『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』 第三十五話 〜a prideful valky's〜 投稿者:霜月祐依



 ハァッ、ハアッ、ハァッ――

 漆黒の闇の中、必死に走りつづける。
 なれているハズの闇の中が、自分を裏切るかのようにあざけ笑う。
 その身に宿す紅蓮の炎すら闇を振り払うにはあまりにも拙い。

 ――――!?

 悪寒を感じた刹那。
 闇は巨大な手のひらを形取り、自分を覆う。
 もがけばもがくほど闇の手のひらは圧力を掛けて自分を潰しにかかる。

 自分でも信じられないほどの声が出た。



「う、ウワワワアアアァァァァーーーーーーーー!!!!!」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』 第三十五話 〜a prideful valky's〜
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 ガバッ!!

 勢い良く飛び起きる。
 目の前には見知った顔が目の前で大きな目をパチクリさせている。
「…どうしたんだ、フランソワーズ?」
「イビル、それはこっちのセリフなんですが…」
 無機質に言葉を返すフランソワーズの声がいつも以上に冷たい。



「ここは…。
 そして俺は…。
 そうだ、あいつらはっ!
 あの黒くてゴツいのは!!
 あれから、一体全体どうなった!!!」

 ネジを巻いた直後のおもちゃのように一気にまくし立てるイビル。

「とりうえず聞くなら順を追って聞いたほうがいいぞ」
 後ろの声に振り向くと、寝ていた体勢から半身だけ起こしたエビルの姿があった。

「なんで、エビルがそこにいんの?」

「・・・・・・」

 ブオッ!!

「なんだよ、いきなり鎌を振り回すなよ! あぶねーだろ!!」
 二人の喧嘩(じゃれあいみたいなもんだが)をフランソワーズに止められる訳が無いので、
しばらく傍観する事にした。
「さっきまで気絶していたとは思えませんね〜」
 どこからともなく、湯飲みを取り出してお茶なんて飲んでみる。
 最近第一茶道部に転がり込んでは茶の湯に参加しているので、嗜みとしているらしい。

 10分後。
 なんとか喧嘩も集束したので、互いの見た断片的な情報を統合してこの状況を整理することにした。
「え〜と、俺が魔方陣を描いていた所に、魔女二人と黒ゴツイのが出てきて…
黒ゴツイのと戦ってたら青い方に邪魔されたんだよな。
それで頭来て青い方に体当たりしたまでは記憶にあるんだけど……」
「――そこで相打ちになったのを助けて、ピンクの方ととりあえずは黒い奴を片付けることにしたんだ」
「あのムカつくガキか!」
(似たものでしょうに…)
「なんか言ったか? フランソワーズ」
「いいえ別に」
「――とにかく、黒い奴には虚を付かれた所を……やられた」
 エビルが黒い奴――ロリコン番長平坂蛮次の剛拳を受けた腹をさする。
「で、私が到着したときには二人が倒れているだけでしたが」
「「あいつらは?」」
「その場にはいませんでしたよ」

 ガッ!!

 イビルが地面を殴りつける。

 エビルも気持ちは同じだ。多小なりとも腕に覚えのある自分達がたかだか人間風情にいいように
やられた挙句、得体の知れない魔女二人には逃げられた。少なくとも自分たちより早く意識を取り
戻してこの場を離脱した。
 考えようによっては『見逃してもらった』とも取れるのだ。

(それに…魔方陣もアレじゃぁ……)

 フランソワーズも口には出さなかったが、イビルの気持ちは理解していた。ルミラから任された
仕事に失敗したのではおめおめと戻る訳にはいかない。

「チクショウ、チクショウ!!」

 イビルの中にはもう一つ、心の中で責めていることがあった。
 気絶しているときに見た夢、魔族を名乗るものが滑稽にも闇に飲み込まれた悪夢。

「チクショウ!」

 もう一度、大地を殴る。
 脳裏に思い起こされた悪夢の向こうに二人の魔女が浮かんできた。
 余計な横槍を入れて、自分をここまで追い込んだあの二人をこのまま放っておいていいのか。
 否。

