会いたいから」 「――…私も…です……」 消え入るような声の救セリの呟きはへーのきに届いたのか、向こうを向いたままでは 伺い知ることは出来なかった。 だが、この時のへーのきの言葉が救セリ…いや、Dセリオの一番大切なメモリーの中 に書き込まれた。 翌日 「みんなお久しぶり〜って……あれ?」 医者の診断を受けたへーのきはそのまま警備保障へと直行した。 が、真っ暗な室内に常時稼働しているサーバマシンのランプの光が目に映るのみ。 へーのきが暗闇に一歩踏み出した瞬間――。 パァーン! パパパァーン!! クラッカーの鳴る音がして、室内が明るくなって―― 「「「「「「へーのき君(さん)、退院おめでとー!!」」」」」」 へーのきの目の前に飛び込んできたのは、飾り付けされた室内とクラッカーを もったアルバイトの面々。 「やっと戻って来たなぁから、おい」 「お身体の具合はいかがですか?」 「ケガいたくなかった〜?」 「――一度折れた骨は以前より丈夫になるそうです、数値化いたしますと……」 「――ガンジョウデス、ガンジョウデス」 暫く聞いていなかったいつもの言葉。 そして―。 「あれ? Dセリオどこいった?」 「さっきまで、ココにいたんですけど」 OLHと榊が周囲を見回す。 外に出た様子もないから、隠れられる場所なんてそうあるものじゃない。 「ほぅら、行って来い!」 ニヤケ顔の霜月に背中を叩かれるへーのき。 みんなの視線をその背に浴びて、休憩室の扉を開けた。 「セリオさん……」 「へ、へーのきさん…」 花束を両手一杯に抱えたDセリオが恥ずかしそうに立っている。 「…ただいま」 「――おかえりなさい」 照れくささを隠せない二人であったが、どちらからともなく歩み寄って接近する。 見つめ合ってそのまま抱き合いそうな二人の世界に入ろうかとした瞬間、視線を感じて 振り返る。 (へーのきお兄ちゃん、このままチューしちゃうのかな…) (ティーナもお兄ちゃんとチューしたいな…) (榊お兄ちゃんに後で、チューしてもらおうっと) (私もあーゆー恋をしたいなぁ) じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーっっ (琴音ちゃんの唇はオレんだ!) (そこだ、そのまま押し倒せ!!) (仮にも勤務中なんですから、そんな不埒な事は…) (――アツアツデス、アツアツデス) ボボボッ 「な、な、なっ…」 「サ、サウザンドミサイル!!」 ○月×日 ようやく復帰できて、みんなに復帰祝いをしてもらった。 だけど、セリオさんが照れ隠しで放ったサウザンドミサイルが武器庫で引火・誘爆。 今度は僕以外の男性アルバイトが全身火傷で一週間の入院だそうだ。 また胃が痛くなって来た…。 へーのき=つかさ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 霜月祐依「ふぅ、なんとか書き上がったか」 長谷部彩「なんとかなんですか?」 霜月「書いている内に方針が変わっちゃって、そもそもこれってシャッフルLのつもりで 書き始めた作品だから」 彩 「シャッフルLというと企画自体が2年前の…アレですか?」 霜月「ドキッ! 今回の主人公がへーのきさんで舞台が仮眠館になっているのもその所為。 削っちゃったけど、もう一個のキーワードも含ませているし」 彩 「自分で出したお題が自分に降りかかってきた『マジック』ですね」 霜月「書いている内にただの仮眠館の必然性が無くなってきたというか、折角お代の一つ になっている以上は、もっと仮眠館らしく使おうと」 彩 「それだけなんですか?」 霜月「途中で、これって勤務簿シリーズでしかないことに気が付いたのもあるんだけど。 勤務簿シリーズとの差別化は図ってみたいのですよ」 彩 「この学園の方々って爆発に巻き込まれても平気なのに、骨折その他で一週間静養 ですか?」 霜月「精神的ストレスを治すための期間だと思って、細かいところはツッコマない(笑)」 彩 「警備補修の方々は見舞いに行かれたのですか?」 霜月「一人ずつとか、二人でとかね、Dシリーズは纏めてオーバーホール中って事で」 彩 「いい加減ですね」 霜月「そーじゃないと、話が成立しなくなるから」 彩 「ところで、今までのLでこういう二人称による対話形式のあとがきはなかったと 思うのですが…」 霜月「よくぞ聞いてくれました。実は投稿し始めて通算20本目のLメモなのですよ(^^)」 彩 「20本目だとなにかあるのでしょうか?」 霜月「オフラインLリストで個室が貰える! 始めた当初から、一つの目標にしてたから」 彩 「はぁ…。ですが、それは当分の先の話かと」 霜月「何故に!?」 彩 「霜月さんの作品の内、どよコン7本、恋愛L1本、テニスL1本は別計算になりま すから、このペースで行くといつの話になるのやら…」 霜月「のぉっっっっ!」 彩 「それに、私も最近ご無沙汰ですよね」 霜月「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、返す言葉もございません」 彩 「はぁ…」←気怠そうにため息 霜月「ゴメンナサイ、ゴメン…」←以下繰り返し(笑)