 今度は意志のある目でエビルを見る。
 エビルも力強く頷く。

「フランソワーズ!
 ルミラ様に伝えてくれ。あいつらがどこに逃げようが、必ずブチのめす!!」
 イビルの言葉を聞いたフランソワーズは、オーバーリアクションでため息をついてみせる。
「ルミラ様からの言伝ですわ。『好きなようにやりなさい』と」
 言伝と聞いた瞬間にイビルとエビルにわずかな緊張が走ったが、内容を聞いて両拳を力強く
合わせる。
「ありがてぇ!」
「…フランソワーズ、あいつらの場所わかるか?」
 エビルの言葉にフランソワーズは片目をつぶって、ウインクしてみせる。
「その為に私が来ているんですよ」



「……いつまで、じっとしていればいいのかなぁ」
 ここは綾芽・希亜チームが拠点としているジャングルのアジト。
 スフィーとリアンが先ほど合流した為、綾芽へのガードを彼女達に任せて自分は
『ちょっとお使いに行ってきます』と出かけたきりだ。
 実際には希亜が出かけてから一時間も経っていないのだが、この状況でいないならいないで
気にかかる。
「もうちょっとガマンしてくださいね」
「もうちょっとって?」
 綾芽の呟きを聞いたリアンの言葉にオウム返しで反応する。
「少なくとも希亜さんが戻られて…そして、それからでしょうか」
「希亜が戻ったらあいつのRising Arrowで五月雨堂に戻ろうよ」
「あっ、それさんせー!」
 スフィーの言葉に綾芽が諸手を上げて賛成の意を示す。
 ここのアジトもジャングルの中ということを考えれば、通常よりははるかに快適だ。
 だが、曲りなりにも年頃の女の子が3人も揃っているのである。
 3人とも日中の激闘で身体中が薄汚れている。

 風呂に入りたい、清潔な衣服に着替えたい、暖かい布団で眠りたい

 当然の欲求である。
「じゃー、希亜がどこにいるかなんだけど…」
「ちょっと、姉さ――」
 両手を軽く合わせて、位置探索の魔法を放つスフィー。リアンがその意味に気が付いてスフィーの
行動を止めようとしたが、時既に遅し。

 ピィーーーーーーーーーーン

 水滴が水面に落ちた直後に水紋が広がるかのように、薄く細い魔力が広がっていく。
「あ・・・いたいた。あと、ちょっとで戻ってくるよ〜」
「ホント!?」
「何考えてるんですか、姉さん!!」
 希亜の帰還が近いことを喜ぶ(むしろ五月雨堂に戻れることをだが)二人に、リアンがビックリ
したような形相で詰め寄る。
「リアン怖いょ〜」
「これで、自分たちの正確な位置を教えちゃったようなモノですよ!!」
「大丈夫よ。物凄く薄い魔力で流したから。希亜本人も気がついてないハズだよ」
「うん、私も気がつかなかったし」
 綾芽がフォローに回る。
 こういう魔力の素養が高い綾芽の素直な感想でもある。
「だから、私の言いたいのは綾芽さんや希亜さんがじゃなくって――!!」
「うりゅ〜」



 !!

「いたか?」
 魔方陣付近にいたイビル・エビル・フランソワーズの雀鬼チーム。
 じっと、周囲の様子を伺っていたフランソワーズが何かを感じ取ったらしい。
 無論、それはスフィーが放った位置確認の魔法なのだが。
「ええ、だいたいあっちの方角から位置確認の魔法を放った人がいますね。魔力もここに残留している
モノに非常に良く似ている」
「まだ、この近くにいたとはね…」
 エビルが呟く。
「まだ他にも仲間がいるかもしれませんから、様子を探ってみますね」
 そう言うとフランソワーズは目から懐中電灯のように光(実際には魔力によってはるか先の光景を
見る遠視と、障害物をすり抜けて先を見る透過を掛け合わせた魔力光)をだす。



「え〜〜〜! ピン(位置確認の魔法)打っちゃったんですか!?」
 それから程なくして戻ってきた希亜の声が響く。
「大丈夫よ、あれから他の魔力が動いている様子も無いし」
「希亜もわからなかったんでしょ?」
「それはそうですが……」
 スフィーや綾芽の言葉は肯定するものであるのだが、希亜の頭の中で最悪の状況が描き出される。
「相手に気が付かれた可能性がある以上、ここに留まるか放棄するか…」
 リアンの言葉に希亜が考え込む。
「五月雨堂に行こ、五月雨堂。あそこなら健太郎もいるし安全だよ」
「スフィーさんにさんせー」
 あくまでも気楽な二人が希亜に決断を促す。
「……いえ、朝まではここに留まりましょう」
「うりゅぅ〜なんでよ〜〜」
「他の勢力がこちらに向かっているならともかく、そうでないのならここにいるほうが得策です。
もし感づかれたとしても、周囲には悠さん直伝のトラップが幾重にもありますから、相手がそれに
手間取っている間に行動した方がまだ安全ですね」
「あぅ、お風呂…ふかふかのお布団……」
 綾芽の無念そうな声が響く。
「あと数時間の辛抱ですから」
「それまでは魔力を使わずにここでじっとしているべきですね。大丈夫? 姉さん」
 リアンの言葉にスフィーは応えなかった。
 希亜が戻ってくるまでもスフィーを責めていた為、リアンは意義なしと受け取る。
「とりあえず、朝を待ちましょう。見張りは私がしていますから、三人は寝袋に入って仮眠していて
ください」
「希亜はどうするの?」
「少ししたら見張りの交代をお願いしますね」
 綾芽の言葉に希亜は心配させないように笑顔で応える。



「……いますね、ここにいた魔女二人ともう二人」
「どんな奴?」
「よくわかりませんが、そんなに多少の魔力は感じますが脅威と取れるほどでは…」
 エビルの言葉にフランソワーズが応える。
「連中はどうしてる?」
「どうやら休息をとるみたいですね。急襲します?」
「距離は?」
「おおよそ、ここから500mぐらいですね。ただ、ジャングルを抜ける必要がありますが」
 フランソワーズの言葉にイビルとエビルが声を合わせる。

「「めんどうだ、ここからやる」」

 漆黒の暗闇の中、オレンジの髪が踊る。低くかがんだ体勢から、エビルが愛用の鎌を後ろに構える。
じっと気を練り集中し一撃の下に全てを薙ぎ払おうとする彼女の姿は、さながら居合いの用にも見て
取れる。
 この時期にしては多少生暖かい風がエビルの髪の毛をなびく。エビルはそれにも動じることなく、
じっと力を、魔力を、精神を集中させる。



「……静かな夜ですね、怖いぐらいに」
 闇夜。ジャングルの向こうの何かを感じ取ったのか、希亜が静かに呟く。



 ヒューーーーー

 風が吹き、近くの木から一枚の葉が風に流される。
 その葉がエビルの眼前に迫った瞬間、エビルの全てを込めた鎌の刃が薙がれる。

 キンッ…

 澄んだ音を立てて、葉が真っ二つに分かれる。

 ピッ、ズ…ズズッ……

「……なんの音ですか?」

 ズズズッ、ミシミシッ、ギィッッッ、

 次第に大きくなっていく轟音はすぐ下からも聞こえる。
 そう、自分たちがアジトとしている巨木からも。

 ギィーーーーッ、ズドーン、ミシミシッ、ミシッ、ズドドーン!

「まさか、この一帯の木が倒れていく――!?」
 希亜が知覚し、寝ている三人を起こそうと行動するよりも早く樹木同士が連鎖で倒れていく
ことによって発生する轟音は、視界が斜めに傾いていって――

「……届いた。あとはイビルの出番」

 ――土煙と折り重なる樹木の海へ一行を誘った。



「あいたぁ……、みなさん大丈夫ですか?」
「一体どうしたの?」
「わかりません、ただこれを見る限り――」
 綾芽の言葉に希亜は今まで自分たちを守ってくれていた巨木の切り株を撫でる。
「やはり、姉さんの魔法が気づかれていたんでしょうね」
 リアンが続きを語る。
「うりゅぅ…」
「木がなぎ倒されている方角から考えるに、私達が黒いヤツや魔族と戦った方角」
「なんで、あいつらが襲ってくるのよ。ノビてたの見逃してあげたじゃない」
「それを侮辱と受け取られたのかも…」
 リアンの言葉が、この場では重くのしかかる。
 侮辱した訳ではないが、彼女等雀鬼チームの実力をこの場で見せ付けられたのだ。
 人数の上ではこちらが有利でも、正面きって戦うのは得策ではない。
「幸いにして倒れた木材がうまい具合に折り重なってくれて、外からはこちらの様子を
伺えません。空を飛ぶと見つかるから、歩いて森を抜けて五月雨堂に行きましょう」
「ええ、それがいいですね」
 希亜の意見にリアンが同意する。



 上から見てみると、エビルがいた位置から一直線にジャングルの中央付近まで樹木が
倒れている様子がわかる。
「ちっ、出てこねえのか」
 上空で飛び出してくるものかと、構えていたエビルが呟く。が、すぐに唇の端を吊り上げて
残忍な笑みを浮かべる。

「なら…、この魔界の炎を――」

 高々と掲げた魔物の槍を振り回す。円を描くように発生した魔界の炎は次第に大きく成長する。

「――たっぷり味わって、丸焼けになりな!!」

 イビルの槍から放たれた、魔界の炎はそのままジャングルの木々に着弾し、着火する。



「あ、あれ!!」
 木々の隙間から様子を伺っていた綾芽が上空のイビルを指差す。
 闇夜からしたに降りてくる炎に恐怖を覚えたが、着弾した場所は自分達からは全然離れている。
「まだ、見つかったわけじゃないのね」
 ホッとした表情をする綾芽とは対照的に、驚愕の表情を浮かべるリアン。
「違う…、まさか……」

「ホラ! ホラ!! ホラ!!!」
 二発、三発と、次々にイビルが放った炎はジャングルのいたるところに火をつける。
 炎が照らすイビルの横顔は、炎とは対照的に澄んだ青い髪が美しく見える。
「これでもまだこそこそ隠れているつもりかい? 俺達を舐めてるとどうなるかわかっただろう」



「マズイッ、囲まれた!」
 リアンの予想は最悪の形で的中した。イビルから放たれた炎は自分たちの周囲を囲むように着弾し、
今度は逃げ場をなくす形でじわりじわりと迫ってきている。
 歩いての脱出ルートは既に無い。
 このままじっとしている訳にもいかない。
 かといって、上空に逃れれば格好の餌食――。
「どうしよう、どうしよう」
「落ち着いて!」
 パニックになりかける綾芽を希亜が必死に落ち着かせる。普段なら、真っ先に逃げ出したい気分な
のだが。

「リアン、どうしたらいい?」
 沈黙を保っていたスフィーは顔面蒼白となって、指を噛んでいるリアンに問い掛ける。
「…だけ……、でもっ、でも…」
 何か伝えようとしているのだが、語尾しか聞き取れない。

「良かった、あたしと同じ事考えていたみたいだね」

「え? 姉さん、まさかっ!!」
 スフィーはリアンにやさしくウインクしてみせると大丈夫落ち着いてとリアンの頭を撫でる。
見た目には全然逆なのだが、ここはさすが姉としての優しさが伺える。
「実はね…、もうこの姿でいることが相当キツいんだ」
「どういう事?」
 事情を知らない綾芽が問い掛ける。
「さっき魔方陣を壊したけど、マナ濃度の上昇は止まってない。それにマナを消費するにしても
この姿で使える魔法によって消費できる量が、身体に流れ込むマナに追いつかないのよ」
「姉さん…」
 既にスフィーの身体はLv.2になっていた。伸縮性に富んだ水着はともかく、制服は既にキツキツで
解れ始めている。
「それに、やられっ放しってのもシャクじゃないし。グエンディーナの名に賭けて売られた喧嘩は
買ってあげるわよ」
「スフィーさん、それじゃ――」
 何かを言おうとした、希亜を手で制する。
「チャンスは一瞬。私が合図したらRising Arrowで綾芽ちゃんを連れてまっすぐ上へ飛んで」
 スフィーは高く指を上に指す。
「最後までご一緒できませんけど、楽しかったです。これからも頑張ってくださいね」
 動揺から立ち直ったリアンが一歩前に進み出る。
「リアンさん…」
 リアンは綾芽に優しく微笑みかける。
「私は姉さんをサポートします。姉さんを一人には出来ないから」
「リアン…」
 リアンはスフィーに意思の篭った目で力強く頷く。
 スフィーは頷き返すと自らどよコンの制服を脱ぎ捨てる。

「時間が無い、行くわよ!」
 全身を魔力の光に包まれたスフィーは徐々に大きく、美しく、しなやかな21歳の本来の姿へと
戻っていく。特注水着は光に包まれていつのまにか消えてなくなっている。



「まぁーじぃぃーー」

 スフィー達がいる場所の外側で円を描くように風が巻き起こる。
 その風は徐々に大きくなっていき、竜巻へと成長を始める。

「かぁーーーるぅぅぅーーーーー」

 周囲の木々がスフィーが起こした竜巻によって序々に持ち上げられ、風に乗る。

「ストーーーーーム!!!!!」

 その叫びと共に、スフィーの生み出した魔法竜巻がいっきに上空へと巻き上がる。



「…な、た、竜巻って、なんじゃこりゃーーーー!!」
 上空で待機していたイビルは突如倒壊したジャングルから発生した竜巻が、薙ぎ倒された木々は
おろか自らが放った炎までも取り込んで成長する様にたじろぐ。
 この位置は自分も危険と判断し、地上にいるエビルの元に戻る。

「二人とも、今です!」
 魔力探知で外の様子を伺っていたリアンが合図をする。
「で、でも――」
「綾芽、行きますよ!!」
 綾芽の言葉を聞くことも無く、希亜は綾芽の手を掴んで抱きかかえるとRising Arrowで
上空へと駆け出す。
「――抜けた!!」
 竜巻よりも高く空へ駆け上がった希亜は安全地帯まで真っ直ぐに飛んでいく。『Rising Arrow』の
名前そのままに――。



「やっと収まったみたいだね…」
 竜巻に乗じて襲い掛かってくると思っていたエビルとイビルは緊張体勢を少し解く。
「向こうの人数が当初の二人に戻っています。どうやら、二人逃げたみたいですね」
「どーせ、用があるのはあの二人だけなんだ。むしろ好都合」
 フランソワーズの言葉にイビルが、気にした様子も無く応える。

「さぁてと、久しぶりに全力で暴れてやるわよ〜」
「姉さん、無茶は程ほどに…」
 竜巻の中心には、グエンディーナの衣服(魔法少女に衣服の謎は聞かないように(笑))に身を纏った
スフィーとリアンの姿があった。



「もうコンテストも何も関係ないわ」
                        「俺達の恐ろしさを今度こそ思い知らせてやる」
「こうなったら…負けません!」
                        「私達に挑む愚かさを知るがいい…」


             「「「「いくよ!!!」」」」

 プライドを賭けた戦いが、再び始まった。



「はぁ、はぁ、ここまでくればひとまず大丈夫ですね」
 希亜と綾芽はエディフィルの屋上に来ていた。身一つで逃げてきた希亜にとっては残されたのは
この身とRising Arrowだけ。この日の為に色々と用意したノートパソコンやら、サバイバルの為の
同人誌。おおよそ便利道具と呼べる代物が全て木々の下敷きになってしまった。下手したら既に灰
になっている可能性が高い。
 希亜にとってそれは何よりも痛い損失だが、綾芽の身にはキズ一つ無かったのは不幸中の幸いと
いうべきであろう。
「とりあえず一段落したら、他のアジトに戻って――」
「それからどうするの?」
「体勢を立て直したら、当初の予定通り――」
「嫌!!」
 綾芽の力強い拒否に驚く希亜。
「戦いもせずに、逃げ回って、助けてもらって、また逃げ回って、そんなの嫌!!」
「ですからそれは――」
「パパもママも逃げない、どんな相手であろうと絶対に前に進む!
 私は護られるだけのお人形さんじゃない!!」
「綾芽……」
 希亜が言葉に詰まる。経験豊富な年長者であればここで諭せるであろうが、希亜もまだ一年生。
それだけのボキャブラリーも人生経験もまだ無い。

 ダッ!

「あ、綾芽!!」
 希亜の沈黙を自身の考えに対する否定と受け取ったのか、希亜を非難めいた目で睨み付けて非常口
から階段へと駆け出していく綾芽。
 実のところ、希亜が言葉に詰まったのはそれだけではない。
「さすが、親子というべきか…似てますね」
 希亜は綾芽のその目が母親である来栖川綾香の何事にも動じず、屈せず不屈の精神で困難に立ち
向ったときの目にあまりにも似ていたことに驚いた。そして少しだけ見とれていた。


                               to be Continued…。


========

スフィー…失格

========

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

すごく久しぶりにどよこん書きました〜。
前に32話を上げてから、執筆制限が解除されるまでに実に1年半(^^;
この展開はスフィー達が希亜さんチームに合流した直後から決めていたんですよ。
つーわけで、無一文になった挙句に綾芽上は逃げてしまいましたが、なんとか挽回して
つかぁさい(笑)

34話での西山チームとの遭遇の続きも凄く面白そうなんですが、まずは時間軸を
揃えたいんで俺としては昼間のキャラの続きを書くのが先かな〜と。
自分の行動はむしろ他人に動かしてもらったほうが面白いというのもありますしね。
どーしても、自分で自分の事を書くと都合の良い結果にしてしまいそうなんで(^^;